クリスマスの変 煮銃丹

クリスマスの変 煮銃丹







@ ディファレンス編

「さて、それではこれよりドキッ! 聖夜に性夜プロジェクトの説明を…」
「ふんっ!」

 ホワイトボードを前に説明しようとするトゥアールに愛香が宙を舞ってトゥアールの首に両足を絡め、そのまま首をキめながら床へと引き落とす大技を叩き込む。

「小学生も来るのに何するつもり!」
「あの、トゥアールさんの首が変な方向に…」

 愛香が体重をかけて首をキめ続けるが、まもりが心配そうにのぞき込む。

「これくらいなら死なないから大丈夫よ」
「はあ、なんかすごい頑丈ですよね………」

 手足が痙攣しているトゥアールを心配そうに見るまもりだったが、愛香は平然と言い放つと、ようやく技を解いた。

「それじゃあパーティーの準備を」
「リンディさんがアースラから色々提供してくれるそうですし」
「話の分かる人よね〜、とても艦長には見えないけど」
「まあ魔法少女の世界ですし、色々違うんでしょう」
「ま、よその事言える面子じゃないしね」

 床の上で完全に落ちているトゥアールを放置し、二人はパーティー準備へと向かう。

「ようし、こいつはそっちに」
「やけにパーティーグッズが充実してるな」
「あれこれ持ってくる子がいた物で」
「ツリーにする木を斬ってきたぞ」
「どこに飾るんですか、そんなデカいの」
「いっそ外に置いて適当に飾れば」
「このサイズに間に合うかな…」

 それぞれが色々な物を持ち寄り、とりのタウンの一角にクリスマスパーティーの準備が着々と進められていた。

「ケーキは?」
「今アースラの厨房で調理中、さすがに設備がいいね」
「電力が足りなくて何人か自転車発電してるけど………」
「そう言えばツリーの電飾の方は?」
「ソーラーバッテリーからなんとか」
「明かりが半分ロウソクなのはむしろ雰囲気ありますね」

 主にエネルギー系の問題を少しはらみつつ、皆が嬉々として準備を進めていく。
 やがて料理やケーキが持ち寄られ、パーティーが開始される。

「それでは、皆さんの今後の協力を兼ねて」
「メリークリスマス!」
『メリークリスマス!』

 音頭を取る薫子とリンディが開始を告げると、各所で一斉にクラッカーが鳴る。

「どこでもお祭り好きの人間はいる物だな」
「ウチは艦長が一番こういうのに乗り気かもしれないが………」

 ジュース片手の皐月に、同じくジュース片手のクロノが苦笑する。

「どれ、場を盛り上げてくるか」
「何をする気だ」

 何故か愛刀片手の皐月にクロノは胡乱な視線を向けるが、その後皐月は見事な居合抜き芸を披露し、確かに場は盛り上がる。
 そこからなし崩しに皆が歌やダンスなどを披露し始め、パーティーは更なる盛り上がりを見せていく。

「それではつぎは私達が歌いま〜す♪」

 なのはが中心となって、どこかたじろいでいるフェイト、ノリノリのはやてと引っ張られてきたヴィータが四人でアニメソングなぞ歌っているのを見ながら、復活したトゥアールがどこかから持ってきてカメラで激写している。

「ちっ、キメが甘かったようね………」
「まあ、写真くらいいいんじゃねえか?」

 舌打ちする愛香に、流子が少し引きつった笑みを浮かべるが、明かに鼻息が荒くなっているトゥアールの様子に前言を撤回すべきか迷う。

「ハメを外さないようにね………」
「アレは常時はずれてるから、私が引きずり戻してるんです」

 薫子も苦言を述べるが、愛香はそぞろ止めに入るべく、拳を鳴らす。

「次はこのミニスカサンタツインテールバージョンを…」
「ふがぁっ!」

 小学生に着せるにはアレな衣装をトゥアールが取り出した所で、愛香の体がトゥアールの足元を潜り抜けつつ足を払って転倒させ、更にそこで足を絡めながら自らの体を起こし、全体重を乗せた頭突きをトゥアールの延髄に叩き込む。

