第十四章 その後


人と怪物の狭間で



第十四章 その後


マイクの持っていた通信機を使い、ヘリを呼んで研究所へと戻った明彦は白岩玲子と話していた。

「明彦君、本当にいいのね」
「決めたことですから」
「あなたは変身する度に寿命を縮めるの、メンテナンスがないと短い寿命がもっと短くなるのよ」
「構いません、変身しなければいいだけのことですから」
「どれだけ長くても四十代までしか生きられないわ」
「それだけ生きられればじゅうぶんです」
「これ以上言っても無駄なようね、上にはうまく報告するから楽しみにね」
「ありがとう、玲子さん」
「弟のお願いを聞けない姉なんていないわよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「早く報告書を出した方がいいんじゃない?待ってるでしょ?」
「そうだった、じゃあ、お願いしますよ」

明彦が出て行き静かになった部屋で一人佇む玲子。

「初めてお姉ちゃんて呼んでくれたわね・・・・・ありがとう」

彼女以外誰もいない部屋で一人机に顔を伏せて泣き出していた。

白岩玲子の研究室を離れ、作戦報告書を提出するために司令室へ歩く明彦、
司令室の前に来て扉をノックすると「入れ」との声が聞こえてくる、
中へ入ると研究所の所長が待っていた。

「斉藤明彦、ただいま帰還しました、これが今回の作戦報告書です」
「任務はどうだったのだ?」
「あそこの研究所でも自分と同様の物が作られていたらしく、その個体と交戦し撃破した次第です」
「白岩の方から君の残り少ない余生を自由に過ごさせてほしいとの嘆願書と診断書が来てるのだが、
これには変身できる回数は残り一回か二回と書かれているな」
「それだけしか変身できないなら余生を人として過ごしたいと思い、博士にそのことを伝えました」
「君の体自体がアンブレラの機密の一つなのだが私も人間の一人だ、あまり自由を奪いたくはない、
すぐにはできないが私からも上に陳情してみよう」
「ありがとうございます、それでは失礼します」

部屋から出るといつものようにBOWの製造プラントへ行き、
調整槽の中へ入って体のメンテナンスを受ける明彦だった。



事件から数年後のある日

石碑の前に立つ明彦と明菜、そしてマイクと麗の四人、
あれからマイクはUBCSをやめ明彦も自由の身となり、
四人でどこかへ出かけたりなどの交流を続けていた。
そして年に一回のこの日、バイオハザードが発生し、
汚染の除去のため数時間にも及ぶ爆撃が街を完全に焼き尽くして更地にした日、
犠牲になった人々を弔うためとこのような犠牲が二度と発生しないように、
との願いが込められた石碑の前へ四人で集まることにしていたのだ。
夕日に照らされた石碑へ花を置いて四人で黙祷を捧げる、
その後は再建された町に入りいつものレストランで食事をする、
最後は明彦が蜘蛛型タイラントを倒した場所で話すということを続けていた。

いつものように話を続けていたら急に「私子供出来たんだ」と麗が話す、
それにビックリした明菜は「予定日はいつ?」と嬉しそうな顔で聞き返した。

「三ヶ月だから早くても半年後かな?」
「生まれたら一番に見せてよ、それで誰の子かな?」
「聞かなくてもわかるでしょ?」と言って麗はマイクの方を向いた。
「ビクッ!」と体が反応したマイクはあさっての方向を向きながらごまかしていた、
それを何も言わずに見ていた明彦だが、
「果たして自分には子供ができるのだろうか?」との疑問を持っていた。
一応生殖機能は残されたままだが遺伝子レベルでの改造を施されていて、
細胞が改造の影響を受けていると仮定する、
それならば「自分の種が発芽する可能性はあるのだろうか?」との疑問が沸いてきた、
もし発芽しないのなら明菜にとても悲しい思いをさせてしまう、
彼女にはまだこのことを言ってない、いつか言わなければならないことの一つだ。
しかし今は麗にできたマイクとの子供を祝う気持ちを優先した、
そしてこの子には自分たちのような悲しい未来が訪れることなく、
幸せな未来が待っていることを願うのみだった。



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