PART15 THREAD RESPONSE


真・女神転生クロス

PART15 THREAD RESPONSE




「ヨスガがアサクサに侵攻してる!?」
「間違いない。この目で確認してきた。恐ろしい数だった………」

 探索から戻ってきたばかりの2チームの情報交換で美鶴の口から語られた情報に、修二が愕然とした。

「やばい! アサクサにはマネカタ達の集落があるんだ!」
「狙いはそこね、ただあの数は………」
「アサクサの奥、ミフナシロにはマネカタ達が己のコトワリを開くために集めたマガツヒが貯蔵されてるわ。それを強奪し、守護を召喚するのが目的でしょうね」
「こうしちゃいられねえ! オレ、アサクサに行ってくる!」
「ちょっと待ちな」

 レイホゥと裕子が情報を分析する中、修二が慌てて向かおうとするのを、キョウジが首の角を引っつかんで止める。

「おのるわ!?」
「一遍落ち着け。手前一人行った所で何になる?」
「だけどよ!」
「500を超えるかもしれない大軍勢だ。対策を検討するのが先だろう。今全員に召集をかけている」
「来てくれんのか?」
「弱者を力で蹂躙するような者達を容認する訳にはいかん」
「でも美鶴先輩、あの数ですよ………」
「今ここにいる者達全員で闘えば、あるいは………」
「果たして、そううまくいくと思うか?」
「なに?」

 ダンテの言葉に、美鶴は疑問符を浮かべる。
 その意味を、キョウジとレイホゥだけは悟っていた。



「最低500体の悪魔の大軍勢!?!?」
「私達が確認しただけではな。別働隊の有無までは確認していない」
「っていうか、あんた等その格好なによ………」

 安全ヘルメットに白のタンクトップ、ニッカポッカズボンに地下足袋、首にタオルというどこから用意したのか筋金入りの土方スタイルの工事班の面々(挙句にヤカンからお茶回し飲み中)に現状を報告した美鶴とゆかりだったが、それを聞いたマネカタ達が騒ぎ始める。

「大変! 大変だ!」
「アサクサには仲間がたくさんいる!」
「フトミミさんもいる!」
「助けないと! 助けないと!」
「落ち着いてほしい。今から対策を検討する予定だ。悪いようにはしない」
「いいのか、そんな事を断言して」
「どういう意味だ」
「すぐに分かる」

 ロアルドもまた、これから検討すべき内容を悟っていた。



「ヨスガの侵攻か………」
「しかもかなりの大規模。アサクサのマネカタ達では対処は不能か………」

 再び食堂に全員が集まり、もたらされた情報にある者は愕然とし、ある者は深く考え込む。

「早く助けにいかないとやべえ! 力を貸してくれ!」
「私も同意見だ」
「それで本当にいいのか?」

 修二と美鶴が救援を提言する中、八雲が反論を投げかける。

「どういう意味だ? 行きたくないってのか?」
「はっきり言えばそうだ」
「八雲さん………」
「待てよ!」
「助けを求めてる人達、というかマネカタ達がいるのに!」
「だが、助けに行けばオレ達は確実にヨスガに敵と見なされるぜ」
「そ、それはそうかもしれねえけど………」

 キョウジの言葉に、修二がわずかにたじろぐ。

「オレ達はまだこの世界の事をちゃんと理解しちゃいない。それなのに、軽はずみな行動を取ってここで一大勢力を敵に回す事が果たして得策かい?」
「最悪、助けに行って諸共殺されるかもな」
「だからと言って見捨てると言うのか!」
「桐条先輩落ち着いて………」

 キョウジと八雲の意見に、美鶴が真っ向から対立する。
 風花が見かねてなだめるが、それは届きそうにもなかった。

「オレもその二人と同意見だ。ここは、人間のモラルが通用する世界じゃあない。不用意な行動は致命傷になりかねない」
「あんた等全員か?」

 ロアルドの言葉に、修二が重ねて問うとキョウジ、八雲、サーフが同時に首を縦に振った。

「じゃあ頼まねえ! オレだけでも行く!」
「待て、ヨスガのリーダーはお前の友人だと言ってたな」
「そうだ、千晶がリーダーだ………」
「ならば、オレも行こう」
「小次郎が行くなら、私も行くわ」

