戦艦ルイジアナ級(米)

  ルイジアナ(BB67)
  オハイオ(BB68)
  メイン(BB69)
  コネチカット(BB70)
  ネブラスカ(BB71)
  サウスカロライナ(BB72)
  ニューハンプシャ(BB73)
  オレゴン(BB74)

 18"砲を装備する英国のSt・アンドリュー級に対抗できる長砲身16"砲搭載戦艦の決定版としてアラバマ級を拡大再設計して建造された最強の16"砲戦艦である。
 また本級は、今世紀の戦艦としては世界最多の8隻の同型艦を持つ戦艦である。しかも主砲を18"砲に変更して建造された準同型艦のノースダコダ級4隻を含めると同型艦は実に12隻にもなり近代戦艦の中で最多同型艦数を持つ戦艦となる。
 まさに圧倒的な物量戦を得意とする米国が生みだした、戦艦戦力の中核に相応しい戦艦であった。
 このように多数の同型艦が作られた本級だが、その性能は粗製濫造の量産品とは違い極めて優れたものだった。
 本級は、弾重の大きいSHS弾を発射する発射速度と初速に優れた長砲身16"Mk7砲を12門搭載し、その主砲による強大な攻撃力と、大和型にも匹敵する巨体に施された長砲身16"砲弾対応の装甲の直接防御力、そして世界でも最先端に位置する米国式の高度なダメージ・コントロール・システムによる間接防御力により英日の18"砲搭載戦艦に対抗する正しく米海軍の主力戦艦であったのだ。
 本級は、米海軍戦力の根幹であるサウスダコダ級の後継艦として計画されてもので、その基本設計は、新世代戦艦としての技術を確立したアラバマ級や16"Mk7砲を搭載して主砲攻撃力を強化したミズーリ級に続いて、特に防御力の向上を強く意識したものであったとされる。
 そのため本級の装甲防御力はミズーリ級から大きく強化されており、米国戦艦の全てに見られる傾向だが、特に本級の水平防御装甲は極めて強固であった。
 その装甲防御力は、舷側装甲が約410mm、バーベッド部が約540mmと大和型に匹敵する厚さがあった。また、主砲塔前盾部は、457oの主装甲鋼鈑へ114oの装甲鋼鈑を追加装備して約570mmとしており、大和型の650mmには劣るもののミズーリ級とは段違いの強固さを有していた。
 このように大和型に匹敵する水平装甲防御力を、大和型より広範囲に施した本級は、水平防御力に限ってみれば耐18"砲弾防御装甲を有すと評価しても間違いではなかったのである。
 しかし、面白いことに垂直防御装甲についてだけは、それ程でもなかった。垂直装甲が比較的薄いのは米海軍のドクトリンに基づく中近距離戦重視の米戦艦の特徴と言える物であり、他の米国戦艦と比べるなら本級の垂直防御装甲は、大きく改善されていた。
 しかし、主砲塔を4基搭載した事により主要装甲防御部のしめる割合が巨大化している事もあり耐18"砲弾防御装甲としては、物足りないものであった。
 本級の船体部垂直防御装甲は、第一層が38mm+19mmの57mm、続く防御甲板の第二層が147mm+32mmの約180mm、さらに第三層と第四層が各16mmあり、四層の合計で装甲厚さは265mmにも達していた。また、砲塔天蓋部装甲は、約230mmにも達する一枚の装甲鋼鈑で作られていた。
 これなら約30000mで約230mmの貫通力を持つ18"砲弾を防ぐ装甲厚としては充分なものとも考えられるが、船体の垂直防御装甲は、最大147mmの防御甲板装甲を中心とした多層の装甲鋼鈑を重ね併せて得たもので、当然ながら同じ厚さの1枚の装甲鋼鈑より耐弾性が大きく劣るものであり、加えて条件が揃えば30000m以遠でも的確に命中弾を送り込んでくる18"砲搭載の日本戦艦と戦うには、心許ないものであった。
 ちなみに耐18"砲弾防御で設計されている大和型の垂直防御装甲は、船体部が第一層48mm、主防御甲板である第二層が200mm、更に第三層が90mmの3層で約340mmにも達しており約35000mの遠距離で命中する大落角の18"砲弾にも有る程度耐久可能で、主砲塔天蓋装甲も約270oに達する1枚の装甲鋼鈑で作られていた。
