クリスマスの変 獣鉢



クリスマスの変 獣鉢



@

「ここ、だよね?」
「皆さん集まってるであります」
「ちょっと遅れちゃったかな」
「いや、時間通り。勝手に始まってたようだ」
「そのようですわね」

 W号戦車で招待状の場所に到着したあんこうチームは、そこに《祝! ガールズ&パンツァー 第二次ロボッコ大戦(仮)参戦記念クリスマスパーティー》と描かれた横断幕と、その下に小さいノボリに《年内未完結残念会》と書かれているパーティー会場へと入場する。

「あら、遅かったですわね」
「ちょっと寄り道してて」
「ハッハッハ、主役は遅れて来る物ネ」
「主役はこっちこっち」

 入り口に入ってすぐ、参加客にサンタ帽を配っていたダージリンとケイが声を掛けてくるのにみほが苦笑し、沙織が途中で買ってきた大洗名物ポテトスィーツ各種の入った箱を見せる。

「あら、いいですわね」
「スィーツは幾ら有ってもOKね」
「では荷物はこちらに、戦車はそちらに」
『ちょっと待った〜!』

 そこでサンタ帽にカンテラを持ったミカが誘導しようとするのを、アンチョビとカチューシャが止めに入る。

「気をつけろ! こいつさっきからどさくさ紛れに食料パクってるぞ!」
「それどころか、こっちの戦車まで盗もうとしたわよ!?」
「あの全員とは言いませんけど、それなりの数は持ってきましたから」
「戦車は勘弁!」
「ふふ、ただちょっと余った物を持ち帰ろうとしただけさ」

 怒鳴りまくる二人に、みほが更に苦笑し、沙織が箱を隠すが、当のミカは平然と受け流す。

「ご安心ください。セキュリティは万全です」
「羽目を外しすぎないように!」

 そこでトナカイの仮装をし、手にクリスマスツリーに似せた細長い何かを持ったノンナと、サンタ帽以外は普段の制服と風紀腕章のカモさんチームがミカを警戒していた。

「何かすでに先行き不安でありますな」
「でも、皆さん楽しそうですね」
「楽しみ方も色々みたいだけど」

 指定された駐車場に戦車を止めたあんこうチームは、そこに普段は見かけない派手なペイントやクリスマスデコを施された他校の戦車を見かける。

『さあみんな〜、準備はいいかな〜?』
『おお〜!』

 ステージ会場で、ミニスカサンタコスの杏の号令に、皆が一斉に声を上げる。

『それじゃあ、パーティー開始だ!』

 開始の号令と共に、駐車場に止めてあった各校の戦車が一斉に開始を告げる号砲(※無論空砲)を発射する。
 画してパーティーは始まった。

「すごいにぎやかだね」
「あ、みほお姉ちゃん」

 各所で皆で持ち寄った料理やスィーツが振る舞われ、ステージ場でかくし芸やミニゲームが行われる中、みほの前にボコルックの愛里寿が姿を見せる。

「愛里寿ちゃん、楽しんでる?」
「うん。すごい楽しいよ」

 どこから見つけてきたのか、ボコケーキを食べながら楽しそうに頷く愛里寿に、みほも笑顔を向ける。

『さあて、じゃあメインイベント始まるよ〜!』
「メインイベント?」
「何だろ?」

 そこで杏の声に二人がステージを見ると、巨大な星飾りに埋め込まれた人がステージ上空に吊るされていく。

「………え〜と」
「何アレ?」

 みほが絶句し、愛里寿が首をかしげるが、よく見ると星飾りの下に《私はFANBOXで有料連載しつつも、遅筆で年内完結させられませんでした・作者》と書かれたノボリが付いている。

『それで豪華賞品争奪、戦車的あてゲーム! ルールは簡単、配給されるペイント弾三発でどこまで高得点を出せるか! 上・中・下でビンゴ出来たら最高得点! さあ奮って参加しよう!』
「上・中・下って何?」
「さあ、何だろうね? あ、あっちに面白そうなのが有るよ」

 更に首を傾げる愛里寿を、みほは何とかステージから遠ざける。
 なお、最高得点はまほ率いる戦車のビンゴ命中弾だった………



A

「ふはははは! 諸君、私は生まれ変わった!」

 高笑する白地に目の縁に炎のような文様が描かれ、額に〈しっと〉と刻まれたマスクを被った全身に隈取のような文様の入った少年、嫉妬修羅一号の雄々しい姿に、その場にいた二人は慄く。

「何だこのオーラは!」
「同士嫉妬修羅一号が生まれ変わったのか!?」
「これが新たなる力、HDリマスターの力だ!」

 学生服姿に同じようなマスクを被った嫉妬修羅新二号と同じくマスクをデモニカの上から被った嫉妬修羅三号に、嫉妬修羅一号は胸を張って答える。
 そのズボンのポケットから何かが落ちたのを見た嫉妬修羅新二号は思わずそれを拾う。
 落ちたのは一枚の紙切れで、こう書かれていた。
《DLC購入明細》

「おいこれ………」
「は!? ちゃんと自分の財布から払ったぞ!」
「いいんじゃね? 公式なんだし」

 何か生臭い物を感じながらも、拾った購入明細を嫉妬修羅新二号は握りつぶして見なかった事にする。

「さてでは同志諸君、この新たなる力で今度こそ」
「アレ、お前ら何やってんだ?」

 三人で勝手に盛り上がっている所に、八雲が通り掛かる。

「は! また邪魔をする気か!」
「今度という今度は!」
「我らの望みを!」
「………クリスマスはもう終わってるぞ」
『なにぃ!?』

 嫉妬修羅達に掛けられた無慈悲な一言に、全員が絶句する。

「いつ!?」
「作者の執筆用ノートPCが壊れている間に」
「なぜ!?」
「アップデートにしくったらしい」
「どうして!?」
「執筆出来ないからと、HDリマスターだけでなく、ウィンターセールで買ったバ○オ1HDリマスターやラ○ザのアトリエ1をやりまくっていたそうだ」
「何という事だ………」
「この世に神も仏も無いのか………」
「なぜそんな残酷な事が………」
「神仏に会いたいなら邪教の館に行け」

 崩れ落ちる嫉妬修羅達に、八雲は更に無常な言葉をかける。

「ふ、ふふふ、ならば今から次なる作戦を!」
「そうだ!」
「今からでも何とか…」
「お前らな…」

 なお諦めきれない嫉妬修羅達に、八雲が何かすべきかと思った時に、どこかから妙な音が響き、何気に八雲は上を見るとその場から飛び退り、直後にそこへ対悪魔鎮圧弾(※試作品)が直撃、爆発する。

「な、何が………」
「八雲〜、このクリスマスプレゼント、イマイチ狙いが甘いよ?」
「だから説明書をよく読んだ方が…」
「レッド・スプライト号の資材部に居座って買わせたのは誰だった?」

 新型無反動ランチャーを構えたネミッサに、カチーヤがマニュアルを手に注意し、八雲は完全に呆れ果てる。

「まあ、結果オーライか」
「あの、皆さん大丈夫ですか?」
「元々喰奴鎮圧用の試作品だ。死んじゃいない」

 倒れ伏している嫉妬修羅達を放置し、八雲はその場を去る。
 情けない惨劇を覆い隠すように、静かに降る雪が三人の躯(未満)へ積もり始めていた………


Merry Christmas!!






感想、その他あればお願いします。


小説トップへ
INDEX


Copyright(c) 2004 all rights reserved.