 小次郎が調整の終わったばかりのハンドヘルドCOMPを腕に巻きつつ立ち上がり、咲もそれに続く。

「私も行こう」
「美鶴先輩が行くなら」
「戦闘リーダーが行かないわけに行かないしね」
「じゃ、じゃあオレも!」
「サポートも必要ですよね」
「コロマルはどうする?」
「ワンワン!」

 ペルソナ使い達も次々立ち上がる。

「完全に物別れね」
「仕方ねえ、しょせん烏合の衆だ。あんたはどうする?」
「そうね………」

 キョウジに言われ、裕子が首を傾げる。
 そこでふと、ある事を口にした。

「そう言えば、マネカタのリーダー、フトミミは予知能力を持っているそうよ」
「予知? どれくらいの?」
「このボルテクス界に起きる事を次々言い当ててるらしいわ。その力で、彼はマネカタを束ねているの」
「預言者ですか………」

 それを聞いたレイホゥとカチーヤが、己のパートナーの方に目配せする。

「ちょっと待てお前ら」
「なんだよ」

 食堂から出て行こうとする面々を八雲が呼び止め、修二が剣呑な目でそちらを睨み返す。

「英草、お前はフトミミの予言を聞いた事は?」
「ある。すげえ役立ったぜ」
「今この状況でも使えると思うか?」
「さあな。だが役に立たないって事は無いと思うぜ」
「じゃあ、役に立たせてもらうか」
「そうだな。未来の情報は一番重要だ。特に今はな」
「やれやれ、最初っからそれ言えばいいのに」
「葛葉も行きます」

 八雲、キョウジ、レイホゥ、カチーヤが立ち上がる。
 それに続いて、ロアルドも立ち上がった。

「現状で我々に協力者は必須だ。マネカタ達の協力無しに、やっていけるとは思えない」
「だってよ。兄貴どうする?」
「………」
「私も行きます!」

 シエロに言われ、サーフが考え込む中、突然別の場所から声が上がる。

「セラ!」
「お、もう大丈夫なのか?」
「はい。この世界をこれ以上おかしくしないために、私に出来る事をしたいんです」

 シエロが歓喜の声を上げ、八雲がそちらを見るとセラは強い意志でそう言った。

「……行こう」

 それを聞いたサーフが、小さく呟いて立ち上がる。

「さて、残るはあんただけか。どうする?」
「もちろん、こいつさ」

 キョウジがダンテに問うと、ダンテはコインを取り出し、それを弾き上げる。
 出た面を見たダンテは、不適に笑って立ち上がった。

「運がいいぜ、少年」
「オレ、くじ運は全然無いけど………」

 修二が頬をかきつつ、苦笑。

「そう言えば、誰か足りないような?」
「そぞろ出て来い、ネミッサ」

 啓人が周囲を見回す中、八雲が食堂の奥にあった多機能コンソールに話し掛ける。
 するといきなりそれに電源が入り、そこにネミッサの姿が現れた。

『あれ〜、みんなしてどしたの?』
「これからアサクサに出撃だ。お前、ここのシステムチェックしろって言っといたのに、サボってやがったか?」
『八雲失礼じゃん! ネミッサだってちゃんとやって……』
「その後ろにあるゲームプログラムはなんだ?」
『あ……いや結構早く終わったから………』
「いいから行くぞ」
『うん分かった!』

 そう言うや否や、突然画面から光る玉が飛び出し、虚空に浮いたかと思うとネミッサの姿になった。

「えええ!?」
「今何したの!?」
「言っただろ、こいつは電霊。コンピューターシステムにダイブできるんだ。昔はそれで色々ひでえ目にあったもんだ」
「すごい、こんな簡単に……私が意識だけでジャンクヤードにダイブするのも苦労したのに………」
「元が違う。気にするな」

