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超駄文録 特別休憩施設内カウンターバー『ヴェスパー』

若い女性バーテンダーが寡黙に料理を作っている。
それを見るともなしに、一人の女性がカウンター席の端で静かにグラスを傾けていた。

?「隣いいかしら?」

女性が声をかけられた側を見ると、スーツ姿のキャサリンがにこやかに微笑んでいた。

?「構わないわよ」

そっけない返答に窮する事も無くキャサリンは隣に席をおろす。
バーテンダーが席につくやいなや、キャサリンの前にグラスと小皿を差し出す。

キャサリン「ありがと」

バーテンダーは静かに一礼すると、また料理に戻る。

?「常連ね。よく来るの?」
キャサリン「まだ2度目。私はこれでしか飲まないから」

そういいながら小皿に盛られたビターチョコレートを口に運ぶ。
噛まずに口で解け始めるのに合わせ、グラスのブランデーを少量だけ含む。
キャサリンの浮かべる幸せげな表情に、先に席についていた女性も釣られるように微笑する。

キャサリン「いいの?こんな所でゆっくりしていて?」

その問いに女性は苦笑。

キャサリン「娘さんが泣いてるわよ」
?「乗り越えられるわ。あの子なら」

女性……インファは静かに紹興酒のグラスを開ける。
それに合わせてバーテンダーがグラスに次を注ぐ。

キャサリン「ずいぶん信用してるのね」
インファ「私とあの人の娘だから」
キャサリン「それってノロケ?」

二人の女性はお互いに視線を交わした後に互いのグラスを合わせる。

キャサリン「あなたの娘に乾杯」
インファ「あなたの苦労している部下に乾杯」

キャサリンがわずかに眉をひそめた時にカウンターに別な2人が着く。

シェリー「ずいぶんと珍しい取り合わせだこと」
ミリィ「さながら女傑集合って所ね」
キャサリン「誰が女傑よ?!」

そのやり取りにインファは口元を隠しながら、声を抑えつつ笑う。
キャサリンがそんなインファと後から来た2人を一瞥した後に、チョコレートをもう一枚口に放り込み、グラスを一気に傾ける。

シェリー「マスター、夜食頂戴。頼んでたやつ」
ミリィ「私も」

相変わらず寡黙なバーテンダーがシェリーの前にビーフサンドイッチとウイスキーのコーラ割を、ミリィの前におにぎりセットと冷酒を置く。

シェリー「来た来た♪」

自分の前に置かれたグラスをシェリーは一気に開ける。
それを見ていたミリィが、今度は眉をひそめる。

ミリィ「空腹に酒は体に悪いわよ」
シェリー「大丈夫、まだ内蔵系は20代のままだし。旦那子供の居ない酒もひさしぶりだしね」

インファとミリィの間に微妙な空気が流れる。
キャサリンはそ知らぬ振りでグラスを傾ける。
バーテンダーは手早く次のグラスをシェリーの前に置く。

ミリィ「キャサリン、そ知らぬ振りが出来るのも今の内だけよ」

一瞬だけキャサリンの手が止まるが、何も無かったかのように最後のチョコを口に運ぶ。

ミリィ「息子の事、狙ってたんでしょ。何時までも上司と部下じゃ、そっちの娘さんに持ってかれるわよ」
キャサリン「もうその気は無いわよ。柄じゃないし」
シェリー「家の娘じゃ無理なの?次章あたりで色々頑張っちゃうし」

瞬く間に皿の半分を片付けたシェリーに、他3人の視線が集まる。

キャサリン「私は職場恋愛にとやかく言うつもりは無いけど、さすがに性犯罪者を出す気は無いわよ」
インファ「リンルゥも少し色気には遠かったからね、けどローティーンと勝負ってのもどうかしら?」
ミリィ「………そういえばスミスと夢ちゃんも、下手したら犯罪っぽかったわね」
バーテンダー「作者の趣味でしょう」

