真夏の大決闘


真夏の大決闘
(F=Fate of Edge, T=Tempt Fate)


真夏の太陽が地上を照らす中、とある海水浴場に四人の男女が水着姿でただずんでいた。

(ジャック、T)「なぁ・・・こんなくそ暑いところで作者は何させる気だ?」

ちなみに気温は八月下旬らしい三十九度というおっそろしい暑さである。

(アディス、T)「さぁね〜なにするんだらろ〜ね〜」

アディスの手の中には一通の手紙が握られていた。
内容は以下のとおりである。

『気分的になにかやりたくなったので今週の日曜日の朝九時にこの手紙に書いてある海水浴場にきってね〜♪』

(ネイシー、T)「作者の気まぐれに付き合わされるこっちの身にもなってほしいよね〜」
(シーバス、T)「まったくだな」

ちなみに、アディスは水着にパーカーベストを羽織っており、シーバスとジャックは水着の上にTシャツ姿、ネイシーは真黒ビキニである。
四人が愚痴をこぼしながら作者を待っていると、彼らのいる海水浴場に一台のマイクロバスがやってきた。
そこから男女合わせて七人が降りてきた。

(レン、F)「作者の言ってた海水浴場はここか?」
(トモエ、F)「そうみたいね♪」
(スミス、F)「お〜なかなかいいところじゃね〜か〜」
(宗千華、F)「ふむ、確かにいいところだ。ここならば思う存分水沢との決着を・・・」

そこへ間髪入れずに鋭い声が響く。

(ミリィ、F)「せっかく遊びに来たんだからそういうのは無しにして頂戴!まったく・・・」
(フレック、F)「その通りだな」
(リンルゥ、F)「うわ〜ボクこういうところ久しぶり〜♪」
(レン、F)「そういえばスミスさん、ムサシとアニーは?」
(スミス、F)「あいつらはこの前の籠城事件で、命令無視して二人で突入した時に負った傷がまだ治ってなくてな、それでも来ようとしてミリィに病室のベッドに鎖と縄と猿轡でがんじがらめにされた」

それで納得するレンであった。

(トモエ、F)「レン、課長は?」
(レン、F)「忘れたのか?今日は会議でこれないだろう」
(トモエ、F)「あ、そっか」

ちなみにこの七人の恰好は、レン、フレック、スミスは共に水着だけで上半身裸(各所に傷跡らしき物あり、どう見ても非カタギ)、トモエはコミカルな動物の絵がところどころプリントされているビキニ、ミリィは花柄のビキニにTシャツ、宗千華は極度に露出度の高い真赤ビキニ、リンルゥは真白ビキニ(ちなみにリンルゥ、宗千華、ネイシーはスタイルがいいため男がいたらナンパされること確実)
七人がマイクロバスを降りたのを見ていたアディスは、手紙に書いてあった人達か確認するべくその七人に声をかけた。

(アディス、T)「すみませ〜ん、もしかしてダークボーイ氏と愉快な仲間たちってあなた達のことですか?」
(レン、F)「ということはそちらは・・・チーグ氏と・・・ヘタレ同盟さんですか?」

(T一同)『作者殺す・・・』

一瞬四人から凄まじい殺気が放たれた。
とりあえず全員が自己紹介を行った。
そして、自己紹介が終わると同時に一台のハマーが浜辺に到着した。

(チーグ)「いよう!みんな元気〜?」
(ダークボーイ氏)「ふはははは!諸君元気かね!」

二人の作者が同時に車から降りてきた。

(チーグ)「どうも〜はじ・・・」
(T一同)『死ねーーーー!』

ボカッ!ベキッ!バコバシバカーン!
(チーグ)「みぎゃ〜〜〜〜!」

登場早速袋叩きにされるチーグ。

(ダークボーイ氏)「・・なにかあったの?」
(レン、F)「まぁ・・・ちょっとな」

チーグの復活を待つこと数秒(早っ!)