 このように垂直装甲が比較的薄い理由は、要求性能の確立が1939年、一番艦のルイジアナの起工が1940年春、進水が1941年秋と第二次世界大戦の開戦前だったため、日本戦艦の遠距離射撃技術を問題視していなかった事にも一因があったとされる。また、戦艦の垂直防御力改善について米海軍は、直接的な装甲強化に最後まで懐疑的で、主に緊急注水装置等のダメージコントロールシステムの強化と改善を対応策として優先的に取り入れていた。
 本級は、その形状からミズーリ級を大型化した設計だと言われる事もあるが、本級の断面図を一見すれば判るように実際にはミズーリ級やアラバマ級とは違い、舷側装甲帯が船体外縁に取り付けられていた。これは、船幅の制限を無くした事で傾斜装甲を最良位置である船体外縁に取り付けられるようになったためである。
本級は、このように強固な装甲防御が施されており、加えて大和型に匹敵する70000トンの排水量の船体規模と大和型を大きく上回る主要防御部の組合せにより米国戦艦の理想とも言える極めて強靱な耐久力を有していた。
 また本級は、40mm47口径機関砲Mk1をはじめて就役時から搭載した戦艦であった。この40mm機関砲は、米国が1940年にスウェーデンのボフォース社からライセンス権を取得した大口径機関砲で、日英軍が愛用したビッカース40mm機関砲と比較して初速と有効射程で優れており、対空射撃ばかりでなく、対水上射撃にも適していた。
 米海軍は、1942年までにこの機関砲を艦載用として単装、連装、4連装の砲架に搭載する対空砲塔を開発し、量産を開始した。また、米陸軍でも単装型が四脚式砲架に載せられて野戦対空砲として量産され活躍した。
 このボフォース40mm機関砲は、多数が米国から仏国へ供与されたばかりでなく、米国とは別個にスウェーデンからライセンスを取得した日英枢軸軍側でも1944年初頭から艦載高射機関砲として量産されたため、敵味方が共通で使用する珍しい火砲となった。
 ただし、本級の一番艦であるルイジアナと二番艦であるオハイオは、就役時までに、この40mm機関砲の数が揃わず間に合わせとして28mm機関砲が混載されたが、3番艦のメイン以降は40mm機関砲のみが搭載された。また、ルイジアナとオハイオの28mm機関砲も修理等の機会を使って40mm機関砲に換装されている。
 本級は、この4連装10基の40o機関砲に加え連装10基の5"両用砲を搭載しており、極めて高い対空および対水上阻止火力を有していた。
 ただし、このように究極の16"砲搭載戦艦として極めて優れた性能を有した本級だったが、4基を搭載した主砲塔に容積と重量配分を取られ、垂直防御装甲ばかりでなく機関部の容積も制限されたため最高速力はアラバマ級と並ぶ28ノットが限界だった。
 また、長砲身16"砲12門の一斉発射衝撃に耐えて有効な射撃を実施できるよう最大船幅が33mをこえてしまったためパナマ運河が利用出来ない等の難点も有った。
 しかし、実戦において垂直防御力以外の難点は大きな問題を生じておらず大戦後半の米国主力戦艦として充分な活躍を残している。
本級の総合的な戦闘能力は、18"砲戦艦の中で最優秀艦のひとつである大和型を相手として想定した場合、遠距離戦でこそ垂直防御力不足による不利を否めないが、中近距離戦では互角、夜戦のように始めから至近距離での交戦なら強力無比な18"砲弾のラッキーヒットさえ無ければ優位で戦える有力な戦艦である事が実戦により証明されている。
 本級は、1940年、1941年、1942年に各4隻が着工されたが、5番艦であるネブラスカ以降の艦は、それまでの実戦経験等を盛り込んだ設計変更や旗艦設備の強化が実施された。そのためネブラスカ級と呼ばれる事もある。
 また、1942年に着工された4隻は、18"砲を搭載するノースダコダ級として就役している。
 本級の中で第二次世界大戦を生き残った艦は全艦が主砲を18"連装砲に換装する等でノース・ダコダ級に準ずる18"砲搭載艦に改造され、大戦終結後も米国海軍主力戦艦の一翼を担って長期にわたり活躍を続けた。
()内はルイジアナとオハイオの就役時

 基準排水量61000トン 満載排水量73500トン
 最高速力28.0ノット 航続力15ノット/15000海里
 主武装16"V×4 5"U×I 40mmMGW×I(C)
 28mmMGW×(E) カタパルト×2
    航空機×2〜4 他

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