スーパーロボッコ大戦
EP21



「攻龍、若干の損傷はありますが、航行、戦闘共に支障はありません。ただ、弾薬の方が補充率が30%前後となっております」
「上空の、あれは宇宙船か? 現状までのデータ交換は可能か?」
「今やってます。ただ向こうとの規格差がかなり………あちらで合わせているようですが」

 攻龍のブリッジ内で報告と指示が飛び交う。

「ソニックダイバーのダメージは!」
『今チェックさせてる! かなり派手な戦闘だったが、思ってたよりダメージは少ないみてえだ………向こうの嬢ちゃん達のお陰だな』

 格納庫からの返答を聞きながら、冬后は改めて上空の二隻の艦影と、そこに帰艦していった少女達を思い出す。

「なかなか面白い物が見れましたね」
「ええ、光の戦士だったかしら? 明らかにウイッチと同じタイプの特殊能力を使用していたみたいだけど………」
「それよりも先程のワームです。こちらのデータに無い新型でした。こちらの世界のがここに転移してきたのか、それとも………」

 熱心に議論しながらデータの整理、解析に没頭する緋月と周王に、そこでこちらに向かってくる機影に気付いた。

「ヴィルケ中佐があちらの代表と来た模様です」
「どうしますか艦長? まだこちらも片付いてませんが………」
「作戦会議室へ通してくれ。副長、後を頼む」
「はっ!」
「冬后大佐と周王君も一緒に会議室へ。緋月少尉はあちらに出向を」
「了解」「了解しました」「すこしこちらのデータをまとめてから行きます」
「玉華女史に連絡、状況整理のために少し時間が欲しいと通達を」
「了解しました」

 艦長の指示が次々と飛ぶ中、冬后はふと窓からミーナの先導で降りてきた者達を見つめる。

「どこでも、似たような連中が似たような事やってる、てのは本当かもしれんな………」

 向こう側のウイッチやバトルスーツ姿の光の戦士達を見ながら、冬后は小さくそう呟いていた。



「うわあ、すごい船〜」
「この船がいたのは西暦2084年ですか………」
「ええそうよ。いきなりソニックダイバーが目の前に現れた時は驚いたけど」
「今は西暦2300年やて!?」
「間違いないわ。どうやらまた違う世界からのようね」
「今銀河連邦のデータバンクで検索してみたわ。攻龍という船は確かにその時代に存在したけど、イージス艦で仕様が全く違うようね」
「敵が違うだけで、やってる事は我々とそう変わらんか……」

 ミーナに伴われて攻龍の後部甲板に降り立ったユナ、エルナー、ポリリーナ、ミサキ、バルクホルンが、格納庫内へと案内されながらソニックダイバーのダメージチェックをしていたメカニック達と現状を確認して双方が驚く。

「やれやれ、オレにはここが地球じゃないって話の方が信じられんな」
「こちらの歴史だと太陽系内航行が確立されたかどうかの時代ですからね」
「……そんな余裕ねえな、ワームにやられちまって」

 バッハシュテルツェをチェックしながらの大戸の呟きに思わず答えたエルナーだったが、その返答にエルナーの動きが思わず止まる。

「そこまで壊滅的な世界から来たんですか………」
「……この船の乗員が若いのはそういう理由だからな」
「情報を精査する必要がありますね。ワームはそちらの世界の敵と聞いてますけど、それがなぜこの機械化惑星に現れたのかが気になります」
「こっちはここが地球じゃないってのが気になるがな」
「まあ、確かに……」「さっきまでウチら確かに太平洋にいたはずやで?」「ま、その内わかるやろ」

 地球じゃないと言われても、今一ピンとこないメカニック達が首を傾げる中、エルナーの視線がミーナ、正確にはミーナの肩にいるストラーフへと向けられる。

「ボクに何か用?」
「唯一共通事項を上げるとすれば、彼女のような武装神姫の存在です。これほど異なるパラレルワールドから集まってきている者達に、必ず武装神姫がサポートについている。これには何かの意味が…」
「あ、来た来た。ユナちゃんお疲れ様〜」
「あ、音羽ちゃん! そっちもお疲れ〜」

 格納庫へと姿を現した音羽が無邪気に駆け寄り、ユナも無邪気に手を振る。

「いや〜、さっきのワーム手ごわかったね〜」
「みんながんばってくれたお陰だよ。亜弥乎ちゃんも喜んでたし。あ、後で紹介するね」
「あら、もう友達になってるわね」
「ま、ユナにとってはいつもの事です」
「あらあら、ずいぶんと気さくな子なのね」

 和気藹々と話す音羽とユナに、ポリリーナとエルナーだけでなく、ミーナも感心する中、他のソニックダイバー隊の面々に緋月も一緒に現れる。

「あなたは?」
「私は統合人類軍 極東方面大隊 技術開発本部所属、緋月 玲少尉です。そちらの代表はあなたですか?」
「いえ、私はサブリーダーって所ね。お嬢様仮面ポリリーナ、そう名乗ってるわ」
「変わった階級ですね」

