PART31 BAD TURN(前編)


真・女神転生クロス

PART31 BAD TURN(前編)




「点呼開始!」
「装備確認急げ!」
「出来た班から降下!」

 レッド・スプライト号に集合したメンバー達の前で、レッド・スプライト号のクルー達が中心となって準備が着々と進められていた。

「軍隊連中はこういう時手早くていいな」
「必要な物があったら今の内に申告しておいてくれ。資材班が色々と準備している」

 周囲の光景を感心しながら見ていた八雲の隣で、出撃する機動班の指揮を取る事になった仁也が装備を確認しながら呟く。

「今回のオレらの役目はモグラ叩きだからな。あの量産ゴスロリの気さえ引ければいい」
「相当手ごわいと聞いている。偵察に出たアンソニーはあれからずっとゴスロリ怖いゴスロリ怖いとうなされている」
「そいつ良く今まで生きてたな………」
「悪魔にやたらと好かれるか、思いっきり嫌われるかの二者択一でな。特に女悪魔からは後者の方が多い」
「デビルサマナーに向いてるかどうか分からん奴だ………」
「そう言えば、昨日まで出撃嫌がっていたが、急にやる気になっていたな。何があったか知らないが。ほらあの通りに」

 仁也の指差した先、くだんのアンソニーが何かやたらと嬉々として装備を確認していたが、ふとこちらの姿を見て近寄ってくる。

「よおヒトナリ、オレの方は準備万端だぜ」
「こちらも確認は終わった」

 それを聞きながら、アンソニーは八雲の方をじろじろと見つめる。

「クズノハのコイワってあんたの事か?」
「そうだが?」
「あんたに聞きたい事がある」

 打って変わって何か真剣な顔のアンソニーに、八雲は不穏な空気を感じ取る。

「ネミッサってあんたの元パートナーだよな? 彼女の趣味とか知ってる?」

 夢見るような瞳のアンソニーの言葉に、八雲の肩が片方だけ落ちそうになる。

「………………悪い事は言わない。アレは止めとけ。人生踏み外したくないなら」
「だって、クールで自信家でステキじゃないか」
「あれはただの我侭で傍若無人なだけだ。目を覚ませ」

 八雲がアンソニーの肩を掴んで揺さぶるが、アンソニーの顔は緩んだままだった。

「八雲〜」「八雲さん」

 そこに、当のネミッサとカチーヤが装備を整えた状態で声をかけてくる。

「準備OK〜?」
「こちらはすぐにでも出れます」
「オレも大丈夫だ。他の連中は?」
「課外活動部の人達はもう下に降りてます。突入班の人達が最後に出るそうです」
「現状で最強の面子だからな。冥界ごと滅ぼしてこないといいんだが」
「う〜ん、ネミッサも行っちゃダメ?」
「話がよけいややこしくなる、止めとけ」
「そうだ、危ないから」

 呆れる八雲を押しのけるように、アンソニーがネミッサの前に出るが、そこでネミッサはアンソニーの顔を見、ふとある事を思い出す。

「あれ、アンタも参加すんの?」
「ああ、スナイパーは少ないから、オレの腕の見せ所だ」
「でもアンタ、この間下で鬼女達に袋にされててネミッサ達が助けたじゃん」
「うっ!?」
「ああ、何でもストーカーを返り討ちにしただけとか言われてましたね」
「そ、それはその………」

 ネミッサとカチーヤのダブル突っ込みに、アンソニーが向こうを向いて影を背負う。

「……なあ、こいつっていつもこうなのか?」
「……シュバルツバースでも女悪魔に声かけまくってはフられてよく泣き付かれた」
「なんで生き残ってんだコイツ………」
「降下急げ! 移動に手間がかかる!」
「了解、行くぞアンソニー」
「うう、今度こそかっこいい所を……」

 そこで声がかけられ、沈んでいるアンソニーを引きずるようにして降下用のヘリへと皆が乗り込んでいく。

「今度は弾の心配もしなくていいし、前よりは楽か」
「前の作戦はそんなにひどかったのか?」
「あの量産ゴスロリが出てくるまでは楽だったんだがな………」
「八雲さんがいち早く撤退を言い出さなかったら、危なかったですし」
「似たのがあんないっぱい出てきたらキモいだけじゃん。更に増えてるって噂だし……」
「大丈夫! オレが何とかする!」
「追い回されて逃げ帰ってきたと聞いてんだが……」