(チーグ)「今回集まってもらったのはね♪みんなにちょっとしたイベントを用意したからなんです♪」

さっきのことがうそのように即回復をはたしたチーグが意気揚々と話し始めた。

(アディス、T)「で、その内容は?」
(チーグ)「聞いて驚くな!二作品混合タイマンドッジボール大会だぜ〜!」
(ダークボーイ氏)「イエーイ!」
(ジャック、T)「・・・帰るか」

その一言で全員が帰り始める。
全員から“わけのわからない企画に人をつき合わすな”というオーラが立ち上っていた。

(チーグ)「え〜残念だな〜優勝者には二泊三日沖縄旅行ペアチケットがわたされるのに〜」

全員(主に女性陣)の動きが止まった。

(チーグ)「仕方ない、これは今回仕事でこれなかったキャサリンさんにお譲りし・・・」
(女性陣一同)『ちょっとまて!』

作者二人にものすごい剣幕で詰め寄る女性陣(←一種の暴徒である)

(トモエ、F)「ホントウにもらえるんでしょうね賞品?」
(ネイシー、T)「ウソだったら・・・」
(リントゥ、F)「ただじゃ・・・」
(宗千華、F)「おかんぞ・・・」
(チーグ)「ほ・ほんとだから・・・」

その一言で大人しく離れた。
ということでめでたく(女性陣に気圧される形で)ドッチボール大会は開催されることになった。

(ダークボーイ氏)「ルールはいたってシンプルなものでほとんど普通のドッチボールと変わりません」
(チーグ)「しかーし!これはタイマン、つまり一対一の対決のためよけることは禁止です!あと一回戦ごとの対戦組み合わせはくじ引きで決めまーす!先攻後攻についてもくじ引きで決めます」

ルールを真剣そのもので聞く女性陣に対し男性陣はというと。

(アディス、T)「なんかとんでもないことが起きそう・・・」
(レン、F)「今さらなにを・・・」
(ジャック、T)「無事に帰れるだろうか・・・」
(スミス、F)「当然」
(シーバス、Tとフレック、F)『無理だな・・・』

男性陣の全員からため息が漏れる。
ミリィはというといつの間にか用意されていたテントでけが人の出た時のための治療の準備をしていた。

(チーグ)「では早速いってみよーか!」
(全員)「イェーイ!」

男性陣はなかばあきらめ気味に、女性陣は意気揚々と声を張り上げるのだった。

(ダークボーイ氏)「ではまず一回戦目は・・・ジャック対トモエだ~!」
(トモエ、F)「は〜い♪」
(ジャック、T)「お、俺はあのお譲ちゃんとか」

早速コート内に入る二人。

(レン、F)「死ななければいいが・・・」
(フレック、F)「そうだな」
(スミス、F)「お〜お〜余裕こいちゃってまぁ〜」
(アディス、T)「いや、さすがにそこまでジャックも本気では・・・」
(レン、フレック、スミス)『いや、ジャックのほうが』

一字一句まったく同じことを同時に言われて焦るアディス。
そしてついに開始のホイッスル。
ちなみに審判はコートから安全(?)のために五メートルほど離れた所に設置されたパラソルの下にいる作者両名(※なぜか安全第一と刻まれた黄色ヘルメット装備)が務めることになっている。
先攻はどうやらトモエらしい。

(トモエ、F)「いっくよ〜」
(ジャック、T)「お〜」

完全に油断しているジャックを尻目にトモエは大きく振りかぶり・・・

(トモエ、F)「ト〜モ〜エ〜バーニングショットー!」

本気で投げられたボールは衝撃波で砂を巻き上げながらジャックに迫った。
それはボールではなく砲弾となってジャックを襲った。

(ジャック、T)「へ?・・・ひぎゃーーー!」

ジャックの悲鳴とともに十トントラックが壁に衝突したかのような衝撃音があたりに響き渡り、ボールをもろに食らったジャックは五メートルほど吹き飛び気絶した。

(アディス、T)「ジャック〜生きてるか〜?」

アディスが声をかけるが返事はなく、完全に気を失っていた。
腹にはあざができ、目は完全に白目をむいていた。
しかたないためアディスがミリィのいる臨時救護テントへ運んで行った。
その様子をみた他の者たちは恐怖を浮かべる者、なにか思案している者など様々な表情を表していた。
ちなみにその頃作者二人はというと。

