この物語は、EEGオリジナル戦術級戦車戦SWG装甲戦闘団シリーズの「親衛戦車軍東部戦線1943−45」を使ってプレイする「独ソ戦1944年キャンペーンシナリオ」と「独ソ戦1945年キャンペーンシナリオ(EEG誌で発表予定)」のEEG会員によるテストプレイを基に出筆したものです。
従ってこの作品は完全なフィクションです。
装甲戦闘団シリーズは、現在以下の作品が発表されています。 1.親衛戦車軍 東部戦線1943-45
2.大ロシア電撃戦車戦 東部戦線1941-43
3.近衛戦車旅団 西部戦線1944-45
4.砂漠の鼠 アフリカ1941-43
5.剣の刃 フランス1941
6.装甲戦闘団シリーズ追加ルール
7.装甲戦闘団シリーズ追加ルールネット版
!注意 :「大ロシア電撃戦車戦」は「親衛戦車軍」の、「砂漠の鼠」「剣の刃」は「近衛戦車旅団」の拡張キットです。
◆ダンエドモン・フォン・バンパー(1910-1945)◆ バイエルン地方の古い軍人貴族家の長男として誕生。騎兵士官としてワイマール政権下の国防軍へ入隊したがエルウィン・ロンメルと出会い戦車士官へ転向する。
◆ジェーノ・クボーダン(1920-1999)◆ キール近郊に住む地方官僚の次男として生まれる。
「紅槍の騎士」 タイトルの「紅槍の騎士」は、ダンエモンド・フォン・バンパーがフランス戦において第7装甲師団の先鋒部隊長として活躍し、ロンメルの長槍と渾名された事にちなんでバンパー戦闘団が使用していた非公式部隊エンブレムの「赤い塗料で描かれた騎士の槍」から取ったものです。
プロローグ.老戦士の遺言
半世紀以上昔の、あの地獄のような戦いの日々は、人類の殆どにとって遠い過去の歴史となり辛うじて生き残った戦友達も殆どが逝ってしまった、そして新しい世紀を迎えようとする今、遂に私も本物の地獄へ向かう引き返せぬ病床へ身を横たえる時が来た・・・。 しかし、その事に恐れはない、先に逝った戦友達に、そして私の尊敬する上官であり師とも兄とも慕ったダンエドモン・フォン・バンパー中佐に会いに逝く事ができるのだから。 彼の地で再びバンパー中佐の下で戦い、地獄の悪魔どもを蹴散らして見せよう・・・地獄の悪魔がロスケ供より強いとは思えないから・・・。 しかし、今は残された僅かな日々を使い、あの戦いの記録を伝えるのが私の義務であり任務であるのだ・・・私はその為に生き残ったのだから・・・あの地獄で・・・。 エピソード1.着任 お世辞にも快適とは言えないが、暖かさだけは確保されていた貨車のドアが開け放たれると同時に私をロシアの雪混じりで凍てついた突風が手荒く歓迎してくれた・・・。 私は、大ドイツ装甲擲弾兵師団の先任戦車小隊長として参戦したチタデレ作戦で負傷し、その後、本国へ送還され約3ヶ月間の促成戦車中隊長教育を受けた後、劣勢を覆い隠せないロシアの大地に再び戻って来たのだ・・・。
私の配属先は、軍団直轄の国防軍第666独立装甲大隊を中核とした戦闘団だった・・・この装甲戦闘団は、優秀な装甲部隊指揮官として武装親衛隊のパンツァーマイヤーと共に著名な存在だったダンエドモン・バンパー大尉の率いる部隊であり、部隊長の名前を取ってバンパー戦闘団と渾名された強力で強運な部隊として国防軍戦場ニュースで度々その戦いが報道される有名な部隊で有った。 優秀な戦車指揮官バンパー大尉に率いられたこのカンプグルッペは、クルスク戦やその後の後退戦での激戦に消耗し尽くしていた東部戦線所属の装甲部隊の中で数少ない有力な戦力を保有する火消し部隊として過酷な転戦を続けていた・・・。 対戦車砲に乗車を破壊され負傷した中隊長に代わり中隊の指揮を取ったクルスク戦での戦いぶりを評価されたのか、私はこの精強な戦闘団の戦車中隊長を命じられベルリンから輸送機と列車を乗り継ぎ地吹雪の荒れ狂う中、再び戦いの大地へ降り立ったのだ・・・。 「歓迎する。魔女の釜へようこそ。今は冷え切っているが直ぐに熱くなるだろう・・・熟練戦車指揮官は今や宝石より貴重な存在だ、なるべく長生きしてくれたまえ」 それが着任の報告を終えた私にバンパー大尉が投げかけた歓迎の言葉だった・・・。 エピソード2.機動防御戦 地吹雪が治まると、私に長旅の疲れを癒す間も与えず機動防御戦への出撃命令が出された。
我々は、偵察部隊を先行させ、貴重なパンター戦車隊を先頭に、主力のW号戦車とV号突撃砲を後続に、そして戦車部隊後方には、マーダ自走対戦車砲と装甲擲弾兵、そして少数のナースホルン自走重対戦車砲やV号戦車を配置する隊形で敵戦車部隊との会敵予定地点を目指し進軍した。
交戦は、会敵予定地点より手前で始まった。
そして、その敵軍の混乱を突いて正面からパンテル戦車が、左右両翼からは私の中隊をはじめとするW号戦車とV号突撃砲、マーダ自走砲の部隊が、細長く延びた敵隊列を押し包むように猛烈な射撃を加えた。 この攻撃に堪らず敵戦車隊が後退を始め、このままなら圧倒的な優位で勝てると安心しはじめた時、右翼に深く回り込んでいた味方部隊が有力な敵後続部隊と会敵した。
敵の後続部隊は、重防御のKV1重戦車と大火力の新鋭SU85襲撃砲からなる有力な部隊であり、この敵部隊を正面から受け止めた味方戦車中隊は、一転して苦戦に追い込まれたのだ。W号戦車が撃ち竦められて混乱し、弱装甲のマーダ自走対戦車砲は次々と撃破された。 このピンチにバンパー少佐は自ら指揮するパンター戦車中隊で正面を押さえ、さらに正面後方から最大火力を持つナスホルンの長砲身88ミリ砲でアウトレンジ射撃をさせ敵の進撃を食い止めると同時に私の中隊に敵右翼の森を迂回して後方遮断を命じた。
ロシアの平原にはやい日暮れが訪れる頃、戦場には40両以上のソ連軍戦車の骸が点在していた・・・我が軍の損害、戦車自走砲全損12両、偵察車両全損8両、擲弾兵損害若干。弾薬補給を受けしだい作戦続行可能。
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