最後の一言に、全員の視線が今まで一言も発してなかったバーテンダーに向かう。
が、当人は何もなかったようにグラスを磨いている。

シェリー「ま、当人同士で決着つけるでしょう」
インファ「そうね」
ミリィ「どうなっても恨みっこなしで」
キャサリン「その通りね」

誰とも無く笑みがこぼれる。そして互いのグラスが高く掲げられる。

4人『乾杯!』

互いがグラスを傾ける中インファが自分のグラスを空にすると、おもむろに席を立つ。

インファ「さて、それでは私はもう行かないと」
キャサリン「会っていかないの?」

席を立ったインファに背中越しに欠けられた言葉に、一瞬彼女の足が止まる。

インファ「大丈夫よ、きっと又会えるから」

それだけ言い残して、インファは去っていく。

ミリィ・シェリー「貴女の娘の事は任せておいて!」

その言葉に、小さく手を振って答えた後、その姿は見えなくなった。
少し静かになったカウンターに、誰かのグラスの氷が溶けてグラスに当たる音が響く。

ミリィ「キャサリン、さっきの言葉だけど」

手にしたお握りを飲み込んでから、ミリィは視線をキャサリンに向ける。

ミリィ「貴方、『誰に』とも言わなかったわね?」
キャサリン「それが?」
ミリィ「あの子の父親の事、知っていて言ったんじゃないの?」

それを聞いたシェリーがサンドイッチを喉に詰まらせる。

キャサリン「さぁね?」

意地の悪い笑みで答える彼女に、シェリーの視線が厳しくなる。

ミリィ「居るのね?すぐ側に」

ミリィの言葉に、何とかサンドイッチを飲み込んだシェリーが冷や汗をかきはじめる。

キャサリン「ヒ・ミ・ツ」

わざとらしい態度でそれだけ告げたキャサリンが、席を立っていった。
憮然とした表情でそれを見送ったミリィが、今度はその視線をシェリーに向ける。

ミリィ「シェリー、貴方もなんで今の話題に挙動不審なのかしら?」

シェリーの顔に膨大な量の冷や汗が流れ落ちる。

シェリー「サァ、ワタシナンノコトダカワカラナイワ」
ミリィ「あからまに口調が怪しいわよ」

ミリィの視線に耐え切れなくなったシェリーは、皿の上の最後のサンドイッチを掴むと、脱兎のごとく逃げ出した。

ミリィ「あ!待ちなさい!」

自分の皿のおにぎりが、まだ半分残っているのに躊躇ったミリィが皿ごとそれを手にして、シェリーを追いかける。

ミリィ「ごめんなさい、後でお皿は返すから」

2人の姿は瞬く間に見えなくなった。
それを視線で追っていたバーテンダーが、深いため息をつく。

バーテンダー「あー、やっと怖い人達が帰ってくれたわ」

今までと態度と表情を一変させたバーテンダーが、さも疲れたかのように
肩を回したり、首を回す。

バーテンダー「私、こんな事のためにADDLから出向してきた筈じゃないのにー!みんなして嫌がるから、こんな目に会うんだ。後でボスに抗議してやるー!!」

文句を叫びながら、後片付けをするバーテンダー………正確には作業用の試験用ボディに入ったサポートAI『TINA』が皿やグラスを流し台に放り込む。

『TINA』「それでは皆さん、BIO続編は作者が鋭意執筆中です。春までにアップ出来るでしょう。物語は激動の後半部へと突入!私も頑張っちゃいますよー♪」

片付けの手を休めずに、にこやかな笑みで告知する『TINA』がインファの席だった所に、一枚のカードがあるのを見つける。

『TINA』「何これ?えーと『4人分の請求はすべてダークボーイに  by兄』」
ダークボーイ「なぜぇぇぇ?!」
『TINA』「あーはいはい、今回は出番ないですから。メモリアルカウント思い浮かばなかった彼方の責任ですから」
ダークボーイ「ちょっと、待っ…………」

わめくダークボーイを『TINA』がどこかに追いやっていく。
誰も居なくなったカウンターで、いきなり電話が鳴り出し誰も受話器を取らないのに通話状態になる。

ラン「次回こそは、あのオバサンに負けないわよ」
??「あ、次回も出番ないって」
ラン「何で!?」
??「今まで最大の戦闘シーンを書くため、前章がいるらしい」
ジン「そうだね、次は皆で行くんだし」
??「皆そろっての晴れ舞台。派手にかますわよ」
??「我々は目的を達成する。それだけで充分だろう」
ラン「相変わらず嫌な自信家ねー」
ジン「仕方ないさ」
4人『それでは次章にて!』

電話は唐突に切れて、今度こそ静かになった………と思ったら直ぐに又鳴りはじめ、今度は留守電に繋がる。

シェリー「あ、マスター?悪いんだけどクラブハウス・サンドイッチを研究室まで出前よろしくね。あ、やばいミリィ来た」
ミリィ「待ちなさい。シェリー」

唐突に切れる電話。
今度こそ本当に静かになった。




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