(チーグ)「ジャック大丈夫かな〜?」
(ダークボーイ氏)「三途の川を渡る一歩手前までいったと思いますよw」

などとチーグはカクテル片手に、ダークボーイ氏はコーラ片手に呑気に話していた。
そして第二回戦はネイシー対フレック。

(ネイシー、T)「お手柔らかによろしく」
(フレック、F)「こちらこそ(この子はまともそうでよかった)」

そして開始のホイッスル。
先行はフレック。
開始早々フレックはネイシーの足めがけてボールを投じた。
女性相手に申し訳なさが出たのかもしれない。
が、ネイシーはこれを片手でキャッチするとお返しとばかりにフレックの腹部めがけて全力投球。

(フレック、F)「うお!」

思わず声をあげながらボールを抱くようにキャッチ、予想外に重いボールにフレックの顔に冷や汗が流れる。
なめてかかったらやばいな
思わず悟ってしまうフレックであった。
その後も一進一退の攻防が続いた。

(レン、F)「どっちが勝つと思う?」
(シーバス、T)「フレックでは?」
(スミス、F)「フレックに100ドル」
(宗千華、F)「フレックだな」
(リントゥ、F)「僕もフレックだなぁ」
(トモエ、F)「私も〜♪」

それに対してアディスは。

(アディス、T)「まちがいなくネイシーだなぁ」
(レン、F)「ほう、その根拠は?」

その時ネイシーが思いっきりジャンプをした。

(アディス、T)「あれが根拠」

全員の視線がジャンプしたネイシーに集中する。
そしてネイシーは思い切り体を後ろにそらした。

(レン、F)「あれってもしかして・・・」
(アディス、T)「エ○投げハイ○ャンプ魔球」
(スミス、F)「なんだそれ?」

日本の某野球アニメで有名な技に驚くと同時に呆れるレン。

(アディス、T)「というよりレン君よく魔球のこと知ってたね」
(レン、F)「前に日本アニメマニアの同僚の机に置いてあったそれのDVDを見た時にこれなんだって聞いたら三時間ばかし延々と・・・」
(スミス、F)「もういい、わかった・・・なんかこれ前にもあったような気が・・・」

思わず既視感を抱いてしまうスミスであった。
(このネタを知りたい人はirregularシリーズの二作目の第五章を読みましょう♪)

(シーバス、T)「ネイシーこそよく知ってたなこんなネタ」
(アディス、T)「ネイシーも日本のアニメ、特に野球ネタが好きらしくて・・・僕とジャックも何度かDVD見ながら延々と・・・」

似たような境遇の二人は思わず握手してしまうのであった。
そんなことをしているうちにネイシーは体の戻る反動を利用して凄まじい勢いの打球を放った。

(ネイシー、T)「いっけーーーー!」

奇怪な技に驚きつつも、上空から投げ落とされる球を必死にとろうとするフレックだが・・・

(フレック、F)「しまった!太陽が!」

ネイシーは太陽を背に飛んでいたため、ネイシーを眼で追ったフレックは太陽を直視したために思わず目を背けてしまった。
直後急降下してきた球がフレックの急所に直撃した・・・

(フレック、F)「ほぎゅ!」

奇妙な声を上げながら前のめりに倒れていくフレックであった。
当然大丈夫なわけもなく、ジャック同様運ばれていくフレックであった。

(ダークボーイ氏)「また、古いネタを・・・」
(チーグ)「いや〜どうしても使ってみたくてつい」

いたずらっ子のような顔をするチーグであった。

(宗千華、F)「む・・・ヘリがこちらに向かってきてるぞ」
(リントゥ、F)「あ、ホントだ」
(トモエ、F)「レン・・・あのヘリって・・・」
(レン)「ああ、間違いなくあれは・・・」

