バレンタインの変 打部琉痛



バレンタインの変 打部琉痛

バレンタインの変 打部琉痛


@ ロボッコ編

「それじゃあもらっていきマ〜ス」
「毎度〜」

 学園の購買でシーズン商品の割れチョコや製菓材料を買い込んだ金剛が、そのままいそいそと転移装置へと向かっていく。

「なんかエライ買い込んでったな」
「向こうだと海運が難しくてチョコとか高いらしいですよ」

 たまたまその光景を見た一夏が呟くのを、購買担当の生徒が先程聞いたばかりの情報を教える。

「やっぱオレ達の世界って平和だったんだな」
「バレンタインはレディの戦争とか言ってましたけど………」

 その後も艦娘達が次々と製菓材料を買いに来るのを見て一夏が微妙な顔をする。

「こっちのが足りなくならないといいけど」
「そういうなら手伝ってや」

 一夏の口から思わず出た言葉に、転移装置で届いたばかりの追加物資を運んでいたのぞみに促され、主にチョコが満載された段ボール箱を一夏が購買に運び込む中、艦娘や学園の生徒達以外にもあちこちから転移してきた者達がそれを端から買っていく。

「売れてんな〜」
「一夏君の所に大分来ると思うよ」
「モテる男は大変やろな。まあ他にも大神司令とか千早艦長もやろけど」
「どうにもあの二人と比べられるとな………」

 半ばからかわれながらも、一夏は一段落したらしいので其の場を離れる。

「つうか、バレンタインって他の世界にも普通に有るのか。いや、そう言えば前の戦いの時に広まったみたいな話聞いたような………」

 一夏がブツブツ呟いていた所で、目の前を教習用の打鉄が無人で動いているのに気付く。

「な、なんだ!? 暴走か!?」
『違うわ、ちょっと借りただけよ』

 驚く一夏に無人のはずの打鉄から声が響く。
 機体内のシステムチェック用の小型ディスプレイにタカオの姿が映っているのに気付いた一夏は思わず頬を引きつらせる。

「ハッキング!? さすがにまずいんじゃ…」
『いつまで経っても私の体の分のナノマテリアルが届かないのが悪いのよ! これで艦長用のバレンタインスィーツを作るわ!』
「………色々無理だと思うんだけど」

 明らかに料理用に向いてない機体に、一夏はどう止めるべきか迷っている間にタカオが乗っ取った打鉄が食堂の厨房の方へと向かっていく。

「………一応千冬姉と千早艦長に知らせておこう」

 下手に手を出す事を諦め、一夏がスマホを取り出して連絡先を探す。
 なお、厨房の施設が致命傷を受ける前に止める事には成功した………



A 真クロス編

「お、忘れ物か?」
「そう、大事な忘れ物だ」

 タルタロス内に繋いだThe Gates of Hellのカウンターで、屈強なマスター・ロダンが妙なマスクを被った者達に平然と聞きながらグラスを洗っていた。

「ここの品でもっともカップル破局に効果の有る物は?」
「また随分と限定的な品をご所望だな」

 目の縁に炎のような文様が描かれ、額に〈しっと〉と刻まれたマスクを被っている者達の要望に、ロダンはグラスを拭きながら考える。

「そうだな………じゃあこれはどうだ? 三角関係のもつれの果てに振られた女がカップルばかり狙って連続殺人を犯した時に吐いていた靴を元にしたグリーブだ。これを使えばカップルを物理的に破局させられる」

 明らかに何かどす黒い物があふれている気がする脛当てに嫉妬修羅達の動きが止まる。

「その、何か問題が有りそうな………」
「ああ、安心しろ。装着している間、元の持ち主の怨嗟が耳に響き続け、外そうと思っても外せなくなるだけだ」
「むっちゃ呪われてるじゃねえか!」
「それとカップルを見ると自動的に攻撃する。使い場所を選ばないとただの通り魔として扱われるな。日本ならすぐ射殺される事は無いだろうが」
「射殺しそうな人は身内にいる気が………」

 嫉妬修羅達が自分達が扱うにはあまりに危険すぎる代物にドンびくが、嫉妬修羅四号がそれへと手を伸ばそうとする。

「ちょっと待て! さすがに止めろ!」
「ふふ、これくらいの物じゃないと意味が無いわ!」
「呪われる! 呪われるって!」
「止めとけ止めとけ!」

 他の三人の嫉妬修羅が止めようとする中、四号は制止を振り切るようにもがく。

「あ〜、ちなみに支払いは? 一見にツケは効かないが」

 そこで嫉妬修羅四号が何かどす黒い物が付いた砲塔その他をバーカウンターに置く。

「深海棲艦の艤装、新鮮なとこよ」
「ほう、これが………よしこれならいいだろう」
「よくねえだろ!」
「そっちといい勝負のブツじゃないのか!?」

 何か更に危険な取引が行われようとするのを嫉妬修羅達は更に止めようとするが、当人達はすでに納得顔で交換が行われようとした時だった。
 沈黙していた艤装から何故か触手のような物が伸びたかと思うと、呪われたグリーブに絡みつきそのまま巻き取っていく。

「おや?」「あら?」
「おい、なんか吸収してねえか!?」
「そんな事が…」
「やばい、反応が急激的に!」
「あ〜、活きが良すぎたか?」

 艤装がグリーブ吸収し、何かの形を取っていく。

「やばい、来るぞ!」


「で、何が有ったんだ?」

 時期的に何かやらかすかと思っていた八雲がThe Gates of Hellを訪ねると、そこは燦燦たる状態になっていた。

「おう、あんたか。ちょっと仕入れた物の活きが良すぎてな」

 派手に破壊されたバーカウンターを掃除していた当人も血まみれのロダンが、床にスプラッターに散らばっている何かを指差す。

「あんま妙な物仕入れんなよ………」
「何、ここじゃいつもの事さ。悪いけどそいつらを頼めるか?」

 ロダンが奮戦の挙句に力尽きた(※一応生きてる)嫉妬修羅達を指差す。

「懲りないなこいつらも………こちら八雲、アホの回収に人手がいる。何人かよこしてくれ」

 通信を入れつつ、八雲が取りあえず回復アイテムの在庫を確認する。

「それとあんたの連れの大きい姉ちゃんからバレンタインフェアの有無を聞かれたが、ちょっと食材の仕入れが足りないから次の機会って言っておいてくれ」
「あいつは半分以上本能で動いてるからな。理由つけてオレにたかろうとしてるだけだ」
「悪魔だろあの姉ちゃん。ならそんなの当たり前だ。勝手にツケにしていく誰かよりはマシだ」
「どうかな………」

 八雲は苦笑しながら、割れてないビール瓶を手に取るとそれの口を開けてラッパ飲みする。

「騒げる余裕がある間はまだマシかな」

 代金に現地入手のマッカを置きつつ、八雲は片付けに着手した………








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