 顔色一つ変えずにポリリーナの紹介を聞いた緋月が、ポリリーナの差し出した手を握り帰す。

「私は統合人類軍 極東方面第十八特殊空挺師団・ソニックダイバー隊リーダー、一条 瑛花 上級曹長よ。そちらのリーダーは?」
「彼女よ」

 初見の面々に自己紹介しながら見回す瑛花に、ポリリーナがユナを指差し、音羽と楽しげに談笑しているその姿に数秒間沈黙する。

「………冗談よね?」
「本当よ。まあ彼女はリーダーの自覚どころか、私達を統率する気もないんだけどね」
「待ってください。それでは、あなた方は一体どういう組織なんですか?」
「組織なんて物はありません」
「私達はユナのお友達、ただそれだけよ」
「お友達?」「………何よそれ」

 エルナーとミサキの断言に、瑛花の後ろにいた可憐とエリーゼも首を傾げる。

「私も不思議だが、何でかそれでまとまっている。おっと、私はカールスラント空軍第52戦闘航空団第2飛行隊司令・501統合戦闘航空団所属、ゲルトルード・バルクホルン大尉だ。こちらで指揮を取っていた坂本少佐の代理で伺った」
「坂本少佐って、あのすんごい必殺技でワーム真っ二つにした人?」
「ああ、我々ストライク・ウィッチーズの副隊長で、扶桑有数のウィッチだ」
「けど、無理をしすぎたらしくて、魔力の過剰使用で今医務室に………」
「大丈夫なんですか?」
「命に別状は無いそうだが、しばらく安静が必要だそうだ」

 ミーナがうつむき加減に言う美緒の状況に、可憐が心配して問いかけるが、バルクホルンもややうつむきながら答える。

「それはよかったですわ」
「D・バースト並のエネルギー放出なんて、とんでもない事すると思ったけど……」

 そこへジオールを先頭に、Gの天使達が格納庫に現れる。

「私は秘密時空組織「G」所属、グラディウス学園ユニットリーダー、ジオール・トゥイーよ」
「ああ、あの重火力のユニットに乗ってた……」
「到着して早々、どこに行ってたの?」
「ブレータのシステムを借りて、オペレッタの、Gのオペレーションシステムとの交信をチェックしていた」
「時間がかかりそうだから、マドカに任せてきたの」

 自己紹介するジオールに、バルクホルンは先程の戦闘でのRVを思い出す中、瑛花の問いにエリューが応え、ジオールがそれを補足する。

「待て、交信だと? お前達がどこから来たのかは知らんが、可能なのか?」
「Gは元々時空テロ専門の組織なの。もっとも、ここまで派手な事件はこちらでも前例が無くて………」
「オペレッタとのリンクが復活すれば、多少なりとも全容がつかめるかもしれない」
「本当か!?」
「すぐには無理でしょうね。まだ誰も何が起きているのか把握すら出来ていない」
「確かに。リンクが復活したらこちらにも回線を繋いでください。何か分かるかもしれません」

 ジオールとエリューの説明に色めき立つバルクホルンだったが、緋月とエルナーはあくまで冷静に対応。

「それに、ブレータとあちらのAI、カルナだったかしら?とのデータリンク及びトリガーハートのダメージチェックに処理を取られて、それが済むまで処理容量をあまり回せないらしいわ」
「こちらもダメージチェックの最中だけど、それが済んだらシステム系をある程度回せるわ」
「亜空間通信は装備してる? それなら通信プロトコルも回してもらえるとありがたいんだけど」
「OK、連絡しておくわ」
「何を言ってるのかさっぱり分からん………」
「私もよ」
「マスターの時代じゃまだ通じないか〜……」

 エリューとポリリーナの会話に、バルクホルンが首をかしげ、ミーナもそれに同意、ストラーフが技術格差に思わず肩を落とす。

「それでは、すいませんが情報交換のためにそちらの船に伺いたいのですが」
「そうでしたね。ミサキ、案内を頼みます」
「分かったわエルナー」
「エリュー、あなたも一緒に行ってもらえる?」
「分かりました」
「それじゃあ、他の人達は作戦会議室へ。艦長がお待ちです」
「さて、どこからどう説明すればよいのか……」
「多分こっちも似たような状況よ。あった事をそのまま報告してもらえればいいわ」
「マスター、ボクはちょっと休息させてもらうね〜」
「色々あったわね。話が通じる艦長さんだといいけど」
「本国に報告すれば、こちらの正気が疑われるな………」
「確かに。艦長は平然としてるけど……」

 瑛花の案内で作戦会議室に向かうバルクホルンが腕組みして唸る中、ミーナとポリリーナが苦笑。

「ところで、あれはあのままでいいの?」

 背後を振り返った瑛花が、格納庫の方を指差し、一行はそのまま振り返る。

「へ〜、亜乃亜ちゃん達は天使って呼ばれてるんだ。なんかかっこいいね!」
「ユナちゃんの光の救世主って方がかっこいいと思うよ♪」
「う〜ん、私も何か通り名考えようかな〜」