浜辺の上空でしばらくヘリはホバリングをした後、ゆっくり着陸した。
そして、着陸したヘリから出てきたのは・・・

(キャサリン、F)「私を差し置いてなにやってるのかしら?」

堂々のキャサリン課長登場である。
ヘリから降りたキャサリン課長の姿はオレンジ色のビキニにTシャツ姿である。

(レン、F)「課長、確か今日は会議のはずでは?」
(キャサリン、F)「ぶっちしてきたに決まってるじゃない」

さも当然のように言い放つキャサリンさんであった。
そんなこんなで次の組み合わせを発表。

(チーグ)「人数が奇数になったんで、一人シードとなりますのであしからず。さてと次は・・・マジ?」
(ダークボーイ氏)「ある意味すごい対決になりそう」
(スミス、F)「誰と誰なんだ?」
(チーグ)「キャサリン課長対アディス・・・」

共に情報戦の得意な二人がどのような戦いを繰り広げるか想像した何人かが顔色を悪くしていた。

(キャサリン、F)「じゃあサクッと行くわよ」

すさまじい笑みを浮かべるキャサリン課長に対して。

(アディス、T)「さてさてがんばりますか〜」

気の抜けた声を出すアディスであった。
この対極の二人に皆の視線が集中した。

(スミス、F)「どっちが勝つかな?」
(宗千華、F)「恐らく・・・」
(トモエ、F)「やっぱり・・・」
(レン、F)「まちがいなく・・・」
(シーバス、T)「多分・・・」
(ネイシー、T)「絶対・・・」
(F一同)『キャサリン課長』
(T一同)『アディス』
(一同)『でしょう・・・』

そんな外野をよそに、コートに入った二人は集中力を高めながら相手を睨みつけていた。

そして高らかに響き渡るホイッスル。
そしてこの後、空前絶後の死合が始まることになる。
先攻はアディス。

(アディス、T)「行きますよ〜」

振りかぶるアディス、そして投げようとした瞬間!

(キャサリン、F)「アディス!あなた五年前にコルテックファミリーの本拠地に乗り込む際、女装して潜入したらしいわね!」
(アディス、T)「げふっ!」
(一同)「えーーーーーーーー!」

予想外の暴露話に思わず態勢を崩してしまうアディス、もちろんボールは緩やかに飛んでいきキャサリン課長の腕に収まった。

(アディス、T)「なんであなたが知ってんですか!」
(キャサリン、F)「私に不可能はないのよ!」

高らかに宣言するキャサリン課長と、精神に大ダメージを負って崩れ落ちるアディス、そしてその一部始終を目撃した観客は全員顔を真っ青にしておりアディスの過去よりもキャサリンの驚異の情報網に恐怖する一同であった。

(レン、F)「課長・・・もしかしてこの前急に休んだ理由って・・・」
(キャサリン、F)「何のことかしらね〜♪」

涼しげな顔をしながら凄まじいことを行っていたことを確信した全員が一層キャサリンに対する恐怖を募らせるのだった。
すると今まで両手を地面に着いていたアディスが体を起して態勢を整えていた。

(キャサリン、F)「あら?もう復活したの?」
(アディス、T)「・・・・・・」

無言のアディスからはすさまじいなんとも言えないオーラが放たれているが、キャサリン課長はというとまだまだ余裕なのか表情は今だ変化は見られない。
そして、今度はキャサリン課長が振りかぶったと同時にアディスが口を開いた。

(アディス、T)「キャサリン課長!先月酔った勢いで昔の同級生の男性にキスしちゃったって本当ですか〜!」
(キャサリン、F)「ギャーーーー!」
(一同)「えーーーーーーー!」

またも動揺する観客、そして立場の逆転した両者。

(キャサリン、T)「な・なんで知ってんのよ!」
(アディス、T)「ヒミツ〜♪」

ボールはまたも緩やかに飛んでいき、アディスの腕に収まった。

(スミス、F)「しかし、あれだ・・・両方とも恥ずかしい過去だな」
(チーグ)「そうだね〜♪」
(ダークボーイ氏)「そうだな〜♪」

ここに確信犯が二人。

(レン、F)「課長・・・なにやってんですか・・・というより課長お酒に強烈に強いはずでは?」

レンの突っ込みにキャサリンは。

(キャサリン、F)「いや・・・その・・・」

珍しく口を濁す課長であった。

(アディス、T)「友達と一緒によりにもよってバルカンウォッカをショットグラスで何杯一気のみ出来るか競ったのが原因だよ」

無表情に語るアディス。

(チーグ)「ここでちょっと豆知識!バルカンウォッカは世界で二番目に強い蒸留酒でアルコール度数はなんと88度もあります!ちなみに一位はブルガリアのスピリタスで98度です!あとショットグラスとは一杯分のお酒をストレートで飲むためのグラスのことで〜す♪」