 セラもぽかんとする中、ヴィクトルがメアリとアリサを伴って姿を現した。

「行くか」
「そういう事になっちまった」

 ヴィクトルに向かって苦笑するキョウジだったが、そこでメイド姉妹が前に出て頭を下げる。

「申し訳ありませんが、私達はお供できません」
「アイギスの修理がもう少しで終わりそうなの」
「本当!?」
「戦闘に間に合いそうか?」
「そこまではなんとも………」
「ちょっと待っててください! アイギスに会ってきます!」
「私も!」
「オレも!」
「ワンワン!」

 ペルソナ使い達がぞろぞろと向かう中、八雲が一番大事な事を口にした。

「それで、アサクサまでどう行く? 歩きじゃ間に合わねえだろ」
「あ、それなら大丈夫。一発だから」
「一発?」



 業魔殿が融合しているビルの一階部分に、皆が集まり、それを凝視していた。

「何これ?」
「アマラ転輪鼓ってんだ」

 殺風景な部屋に置かれた、三つ足の上に、三段に分けて楔形文字のような物が無数に刻まれたドラム缶のような物体を修二が軽く回す。

「こいつはマガツヒの集まるアマラ経絡のポイントにあってな。アマラ経絡を通って別のポイントに移動できんだ」
「つまり、転移ターミナルという事か」
「ワープ装置って事?」
「こいつが?」

 啓人と順平が間近によってアマラ転輪鼓を回そうとするが、修二がそれを止めさせる。

「下手にいじっと、アマラ経絡のど真ん中に放り出されてマガツヒに飲みこまれっぞ」
「え……」
「ま、マジ?」
「マジ」

 同じように興味深げに近寄っていた者達がその一言で一斉に離れる。

「転移はともかく、この人数だ。使った事ない奴にも使えるか?」
「あ〜、座標設定しなきゃなんねえからオレと一緒に何度か往復して……」
「いや、待て」

 何事かを考えていた八雲が、ふと風花の方を見た。

「山岸、お前の転移能力と同調できないか?」
「え? あの急に言われてもやってみないと………」
「まず、最初に何人か修二と一緒に行って、それからやってみればいい。場合によっちゃ何度も往復する事になるぜ」
「じゃあオレが」
「私も行くわ」
「オレも」
「じゃあこっちに」

 キョウジの提案に小次郎と咲、ダンテが名乗り出、アマラ転輪鼓の前に立つ。

「行くぜ」

 修二が勢いよくアマラ転輪鼓を回すと、それ自体から眩い光が発せられたかと四人の姿がアマラ転輪鼓に吸い込まれて消えた。

「おお、すげえ……」
「ホントにこれでダイジョブなの?」
「大丈夫みたい………大体把握できたから行けます」

 己のペルソナで転移の状況を詳しく調べた風花の宣言に、残った者達もアマラ転輪鼓のそばに近寄る。

「用心して何度か分けて転移した方がいい。往復のノウハウも必要だ」
「最悪こっちにばっくれる時のためにな」
「すでに逃亡の算段か?」
「退路はいつも確保しとくもんだ。死んだら元も子もない」
「逃げる先があれば、だがな………」

 色々と段取りを組むキョウジと八雲の話を聞いたロアルドが、どこか自嘲気味な笑みを浮かべる。

「それじゃ、行きますよ」
「おう、オレも行く」
「一度に何人くらい転移できるんだ?」
「6人、いえこれと併用すれば8〜9人くらいは多分………」
「とりあえず7人くらいで飛んでみろ。アマラ経絡とかに落ちても大丈夫そうなので」
「落ちるの前提かよ………」

 八雲の提案で、八雲、カチーヤ、ネミッサ、啓人、順平、サーフ、ロアルドがアマラ転輪鼓の前に立った。

「じゃあこっちも回すぜ」
「無理なようなら、すぐに止めていいから」
「はいリーダー、じゃあ行きます!」

 風花がペルソナの力で転移を発動させると、アマラ転輪鼓から光が発せられて7人の姿が消えた。
 転移した物の眼には、周囲の光景が引き伸ばされ、そして目まぐるしく変わっていく。
 やがて眩い光と共に視界が落ち着いた。

