スーパーロボッコ大戦
EP 38


AD2300 地球・ネオ東京

「元の世界に戻るって、言ってたわね?」
「ええ、確かにそう言いましたが………」

 フェインティアの震える声に、エルナーが罰が悪そうな声で答える。

「それじゃあなんで、私達がまだ地球にいるのよ~~~!!」

 フェインティアの絶叫が周囲に響き渡る。
 私立白丘台女子高等学校の校庭に光の戦士達は戻ってきたが、何故かそこに三人のトリガーハート達の姿も有った。

「あ~、ひょっとしてしばらくこっちで暮らしてたからかな?」
「でもフェインティアはそうじゃないはず………」

 エグゼリカもクルエルティアも首を傾げるが、フェインティアはその場で頭を抱えてこんでいた。

「もうこんな馬鹿げた事からおさらばして、チルダに戻れると思ったのに………」
「言ってくれるわね~、馬鹿げた事ってのは合ってるけど」

 フェインティアを見ながら、舞は笑い出し、次第に他の皆も笑い出す。

『こちらミラージュ、現在地球上空です。リューディア艦隊も無事な艦は全艦確認しました』
『しばらく修理にかかりそうです』
「木星のステーションドッグに予約を入れておきますわ。迎えもこさせましょう」
「エリカ様、全員のメディカルチェックが終わりました。緊急性のある要治療者はいません」
「むちゃくちゃしんどかったわね~………誰か迎え呼ぼ」

 とりあえず全員無事な事に皆が胸を撫で下ろす中、ユナは機械人達の姿が無い事に気付く。

「あれ、亜弥乎ちゃん達は?」
「こちらへの転移は確認してます。おそらく、機械化惑星に直接戻ったのでしょう」
「そっか、あそこメール届かないしな~」
「あ、そうだお父さんに連絡しないと」

 ユナの一言に、エグゼリカがしばらく使わなかった携帯電話を取り出し、養父の番号をコールする。

「あ、お父さん? 今帰りました。姉さんともう一人も一緒に。はい、全部終わって………え? オムレットとワットが? 分かった、急いで帰ります。それと…」

 仲間が、と言いかけたエグゼリカが、ユナ達の方を見て頭を振って、言い直す。

「お友達が、たくさんできました」

 そう言うエグゼリカの顔は、どこまでも朗らかに微笑んでいた。

『セルフチェック完了、大気圏内ならなんとか飛べそうです』
『帰投ポイントを確認、スキルトール亭近辺』
「お父さんが、フェインティアも連れて来なさいって」
「はあ、仕方ないわね………」

 カルナとブレータの報告を聞きながら、フェインティアは肩を落としつつ、エグゼリカに生返事を返す。

「さて、こちらも事後処理が色々ありそうね」
「まずは、家に帰って一休み♪ あっとエグゼリカちゃん、連絡先交換交換」
「ユーリィお腹空いたですぅ~」
「私は帰って寝るわ。散々な目に有ったし」

 皆が口々にあれこれ呟きながら、解散していく。
 休息を取った後に、事後処理で忙殺されるだろうが、今は、ただ誰もが自宅での休息に向っていた………



AD1945 大西洋

「総員点呼を確認、各艦も大破した艦を除き、帰還しています」
「やれやれ、これで一安心か」

 簡易司令部を設けた艦内で、報告を受けたガランドが、伸びをしながら首を鳴らす。

「負傷者の治療と破損艦及び破損ストライカーユニットの修復、上層部への報告書の作成に各航空団の帰還、やる事が山積みだな」
「すでにウィッチ達は帰還の準備を進めております。宮藤博士を中心としてストライカーユニットの修理も順次進められておりますし、各艦も修復しながら帰還する模様です」
「ネウロイもこの事態に巻き込まれて、しばらく動きが無さそうだからな。ちょうどいいと言えばちょうどいいが」
「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐、出頭しました」
「入れ」

 そこへ呼ばれたミーナが室内へと入ってくる。

「部下は全員無事か」
「はい、何人か疲弊が激しいようですが、休息を取れば問題有りません」
「それはよかった。どうやら501は今回の件の根幹に関わっているようだからな、詳細の報告書を上げてくれ」
「え………?」

 ガランドからの命令に、自分自身詳細を把握出来ていないミーナは思わず間抜けな声を上げる。

「それと宮藤軍曹は?」
「負傷者の治療中ですが………」
「彼女にも報告書を提出させるように。根幹中の根幹のようだからな」
「当人が理解できていればいいのですが………」

 おそらく芳佳も詳細は理解していない事を確信しつつ、ミーナは難問な命令に内心冷や汗を流していた。

(す、ストラーフを返すのが早すぎたかしら?)