 何かと愚痴りながら地表に降下すると、すでにそこには何台ものAPCに作戦参加予定のメンバー達が分乗していた。

「ちと狭いのが難点だが、前よりはマシか」
「あ、小岩さん。やっと出てこれたんですか」
「みんなしてマジでム所行きすんじゃねえかって……」
「妙な噂立てるな、あそこだと現実になるぞ」

 車内を覗き込んだ八雲に、先に乗っていた明彦と順平がものすごく失礼な言葉をかけてくるのに顔をしかめる。

「大丈夫♪ 肉体奉仕で免除されるって噂も流しておいたよ!」
「出元はお前か!」
「あの、あまり皆さん本気にしてませんから……」

 ロクでもない噂を流したネミッサに八雲が怒鳴りつけるが、カチーヤがなんとかたしなめる。

「このチームはこれで全員だな」
「小次郎が突入班だからな。あくまでメインは狙撃によるかく乱、オレ達はその護衛と遅滞戦闘が役割だろ?」

 仁也が確認する中、八雲は車内に用意されてる装備を確かめながら頷く。

「まともには戦うなとキョウジさんから言われてます」
「前回痛い目あったからな。タイマンならなんとかなるかもしれんが、あいつら完全に群体で動いてたしな………」
「それでライフル関係ばかり支給された訳か。ロケット兵器まで用意したが」

 明彦と八雲が前回のメティス達の戦いを思い出して顔をやや青ざめさせる中、仁也が異常とも言える重武装の意味を理解する。

「それでは出発…」
「お待ち下さい」「頼まれてたの、出来たよ〜」

 仁也が後部乗降ハッチを閉めながら出発を言い出そうとした時、それを止めて二人の人造メイドが姿を現す。

「八雲様、ご注文の品です」
「注文通りの仕様にしておいたよ♪」
「お、間に合ったか。サンキュー」

 メアリとアリサが持ってきた、やけに大きなケースを八雲は受け取る。

「それでは私達は別のチームですので」
「アイギスのサポートだよ♪」
「無茶してまたぶっ壊れるなよ。オレがヴィクトルのおっさんに怒られる」
「大丈夫です。出力各所を少し強化しました」
「アイギスと戦闘データ統合もしたし、姉さんと頑張って仲魔も増やした!」
「二人合わせてアイギス一人分になるかどうかって事忘れるなよ?」

 一礼して手を振りながら去っていくメイド姉妹にそこはかとなく不安を覚えながら、ハッチが閉じられ、APCが発車する。

「目的地到着まで一時間半と言った所か」
「軍用の割には早いな。乗り心地も悪くない」
「前は護送車に乗せられて囚人の気分が味わえた……」
「これはこれで前線に向かう軍人のようだがな」
「ようだ、じゃなくて前線に向かっている所だ。君達は軍人ではないが」
「オレなんかはある意味軍人なんてのとは一番縁遠いがな」

 苦笑しつつ、八雲が持ち込まれたケースを開ける。
 皆が興味深く覗き込んだそこには、大型の狙撃銃にも見える、奇妙な機械だった。
 しかも銃身に見える部分の先端には銃口ではなくレンズのようになっており、無数のケーブルが銃身状の部品の各所から伸びている。

「これは一体なんだ? 武器のようにも見えるが………」
「光学兵器じゃないな。バッテリーも集束部も小さすぎる」
「さすが軍人は詳しいな。コイツは銃火器じゃない。インポートデバイスだ」

 仁也とアンソニーの指摘に、八雲は感心しながらもそれをチェックしていく。

「《ストームブリンガー》を持ってきたんですか!」
「これそういうの?」

 カチーヤはそれが八雲が奥の手に使っている物だという事を思い出し、ネミッサもそのストームブリンガーを興味深く覗き込む。

「ネミッサ、手出すなよ。こいつは悪魔召喚プログラムを反転させた、悪魔退去プログラムを目標に強制入力させるデバイスだ。お前が食らったら地獄に逆戻りするぞ」
「げ……」
「強制退去、確か前にタルタロスで使ってましたね」
「なんかすげえ前の事の気がする………」
「ああ、あれはこれの簡易版だ。もっとも今回はちょっと変わった使い方の予定でな」