「……あれ?」
「ここが、アサクサか?」
「どう見ても違うように思えるが………」

 そこは、石畳のような物が敷かれた小さな広間のような空間だった。

「ねえ、ひょっとして失敗?」
「かもな。ここがアマラ経絡か?」
「でも、マガツヒとかの流れなんてないですけど………」

 ネミッサが興味深そうに周囲を見回す中、他の者達も注意深くあたりを探る。
 やがて部屋の中央、木のように樹脂のようにも見える柱に、不規則な形で無数の穴が空いた格子のような物をネミッサが覗き込んだ時だった。

「八雲〜、何か見えるよ」
「何かって何だ?」
「あれ? 確かに何か……」

 他の者達もどやどやとその格子に群がる。
 そこから覗き込んだ先に有ったのは、赤い液体が満たされた上にある、緞帳(厚手のステージ幕)がかかったステージだった。
 皆が覗き込む中、ゆっくりと音を立てて緞帳が上がっていく。
 上がった先、ステージの上には暖炉の付いた書斎のような物と、そこにいる二人の人影が有った。

「いらっしゃい。葛葉、特別課外活動部、エンブリオン」
「オレ達を知ってる?」

 人影の片方、喪服姿の若い女性がこちらの組織名を教えもせずに述べた事に、全員が反応。
 一斉に各々の得物に手をかける。

「君達は何者だ。なぜこちらの事を知っている。ここはどこだ?」

 ロアルドが順番に質問を投げかける。

「我々の事なぞはどうでもいい」

 もう片方の人影、車椅子に腰掛けた白いスーツ姿に杖を持った老人が重厚な声で告げた。

「主は何でも知っているのです。そして、ここはアマラ深界。あなた方の言葉で言えば魔界という事になります」
「へ?」
「魔界、だと?」

 意外な言葉に、八雲とカチーヤは真っ先に反応。
 GUMPと得物を抜いて周辺に向ける。

「安心なさい。ここなら襲われる事は無いわ」
「つまり、あんたはそれだけの力をここで持っているという事か」
「私ではなく、主がです」
「つまり、それって魔王クラス?」

 啓人が呟きながら、召喚器をゆっくりと抜いてこめかみに当てる。

「争う気は無い。ただお前達を見てみたかっただけだ」
「どういう意味だ?」
「ボルテクス界に、予想しえなかった要素が次々と出現しているわ。それを主が一度確かめてみるために、あなた方をここに呼んだの」
「アポも無しとは、随分なVIP様だな」

 老人と喪服の女性に、寸分の油断も見せずに八雲が問いつつ、GUMPを展開させていく。

「予想しえなかった要素と今言ったな? つまり君達はなんらかでボルテクス界の創生に関与しているのか?」
「いや、関与はしていない。要素は与えたがね」

 ロアルドが問う中、サーフが己のアートマをかざす。

「……修二、いや人修羅の事か」
「さすが、独力でマニトゥを静めた者ね。その通りよ」

 喪服の女性の言葉に、八雲はGUMPのエンターキーを押し、剣を抜き放った。

「お前ら、何者だ? あんな存在を生み出せるとしたら………」
「一つ教えておくわ。彼を悪魔にしたのは確かに主だけど、彼自身は己の意思で動いているわ。故に人修羅と彼は呼ばれているの」
「お前達も、異能の力を持ちながら、己の意思でそれを振るっている。アレとどこが違うのかね?」
「……そうだな」

 アートマの力で変身しかけていたサーフが、ゆっくりと変身を解く。

「ボルテクス界は、あなた達の力でこれから大きな変化を迎えるわ。主はそれを見たがっている。さあ、もう行きなさい。仲間が待っているわ」
「待て、まだ聞きたい事が…」

 八雲の言葉の途中で、再度景色が引き伸ばされる。
 そしてその場の景色が遠ざかっていき、やがて先程と似たような殺風景な部屋に辿り付く。

『…ダー、啓人くん! 順平くん! 大丈夫!?』
「あ、ああ風花大丈夫だよ」
「全員無事到着した。心配するな」

 アマラ転輪鼓から響いてくる心配そうな風花の声に、啓人と八雲が答える。

「お、無事に来れたな」
「無事に、かね………」
「? 何かあったのか?」
「少しな」

 何か皆の様子がおかしい事に修二が気付くが、八雲がどう答えるべきか悩む。

「おう、本当に来やがった」
「ハ〜イ、カチーヤちゃんに八雲、無事だった?」

 聞き覚えのある声に、八雲とカチーヤが振り向く。
 そこには、腰まである長髪にサングラス、それに何が入っているか分からない大き目のアタッシュケースを持った、スーツ姿のニヒルな男性と赤く染めた髪をアップでまとめ、タイトなツーピースを着込んだ勝気そうな女性の姿があった。