チーグの豆知識コーナーでした。

(リントゥ、F)「そうなんだ〜」
(トモエ、F)「今度レンの料理に大量に混ぜて酔った所を・・・」
(レン、F)「トモエ、なにか不吉なこと考えてないか?」
(トモエ、F)「ソ、ソンナコトナイヨ!」

思いっきり声が裏返るというわかりやすい反応をするトモエであった。

(宗千華、F)「そんなのを何杯も飲んでればいかに酒に強かろうが泥酔するわけだ」

おもいっきり落ち込む課長、トモエは思わず携帯のカメラでちゃっかり写真を撮っておくのだった。

(シーバス、T)「アディスもなんで女性に変装してったんだ?」
(ネイシー、T)「そうよ」
(アディス、T)「え〜それは・・・」
(キャサリン、F)「そのファミリーのボスは女性だったんだけど、男性に興味がなかったのよ」
(レン、F)「それで女装していったのか」

今度はアディスが落ち込んだ。
ネイシーはちゃっかり携帯のカメラでその姿を撮っておくのだった。
そんなこんなで精神にお互い深いダメージを負ったが、試合を再開した。

(アディス、T)「今度こそ!」

大きく振りかぶるアディス。

(キャサリン、F)「アディ・・・」

何か言う前にアディスは大急ぎでボールを放った。
ところが、急いでいた所為か手加減が全くされていない剛速球がキャサリンの腹に直撃。

(キャサリン、F)「ほぐ!」

そのまま前のめりに倒れるキャサリン課長であった。
その後、ミリィのいるテントに運ばれていったのは言うまでもない。

(アディス、T)「か・勝った・・・」
(シーバス、T)「お疲れ」
(ネイシー、T)「お疲れ〜」

その頃レン達はというと。

(スミス、F)「よく勝てたな」
(レン、F)「まったくですね」
(トモエ、F)「課長に情報戦で互角に渡り合うなんて・・・」
(宗千華、F)「我々も彼女の情報収集力には目を見張るところがあったからな」
(リントゥ、F)「・・・でもこれってある意味因果応報だよね」

感心しつつ呆れるのであった。
少しして、次の組み合わせが発表された。

(チーグ)「次はスミス対レンで〜す!」
(レン、F)「お願いします」
(スミス、F)「おう、やるからには本気でこい」

コートに入るとすぐに二人は臨戦態勢をとった。
先攻はスミス。

(スミス、F)「オラーーーーー!」

左手の義手から放たれる砲弾。
するとレンは片手をボールに当て、回転を自分の任意の方向へと変えることでボールの軌道を変えながら徐々に回転を緩めていき、ある程度回転を緩めてからしっかりと受け止めると、すぐに投げ返した。

(スミス、F)「マジかよ!」

まさかあんな受け止め方をされるとは思わなかったが持ち前の反射神経で何とか受けようと身構えるが・・・

(スミス、F)「なにー!」

なんとボールが当たる寸前に軌道を変えてカクッと下に落ちた。
さすがに対応しきれず、足に球をくらってアウトとなった。

(スミス、F)「ジュニア!フォークはないだろ!」
(レン、F)「まともに行ったって受けられるのが落ちですからね」

心底悔しそうな顔をしながらコートを出るスミスであった。
そして、最後の組み合わせはリンルゥ対シーバスとなったので宗千華はシードとなった。

シーバスとリンルゥはお互い一歩も譲らず白熱した試合を披露するも、体力的な差が最後に出てしまい、シーバスが辛勝した。
そして、第二回戦。
一戦目は毎度おなじみ、トモエ対宗千華の二人である。