 明彦と順平がここに飛ばされる前の事を思い出す中、八雲がストームブリンガーを操作すると、銃身下部にあたる場所から細長いパイルが飛び出す。

「パイルバンカー、そうかダイレクトインポート用か」
「お、知ってるのか?」
「このデモニカもそうだが、装着型のアシストスーツが開発されると同時に、それの対抗策として銃弾やニードルにコンピューターウイルスを仕込み、スーツに直接入力して無効化するというアイデアが出された事がある。まだどこの軍でも実用化されてはいないが、すでに実用化している者がいたとはな」
「これもまだ試作段階だよ。ハッキング・パイルは一回しか使った事がねえ」

 仁也がストームブリンガーのシステムを理解しつつある中、八雲は更に調整を続ける。

「じゃあ、そいつがあのメティスとかいう奴用の切り札って事で?」
「一応な。ただコストがバカ高く付いてな………今回は更にシステム変更にプログラムを新規開発したから、幾らかかったか考えたくもねえ」
「デビルサマナーってのはコスト気にして戦うのか?」
「多分オレだけだな。葛葉の下っ端もいい所だからな………」
(つくづく変わった男だ)(変な奴……)

 アンソニーの問いに作業の手も休めず答えた八雲に、仁也とアンソニーは言葉は違えど同じ事を心中に思いつつ、車は目的地へと向かって行った。



「もう直到着するようだ」
「準備は出来ているのか?」
「無論だ。あとは計画通りに事を進めればいい」
「こちらの配置も完了している。だが…」
「分かっている。協力はこの一度限りだ」
「コトワリを持っての創生、試してみる価値はある。そのためには、彼らには退場してもらわねばならん」
「それはお互い様だ。さて、では始めるとしよう………」



『E班、準備OK』
『W班、いつでもいける』
『S班、完了であります』
『N班、配置完了』

 両国の冥界の門から東西南北それぞれ1000m離れた場所にAPCが止まり、それぞれのAPCの車上にアルジラ、アンソニー、アイギス、咲の四人のスナイパーが狙撃体勢を取っていた。
 四方向からの一斉狙撃でメティス達をかく乱、冥界の門の守備から引き離した所でライドウ、ダンテ、小次郎、アレフの四名が上空から冥界へと直接降下、キョウジと轟所長がそれをサポートするという突入作戦が今始まろうとしていた。

『作戦開始だ』

 向こうから確認出来ない位置で着陸しているヘリから、轟所長の通信が飛ぶ。
 同時に、四つのトリガーが同時に引かれた。
 高く響く狙撃銃独特の銃声が四方向から響くと同時に、東西南北それぞれのメティスがそれぞれ一体ずつ、頭部を破壊されて倒れこむ。

「命中確認、第二目標を」
「了解、だがもう来てるな」

 デモニカスーツの望遠機能で戦果を確認した仁也が指示を出すが、アンソニーの覗き込むライフルスコープからはすでにメティス達がこちらへと向かってくるのが見えていた。
 瞬く間に速度を上げ、周辺にいた亡者何体かを弾き飛ばしながら迫るメティスに、狙撃手達の護衛役が得物を構える。

「早い早い、ネミッサ」
「OK!」
「お前らも準備しとけ。すぐに来るぞ」

 APCの両脇に立っていた八雲とネミッサが、M134ミニガン重機関銃とアールズロックを構える。

「目標接近、700、600、500、400」
「撃て!」

 仁也の読み上げる距離が一定を割った瞬間、八雲とネミッサは同時にトリガーを引いた。
 響き渡る連射音と同時に、レッド・スプライト号資材班特製悪魔用弾頭が弾幕となって解き放たれた。
 アンソニーの狙撃と八雲とネミッサの弾幕に、メティス達は走りながら重なるようにペルソナを発動、弾丸を弾きながら更に迫ってくる。
 流れ弾を食らった亡者達が肉片となって四散するが、双方構わず、突撃と銃撃を止めようとはしない。

