安田しん二の楽器

 私、安田しん二が使用してるアコースティック・ギターを紹介致しま〜す。

アコースティック・ギター

 私と世代が同じ位のギタリストに話しを聞くと、大抵の人が「最初のギターはアコースティック・ギターだった」と言います。実は私も最初のギターは従兄弟から貰ったガット・ギターでした。しかし残念ながら、当時の流行はガット・ギターではなく、黒いピック・ガードの付いたフォーク・ギターでした。
 私は学生時代にはとうとうアコースティック・ギターを買う事は有りませんでしたが、家には兄貴のモーリスのフォーク・ギターが有りました。当時私の兄貴は、親に「シャーペンの芯を買うから100円くれ」と言ってお金を貰い、お金をコツコツ貯め、「この子はよく勉強する子だね。もうシャーペンの芯無くなったのかい?シャーペンの芯くらい、いくらだって買ってやるから、遠慮無く言いなさい」と勘違いし、喜んでお金を渡してました。私もその兄貴をみならって、「かあちゃん、シャーペンの芯買うから100円くれ!」と言うと、「お前は勉強なんかした事無いくせに、嘘つくんじゃ無いよ!」と言って怒られました。
 当時は、張った弦の余りをヘッドから“ピ〜〜ン”とハリネズミの様に伸ばすのが流行ってたのですが、その頃小学生の弟が裸でその前を通ると「身体に刺さって痛かったぁ」とオヤジに告げ口し、兄貴が学校から帰って来た時には、ペンチでグチャグチャに曲げられていたのを思い出しました。兄貴が真っ青になってるのが異常におかしかったので、私はつい吹き出すと、兄貴にはらいせにぶん殴られました。
 それから、ヘッドに小さな人形とかを垂らすのも流行でした。私は当然そんな人形すら買うお小遣いを持ってなかったので、いらなくなった枕カバーを母親の裁縫道具を拝借し人形を作って従兄弟から貰ったガット・ギターに付けてみました。兄貴は「バカじゃないの、その“わら人形”!」と言って私をバカにしました。傷ついた私は、直ぐそれを外してしまいましたが、今になって思えば、私の志は「目指せ!ロック・ミュージシャン」だったので、その人形を外しておいて正解だったのかもしれません。


レネ・ガンボア チャラン・ギター 2004年製

 ボリビアはコチャバンバの名工、レネ・ガンボア作のガット・ギターとチャランゴのダブル・ネックです。
 私は「ボリビアのガット・ギターは低音がよく出る」と言う印象を持ってますが、このチャラン・ギターのギター部分もその例に漏れてないと思います。その特徴は、誰でも聞き分ける事が出来る程、実に明確だと思います。フォルクローレなどでは、あまりベース・ギターを使わず(使う事もある様ですが…)、代わりにガット・ギターでベース・パートを奏でる事が多いので、このギターはそう言う事にもとても適してると思います。もちろんコードをストロークしてもバランス良く音がはっきりと出るので、とても良い楽器だと思います。因に、弦高はかなり高めなのですが、リペアに出して調整する事も勿論可能ですが、私は「きっとこの弦高の高さが、奏法や音にも影響して、ボリビアらしい響きを出してくれてるのだろう」と勝手に解釈し、あえて暫くはこのまま使う事にしております。
 チャランゴ部分は、ギターのボディーの中にチャランゴのボディーが入れ子で入ってます。しかし、音の方は、チャランゴ独特の“コロンコロン”した感じではなく、高音が“シャラ〜ン”と抜ける様なライトな響きをしています。ただ、かき鳴らしをする時、構造上、チャランゴを弾く時とは違う角度で右腕を構えなくてはならず(肘が浮いてしまう)、更にガット・ギター部分の6弦に爪が当たってしまう事なども有る為、練習と慣れが必要です。しかしその反面、チャランゴを構えた時に安定よく固定される為、複雑なコードや、今迄押さえ難かったコードなども、容易に押さえられる様になってます。


ヤマハ CGジュニア・ガット・ギター

 数年前まで藤沢に有った楽器屋さん、『タハラ』(CDショップの方は今も有り、よく行きます)が店じまいすると言うので、「冷やかしにでも」と行ってみますと、このギターがポツンと置かれていました。元々が子供用のギターで定価も安かったのですが、“店じまい価格”で更に御安くなっておりました。最初は買う気など無かったのですが、財布の中を覗くと持ち合わせが有ったので、「飲み会1回分」と言う変な解釈をして買ってみました。店員さんに「これ下さ〜い」と言うと、その展示してあったのとは別の段ボール入りの物を店の奥から出して来ました。私は、「ま、良いかぁ」と、一応ネックの反りなど無いかだけを確認して、家に持って帰って来ました。
 家族には当然「それ、なぁに?」と聞かれましたが、私は「ギターだよ、見りゃ分かるだろぉ!」と強気の発言をしました。それを聞いて「……」となって飽きれる家族に、最初は強気だった私も、聞かれもしないのに「でも、安かったよ。いくらだと思う?飲み会1回分だと思えばね……。酔っぱらって帰って来るよりは健全だろ?俺……ミュージシャンだもんね……」などと、気が付くと聞かれもしてないのに勝手にペラペラと喋ってるのでした。
 さて、早速このギターをチューニングして弾いてみますと、“ゴワ〜ン”と言う、なんともさえない音をしております。やっぱり、「飲み会1回分」はこの程度なのか?実際には「飲み会1回分+2次会付き」だったのにぃ……。「!!」、大事な事を思い出しました。弦を換えてみましょう。私はサンダル履きのまま近くの楽器屋さんへ直行、オーガスチンの弦を買って来て、早速張り換えました。「お〜!」、変な倍音はスッキリして、ちゃんとした音になりました。それもチープではありますが、実にライトなトーンです。勿論、高級ガット・ギターの様な深みなどは全く有りませんが、これはこれで面白いです。数日間弾き込むと、更に弦が馴染んだのか、胴が鳴り始めたのか、かなりまともな感じになって来ました。
 私は「永遠の踊り子」と言う曲のレコーディングで、このガット・ギターを使いましたが、倍音が他の楽器とぶつかる事が無く、音がよく抜けておりました。やっぱり「安い楽器=悪い楽器」とは、一概には言えないですね。