 まずどこからどう書くべきか、ミーナは頭を抱え込みたいのを必死になって隠していた。


「それじゃあ、次の人」

 芳佳の前に並んでいた治癒魔法待ちの行列が、なんとか一段落つきそうになる。

「芳佳ちゃん、大丈夫?」
「うん、何とか」

 手伝っていたリーネが心配そうに声をかけるが、芳佳は頷きつつ、回復ドリンクの最後の一本を飲み干す。

「お父さんも頑張ってるみたいだし。あ、お母さんとお祖母ちゃんにもお父さん帰ってきたって教えないと」
「そうだね。けど、手が空くのはちょっと掛かりそうだけど………」

 芳佳とリーネは隣の工作艦に別途で並んでいる列を見ながら、再度治療に取り掛かる。

「そんな便利なの、簡単に飲み干しちゃって大丈夫?」
「あ! 坂本さんに一本くらい残しておくんだった!」

 列の最後となった圭子に言われて、芳佳が慌ててボトルを振るが、数滴出るだけで完全に空になっていた。

「あああぁぁ………どうしよう………」
「他の人達から分けてもらえば…」
「無理ね、皆残った分は自分達で確保する気満々よ。私も残しておくんだったわね~」
「ああああぁぁ………」

 肩を落とす芳佳をリーネがなだめるが、圭子は更に絶望的な事に言って更に芳佳が落ち込んでいく。

「よ、芳佳ちゃん………」
「ベテランが上がりそうになったら、新人がその穴を埋められるように努力するしかないわ。頑張りなさい、光の救世主さん」

 治癒してもらった傷の具合を確かめつつ、圭子は芳佳の肩を叩いてその場を立ち去る。

「そ、そうだね。私が坂本さんの分まで頑張れば!」
「はっはっは、それは頼もしいな」

 なんとか立ち直ろうとした芳佳に、突然後ろから美緒が声をかけてくる。

「さ、坂本さん!? 聞いてたんですか!?」
「途中からだがな。さて、まずはこれからだ」

 そう言うと、美緒は紙の束を芳佳に手渡す。

「あの、これは………」
「ガランド中将から。今回の件の詳細を報告書にまとめて提出してほしいそうだ」
「こ、こんなに?」
「期限は3日、細分もらさずだそうだ」
「は、はい………」
「手伝うよ芳佳ちゃん!」

 一体何枚書けばいいのか検討もつかない中、芳佳はあの渦に飲まれてからの事を思い出す。

「他の人達もちゃんと元の世界に戻ったかな………」



AD2084 太平洋中央部

「一条艦隊との通信リンクを確認しました」
「人員点呼確認、搭乗員全員及びGの天使達も全員そろってます」
「やれやれ、やっと元通りか………」
「ようやく本来の作戦に取り掛かれる」

 タクミと七枝の報告を聞いた冬后と嶋副長が胸を撫で下ろす。

「艦及びソニックダイバーの修復の所要時間は?」
「応急なら40時間前後、完全なら倍はかかるそうですが………」
「重大な作戦が控えている。不完全な状態での発動は控えるべきだろう」
「しかし、それでは作戦発動に遅延が……一条提督にも何と説明すればよいのか」
「その点は問題ないでしょう」

 門脇艦長の判断に嶋副長が異論をはさもうとするが、そこにジオールがブリッジに訪れる。

「今回の件は、Gを通じてAクラス機密案件として扱われます。すでにGから統合人類軍へと通達は行われており、詳細までは無理でしょうが、ある程度は一条提督にも知らされてます」
「統合人類軍にそこまで影響力があるとはな………」
「ただ、これだけの規模のはGでもあまり礼のない事例ですので、影響をどこまで抑えられるかは不明です。ワームへの影響を調査するため、私達もしばらく同行致します」
「君達が協力してくれるなら心強いが、そちらの損害も軽くないはずだが………」
「Gの技術班が急行しています。攻龍の修理にも手を貸してくれるそうです」
「つまり、一刻も早く直して、今回の件を無かった事にしたいって事か」
「そう取ってもらっても構いません」

 冬后が呟いた皮肉を、ジオールは平然と受け流す。

「作戦の遅延は最小限にしたい、全ての支援を受け入れよう」
「しかし艦長………」
「ここまでくれば、機密も何もあった物ではない。使える物は使い、作戦成功率を上げるのも指揮官の努めだ。何より…」
「何より?」
「彼女達はもうその気だろう」
「………なるほど」