 そこには、会って間もないはずなのに話に花を咲かせているユナ、亜乃亜、音羽の姿があった。

「あれがユナの特技ですからね。気にしないでください」
「どこにも似たような人はいる者ね………」
「確かにね。後で宮藤さんも呼んであげましょう。きっと仲良くなるわ」
「あらあら、それは楽しそうね」
「あの、音羽と同レベルが増えるのはちょっと………」

 そこはかとない不安を感じながら、瑛花は作戦会議室への足を早めた。



「ほう、これはなかなか……」
「星系間大型航行船ね。ここまでのは私もあまり見た事ないわ」

 用意された小型浮遊ポッドに乗り、プリティー・バルキリー号に近付いた緋月とエリューが、感嘆の声を上げる。

「あら、あなた確か2084年の出身って………」
「正確には、マルチバースの惑星グラディウスの出身。Gにはそういう人が結構いるわ」
「なるほどね」

 ミサキが首を傾げたのに、エリューが言葉を補足する。
 その内に小型ポッドは開いていた格納庫ハッチから中へと入り、そこで停止する。

「ようこそ。私は一応技術顧問のような事をしている宮藤 一郎といいます」
「統合人類軍 極東方面大隊、緋月 玲少尉です」
「秘密時空組織「G」所属権天使、エリュー・トロンです」

 出迎えに来た宮藤博士に自己紹介しつつ、それぞれが握手を交わす。

「さて、まずは何から説明するべきか………生憎と立て込んでいてね」
「こちらもです。あれだけの激戦を繰り広げたのですから、後処理も多いでしょうからね」

 話しているそばから、走っていく足音と会話があちこちから聞こえてくる。

「破損箇所のチェック、急ぎなさい!」
「負傷者は医務室へ!」
「データ交換できてる!?」
「ああああ! 食料庫がひっくり返ってるですぅ!」
「……もうちょっと後から来た方がよかったかしら?」
「いいえ、情報交換は互いに急務です」

 忙しそうな声にエリューが少したじろぐが、宮藤博士にせかされてブリッジへと向かう。

「外装破損箇所27%、整備ユニット出します」
「環境システムに若干の問題あり、大気圏外航行は難しいようです」
「大変アル! ユーリィがひっくり返った食料片付けるついでに食べ始めてるアル!」
「食い尽くされる前に止めに行くわよ!」
「私は疲れたから寝る〜」
「私も〜〜〜そうします〜〜〜」

 ブリッジから慌しく出て行く面々とすれ違うように入った緋月とエリューが、そこで指示を出していたエリカと視線を会わせる。

「あら、あなたさっきの。先程は挨拶もできませんでしたわね。私は香坂 エリカ。香坂財閥令嬢にして、エリカ7を束ねている者ですわ」

 バトルスーツを解いたエリカが、緋月の方を見ながら、スカートの端を軽く持ち上げながら優雅に自己紹介する。

「統合人類軍、緋月 玲少尉です」
「秘密時空組織「G」所属権天使、エリュー・トロンです」
「統合人類軍にG、また聞きなれない組織の方々のようですね」
「それはお互い様だと思いますが」
「問題は、どこまで類似性があるか。こちらの天体図を持ってきたので、まずはそれを一致させたいのですが」
「それはこっちでやりましょう。もう一つのも」
「もう一つ?」

 エリューが持参したGの天体及びマルチバースの概要図を3D投影すると、ミサキが空いているコンソールを指差し、もう一つという言葉にエリューが首を傾げた所で、ブリッジの通信ウィンドゥにカルナの姿が表示された。

『こちらカルナ。トリガーハート三機のセルフチェック終了しました。フェインティアのダメージは軽微ですけど、クルエルティア、エグゼリカ両名は戦闘能力が60%以下に低下してます』
「トリガーハートが? どうやらこちらが来るまでに相当な激戦があったようですね」
『そりゃあ、大気圏外からの降下突入作戦でしたから』
「………こっちも結構無茶してきたけど、そっちも大変だったみたいね」

 カルナからの報告に、緋月が興味を示し、エリューが呆れ果てる。

「カルナ、並行世界の天体図が届いたわ。そちらのとも照合よろしく」
『了解しました』
「下のシャトルのAI『ブレータ』をベースに、Gのオペレーティングシステムへの接続を試みてる。一応リンクを張っておいて」
『報告来てます。今こちらからもリンクを試みています』
「さて、それではこちらはソニックダイバーの基礎概要を持参しました」
「なるほど。じゃあこちらからも概要その他を………」