(トモエ、F)「今日こそ決着をつけてあげるわ・・・」
(宗千華、F)「こちらとしてもいい加減うんざりしていたところだ」

両者から凄まじい殺気が放たれる。
このまま殺し合いが始まりそうだが、いつものことなので誰も止めることはしなかった。

(アディス、T)「いつもあんな感じなんですか?」
(スミス、F)「まぁな」
(シーバス、T)「険悪にもほどがあるだろ・・・」

そして、試合開始のホイッスル。
先攻はトモエ。

(トモエ、F)「トモエバースト!」

必殺の威力のこもった球が宗千華に迫る。
砂という砂を巻き上げ、空気という壁を切り裂く弾丸となっている球を、宗千華はなんとボールに強烈な掌底打を当てて強引に勢いを殺して受け止める。
今度はお返しとばかりに宗千華は全身の力をすべて投げる力にそそいで、トモエに負けず劣らない剛速球を放つ。
しかし、トモエはこれを真正面で受け止める。

(トモエ、F)「やるわね」
(宗千華、F)「そちらもな」

凄まじいにらみ合いが続く。

(トモエ、F)「レンに沖縄で私のピーをささげて責任取らせるためにもこの勝負・・・」
(宗千華、F)「水沢の才能を奪い私の夫にするためにもこの大会・・・」
『絶対勝つ!』

物騒際わりない上に迷惑千万なことを大声で言い放った二人を、冷めた目で見る一同。そして、思わず額に手をやってしまうレン。

(チーグ)「今さらですけど、この二人ちとやばくないですか?」
(ダークボーイ氏)「まだまだ許容範囲内だと思いますけど(汗)」

作者ですら制御できないものとなっている二人に全員が恐怖したのは言うまでもない。
もともと作者の力などたかが知れてはいるのだが・・・
こうして勝負はヒートアップしていき、勝負は一向につきそうになかった。

(チーグ)「え〜勝負が長引きそうなんで予備コートで次の試合しまーす」

そんなわけで、第二戦目はレン対ネイシーとなった。

(レン、F)「よろしく」
(ネイシー、T)「こちらこそ」

にこやか(?)にあいさつをしながらコートに入る二人、その後ろではさらに白熱した勝負を繰り広げるトモエと宗千華。
そして開始のホイッスル。
先攻はネイシー。

(ネイシー、T)「一気に決めるわよ!」

するとネイシーはまたも大きく飛び上がって体を反らせる。

(アディス、T)「またもやエ○投げハイジャ○プ魔球だー!」

思わず実況風になってしまうアディス。
ところがレンは特に慌てた様子もなくただボールが投げられるのを待つ。
そして放たれる剛速球。まるで隕石のような勢いを持って投げ落とされるボール。

(レン、F)「そこだ!」

そう叫ぶとレンはなんとボールを受けるのではなく・・・サッカーよろしく思いっきり蹴った!

(ネイシー、T)「えーーーー!」
(リントゥ、F)「すごっ!」

思わず驚きの声をあげるネイシーとリントゥ、蹴り返されるとは思ってもいなかったらしい。
そうしてボールは一直線にネイシーへと向かっていき、空中で身動きの取れないネイシーの右足のすねに見事命中。