 冬后が頷きながら、チラリと格納庫の様子が写っている画面を覗きこむ。
 そこでは、所属も関係なく、多くの者達が協力して修理に取り掛かる光景だった。


「アイーシャとティタの様態は!?」
「優子先生は疲れてるだけで大丈夫だって! 白香って子が飛ばされるギリギリまで回復してくれたお陰らしいけど」
「ソニックダイバーのダメージチェックは済んでる!?」
「もう直です!」
「ちょっと誰かこれの部品取り手伝って!」
「………オレのクセルバイパーが骨になってやがる」

 激戦が終わった直後だが、ソニックダイバー隊も天使も関係なく、一刻も早い修理に取り掛かっていた。

「詳しい事はこっちでやる。チェックだけすんだら休んでな」
「音羽、特にお前は無茶し過ぎだ。零神はちょっとかかるかもな………」
「そうさせてもらう~私もゼロもちょっと疲れたし」

 大戸と良平に促され、チェックだけ走らせた音羽は零神から降りる。

「合体のダメージってどこ調べりゃいいんだろ?」
「さあ?」
「全体スキャンで組成チェックして、OSのフルスキャンって所ね。妙な所に歪出てないといいんだけど………」
「要は普段と一緒か、もっとも内部スキャンも必要だろうが………」

 マドカの助言を元に、僚平がぼやきながらチェックに取り掛かる。

「シューニアは電装系フル交換が必要そうね。どれだけ負荷が掛かったのかしら………」

 手が足りないので自らシューニア・カスタムの点検を申し出た周王が、外装よりも内部がかなりダメージを負っている事に渋い顔をする。

「でも全員無事帰って来れたんだし、デア何とかも倒せたし、無事解決って事で」
「そっちはいいかもしれへんけど、こっちはこれからネスト探索・殲滅任務があるんやで」
「そやそや、これ直すのも一苦労やし………」

 亜乃亜が喜色満面でガッツポーズするが、嵐子と晴子に手を止めないまま突っ込まれる。

「その点なら大丈夫、今回の件はG本部からAクラス次元転移災害と認定されてます。今後の影響を調査するため、しばらく攻龍に同行する事になりました」
「じゃあ、私達もうちょっとこの船に乗ってるって事?」

 エリューが先程来たばかりの本部からの司令に、亜乃亜がきょとんとするが、その意味する事にやがて音羽と顔を見合わせ、笑みを浮かべる。

「それじゃあ、もうしばらくよろしく」
「こちらこそ」

 笑みを浮かべながら、二人は握手をかわす。

「そう言えば、武装神姫の子達ってどこ戻ったんだろ?」
「未来から来たって言ってたけど………」



AD2100 某研究所

「全ミッション終了報告、全機帰投しました」
「ご苦労様」

 無数の機器が並ぶ研究所の一室、武装神姫達がずらりと並び、アーンヴァルが代表して帰還報告をする。
 そこでその部屋の主のデスクから、コール音が響いて二つのウィンドウが表示された。

『上手くいったみたいね』

 ウィンドウの片方、20歳くらいと思われる、大人びた姿の教養のエミリーが表示されていた。

『さすがにあのサイズは無理かと思ったけど、よくまとめた物ね』

 もう片方、こちらは20代半ば位の容姿となっているマドカが表示される。

「二人とも助かった。基礎理論は私だけでも何とかなったが、動力と転移はそちらの技術が無いと無理だった」
『いえ、でもいいアイデアだったわ』
『結構楽しかったし』
「彼女からは?」
『それが、ありがとうってだけ来て、そっちの回線は完全消滅したわ』
『結局、最後まで何者か分からなかったしね』

 三人は同時に首を傾げ、少し悩む。

『多分、必要以上の接触で因果律が変わりすぎるのを警戒してたんだと思う』
「正直、そっちの方は分からない」
『さすがに因果律なんて物の計算は踏み込んでいい領域では無いでしょう』

 マドカの意見に、他の二人はかろうじて納得する。

『それでこの回線は今後どうする?』
「それこそ因果律への影響を考えれば、消去するのがいいんだろうけど、念のため封印に留めて置こうと思う」
『それは残念ね』
『う~ん、けど間違ってはいないしね。分かった、封印って事で。その子達の事、よろしくね』
「分かってる」
『それじゃあ、皆元気で』