 慌しい艦内の中、双方の技術交流が急ピッチで行われていた。



「なるほど、状況は理解できました。場所や状況は違うとはいえ、双方に発生している事はほぼ同一と推測できます」

 攻龍作戦会議室の中央、互いに現状の報告を終えた後、エルナーがそう断言する。

「特徴的なのは、どの世界でも敵対しているのは戦闘機械体と呼べる存在である事。そしてそれに対抗しているのは有人もしくは擬似有人兵器である事。それは全てに一致しております。これはとても偶然とは思えません」

 そこまで言った所で、攻龍の士官達がじっとこちらを見ている事にエルナーは気付いた。

「何か?」
「いやちょっとな」
「武装神姫とそうサイズは変わらないのに、随分と高度な倫理演算機能を持っていると思って感心していたの」
「これが私、英知のエルナーの役割ですから」
「エルナー君。一つ聞きたい。つまり君は、これらの事象が全て、人為的な物だと言いたいのかね?」
「………恐らくは」

 艦長の確信を突く発言に、エルナーは小さく頷く。

「待て! では我々は、故意に集められたという事か!?」

 思わずバルクホルンが席から立ち上がり、他の者達も思わず顔を見合わせてざわつく。

『待ってください。必ずしもそうとは限らないかと』

 カルナダイン内部でセルフチェック及びメンテナンスの途中のため、通信で会議に参加していたクルエルティアがその意見を僅かに否定する。

『他の人達と違い、私達の転移は明らかに偶発的な事故による物です。ヴァーミスの進行目的がこの銀河系であった可能性は高いですが、他の擬似世界にまで目標に出来たとは考えられません』
「むう、そう言えば宮藤博士とウルスラ・ハルトマンも事故でここに来たと言っていたな」
「フェインティアさんも敵から逃げる時に転移に巻き込まれたと言ってたわね」
「それこそおかしいわ。なんでウィッチ達が多く飛ばされてきたこの世界に、都合良くストライカーユニットの技術者がいるのかしら?」
「そりゃあこっちも同じだ。なんでワームがこの機械だらけの星に現れて、そこに都合よく対ワーム部隊のオレ達が現れる?」
「分かりません………敵の反応を見る限り、幾つかの転移は明らかに向こうにとってもイレギュラーです」
「気になるのは、こちらでもそちらでも、敵がこちら側のコピー体を出してきた事。特にあのフェインティアのコピー体はこちらで確認した物の数段上をいくレベルのようだし」
「その件なんですけど、あのコピーネウロイ、実際に遭遇した人が来ています。後でその時の資料を確認してもらいましょう」
「全く、ドンパチは片付いたが、問題は山積みだな、オイ………」
「ワームが存在し、破壊活動を行っている以上、我々はこれの殲滅を第一義務とする。早急にワーム存在の原因を究明、解決し、本来のネスト探索任務に復帰する。以上だ」

 会議室内が紛糾する中、艦長が力強く断言する。

「確かに。まずは一連の転移強襲の原因を究明しなくてはなりません。そのために、皆さんで協力する。そういう事ですね?」
「ストライクウィッチーズ、その意見に賛同するわ。一連の事件が片付くまで、全面協力します」
「『G』グラディウス学園ユニット、同じく全面協力いたします」
『トリガーハート三機、ヴァーミス及び転移敵性体の殲滅まで全面協力に賛同します』
「光の戦士一同、皆さんに協力します。ただ、こちらのリーダーはここで仲良くなったお友達を助けたいだけでしょうけど」
「攻龍、これより各組織と協力し、原因究明にあたる」

 それぞれの代表が協力を宣言し、全員が大きく頷く。

「さて、となると指揮権はどうなる?」
「半分は軍隊ですが、残る半分は違いますし、元々こちらは組織ですらありませんからね〜」

 冬后の問いに、エルナーも唸る。

「階級で言えば、中将である門脇艦長が最高位になりますが………」
「それを言うなら、Gは統合軍から独立不干渉権を有してます」
「ややこしいな、つまりどうなる?」

 冬后の一言に、全員が首をかしげて唸る。

「一時的に、門脇中将の指揮下に入ってもらうというのは?」
『運用面の問題が』
「組織形態がバラバラですし………」
「………指揮ではなく、指示形態とし、私とエルナー君で最高指示権を保有。各部隊はそれぞれリーダーの指揮形態をそのままとし、こちらの指示に応じてそれぞれを運用という形にしたい」
「つまり、あくまで命令でなくて依頼という形という事になる訳ですか……」
「うむ」

 指揮権について喧々諤々の論議がなされる中、艦長の一言にエルナーがしばし思考。

「つまり、現状の体勢をそのままで合併するという事?」
「まあ、その方が面倒が無いっていやあ無いが………」

 ミーナと冬后が要約した所で、それぞれのリーダーが顔を見合わせる。

「それに、宇宙船の指揮はした事がないのでな」
「あ、なるほど」

 艦長の一言に、思わずエルナーが頷き、その場にいた面々が思わず噴き出す。

「今後どうなるかは分かりませんが、門脇中将とエルナーさんの双方の協議によって大まかな方針を決める、という事でいいですね?」
「オペレッタとのリンクが復活すれば、もう少し状況がはっきりするかもしれませんし」
『了解、それではトリガーハートは一時措置として指示権を両者に委託します』

