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サリー級重巡洋艦（英）
サリー サザーランド 海軍条約が失効を間近に控えた1930年代後半になると列強各国は戦艦だけでなく新型巡洋艦の建造を続々と競うように再開した。 特に当時の英国にとって常に仮想敵国であった米国は水上戦における砲撃力と防御力を重視した大型重巡洋艦と大型軽巡洋艦の建造に着手した。 このためカウンティ級重巡と新型のシティ級大型軽巡を除くと戦闘能力より通商航路警備や植民地保護と言った任務に適した運用コストや長期航海能力を重視した巡洋艦や旧式艦ばかりを保有していた英国も対抗措置としてカウンティ級以来の水上戦力の高い砲戦用重巡洋艦の建造を試みる事になった。 こうしてカナダに供与される事になったカウンディシュ級巡洋艦の代艦として暫くぶりに建造された重巡洋艦が英国で最大最後の大型重巡洋艦であり、第二次世界大戦に参加した枢軸国重巡で最も新しく建造された艦となったサリー級の2隻である。 本級は、インコンパラブル級を設計したサー・スタンレー・グッドウッドによって、ヨーク級を拡大改良し、条約型重巡の欠点である防御力を改善する事に力を注いだ設計がなされていた。 そのため約14､000トン以上の基準排水量を持つ大型船体には、充分な装甲防御が施され、対水雷防御としては機関部シフト配置と水雷防御用バルジが装備され、加えて最新のダメージコントロールを詰め込んだ極めて強靱な巡洋艦として建造された。 特に装甲防御力の向上は顕著で例えば本級の水線装甲の厚さはカウンティー級を大きく上回る178mmもあった。 これはカウンテイー級やヨーク級の条約型重巡の水線装甲が76〜105mm程度だった事を考えると飛躍的な重装甲化である。そしてもちろんこれは利根型の147mmやボルチモア級の152mmすら凌ぐ大きな値であった。 また、砲塔正面装甲228mm、同天蓋装甲105mm、司令塔および砲塔基部装甲203mmの装甲が施されており、単純に装甲防御力のみを比べるなら、ほとんどの部分でボルティモア級のそれを大きく上回っていた。 装甲防御力以外の面では、最新式電子戦機材であるRDFを建造時から装備し、水上偵察機の搭載数を4機に増加させる等で高い偵察能力を持ち、加えて英国巡洋艦らしく最大航続距離や走波性等の航海能力も良好だったことがあげられる。 ただし、主砲の砲門数は8"/50 BL Mark10型連装砲4基で計8門と平均的な条約型重巡の1.5倍近い排水量を有する割に条約型重巡のカウンティー級より1門少なかった。 この8"/50 BL Mark10型主砲は、中遠距離での貫徹威力を向上させるため、弾重約130sの新型砲弾を初速約815m/sで発射でき、発射速度も最大で5発/分と、それまでの英国の条約型重巡が搭載していた8"/50 BL Mark8や8"/50 BL Mark9等より性能の向上させた高性能砲であったが、3〜4発/分の発射速度を持つ8in砲を日本の条約型重巡が10門、米国の重巡が9〜12門も搭載していた事を考えるとやはり劣勢の感があった。 しかし、これは本級が排水量増加分の多くを装甲等の防御力向上や対駆逐艦および対空火力の増強に当てていたためと航海能力を維持したためである。 また、本級は対空対水上近接防御能力が重視されており、そのため4.5"/45 QF Mark3型連装高射砲を片舷各4基の8基16門装備していた。そして片舷4基の砲塔のうち煙突に射界を妨害されない位置にある2基は限定射界ながら反対舷側上空を射撃する事が可能だった。 また、水雷兵装に関しても21" Mark9型魚雷4連装発射管2基を装備しており水雷戦能力としては雷装を全廃した米国巡洋艦と3連装発射管4基を平均として重雷装を追求していた日本巡洋艦の中間に位置する存在だった。 本級の外見上の特徴としてはヨーク級までの斜め煙突をシティー級と似た垂直煙突に改め、船体中央部へ航空装備を配置していたため艦影がリナウン級やキング・ジョージ・X世級、そしてインコンパラブル級に酷似していたことがある。そのため本級は、大戦中に何度もこれらの戦艦と誤認されて連合国側に混乱を引き起こし、知らず知らずに敵を攪乱する武勲をあげていた。 大戦がはじまると本級は船団護衛から艦隊決戦までの多用な任務で活躍したが、本級に続いて建造される計画だった8in砲3連装3基搭載の17､500トン級重巡は、建造コストが格段に低いシティー級大型軽巡の建造が優先された事と、海戦の様相が8in砲を必要としなくなりはじめことにより建造が中止となり、本級2隻が英国が建造した20世紀最後の重巡洋艦となった。 基準排水量 14､500トン 満載排水量 18､800トン 最大速力 33.0ノット 航続力 15ノット/10､000海里 主武装 8"U×４ 4.5"U×G 2pdrMG[×C 21"TTW×２ カタパルト×１ 航空機３機他 |