マーチン 000−28 1971年製

 マーチンの000−28です(品番に0が3つ付くので、「トリプル・オーの28」と言います)。入手後、直ぐにリぺアーに出し、フレットを打ち換え、弦高を弾き易くする為に下げて貰いました。
 マーチンの中でもD−28、35、45と言った、ポピュラーなギターのボディーの事を、所謂「ドレッド・ノート」と言いますが、これはそれよりも小振です。ですが、音量はかなり有り、音色もとてもしっかりした音をしています。音のバランスも良いので、レコーディングする時もとても使い易いです。


ギブソン J−160E 1965年製

 ビートルズなども使用してる(私のとは型違いですが……)、ギブソンのピック・アップ付きアコースティック・ギター、J−160Eです。
 ギブソンJ−160Eは、本来はアンプに接続して使う様に設計された楽器ですので、ハウリング防止の為、ボディーはわざと鳴らない様に作られています。ですが、この“鳴らないアコースティック・ギター”は、無駄な倍音が無い分、レコーディングの時には思いっ切りコンプレッサーを掛けて、独特の音を創り出す事が出来るのです。特に、テレフンケンのマイク・プリ・アンプ、V76/80との相性は素晴らしく、私はかなり気に入ってます。
 「ギブソンJ−160E」と言えば、ブリッジのブロックはセラミックなのですが、私のはセラミックではなく木なのです。しかし、この状態でも結構気に入ってるので、今のところセラミックに交換する事はないと思います。


ギルド JF−1

 1995年に新品で購入しましたので、多分1990年代前半の製造ではないでしょうか。
 音は、私の持ってるマーチンと比べると新しい感じがしますが、やはりしっかりとした良い音をしてます。
 レコーディングではあまり使う事はなく、もっぱらライヴ用なのですが、それ用に付けた、「レース・センサー」と言うメーカーのマグネット式のピック・アップが結構良い音をしてます。実はこのレース・センサーは、私がいつもリペアをお願いしてるリペア・マンのイチ押しだったので付けたのですが、とても良い音だったので気に入ってます。更に、ギターに穴を開けたり、改造する事なく取り付ける事が出来、おまけに、外す時も容易に出来るので、とてもホッとしております。


オベーション セレブレイティー 12弦ギター

 セレブレイティーは、オベーションの廉価シリーズです。たしか、韓国製だと聞いた記憶が有ります。その為なのか、確かに作りは雑な印象があります。更に、私のこれは、弦高が高く、とても弾き難いです(これはリペアでちゃんとなりますが…)。
 音は、“シャリンシャリン”の音なのですが、物は使いようで、レコーディングとかで一発だけ“シャリ〜ン”なんて時にはこれを使ったりします。


T.辻 ピック・ギター

 ピック・ギターは、ジャズ・ギタリストとかが弾いてる、所謂、フルアコからピック・アップを抜いてしまった様なギターです。サウンド・ホールが無いからなのかどうかは分かりませんが、音量はとても小さく、低音もあまり有りません(でもその分、都合が良い時が結構有ります)。
 見た目が良いので、私はライヴで使おうと思い、以前何か良い(マグネット式のでない)ピック・アップはないものかと探したのですが、中々良いのを見つけられず、そのままにしてあります。「最近は良いピック・アップが有る」と聞きましたが、それは追々探して行こうかと思います。
 因みに弦は、0.13の太いエレキ弦(ラウンド、又はフラット・ワウンド)を張っあります。


ヤマハ APX−100

 エレアコのガット・ギターです。
 最初はオクターヴが合ってなかったのですが(新品、しかもやむなく定価で買った……)、リペアに出して、ネックの角度とかを変えて貰い、まともになりました。しかし、割高感はそうとう残りますね……。
 このギターの良いところは、ピエゾ・ピック・アップの音がとても良いところです。生の音をマイクで拾っても中々しっかりした音ですが、やはり普通のガット・ギターとは違い、「やっぱり、エレアコだなぁ〜」と言う音をしてます。


タカミネ PT−406

 このギターは、私が作曲の仕事をし始めた頃に、今はなき藤沢の『BOW』で購入した、私との付き合いが一番永いギターです。思えば、このギターで随分曲を創りました(ありがとぉー!これからも宜しく!)。レコーディングで使う事は無いのですが、いつも私の身近に置いて有ります。可哀想な事に、私はよくこれを倒してしまうので(反省、ゴメナシャイ)、けっこう傷だらけ、見た目だけしっかりオールドしてます(お恥ずかしい……)。ペグだけでも4回くらい取り換えました。
 因に私は、これと同じギターを持ってる友人を3人も知ってます…。ボディーが小さいと言う事で、手軽に弾けるところが良いのでしょう。しかも、エレアコだと言うのに生音も中々良いです。但し、ピック・アップからの音は、私の好みではありません。なんでもこのギターの最初のヴァージョンは、ピエゾ・ピック・アップがこれとは違う物が付いてるとかで、そちらの方が評判が良い様です。


ホームに戻る 次へ 楽器・機材のトップへ