『麦屋町昼下がり』 藤沢周平
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 短編集・・一冊に4編収録されています。4編のみ、と言うべきかも?
すべて武家物、表題作「麦屋町昼下がり」は『隠し剣』シリーズ系と言うのでしょうか。婚約者(?)の満江が清々しい気分にさせてくれます。「三ノ丸広場下城どき」は『たそがれ清兵衛』系、怪力お茂登がユーモラスな味を添えています。

 「山姥橋夜五ツ」は、ミステリー的に優れています。「三ノ丸広場下城どき」と同じく、任務の失敗という経験がテーマに絡み、この作品集では一編一編の枚数がやや多い分だけ、深く書き込まれているような気がしました。

 最後の「榎屋敷宵の春月」は、ちょっと『花のあと』を連想させました。女性、しかもかなり身分のある(?)者が主人公であるせいでしょうか。

1989.3 文芸春秋/1992.3 文春文庫 
『麦屋町昼下がり』あらすじ
 

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