(ネイシー、T)「〜〜〜〜っ!」

声にならない叫び声をあげるネイシー。
そして跳ね返ったボールはレンの腕に収まった。
ネイシーはというとすねをさすりながら地面を転げまわっていた。

(レン、F)「大丈夫か?」
(ネイシー、T)「にゃんとか・・・」

涙目になりながら差し出された手を掴んで起き上がるネイシー。

(ネイシー、T)「少しは手加減してよね!」
(レン、F)「いや・・・気を抜いたらやられそうだった」

思わず本音が出てしまうレンであった。
ちなみにトモエと宗千華はというと・・・

(トモエ、F)「こうなったら・・・」

どこに忍ばせていたのか、手にアンプルを持つとそれを首の静脈に注射、そして数秒後みるみる体が成長していき、二十代前半の女性の姿になるトモエ。

(トモエ、F)「変身完了!」

急活性成長因子という危険極まりない代物を平気でゲームに使用するトモエに皆が冷たい視線を向けるが、その後即座を通り越して俊足の動きで視線を反らせた。

(トモエ、F)「?みんなどうしたの?」
(宗千華、F)「・・・自分の恰好をみてみろ」

かなりあきれ口調で告げる宗千華。
視線をゆ〜っくりと自分の体へと移すトモエ。
そして自分の恰好を確認した瞬間顔を真っ赤にして悲鳴を上げた。

(トモエ、F)「キャーーーー!」

それもそうである、急活性成長因子によって急成長を果たしたためトモエの水着はそれに耐えきれず、ひもが切れてとても恥ずかしい格好になっていた。

(チーグ)「・・・生きてて良かった」
(ダークボーイ氏)「・・・・・」

親指を立てて素直に喜んでいるチーグと顔を真っ赤にして顔を伏せるダークボーイ氏であった。
結局、トモエは勝負の続行が不可能となり、宗千華の勝利が決定。
あまりにも情けない勝利に複雑な表情をする宗千華。
ちなみにトモエがミリィに説教をされたのは当然のことであった。
そして第三回戦はシーバス対アディス。
さすがにお互いの癖を知っているだけあって中々の好勝負が行われた。
素早く投げ返すと思えばフェイントをかけてタイミングをずらして投げたり、真っ向勝負で全力投球のラリーを行ったりと勝負は拮抗状態となるが、アディスの放ったボールがたまたま変に回転がかかったのかシーバスの手前でわずかに軌道がずれてシーバスの左の太ももにあたり決着がついた。

(シーバス、T)「なんでおれん時だけいっつもはしょるんだ?」

勝負に負けたことよりもそっちを気にするシーバスであった。
そしていよいよ決勝。
最後はコートを円形にしてそこに残った三人が入って勝負を行うバトルロワイヤル方式を採用。
また、追加ルールとして一人一球ずつボールが渡され、開始後いつ投げてもよいとされ、また今回に限りボールをよけてもよいとなったため先に攻めてよけられれば格好の標的にされることもあり、緊張感は一気に跳ね上がることになる。ちなみに全員がボールを外すもしくはよけられた場合はボールを再配布することになっている。
三人ともさすがに緊張しており、観客も真剣に見入っていた。
しばしの間の後、ホイッスルが試合開始を告げた。
一斉にボールを構えるアディス、レン、宗千華の三人。
三人とも相手の一挙手一動足に神経を集中させる。
二人で一人を狙うか、投げる動作をした相手のすきを狙うか、まさに真剣勝負そのものであった。
しばしの沈黙・・・
そして同時に三人が動き出す。
響き渡るボールの直撃音、そしてそのボールを食らってしまったのは・・・
宗千華であった。
アディスは宗千華のボールを紙一重でよけながらボールを宗千華めがけて放ち、レンは宗千華の隙を突いて全力投球。
宗千華は咄嗟によけようとするが砂に足を取られさらに長時間の試合による疲労と暑さによって僅かに反応が遅れ、アディスのは避けれてもレンのボールは紙一重避けきれずリタイア。

(宗千華、F)「・・・二人で同時に狙われるとは予想外だ」

うなだれてしまう宗千華。

(レン、F)「いやなんとなく・・・」
(アディス、T)「宗千華さんを先に狙わないといけない気がして・・・」

レンの言葉をアディスが引き継いだ。
そしてコートを大人しくでる宗千華。
一方ミリィのテントでは。

(ジャック、T)「意識が戻ったと思ったらもう決勝かよ・・・」

腹をさすりながら体を起こすジャック。

(フレック、F)「ど・どっちがかつかな?」

微妙に回復しきれてないフレック。

(ミリィ、F)「出番がなくて暇だったわ・・・レンに10ドル」

かなりご立腹のミリィ。

(トモエ、F)「レンでしょ!よし!私は50ドル」

新しい水着に着替えたトモエ。微妙に涙目になっている。
いろんな反応を見せつつ賭けをする四人に対してスミス達はというと。

(スミス、F)「ジュニアにペプシ一ケース!」
(ネイシー、T)「アディスに100ドル!」
(シーバス、T)「アディスにウォッカ一箱!」
(宗千華、F)「水沢に1000ドル」
(キャサリン、F)「さぁさぁ!賭け金はこちらに〜」

