第2章   迫りくる恐怖


BIOHAZARD
DEEPOCEAN



第2章   迫りくる恐怖



アレン達は狭い路地を抜けると島の中心部へと繋がる大通りを見つめる。
中心部にはホテルやショッピングモール、警察署や病院など何でもそろっているこの島唯一の場所だ。

「ここからだと中心部まで2kmはあるな・・・・・」
「2kmぐらいだったら楽勝だろ?」
「いや、こっちには武器も弾薬も少ないんだ。ラクには行けないだろう」
「でも、行くしかない」

そう言うとおもむろに前へと進むアレンに全員があとを追う。
通りは燃え広がる車や住宅に突っ込んで大破した車、それに巻き込まれた人間の死体、ゾンビにやられたのであろう体中に食いちぎられた跡がある女の死体、さらに弾がなくなりスライドが後退したままのUSPハンドガンを握り締めて絶命している警官の死体までもある。

「おいおい・・・警官まで死んでるんだぜ。本当に大丈夫なのかよ」

ダンが呟くとアレン達はできるだけ大破した車や死体を避けながら進もうと死体の横を通ったその時、突然死んだと思っていた死体が動き出しマイクの足首を掴む。

「うおっ!た、助けてくれ!」
「コイツ!離しやがれ!」

ジャックがマイクの足首を掴んできた死体の胴体に向けMP5KA4のトリガーを引き
続け弾丸を発射した。
弾丸を食らった死体は力が緩みダンの足首を離しその隙にマイクが離れ尻餅をつく。
だが、死体は這いずり状態になりながらゆっくりとジャック達の方向へ近寄る。

「くっ・・・・」

ジャックが再び銃口を死体に向けるがそれをアレンが手で止めM92FベレッタSを死体の頭部に向け発砲する。
発射された9mmパラベラム弾は死体の頭部に見事命中し貫き、死体は痙攣しながら動かなくなった。

「やっぱり・・・・映画と同じだ・・・」
「え?」
「ゾンビ映画だったら人間が死んだら蘇ってゾンビになるし、しかもゾンビは頭にダメージを与えられると死ぬってところも映画とまったく同じ」
「それって一つは死んだ人間はゾンビになって蘇るってことともう一つはコイツらの弱点は頭ってことか?」

ジャックがアレンに問うとアレンは静かにうなずく。

「大丈夫?」

後ろでエミリーとダンがマイクの足を見て語りかけ、ダンの足からは死体に引っかかれたのか引っかき傷があり線上に血がにじみ出ていた。
心配そうにアレンとジャックが傷を覗き込むように見て語りかける。

「本当に大丈夫か?」
「ああ・・・少しズキズキするけど大丈夫・・・」

そう言うとマイクはダンの手につかまり立ち上がると何度かジャンプをして状態を自分の足の確かめる。

「とりあえず、この先にある薬屋で適当に治療道具を探そう。マイクの傷も気になるし」
「そうだな」
「だったら、行きましょう」

アレンはM92ベレッタにセフティーをかけるとゆっくりと警戒しながら前へ進み、ダ
ン、エミリー、マイクも少し身をかがめながら歩き最後にジャックがMP5KA4を左右に向けながら進む。
いつもなら島の通りからは島の中心部にあるビルの明かりが綺麗に見え最高の光景だが、今は変わり果て中心部からは何かが燃えその煙が立ちこめまるでこの世の終わりのようにも思えた。変わり果てた中心部の通りを歩き目の前に馴染みの薬屋が見えそれに向かい、ゆっくりと警戒しながら歩く。
薬屋のドアの前まで来るとドアノブに手をかけるがガチャガチャと音を立てるだけで鍵が掛かっているのか開かなかった。

「駄目か・・・・・」
「どうする?」

ダンが尋ねるとアレンが全員を1歩さがらせるとM92FベレッタSを構えドアノブに照
準あわせトリガー引いた。
9mm弾はドアノブを貫通し壊れるとアレンはドアを蹴りその衝撃でドアははずれ倒れた。