 短い別れの言葉と共に、ウィンドゥが消える。

「あの、プロフェッサー」
「何?」
「私達は今後、どうなるのでしょう」

 アーンヴァルの恐る恐ると言った声に、プロフェッサーと呼ばれた人物は少し考える。

「まずは全機修復する。数が多いから順番に。その後、戦闘記録と機能を一部封印して民間用に転換しようかと思っている」
「そうですか………今後の事が何もインプットされてなかったので」
「余計な事は入れなかったし、メモリーも順次開放にしてたから。それじゃあ破損の酷い子から順番に。他はクレイドルで休息してて」
「分かりました。プロフェッサー・クリシュナム」
「結構楽しかったよね」
「ウチのマスターはちょっと怖かったけど」
「こっちなんか最悪だったのです………」

 武装神姫は皆口々に感想を口にしながら、それぞれのクレイドルへと向かっていく。
 その様子を見ながら、数年前、謎の人物から送られてきてたデータを元に今回の武装神姫サポート計画を発案した彼女達の製作者、そして15年前の自分の仲間達を助けるために尽力したプロフェッサーことアイーシャ・クリシュナムは小さく微笑んだ。



??? 次元の間

闇の中に漂っていた、まだ明滅しているデア・エクス・マキナの破片を、ダメージの残る右手で握りつぶしたフェインティア・イミテイトは、周辺にもはや何の反応も無いのを確認すると大きなため息をつく。

「あーあ、やっぱり戻れないか」

半ば自嘲気味な言葉と共に、ダメージの残る体を見渡す。

「自己修復も限度、空間転移方法も無し、エネルギーも残り僅か」

もはや飛行する事すらせずに、空間に身を浮かべ闇だけが覆う虚空を見つめる。

「私は結局なんだったのかな。トリガーハートのイミテイトとして作られ、管理権限を乗っ取られて本来とは違う世界で戦って、解放されたかと思えばトリガーハートと共闘して、終わったらどこにも帰れず闇の中」

苦笑した己自身を他人事のように考えているのに、呆れるしかなかった。

「もう、このまま機能停止しちゃおうか」

 それを知ったら、先程まで一緒に戦ってた連中はどんな反応をするだろうか、こんな自分でも心配してくれるのだろうか。そんな事を考えてた時だった。

(ダメだよ、あきらめたら)

 急に自分の通信回路に、今まで繋いだ事の無い相手からの通信が入ってきた。

「誰?!」

 通信先を特定しようとするが、なぜか不安定な解析しかできずフェインティア・イミテイトは警戒を強めようとする。

(少し乱暴になるけどゴメンね)

 何もなかった空間に小さな転移の渦が生じ、そこから何かが自分に向けて飛んでくる。

「随伴艦?」

 飛来してきた物が、トリガーハート達の随伴艦によく似て非なる物だと判断すると同時に、それは彼女の目の前で停止。
そこから幾つもの光の帯が発生して、彼女を覆うように包み込む。

「キャプチャー、いや違う何これ?」

 疑問はさらに大きくなるが、自分を光の帯で包み込んだ飛来物は、そのまま転移の渦へと彼女を引っ張り込んだ。
 訳もわからず転移した先、不規則な光の明滅する空間には彼女を引っ張り込んだ当人が待っていた。

「エグゼリカ?!」

 フェインティア・イミテイトの叫びに、言われた当人は首を横に振る。

「初めまして、私はイグゼリカ。神楽坂ユナの次代の光の救世主です」

 イグゼリカはフェインティア・イミテイトを覆う光を解除すると、随伴艦と似たデバイスを自分へと戻す。
それを眺めていたフェインティア・イミテイトは彼女を繁々と観察する。

「その武装、どう考えてもチルダの技術の産物に見えるけど、光の救世主って名乗ったわよね、貴方」

 その質問にイグゼリカは困った顔をしながら、それに答えた。

「私は本当ならば貴方によって壊滅寸前まで追い込まれる筈の機械化惑星出身です」
「私によって? じゃあ武装神姫を送り込んだ未来って貴方の?」
「すこし違います。壊滅寸前の機械化惑星から強引な転移をしたマシン・クレイドルに乗ってた私は偶然からチルダへと転移しました。そして、苦労の末に元の世界に戻った私が見たのはデア・エクス・マキナによって大きな被害を受けている幾つもの世界でした」

 イグゼリカの表情に悲しみが浮かぶのを、フェインティア・イミテイトはどう反応を返したらいいのか分からないでいた。

「生き残りの人達を纏め、抵抗を続けていた先代から、光の救世主を受け継いだ私は多くの犠牲を払いながら、こちらの世界のデア・エクス・マキナを倒す事には成功しましたが世界には大きな被害が残りました」