「今だ!」
「発射」

 八雲の合図に会わせて、APCからミサイルが上空へと発射、ある程度の高度まで上昇するとそこから一気に下降して向かってくるメティス達へと直撃、爆発を起こす。

「やったか!?」
「これで片が付けば楽なんだが………」

 もうもうと土煙が立ち込める中、アンソニーがスコープから目を離し、八雲は銃身が焼け付きかかっているM134ミニガンを投げ捨てて懐からGUMPを抜く。

「八雲さん!」
「動体反応有り! まだ動いている!」
「穴から新手だ!」
「やっぱそうなるか………」

 一番最初に気付いたカチーヤが叫び、続けて仁也がデモニカのエネミーソナーの反応を、アンソニーが新たなメティスの出現を叫んだ。

「ミサイルまだあるか!」
「LOSAPZ(高速徹甲誘導弾)はもう一発きりだ!」
「構わないから新手にぶちこめ! 素面で来られるとやばい!」
「了解した!」

 八雲がGUMPを起動、召喚シーケンスを実行させ、仁也が残ったミサイルを発射させつつ、こちらも召喚プログラムを発動させる。

「片方はこっちでやる! そっちを頼む!」
「了解! 真田君、伊織君!」
「分かった!」「これだけボロならなんとか!」

 仁也に続いてこちらに向かってくるメティスと対峙した明彦と順平が、召喚器を抜いて己の頭に当てる。

「カエサル!」『ジオダイン!』
「トリスメギストス!」『アギダイン!』

 体の各所が焼け焦げ、露出した機械部分がスパークしながらも平然とトマホークを振りかざすメティスに、向かって、二人のペルソナの攻撃魔法が炸裂した。



「ジオンガ!」

 アルジラに向かって飛んできたトマホークを、ヒロコの電撃魔法が打ち落とす。

「ありがと」
「お礼は後で。狙撃に集中して」
「分かってる」

 再度スコープを覗き込んだアルジラが、新手として出てきたメティスがフォーメーーションを組む前にヘッドショットする。

「単体ならなんとかなるけど、フォーメーション組まれたら途端に防がれる………これだけ息のあったトライブはジャンクヤードにもいなかったわね」
「息が合う、じゃなくて並列思考で統一化されてるらしいわ。群体で動くアリのような物ね」
「アリってのはよく分からないけど、前の私ならそれを望んだかもね」

 文字通り、無機質な機械その物の動きで迫るメティス達に、かつての自分達を重ねながら、アルジラはトリガーを引く。

「タナトス!」『メギドラ!』
「完全破壊まで攻撃を緩めるな!」『おお!』

 間近まで迫ったメティス達に、啓人のペルソナの放つ攻撃魔法に続けて、デモニカをまとった機動班クルー達が仲魔と共に殲滅へと入る。

「また新手よ」
「一体何体いるの………」

 アルジラの呟きに思わずぼやいたヒロコだったが、再度投じられたトマホークを迎撃すべく、槍を構えながら魔法の発動に入った。



 迫ってくる敵影、その頭部をインサイト。周辺条件を入力して弾道を計算、計算結果による弾道誤差を元に照準を微調整。

(邪魔をしないで下さい、姉さん)

 一瞬あの時の声がフラッシュバックしたが、亡者達を弾き飛ばし、殺意すら無く、純粋にこちらを破壊するためだけに迫ってくる相手を、《機械》と言い聞かせ、トリガーを引く。

「命中を確認、目標は行動停止」
「第二敵群、防護範囲に到達、目標を第三敵群に移行します」
「こっち来るな〜!」

 アイギスが巨大なアンチマテリアルライフルを連射する両脇で、メアリが淡々と戦果を確認し、アリサが両腕のESガンを速射する。

「………なあ」
「なんだ?」
「メイドが三人、でかい銃だのでかい鎌だの両腕にちっちゃいけど大砲つけてるだのってはどう思う?」
「言わないで……絵的にすごすぎるから」

 三人の人造メイドが狙撃を行う中、間近まで迫ってきたメティス達を迎撃している修二の問いに、美鶴とゆかりはどう答えるべきか分からず言葉を濁す。

「こっちはメイド、あっちはゴスロリ。いつからここは萌えオタ趣味の世界になったんだろな〜」
「こんな状況じゃなければ、コスプレショーにしか見えないけどね!」
「私には悪趣味なハロウィンにしか見えん。イギリスの知人の家のパーティーに招かれた時そっくりだ。問題は全部本物だという事だがな! アルテミシア!」『ブフダイン!』