「パオフゥ!?」
「うららさんも!」
「どうしてここに……って聞くまでもないか」
「多分、似たような状況だろうしな」

 その二人、前に一度仕事で八雲達と行動を共にした事があるパオフゥこと嵯峨 薫、芹沢 うららが互いに苦笑混じりの笑みを交わす。

「知ってる人達なんですか?」
「二人ともオレ達の世界のペルソナ使いだ。……だよな?」
「恐らくはだがな。ま、少しくらい違っても問題はねえだろ」
「その通りだ。ここにいるという事は、これから何が起きるか理解し、協力してくれるという事か?」

 現状でもっとも重要な事をロアルドが切り出す。

「知ってるわ。ヨスガとかいう悪魔の軍勢が攻めてくるんでしょ?」
「正直、いきなりこんな妙な場所に来ちまった事には面食らっちまったが、ここのリーダーに、もう直仲間が来るって言われてな。一応これからの準備はオレ達なりにしておいた」
「リーダーって言うと、フトミミとかいう奴か」
「ああ、お前らをお待ちだぜ。話があるとよ」

 そこで再度アマラ転輪鼓が光り、他の者達も続々と転移してくる。

「ペルソナ使いに悪魔使い、それに見たことねえ力持った連中までよくもまあ雁首そろったモンだぜ」
「とりあえず、フトミミとやらに会って来るか」
「難しい話苦手な人はこっち来て。準備で人手足りなくて〜」
「じゃあ私はそっちの方に」
「私と不破、山岸で行く。他のメンバーは準備を」

 アマラ転輪鼓のある部屋から一歩外へ出ると、そこでは無数のマネカタ達が大慌てでバリケードや塹壕、物見台などの設置をしていた。

「一応準備は進んでるね」
「中止になった文化祭思い出すぜ〜」
「随分と雑な作り方だ。あれではあまり持たない」
「時間が無いから仕方ねえだろうな……」

 口々に勝手な事を言いつつ、パオフゥと修二が先頭に立って一行をアサクサの奥、幾つもの地下通路を抜けた先にある社のような物が立つ場所へと案内した。

「こいつは……」
「ミフナシロ、マネカタ達の聖地だそうだ」

 漂う空気の違いに、皆が落ち着き無く周囲を見回す。
 その時、ミフナシロの奥へと続く扉が開き、そこから結い上げた髪を上へと立て、どこか威厳のような物を漂わせる他とは明らかに違うマネカタが姿を現した。

「よく来てくれたな。力有る者達」
「あんたがマネカタのリーダー、フトミミかい」
「そうだ。皆が来る事は分かっていた」
「なら、こちらの用件も分かっているのか」
「無論だ」

 キョウジとロアルドが前へと進み出ると、フトミミが二人の言葉に頷く。

「ここにもう直、ヨスガの大軍勢が攻めてくる。それをどうにかするために、オレ達はここに来た」
「だが、全員が善意で来ている訳ではない。協力への見返りを求めている者達もいる」
「一つはマネカタの労力、そして私の予言。それで刻々と変貌を続ける世界の情勢を知る。それこそが我々のために闘ってくれる条件なのだろう?」
「なるほど、全てお見通しって訳か……」
「なら時間が無い。そちらの返答は?」
「……最初、このアサクサは滅亡するかもしれない予言が見えていたのだ。だが、君達がこの世界に来ると同時に、私の予言は次々と新しい物へと塗り替えられていく。私にも、この先どうなるかは正確には分からない」
「だけど、これから起きる変貌をあんたなら一早く知る事が出来る。それはなによりも貴重な情報。オレ達が何者にも変えがたい、な」