 ミーナとジオールが取りまとめた所で、クルエルティアが委託を表明、他の者達もそれに賛同する。

「賛同に感謝する。………人類統合軍発足の時はここまで簡単ではなかったがな」
「現状では統合軍というより、少女独立愚連隊に近いですからね〜」
「失礼な! 我々はちゃんとした部隊だぞ!」
「まあまあトゥルーデ、みんなで協力できれば愚連隊でも問題ないわよ」
「ま、こっちも人の事言えた義理はねえな」
「音羽ちゃん達も軍人って感じしませんしね。それでいいと私も思いますわ」
「ユナは友達が増えるって喜ぶわね」

 話がまとまった所で、通信を示す電子音が室内に鳴り響く。

『艦長、玉華女史からの迎えがもうそろそろ着くそうです』
「すぐに向かう。冬后大佐も来たまえ」
「それでは我々も。クルエルティア、来れますか?」
『通常行動に問題無し、すぐに行きます』
「トゥルーデ、この艦に残って通信伝達系統の確認頼めるかしら?」
「了解した」
「私も残るわ。エルナー、そちらはお願い」
「一条にでも案内させよう」
「それでは後部甲板へ」

 会談に向かう者、残る者の二者に別れて皆が作戦会議室から出て行く。
 最後に部屋から出た冬后が、ふと前を行く者達の後姿を見て小さく吐息を漏らす。

(なんとかこっちはまとまった。だが、これから先、オレみたいな目にあわせないにはどうすればいい?)
「冬后大佐、何か?」
「いや、何でも」

 バルクホルンに適当に答えつつ、冬后は尾の己自身に問い続けていた。



「なるほど、それであの巨大な敵にも対処できた訳ですか」
「正直な所を申せば、すでに我々にあれだけの敵を相手するだけの余力は残ってはなかった。任せてしまい、申し訳ない」
「いやまあ、なんと言うか………」
「攻龍は対ワーム用特務艦で、私達は対ワーム部隊ですから、あまり気になさらずに」

 後部甲板に辿り付いた一行の前に、細身の青い男性型機械人と、赤い巨躯の男性型機械人が音羽達と会話している光景が見えてくる。

「あっと、艦長来た」
「艦長さんって、あのおじいさん?」
「ええ。高齢ですけど、指揮能力は相当ですし、なにより中将ですから階級も高いですよ」
「ふ〜ん、そうなんだ………」

 こちらに向かってくる艦長の姿にユナが音羽達に聞く中、艦長が二人の機械人の前へと立った。

「極東方面軍 特務艦113号《攻龍》艦長の門脇 曹一郎、階級は中将だ」
「私は三賢機が一人、右丞相・鏡明と言います」
「我は同じく三賢機が一人、左丞相・剣鳳、先程の御助勢、誠に感謝いたす」
「一足先に、我らから礼を言いたくはせ参じました」
「この二人に先程の白皇帝を加えて三賢機と呼ばれてます」
「つまり、この国の指導者の側近というわけか………」
「あの、ちょっと言いにくいんですが……」

 頭を深く下げる二人の機械人にエルナーが説明を補足、艦長が納得する中、ジオールが自分達の事をどう説明するか悩みながら口を開く。

「状況はこちらの方々から聞きました」
「異なる歴史の世界から来られたとか。我らにもにわかには信じがたいが、転移時のエネルギー量はそれを一言にウソとは言い切れない事を示している」
「分かるのですか?」
「ええ、この世界ではワープ技術は確立された一般的な物なのです」
「しかし、この船の出現時のエネルギーは明らかに大き過ぎる」
「なるほど。後でその辺りを検証する必要がありますな」
「性急にも。まずは白皇帝様にお会い下さい」
「迎えも今来たようです」

 剣鳳の言う通り、大型のホバーリフトが近寄り、攻龍へと隣接するとそこから一人の女性型機械人が攻龍へと下りてくる。

「私は四天機が一人、天鬼院・美鬼(メイクイ)と申します。皆様方のお迎えに上がりました」
「美鬼さん!? どうしたのそれ!」

 迎えに来た美鬼が、車椅子代わりの小型浮遊ポッドに乗っているのに気付いたユナが思わず声を上げる。

「ユナさん、気になさらずに。直している暇が無かった物で」
「今は彼女が技術局の長官になっておるのです」
「そのため、負傷者の修理が彼女の仕事となっており、相次ぐ負傷者の増加に自らの修理も出来ない状態でして………」
「そう言えば、亜弥乎ちゃんのお姉さん達もボロボロだったっけ………」
「今まともに戦えるのは三賢機のお二人だけです。私以外の四天機も六花戦もまともに動ける状態ではなく………」
「つまり、将校・士官クラスもほとんど負傷で行動不能って訳か。前のワーム大戦を思い出すぜ………」