 片腕がもげ落ちながらも襲ってくるメティスに、美鶴がレイピアを突き刺して動きを止めた所に至近で氷結魔法を叩き込む。

「もう少しだけ持ちこたえてください。敵の増援が確認できなくなった時点で作戦が第二段階に入ります」
「早くしてほしいもんだがな!」
「人修羅殿! 今助ける!」

 メティスの振り下ろしたトマホークを白刃取りしていた修二を仲魔のスパルナが援護に入り、カギ爪でメティスを弾き飛ばす。

「ミサイルは二発で切れたし、更に新手が来たら……」
「第三敵群、防護範囲に到達します」
「第四敵群、確認」
「これで何体目!?」

 アリサの悲鳴じみた声は、今この場で戦っている者達全員に共通した脅威だった。



「また………」

 咲はレールガンのマガジンを交換すると、素早く狙いを定める。
 だが放たれた高速弾は素早くフォーメションを組んで発動されたペルソナに阻まれる。
 構わず咲は弾丸を連続で撃ち込み、向こうの防御限度を超えた一発が三体の内の一体の頭部を撃ち抜く。
 頭部を撃ち抜かれた一体が崩れ落ちる中、残った二体が素早くフォーメーションを変え、更に迫ってくる。
 続けざまに高速弾は放たれ、残った二体に損傷を負わせた所で再度弾丸が尽きる。

「くっ!」
「凪! 食らえアギダイン!」
「イシュキック!」『マグダイン!』

 再度マガジン交換をする咲の前では、凪と仲魔のハイピクシー、あかりの三人がかりでぼろぼろになりながらも襲い掛かってくるメティスを相手していた。

「首を狙ってください! ヒューマンフォームアンドロイドなら、そこが弱いはず」
「すでに狙っているセオリーなのですが……!」
「ペルソナが邪魔する!」
「この〜!」

 なかばやけくそでハイピクシーがメティスの顔面に張り付き、視界を強引に奪う。

「思い出した! ロボットの弱点は頭とコクピットと、ここぉ!」

 あかりが手にしたレッド・スプライト号ラボ謹製の軽金属大剣を横殴りに振り回し、メティスの腰に刃を食い込ませる。
 バランスを司る腰に刃が食い込み、メティスの動きが鈍る。
 だが、その体からエネルギー上昇を示す陽炎が立ち昇り始め、オルギアモードに移行しようとするが、そこに背後から突き立てれた小太刀が首を貫いた。

「後ろからは卑怯のセオリーですが、ロスは許されないケースです」

 凪が小太刀を引き抜くと、メティスの体からエネルギーの陽炎が立ち消え、ようやく力を失ったその体が崩れ落ちた。

「や、やっと一体………」
「次行くよ!」

 崩れ落ちたメティスの顔面から離れたハイピクシーが脱力しかけるが、あかりが大剣を手に他のメティス達と激戦を繰り広げている機動班クルー達の方へと向かっていく。

「あまりここから離れてはいけないセオリーです!」
「それに、そろそろのはず……」

 冥界の門から新手が出てこなくなった事に、咲は小さく呟きながら、機動班クルー達を援護するべく銃口を向けた。



「敵反応、増加停止」
「ようやくです………撃破したのも含めて、確認できたのは49体」
「そんなにいるんですか………」

 冥界の門から少し離れた場所で、観測班のクルーと風花、それに護衛の乾とコロマル(ついでにダークバスターバスターズの二名)が大型の観測用APCの中で戦況を随時観測していた。

「これだけの戦闘用アンドロイド、どうやって作ったんだ?」
「分かりません………アイギスも姉妹機が何体かあったそうですけど、あれだけの量産は不可能だって桐条先輩が断言してましたし……」
「フレームは量産できても、エネルギー源が無いとダメらしいな。アーヴィン班長がやたらと興味持ってたけど」
「召喚器分解したがってるって本当ですか? 美鶴さんが絶対渡すなって言ってたんですけど」
「やりかねないな〜、あの人なら。ってあれ?」

 観測班の一人が苦笑する中、レーダーに奇妙な反応が入る。

「なんだろこれ? 人間、だけどどこか違うような………」
「え? 待ってください。こちらでもアナライズします」

 風花が己のペルソナで反応のあった方向を精査する。そして、それが何か気付いた時、その顔色が一気に青ざめていった。

「作戦中の皆さんに緊急連絡! 喰奴の大群がそちらに向かってます!」
「なにい!」
「待て、反対側からも悪魔の大群が向かってきてるぞ!」
「まさか、罠!?」
「そんな………」





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