「・・・・・・・・・・・・」
「どうした?早く中に」
「え、ああ・・わかった」

そう言うと4人は大破して倒れたドアを踏みつけ中に入る。そして、ダンがマイクとエミ
リージャック達にしか聞こえない声で問いかけた。

「なあ?アレン家を出てから性格変わってねぇ?」
「そうだな・・・・・なんか雰囲気違うよな・・・・」
「前にテレビで見たんだけど極度の緊張状態や興奮状態になると冷静ながらも人が変わったようになるって聞いたことがあるぞ」
「ふ〜ん」
「そういえばアレン、レポートの発表のときアイツだけかなり緊張してたよな」
「まあ、そのうち元に戻るだろう」

4人はアレンのほうを見て言った。
アレンは棚に並べられた薬品や薬を手に持ち眺めそれをまた元の位置に戻す。
薬屋だけあってここには治療に困らない量の薬や包帯がある。
そして、包帯とガーゼ、ピンセット、消毒液、アンブレラ社製の救急スプレーを取り出しマイクの元に歩く。

「これでなんとかなるだろう」
「俺が私がやるわ」

エミリーはそう言うとガーゼをピンセットで摘み傷に当て血をふき取りそのあと消毒液をガーゼにしみこませ軽く当てる。マイクの顔には苦痛の表情ができるがエミリーはお構いなく救急スプレーを吹きかけ足に包帯を巻いていく。

「これでよし・・・・・・・」
「はあ・・・・荒療治かよ・・・・もっとやさしく・・・」
「私はジャック以外の人には優しくないんで」
(おいおい、俺にもやさしくないだろ・・・・荷物持たせたり・・・・)

ジャックはあえて口には出さず心の中で呟き万が一怒らせて手に持っているピンセットで
目を摘まれるかも知れない・・・・そう思うと身震いする。

「さて、治療もすんだし。まずどこに行く?」
「そうだな・・・とにかく警察署でも行くか」
「警察署だったら安全だな」
「だったら早く行こうぜ」

そう言うと5人は店をあとにし警察署へ向かった。
アレン達は荒れ果てた通りを歩きできるだけ足音を立てず手に汗を握り異常なまでに心臓が動いているのを深呼吸しながら落ち着かせながら進んでいると目の前にこの島で一番大きいデパートが見え始めていた。
外見は白く横に大きな看板に赤い文字で「mall depart」(訳 モールデパート)と書かれた看板の下に多くの扉がつけられていた。
その手前は駐車場になっているが今は車がほとんど止まっていない。

「なあ・・・あそこから通っていけば安全じゃねえのか?」
「確かにな。どうする?あそこから行くか?」
「いいんじゃない?」
「俺は賛成」
「OK」
「じゃあ、決まりだな」

5人の足並みはゆっくりとデパートのドアに向かいながら自然と銃を構える。
ようやく正面の扉まで近づくとジャックが息を呑みながらゆっくりとドアを開ける。
5人はすばやくデパートの中に入ると急いで扉を閉める。扉の方向を見ていたアレン達だったがすると急にマイクの後頭部に細い筒のようなものが突きつけられマイクはそれが銃器類だと感じ震えながら手を上げる。
その行動に気づいて4人が一斉に後ろに振り向くとそこには銃で武装した男3人にうちの1人がマグナムハンドガン デザートイーグルをマイクに突きつけていた。
そのときから全員が動くことさえ出来ずその場で固まったようにじっとしながら男を見ていた。
すると後ろでリボルバーM66を持っていた眼鏡をかけエリート社員みたいな男がデザートイーグルを持った男に近づき耳元で静かに話しをするとデザートイーグルを持った男が静かに銃を下ろし声をかけた。

「すまなかった・・・・・てっきり化け物が入ってきたのかと・・・・・」

マイクは数歩後ろに下がるとアレンの元に戻る。

「いや、いいんだ・・・・」
「それよりなんでこんな事態になっているのか説明してくれよ!」
ンが必死に訴えるように声を上げるが眼鏡をかけた男は静かに首を横に振りズレた眼鏡
を掛けなおした。