 後方でユナと機械人達の話を聞いていた冬后が思わず顔をしかめる。

「よく陥落しなかった物だ」
「その辺りの説明も後ほど。それではこちらに」
「おっと、クルエルティアも来ましたね」
「あの方、機械人のようですが………」
「その辺の説明も必要ですね」

 艦長も思わず唸る中、門脇艦長、冬后大佐、ジオール、ミーナ、クルエルティア、そしてユナとエルナーに三賢機の二人も乗せてホバーリフトは動き出した。

「待って〜マスター! ボクも行く〜」
「あら、起きたみたいね」

 そこに会議の前、抜け出してクレイドルで休息してたはずのストラーフがミーナに追いつき、慌ててその肩へと止まった。

「はて、その小型………」

 その様子を見た鏡明が小さく首を傾げる中、一行は会談の場所へと向かっていった。



「う〜ん」
「なるほど………」
「出来れば、こちらにも説明を貰いたいのですが」
「私にもさっぱり……」

 天体図を見つめて唸っているエリューとミサキに、緋月と宮藤博士が説明を促す。

「そうですね、まずはこれを。Gでは並列的に近似的存在の無数の宇宙の存在、これを《メガバース》もしくは《マルチバース》と呼び、その宇宙群の一つにある、惑星グラディスが私の出身です」
「つまり、Gにとってパラレルワールドの存在は珍しくない、と?」
「ええ、それでおそらくこの世界もマルチバースの一つじゃないかと思って、天体図を照合してみたんですが………」
「似ている、と言えば似ているんですが、どうやら完全に一致する物は無いみたいなんです」
「もしそのマルチバースと言うのが本当だとしても、まだ未発見の宇宙の一つと言う事か」

 ミサキの説明に、宮藤博士も考え込む。

「オペレッタとのリンクが復活すれば、もう少し絞り込めるかもしれません」
「それが分かれば、元の地球に戻れると?」
「多分ですが」
「転移装置自体はこの世界にもありますから、そこで元の宇宙の次元座標さえ分かれば………」
「我々は元の世界に戻れる、という事ですね」
「確実に、とは言えませんが」

 緋月の問いにミサキは少し首をかしげながらも肯定する。

「そのマルチバースという物、こちらの、ウイッチ達の世界は観測されてないのかな?」
「生憎と、聞いた事ありません………」
「う〜ん、だとしたらこちらの帰還は難しいか………」
「幾つか、転移時のエネルギーデータが記録されてるはず」
「けど、それだけでは何とも………」
「視点を変えてみましょう。なぜ、これだけ多くの人達が、この世界に飛ばされてきたのか? 何か心当たりは?」

 緋月の言葉を皮切りに、その場にいた者達が顔を見合わせ、真剣な表情で考え込む。

「偶然、と言うには確かに出来すぎているわ………」
「確かに、それにそれぞれの世界の特徴を合わせ持った敵の存在も確認されている………」
「誰か、それとも何かが故意にこの状況を引き起こしている?」
「だがそれでは、攻龍がこの世界に来た理由が見当たりません。ソニックダイバー無しでは、あのワームを倒す事は実質不可能だったでしょう」
「倒せないとは言い切れない、けれど被害は確実に深刻な物になっていたのは確かだわ」
「それはこちらでも同じね。こちらで攻龍・イミテイトが出現した時、ウィッチの人達がいなければ、倒し方は分からなかった」
「ひょっとして、この転移現象は、要因が複数あるのか?」

 宮藤博士がある仮説を立てようとした時、部屋のドアがノックされ、エリカが姿を現す。

「失礼、こちらのチェックが一段落つきましたので、お茶でもご一緒にいかがかしら?  色々お話も伺いたいですし」

 後ろにティーセットを乗せたカートを押したミドリを従えつつ、エリカの誘いにその場の緊張が和らぐ。

「そうですね。せっかくだからいただきましょう」
「話しておかなければいかない事は、お互い山ほどあるようだし」
「やれやれ、確かにお茶でも飲みながらがいいだろうね」
「上になんて報告すればいいかしら………」

 用意されていく紅茶を前に、四人はそれぞれ苦笑しながら、ティーカップを受け取っていく。

「ユーリィもお茶にするですぅ〜」
「駄目アル! あんたが行ったら、お茶菓子全部なくなるアル!」
「ちょっと誰か、この子抑えなさい!」
「今何かお菓子作りますから!」
「わ〜い! 芳佳のお菓子だ〜」

 遠くから聞こえてくる声に、カップを手にしたままミサキとエリカの頬が引き攣る。

「一つだけ、どちらもにぎやかなのは間違いないようで」
「そうですね」

 表情一つ変えずに、その声を聞きながら紅茶を嚥下する緋月に、宮藤博士は微笑しながら自分も紅茶を嚥下した。



「これはすげえ………」
「こんな施設があるなんて………」
「なんて巨大なのかしら………」

 玉華との会談のために案内された一行は巨大なエレベーターに乗り、機械化惑星首都の地下、そこに広がる巨大な地下施設へと向かっていた。

「あれ? 前に来た時こんなのなかったよね?」
「この《マシンクレイドル》は、前回の《黒皇帝の乱》の後に建造された物です」
「これのお陰で、非戦闘員のほとんどをここに避難させる事が出来ました」
「よもや、完成直前になってすぐ使う事になろうとは予想外だったが………」
「都市丸ごとのシェルターとは………」

