戦艦ノースダコダ級(米)

  ノースダコダ(BB75)
  カンザス(BB76)
  ユタ(BB77)
  ワイオミング(BB78)

 米国最強の16"砲搭載戦艦であるルイジアナ級の船体を若干設計変更して米国初の実用的18"砲である45口径18"砲Mk3を搭載した戦艦が本級である。
 本級に搭載された18"砲Mk3は、ダニエルズ・プラン時に開発された鋼線式の48口径18"砲Mk1や16"砲Mk7の発展型として試作された自緊式の47口径18"砲Mk.Bに続いて米国で3番目に開発された自緊式の45口径18"砲であり、米国で始めて正式化された18"砲となった。
 この18"砲Mk3は、アラバマ級に搭載された16"砲Mk6を拡大再設計した砲で、弾道特性等が16"砲Mk6に極めて近い特性を持つ性能の安定した火砲であった。
 また、この18"砲Mk3には、当然ながら16"砲Mk6やMk7と同じくSHS弾が用意されていた。
 この18"SHS弾は、重量が1650sもあり、18"砲Mk3からは初速710m/sで発射された。
 この時の砲口エネルギーは約4.2MJと日本の大和型が装備する九四式46糎砲の4.44MJより若干劣るが、弾重の優位により遠距離での垂直貫通威力では拮抗していた。
 また、発射速度も2発/分と大和型の1.5〜1.8発/分を上回り、そのため一分間当たりの発射数では、レーニン級の登場まで18"砲搭載戦艦中最大の能力を持っていた。
 米海軍が初速で優る47口径18"砲Mk.Bを退け45口径18"砲Mk3を採用した理由は、砲としての完成度が高い事に加えMk3がSHS弾の発射可能である事と発射速度に優れる事にあったとされる。
 ただし本級も、ミズーリ級に搭載された16"砲Mk7程ではないとしても、それまでの米戦艦と同じく中遠距離での主砲一斉射撃時に散布界が大きく広がる傾向があった。
 また、16"砲Mk7を換装する形で18"砲を搭載した主砲塔は、装甲強化等も行われた事もあり重量が2500トンにも達した。そのため砲塔の駆動システムが限界に寸前となり砲塔の旋回速度や砲身の仰角速度が著しく低下した。
 このため近接咄嗟射撃能力が不十分と判断され、本級では近接戦時の阻止火力低下を防ぐために対策として6"副砲が復活している。
 この副砲は、ブルックリン級やクリープランド級の軽巡に搭載されていた47口径6"砲Mk16の3連装砲塔を連装砲塔に再設計したもので、軽巡用の3連装砲塔と比べて装甲防御力も強化されていた。
 しかし、この副砲は、大戦終結直後までの短期間使用されただけで、直ぐにアメリカ級戦艦の副砲やウースター級軽巡の主砲に使用されていた新型の47口径6"砲DP Mk16両用半自動砲に換装された。この砲は、発射速度と対空射撃力に優れた高性能火砲であった。
 また、18"砲の搭載で優秀な攻撃力を有する事になった本級だが、もともとルイジアナ級として建造されていた船体を使用しているため装甲防御力が完全な耐18"砲弾防御ではなく、特に船体の垂直防御装甲と主砲塔天蓋部の装甲は、大和型と比較して劣る物であった。
 船体の垂直防御装甲が薄目なのは、それまでの米国戦艦にも共通する戦術ドクトリンを理由のひとつとするものだが、主砲塔天蓋部の装甲に付いては、どちらかと言うと砲塔の重量限界によるものであった。
 また、新世代の米国戦艦は、日英戦艦と比べて極めて大量の燃料を搭載しており、本級も満載排水量が73500トンと10000トン近い燃料を搭載し、15ノットで15000海里の極めて優れた航続力を有していた。
 このように長らく16"砲に拘った米海軍が、遂に登場させた18"砲搭載戦艦である本級は、16"砲搭載戦艦のマイナーチェンジ版でありながら大和型やライオン級に匹敵する極めて優れた性能を有していたのである。
 本級4隻は、1942年にルイジアナ級として揃って着工されたが、3番艦のユタと4番艦のワイオミングは、物資や人員がアメリカ級の建造へ優先的された上に大戦終戦のために建造ペースが落ち込み、やっと1946年末に第二次世界大戦の教訓を盛り込み就役した。
 そのためこの2隻は一時期ユタ級と呼ばれていたが、ルイジアナ級とノースダコダ級に同等に改装が施されたされたため現在はこの名称は使用されない。
 ちなみに、このノースダコダ級の設計方針と性能が、計画だけに終わった日本の駿河型防御力向上型戦艦に類似しているのは、日米設計陣の技術的到達点の偶然の一致か歴史の悪戯であろう。
 ()内はユタの就役時

排水量61500(63000)トン 満載排水量73500(75000)トン
速力27.6(27.8)ノット 航続力15ノット/15000海里
主武装18"U×4 6"U×4(×C) 5"U×G(×E)
 40mmMGW×G カタパルト×2 航空機×2〜4他

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