「僕達も分からないんだ・・・警察もかなり苦戦しているようだけどね」

するとその後ろでUS M1897ショットガンを持った男がショットガンを肩に担ぐように持ちながら声を出した。

「とにかく、奥に何人か人がいる・・・そこに集まろう」
「え!?他に人がいるんですか?」
「ああ、ここに逃げてきた人がいっぱいいるんだ。この武器も向こうの鉄砲店から持って
きたんだよ」
「へ〜」
「とにかく向こうに行こうぜ。話はそれからだ」

男達はそのまま銃を握り締めながら奥へと歩いていくとアレン達も後についていく。
するとエミリーが4人にしか聞こえない声で言った。

「ねえ、これなら何とか助かるんじゃない?」
「ああ、そうだな・・・・」
エミリーの問いにアレンが少し不安そうな感じで言葉を返しながら歩いていった。


アレン達は男の案内で建物内の広い空間にある噴水のところまで来ていた。
その噴水の囲ってある大理石の上に何人か座っている。
老人と子供連れの女性と男の子、警察の制服を着ているところから警察官と作業服を着た男性だった。
警官が立ち上がり男のところまで歩きながら声をかけた。

「どうだ、様子は」
「外には化け物がいないようだ・・・それと生存者がいたよ」
「・・・・・・君達は?」

警官がアレン達を覗き込むように見るとマイクが落ち着いて説明する。

「僕達はコープス高校の生徒です・・・」
「コープスか・・・・・・・・あ、自己紹介がまだだったな。私はフィリップ・モーリス巡査だ。仲間と通りの確保をしていたんだが化け物にやられて私だけここに逃げてきた」
「そうなんですか・・・・あ、僕はマイク・ハントです。父と母はアンブレラ社で働いています。ほら皆も自己紹介」
「俺はジャック・ネボルト。高校ではアメフト部のキャプテンを務めている」
「・・・・・・・アレン・ノットです」
「僕はダン・ホールド。父は港の停泊場で働いています」
「私はエミリー・カーター。よろしく」
「カーター!?あの市長の・・・」
「そうですが・・・」
「まさか、市長の娘さんと会えるとは・・・・・」

フィリップは改まったように頭を下げる。

「あの〜私のパパ・・・どうしているか知っていますか?」
「・・・君のお父さんならたぶん真っ先に警察に保護されているから大丈夫だと思うけど」
「よ、よかった・・・・・・」

エミリーは脱力したように安堵の声を出す。
すると後ろにいた男が前に出ると話しかけてきた。

「おいおい、僕達を忘れているじゃないか。僕はゲイツ・メナード。広告企業の会社員だ
よ」
「俺はオースティン・ボルド。建築士だ」
「私はサム・アイザック・・・プログラム関係の仕事についている」

眼鏡をかけリボルバーM66を持ったゲイツは静かにアレン達に手を差し出すと短く握手をする。
デザートイーグルを持ったオースティンとUS M1897ショットガンを持ったサムも同様のしぐさをする。
オースティンは握手をしたあとその場を離れアレン達が向いている方向にある行った。

「で、これからどうするんですか?」
「・・・さっきもここにいる人たちで相談していたんだがフィリップ巡査の話によると警
察署と君達の通っているコープス高校が一時避難所になっているらしい。僕達も警察署に行こうとしたんだが・・・・」
「だが?」
「化け物の大群が通りを埋め尽くしていた。通ることは不可能だったよ」
「そこで僕達は・・・・・・・・」

ゲイツは発言の途中で何かの走ってくる気配を感じ振り向く。それは向こうの通路から
オースティンが全力で走ってくる気配でほっと息をつくがオースティンの様子が尋常ではない。
彼は噴水に到着すると息を整えながら言った。

「き、来たぞ!化け物の大群だ!」

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