 フトミミの言葉に、八雲が結論を告げる。

「その通りだな。いいだろう、マネカタ達は今後君達に協力する。私の予言も君達にすぐ伝えよう。その代わり……」
「ここのマネカタ達を護ってやる。交渉成立だ」

 キョウジが手を差し出すと、フトミミがそれを力強く握る。
 強い握手がかわされると、ロアルドが口を開いた。

「すぐに作戦会議に入りたい。まずこの場所の詳細情報を……」
「それならここにあるぜ」

 パオフゥが手持ちのアタッシュケースを開くと、その中からノートPCを取り出し、そこに用意しておいたアサクサのMAPを表示させた。

「準備がいいな」
「戦争やるって時に一番最初に必要なのは情報だからな。集められるだけ集めておいた」
「こっちに転送してくれ。COMP持ってる奴は全員だ」

 キョウジの指示で、八雲と小次郎はCOMPを取り出し、風花も持参したノートPCを広げる。

「あの、オレ達は?」
「暗記しろ」
「え………」
「あ、私が覚えてナビゲートしますから……」
「悪いが、ここはタルタロスじゃない。順次変化する戦場を常時捉えておく必要がある。個人指示にまで回せるか分からないぞ」
「あ〜………」

 八雲の指摘に、啓人が顔を青くする。

「一応、予備用のモバイルが幾つかある。こっちにも入力しておいてやるよ」
「ああ、それならオレも幾つか業魔殿にあるから取ってくるか」
「現状で防衛線を構築するとしたら、こことここか……すぐに人手を回してくれ」
「トラップも用意しておいた方がいいな。資材は用意できるか?」
「我々の配置は?」
「今考える。とりあえず防衛線構築の手伝いを」
「えと、また土方仕事?」

 キョウジ、ロアルド、パオフゥが中心となって作戦を練る中、それぞれのメンバーが大慌てで準備に取り掛かっていった。


「第一次防衛線は雷門前、ただ門つっても門扉なんぞないしな………さてどうするか」
「八雲さんどいてください!」
「この大提灯を媒介に結界を張るから」

 トラップの準備をしていた八雲の背後から、カチーヤと裕子が脚立とスプレーラッカーを手に大提灯へと駆け寄る。

「御魂降り(みたまふり)をかけるから、祝詞の縁取りお願い」
「はい!」
「おっしゃ、塗りは任せとけ!」

 ふとそこで、二人に混じってニットキャップを被ったお調子者そうな青年の姿に八雲は気付く。

「あれ、あんた確かたまきさんの同級生の…」
「稲葉 正男、マークでいいぜ。確かあんたは八雲だったよな」
「あんたも巻き込まれた口か?」
「全員似たようなモンだろ」

 軽口を叩きつつ、本場アメリカで修行していたグラフィティアートの腕前でマークが手早く大提灯に描かれた縁取りにしたがって祝詞を描いていく。

「そいや、たまきや尚也は来てねえのか?」
「たまきさんなら、お子さん出来たので引退しました」
「藤堂はどっか別の所に飛ばされたらしい」
「マジかよ」
「確かに藤堂や周防がいてくれたらな〜。今頃何やってんだか?」
「似たような事じゃねえか?」



シバルバー珠阯レ町 珠阯レ警察署(仮)会議室

「これが上空から見た要塞の概要図だ」

 会議室にすし詰めとなった者達の前、ホワイトボードに張り出された手書きの図を前に、ゴウトが説明を始める。

「城壁に鉄門、櫓まである。見るからに堅牢そうだ」
「外見はジャンクヤードの物と全く同じだな」
「だが中身までそうとは限った事じゃないかと思う」

 ゲイルと克哉警部補の追加意見に、会議室の全員が顔を曇らせる。

「多分、ですが上はダミーだと思います。中枢は地下のシバルバーの方ではないかと………」
「その根拠はなんだ?」

 黒須 淳が手を上げて意見を言うと、ゴウトがそちらを鋭く見つめる。

「シバルバー本体中枢には、思考を具現化する力があるんです。それを利用してこれを具現化させてるんじゃないかと………」
「でも、具現化させちゃった以上は本物だったよね………」
「えらい目にあったぜ、あん時はよ〜」
「しかし放置してはおけない」