 機械人達の説明を聞きながら、エレベーターの外、文字通りの都市その物が何層にも分かれて地下へと広がっている光景に、全員が驚嘆するしかなかった。

「生産拠点もここに新しく作られています。必要な物資があるなら、すぐにでも用意しましょう」
「……その前に一つ聞いておきたい。我々が間に合わなければ、脱出するつもりだと聞いたが、どのようにして?」
「それは簡単です。このマシンクレイドルには、緊急時用に複数の転移装置が設置されているのです」
「まだ完成はしていなかったが、それが完成すれば、このマシンクレイドルごと、他の星系にワープが可能となる」
「つまりここ、巨大な脱出ポッドになってるんですの?」
「とんでもねえ話だ………」
「私には、とても信じられませんね……」
「ヴァーミスも稀に軍団ごと転移撤退しますが、さすがにこれ程のは………」

 艦長の疑問に鏡明と剣鳳が答え、その場にいた全員が絶句する。

「他のみんなも一緒に来ればよかったかな〜、こんなすごいの早々見れないよ?」
「ま、それは後からにしましょう。まずは玉華との会談が先です」
「ウチの連中がこんな所に来たら、確実に迷子になるな………」
「Gの中枢指令センター並ですわね」
「これ程巨大な地下施設なんて、こちらでは建造も不可能でしょうし………」
「確かにこれなら、ヴァーミスの猛攻に防衛戦に徹する事が可能でしょう」

 皆がそれぞれの感想を口にする中、エレベーターは停止し、機械人達に案内されて一行は厳重な警備が敷かれた通路を進んでいく。

「防護シャッターに警備システム、警備員まで配置してるって事は、重要区画なんじゃないのか?」
「そうです、この先は中央区画となります」
「惑星全体を管理可能な情報指揮システムが構築されている。ここが完成していなければ、貴殿達の増援は間に合わなかったろう」
「いいのですかな、そんな重要な所に部外者である我々が入って」
「すでに皆様は部外者ではありません。あそこが、中央会議室です。白皇帝様がお待ちです」

 冬后と艦長が軍人らしい事を聞き、機械人達がそれに答える中、通路の先に一際頑丈そうな巨大な扉が現れ、それがゆっくりと開いていく。
 扉の向こうには会議用と思われる大きなテーブルと、その端で待つ一人の機械人の姿が有った。

「初めまして皆様。私がこの機械化帝国を治める白皇帝・玉華です。この度の助勢、この星を代表してお礼を申し上げます」

 先程の映像に映し出された、ただ予想していたよりも小柄な女性機械人、白皇帝・玉華が深々と頭を下げ、その両脇に鏡明と剣鳳が控える。

「まずはお席におつきください。大体の事は白香から報告を受けております」
「ふむ」
「それでは」

 空いている席に皆がそれぞれ付くと、会談が始まった。

「改めて、統合人類軍 極東方面大隊 特務艦 攻龍、艦長の門脇 曹一郎、階級は中将だ」
「攻龍所属第十三航空団ソニックダイバー隊、指揮官の冬后 蒼哉、一応大佐」
「カールスラント空軍JG3航空団司令・501統合戦闘航空団《ストライクウィッチーズ》隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です」
「ボクは武装神姫・悪魔型MMSストラーフだよ♪」
「超惑星規模防衛組織チルダ、対ヴァーミス局地戦闘用少女型兵器トリガーハート《TH32 CRUELTEAR》」
「秘密時空組織「G」所属、グラディウス学園ユニットリーダー、ジオール・トゥイーと申します」
「アイドル兼光の救世主、神楽坂ユナで〜す♪」
「ちょっとユナ………」

 皆の自己紹介につられてユナも能天気な紹介をした所でエルナーが思わずたしなめ、何人かが小さく吹き出す。

「なるほど、白香からの報告通り、随分と色々な組織の方々が集結しておられるのですね」
「ま、成り行きというかなんと言うか………」
「いやまあ、指揮官クラスの人達がしっかりしてますから………」
「フェインティアさんとは危なく交戦状態になりましたけどね」
「あの子、何をしたの………」

 玉華の感心の声に、それぞれの指揮官が苦笑を交えつつ、お互いを見る。

「問題はそこではない。どうやら、それぞれの敵が一同に襲撃してきているらしいという事だ」

 艦長の言葉に、全員が頷く。

「この惑星に起きた、ヴァーミス襲撃の全容を教えてください。チルダのデータと比較します」
「そうですね、まずは………」

 それぞれが遭遇した敵、戦闘概要、そしてこれからの方針について、会談は長時間に及び、かなり白熱した議論が交わされる事となった。
 途中で居眠りを開始したユナを除いて。