いつのまにか復活しているキャサリン課長。

(リンルゥ、F)「じゃあ〜レンに10ドル・・・」

完全に鉄火場と化している場外。

(チーグ)「自分はアディスにコーラ一ケース!」
(ダークボーイ氏)「僕はレンにチョコ一箱!」

低レベルなものを賭ける作者二人。
一段落したところでボールを再配布し試合開始。
今度は一対一である。

(アディス、T)「いざ・・・」
(レン、F)「勝負!」

同時に走り出す二人、そしてほぼ同時に振りかぶり・・・
投げる!
まさに早撃ち勝負!コンマ一秒の差で勝負が決まる刹那の一戦!
そして結果は・・・

(アディス、T)「うわ!」
(レン、F)「クッ!」

ボールに当たり倒れるアディスとボールを倒れながら紙一重でよけたレン。
決・着!

(アディス、T)「さすがだね」
(レン、F)「そちらこそ」

握手を交わす二人。

(チーグ)「優勝はレンに決定しました!」
(ダークボーイ氏)「やったーーー!」
(F一同)「よし!勝った!」
(T一同)「くっそーーー!」

賭けに勝った者の歓喜と負けた者の悲哀が重なってなんとも言えない響きとなった。
そしていよいよ表彰式!
きれいに整列する一同。

(チーグ)「ではレン君優勝おめでとーう!」
(ダークボーイ氏)「よくやった!」
(ネイシー、T)「おめでとう!」
(スミス、F)「さすがやつの息子だぜ」
(ミリィ、F)「怪我をしなかったのは褒めてあげる」

沸き起こる拍手喝采(?)。
ちなみにその裏では・・・

(トモエ、F)「こうなったら無理やりにでもレンに沖縄に連れて行ってもらわなきゃ・・・」
(宗千華、F)「どの薬を使って誘惑するか・・・」

かなり危険な策略が張り巡らされているのであった。

(チーグ)「では今回は・・・」
(ダークボーイ氏)「この辺で・・・」
(二人揃って)『バイバーイ!』

あまりにもあっけない上に素早い行動に不審がる一同

(トモエ、F)「おかしい・・・」
(ネイシー、T)「あっけなさすぎる最後ね・・・」
(アディス、T)「怪しかったから盗聴器付けてみた〜」

スピーカーに耳を傾ける一同。

(チーグ)『いや〜上手くいきましたな』
(ダークボーイ氏)『そうですね〜最初はヒヤヒヤしましたよ』

そこで着信音が鳴り響く。

(チーグ)『あ、ご協力どうもありがとうございました』
(チーグ)『写真のほうは?はい、はい・・・ではそのように』

そこで切れる電話。

(ダークボーイ氏)『どうでした?』
(チーグ)『売り上げは上々みたいですよ、特に宗千華とネイシーとリンルゥの写真がバカ売れだそうです』
(ダークボーイ氏)『よかった、よかった』
(チーグ)『では、分け前はこの前・・・』

そこでスイッチを切ると、全員が顔を見合わせうなずいた。

(トモエ、F)「では悪い作者には」
(リンルゥ、F)「それ相応の」
(宗千華、F)「報いを」
(ネイシー、T)「受けなさせなきゃね♪」

その後、なぜかバスに積んであったカドゥケウスやロケットランチャーなどの装備を持ち、さらに極上の笑みを浮かべながら作者を地の果てまで追いかける女性陣であった。

(レン、F)「馬鹿なやつらだ」
(アディス、T)「あ〜あ行っちゃった・・・」
(スミス、F)「まぁ自業自得だ」

次の日の午後、日本海に十字架に縛りつけられた作者二人が発見されたとかされなかったとか・・・・
ちなみに沖縄旅行はSTARS本部でレンの提案で行われた大抽選会の結果八谷夫妻にプレゼントされたという。

(トモエ、F)「なんで私じゃないの〜!」

番号一つ違いで両親にペア旅行を取られたトモエの叫び声がいつまでも本部に響き渡っていたという・・・・








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