 一度そこに侵入したリサ、ミッシェル、達哉の三人のペルソナ使いが顔を見合わせる。

「つまりは、上の要塞と下の中枢、同時に攻略する必要があるという事か」
「ダミーとはいえ、放置しておける存在ではないだろうしね」
「だが、どうやって?」

 アレフ、尚也、克哉署長の問いに、シエロがホワイトボードの前に立って何かを書き込んでいく。

「ジャンクヤードでは、我々エンブリオンと盟約を結んだメリーベルが正面から攻勢を仕掛けている間に、我々が脇から侵入、シタデル上層階を殲滅した」
「七姉妹学園の鳴羅門石の封印は、それの具現化と同時に吹っ飛んだわ。そちらも侵入可能よ」
「だとすれば、正面攻勢、要塞侵入、そして地下侵入の三つに部隊を分けるという事になる」
「侵入部隊は経験のある者達を中心に構成しよう。もう猶予は無い」
「すぐに出撃準備だ!」

 ゴウト、克哉警部補、尚也の三人の号令に、全員が一斉に準備に取り掛かる。

「機動班総員、完全武装で出撃体勢!」
『了解!』
「ありったけのチューインソウル用意しろ!」
「ペルソナカードもだ!」
「通常警察は総員で蓮華台地区を完全封鎖! 仮面党にも同様の件を連絡!」
「部隊編成上がったぞ!」
「急げ! 奴らを絶対に外に出すな!」



「動きがあったようだな」
「確かに、警官達の動きがあわただしい」

 シタデルの最上階、ソリッドのリーダーのミック・ザ・ニックの居室で、双眼鏡を覗いていたエンジェルと神取は、封鎖を強化している警察官達の動きをつぶさに監察していた。

「警察なぞ烏合の衆かと思えば、ここの指揮官はかなり切れる人物のようだ」
「この状況だ、そうでなければ生き残れぬ」

 腕組みしながら下を見回したエンジェルは、階下に蠢く喰奴達を見下ろす。

「ふむ、やはり元データが不安定なバックアップ、しかも入れ物も粗悪だからまるで安定しない」
「だが一応は成功しただろう。ではこちらは任せる」
「いいのか。攻めてくる者達にはお前の知己もいるのだろ?」
「ああ、彼らの力はよく知っている。ならば、またすぐ会うだろう」
「そうか、ではこちらも出迎えの準備をするか」

 階下へと向かう神取を見送りながら、エンジェルは己が胸に刻まれた、アートマをさらけ出した。



「め……命令………出撃………せよ……」

 シャドゥを媒介にデータを上書きされて作られた、不安定に揺らめくコピー喰奴達が下された命令に従い、ぞろぞろとシタデルの正門へと向かう。
 次々と彼らはその姿を悪魔へと変貌させていく中、重々しい音を立てて重厚な正門が開いていく。
 だがそこで、二つの人影が開いた門の外側に待ち構えていた。

「く、喰らえェ!」

 一斉にコピー喰奴達がその人影へと襲い掛かる。
 だが次の瞬間、ボディスーツをまとった鋭い目つきの男が魔剣ヒノカグツチを、マントを羽織った書生姿の男が霊剣陰陽葛葉を繰り出した。
 襲い掛かった者達は、次の瞬間には一刀の元に切り捨てられ、地面へと転がる。

「開ける手間が省けたな」
「ああ」

 先陣を切ったデビルバスター・アレフとデビルサマナー・葛葉 ライドウの背後にXX―1のシルエットと、元エミルン学園ペルソナ使い達が展開し、コピー喰奴達を待ち受けていた。

「じゃあ、派手に行くぞ」
「ああ」

 そう言うと二人の悪魔使いは、COMPのキーボードを叩き、ありったけの管を取り出す。

「戦闘開始だ!」
『おお!』

 尚也の号令と同時に、双方が激突を開始した………



 長く、長く伸びゆく糸の先に、激しい戦いが待ち受ける。
 戦いの先に待ち受けるは、果たして………





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