「ふぅ………」
「あの、その人大丈夫ですか?」
「あ、いつもの事だから気にしないで。もしこれが妙な事言ってきたら私に言うように」

 あまりにバイオレンスな対処に思わずなのはが心配するが、愛香は平然と言い放ちながら注意を促す。

「あんなすごい技、お父さんもお兄さんも使わないような………」
「あ、道場か何か? 愛香も爺さんから後継者になってほしいって言われてんだけどさ」

 なのはが唖然とする中、総二が説明するが、今度はトゥアールはぴくりとも動かない。

「おい、やり過ぎたんじゃ…」
「おかしいわね、あれくらいじゃ死なないはず………」
「うう………せめてこれを………」

 最後の力を振り絞り、トゥアールがウサ耳バンドと犬耳バンドを取り出した所で、愛香がトゥアールにのしかかるようにして両足でトゥアールの体をロック、両わき腹に手刀を突き刺そうとした所でさすがに総二が止める。

「待て愛香! これ以上はR指定だ!」
「そうね、あの子達を向こう向かせてて。X、いやZ指定になるから」
「スト〜ップ! 何する気だ!」

 流子も一緒になって止めに入り、愛香を引きはがした所で他の者達がトゥアールを簀巻きにしながらなのは達から遠ざける。

「随分楽しんでるみたいね」
「まあ、騒ぐ余力があるのはいい事かもしれないけれど………」

 リンディがその様を何かほほえましく見守り、薫子が呆れ果てる。

「それじゃあ、最後に聖夜を飾りま〜す」

 なのはがそう宣言すると、何故かその手にレイジングハートが握られる。

「じゃあ大きいの頼むわ」
「まかせてはやてちゃん。レイジングハート!」
『stand by』

 はやてにうながされ、なのはがレイジングハートを空に向けて構えると、ベルカ式カートリッジがリロードされる。

「メリークリスマス!!」

 そして空に向けて特大の攻撃魔法が放たれ、上空で大きな花火となって飛び散る。
 それを見た者達の半数は思わずぽかんとし、リンディは頭を抱え込む。

「中々派手な閉めでいいじゃないか」
「あいつらも大概だな………」

 楽しげに笑う皐月に、流子は唖然としてはしゃいでいるなのは達を見る。
 なお、真似しようとしていた者達を仲間達が止めるというなんともグダグダな終わり方をする事となった………



A 真クロス編

「ここは………」
「気をつけろ少年」

 花柄の制服をまとった細身の少年と、青い神のメカニックな姿をした男が突如として自分達が出現した場所に警戒する。

「こいつらか新顔は」
「なんだ、ロボかこいつ?」

 そこにいた延髄部に角の生えた悪魔と片腕が義手の男に、二人は一気に警戒を高め、その手が重なったかと思った瞬間、そこに青い体躯を持った長髪の少年が現れる。

「うお、合体!?」
「中々面白い特技持ってるな」

 その様に修二と八雲は驚く。

「ナホビノと言われてる者だ。君達は?」
「オレはここじゃ人修羅って言われてる」
「ただのデビルサマナーだ」
「私達をここに呼んだ理由は?」
「いや、ちと手が足りなくなってな。この通りに」
「つう訳でどうにか人手を増やせないかと思って…」

 ナホビノは二人の説明に、自分の足元にある魔法陣と真5V攻略本を見つける。

「何が起きている」
「まあ毎回恒例なんだが」
「我らこれよりカディシットーを結成する!」
「今こそ幸せを見せびらかすカップル達に復讐を!」
「大いなる母の力の元に!」
「カップルを撲滅よ!」

 目の縁に炎のような文様が描かれ、額に〈しっと〉と刻まれたマスクを被っている四人組が、己達の力で呼び出したらしい邪龍 ティアマト(※圧倒的マガツヒ不足で小型犬サイズ)の力を使い、完全なる私怨を果たそうとする。
 ミニティアマトが口から水鉄砲クラスのブレスを吐き、ナホビノはそのあまりのしょぼさに無言になる。

「他の連中が呆れて無視しててな」
「オレも無視したいんだが、放置するのも問題あってな」
「………確かに」
「取り合えず、適当にノせばいいから」
「あの変な武装つけた女は一番注意な」
「了承した」

 注意事項を聞いたナホビノはその手から光刃を生成し、それを見た修二は拳に魔力を込め、八雲はGUMPを構える。

「じゃ、やるか」

 ここに聖夜を静かに過ごせない者達による、ものすごくどうでもいい戦いが幕開いた………

Merry Christmas!!






感想、その他あればお願いします。


小説トップへ
INDEX


Copyright(c) 2004 all rights reserved.