 遠くを仰ぎ見るイグゼリカに、フェインティア・イミテイトは思わず視線をそらす。
自分が、その破壊の片棒を担いでいた事実を責められているようだった。

「そして私達は、今後どうするべきかを話し合いました。その過程でこれが発見されたのです」

 イグゼリカは一つのディスプレイを空間に映し出す。
 そこには幾つもの世界が相互に干渉しあう多次元世界地図だった。

「それって、デア・エクス・マキナの使ってた転移用データね」
「そうです。これを解析した私達は、このデータを元にデア・エクス・マキナと同等の転移技術を入手し、Gの大々的な協力の元に、破滅的な時代を回避するための過去への干渉作戦を決定したのです」
「それが武装神姫ってわけだったのね」
「そうです、過度の干渉はデア・エクス・マキナに別な行動をとらせかねず、そうしたら時代は再度、破滅に向かうかもしれない。そんな危うい作戦でしたが、成功させる事ができました」

 イグゼリカの微笑に、ますます居たたまれなくなったフェインティア・イミテイトはずっと考えてた疑問をぶつける。

「で、貴方の故郷を滅ばした私に復讐でもするつもりなのかしら?」

 もしそうだとしても、今の自分には反抗する力も無い事に、なぜか僅かな安堵を感じていた。
 が、イグゼリカはバツが悪そうに頭をかきながら困った感じで返答。

「確かに私の世界ではそうでしたけど、今の貴方はこちらの貴方じゃないですし。そちらの戦いに協力してくれたなら、むしろお礼を言わせてください」
「………あの子もそうだったけど、光の救世主ってお人好しばかりなの」
「そうなんでしょうね」

 この返答に虚脱感を覚えたフェインティア・イミテイトは、自分も頭をかこうかとした時に、自分自身が燐光に包まれだしたのに気付いた。

「これって………」

 見るとイグゼリカ自身も燐光に包まれだしていた。

「歴史は変わります。私は今から戻る世界では光の救世主じゃ無いのかもしれません。だから、その前に貴方を闇から救い出したかった」
「本当にお人好しね、光の救世主って」
「行ってください。フェィンティア・イミテイト。どの世界に飛ぶのかはわかりません。けど、貴方は貴方自身をそこで見つけ出してください」
「お人好しでお節介ね」
「先代譲りです。もし、あなたの世界の私に再開できたら、私がお礼を言っていたと伝えてください」
「保障は出来ないけど分かったわ」
「では、さようなら。そしてありがとう私達の時代を救った恩人」
「ありがとう、は私のセリフ。放っておいてもよかった私を助けだした、とんだお人好しの恩人さん」

 それを聞いたイグゼリカは笑顔を共に手を振る。
それに手を振りかえしたフェィンティア・イミテイトの視界は、光の明滅する空間から違う空間へと切り替わっていく。
思わず目を閉じた次の瞬間、強い光を感じ、目を開ける。
その視界には青空が広がっていた。
空に放り出されたフェィンティア・イミテイトは自分自身を制御して低速飛行を始める。

「ホント、お人好しね」

 ふと満身創痍だったはずの体が、ある程度修復されている事に気付いたフェインティア・イミテイトは笑みを浮かべる。

「私自身を見つける、か」

 空を飛びながら、彼女は先程の戦いで共に戦った者達を思い出す。

「行こう。あの子達の様に自分の意志で戦える存在になるために」

そうしてフェィンティア・イミテイトは空を駆け抜ける、その姿には新たな目標を秘めていた。



 数多の世界を巻き込み、多くの争乱を産んだ戦いは、鋼の乙女達の奮戦により、こうして幕を降ろした。
 長く激しい戦いの中、乙女達は決して希望を失わず、仲間を信じ、そして共に力を合わせ戦った。
 深く暗い次元の間からの魔の手は、二度と伸びて来ないだろう。
 それぞれの世界へと戻っていった友の事、乙女達は決して忘れない。
 それが、彼女達にとって何よりもの戦果なのだから…………


END



















「デア・エクス・マキナの活動、完全停止を確認」
「当初予想された敗北確立、0.02」
「機械体と有機体の複合戦闘体の合併戦闘力に大幅な修正の必要あり」
「更なるサンプル観察の必要を求む」
「類似体存在世界、検索を開始………」


TO BE NEXT SUPER ROBOKKO WAR!






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