「通信系はこれで統一された訳だな」
「はい、ウィッチの方々の通信順位はヴィルケ中佐と坂本少佐を上位に設定しました」
「人数が多いから、通信もこれから大変になると思うけど、大丈夫かしら?」
「あちらの、カルナさんでしたっけ? そちらと並列して行う事になりますから」
「バックアップをもう少し考えるべきか……」

 攻龍のブリッジ内で、バルクホルン、タクミ、ポリリーナ、七恵の四人が通信その他の体制を整えていた。
 ふとそこで、バルクホルンがブリッジ内の人間の視線が自分に集中しているのに気付く。

「私がどうかしたか?」
「いえ、なんかちゃんと軍人だな〜って」
「? 何を言っている。当たり前だろう」
「ああ、こちらの知ってるウィッチって、ヴィルケ中佐はともかく、他の人達はどうにも軍人に見えなくて」
「ま、こっちもですけど」
「んん!」

 タクミと七恵がミーナ以外の三人のウィッチおよび、スカイガールズを思い出した所で、副長の咳払いに慌てて口を塞ぐ。

(あいつら、何をしていた? ハルトマンがこちらに来ていたら、ウィッチの面目は丸つぶれだったな………)

 そこはかとない不安を感じつつ、バルクホルンは視線を思わず逸らしていく。

「確認しておきたいが、敵の再攻撃の可能性は?」
「トリガーハート達が言うには、侵蝕コアと呼ばれる攻撃の中枢存在は破壊したので、今後しばらく、というよりも実質的に再攻撃は不可能に近いらしいです」
「それはよかったですね。攻龍も激戦が続いてて、消耗も激しかったですし」
「音羽さん達もしばらく休めそうですね」
「休息と部隊再編の時間は確かに必要だからな」
「それでは、一段落ついたので私達は戻ります」
「そうか。これからどうなるかは分からんが、互いに協力できる所は協力する、そういう事になるだろう」

 副長の言葉に、ポリリーナは微笑を浮かべる。

「大丈夫、ユナはすでにソニックダイバー隊の人達と友達になってますから。協力しない理由はありません」
「相変わらず、単純な理由だな」
「だから私達はユナに着いていくのよ。これからもね」

 バルクホルンも呆れるが、ポリリーナはそう言いながらウインクする。
 今一理解出来ないタクミと七恵は、その場で互いに首を傾げるしかなかった………



「ヴァーミスの目的が、この惑星の侵蝕にあった事は確かです。今回の戦闘で侵蝕コアの破壊に成功したため、再度の侵蝕の可能性は低いでしょう」
「ただし、それは相手がヴァーミスに限った場合ですね」
「………はい」
「もう一人のフェインティアがいたように、ヴァーミスにコピー兵器製造能力があるのは確かだ」
「だが、そうするとあのワームの説明がつかねえ………明らかにこっちの奴よりも強かった」
「ヴァーミスが時空間を超越してワームに干渉していたのなら、Gがその痕跡に気付かないはずはありません」
「だとしたら、ワームの方がこちらに?」
「そんな話、聞いた事ねえな………」
「個体としての戦闘力は確かに強力でしたが、転移能力まで持っていたとは思えません」
「こちらでの戦闘データでも、ワームと呼ばれる個体は先程の物以外、観測されてません」
「え〜と、つまりそれって、どういう事?」
「何者かが、ワームをこの世界に持ち込み、そして同様に我々の世界にネウロイを持ち込んだ………」
「そう考えるのが妥当でしょう」

 会談の場に、冷え切った空気が満ちていく。
 複数の生唾を飲み込む音が響き、やがて誰かが口を開く。

「この後、一体どうなるのか………」
「分かりません。ただ、その何者かが諦めたとは到底思えません」
「あのエビ型ワーム、そしてこちらの攻龍・イミテイト、出現状況とその戦闘力から明らかにこちらを狙っていると考えていいだろう」
「侵蝕コアを破壊した後に、更なる増援を送ってくるというケースはチルダでも確認された事はありません」
「ましてや、ワームとやらのあの攻撃力だ。最初から出していれば、いや我々が来た時点で即座に投入していれば、対処しきれなかった可能性が高いだろうな」
「つまり、あのエビ型ワームの投入は予定外だったという事かしら?」
「狙いは、私達その物?」
「その黒幕の興味は、この惑星の侵略から私達に移ってきている………」
「そう考えれば、つじつまは合います」
「なんと………」
「だが確かに………」
「迎撃準備を整えとく必要あり、か」
「こちらとしては、あなた方への協力はおしむつもりはありません」
「だが一体、何者でしょう? 複数の世界に干渉し、そして我々に興味と敵意を持つ相手とは………」

 その問いに、答えられる者はいなかった………





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