安田しん二の楽器

 私、安田しん二が使用してるエレクトリック・ギターを紹介致しま〜す。

エレクトリック・ギター

 世の中にエレキ・ギターが誕生してから、まだ半世紀ほどしか経ってませんが、歴史が新しいこの楽器は、多くの音楽ファンや少年少女達から憧れの的とされ、現在の音楽シーンを語る上でも欠かせない楽器となりました。

 私が中学生の頃、友達のエレキ・ギターのケースを持って誇らしげに歩いていると、近所のお米屋さんのおにいちゃんに、「おい、それエレキだろ?音聞かしてくれよ、ここにコンセントあるから」と言って、店先にあったコンセントを指さされて言われた事を思い出します。私は、「ギターをコンセントに繋いだって音は出ないよ。アンプが無いと…」と言って断りましたが、おにいちゃんは「やっぱり感電しちゃうのか?だって、エレキはシビレルって言うだろ?」と、「そりゃ、エレキに直接コンセントだったら怖いよな」とは思ってはみたものの、今から考えるとかなりトンチンカンな会話をしていたもんです。
 その頃、大抵の音楽雑誌には『Q&Aのコーナー』と言うのが必ず有って、そこで何度か見掛けられた質問で、Q:「今度、お年玉でエレキを買おうと思います。私はリード・ギターを買いたいのですが、サイド・ギターとリード・ギターとの見分け方を教えて下さい」と言う、今から考えるとクスっとしてしまう様なものもけっこう有りました。実は、私も中学生の頃、友達とそんな話しをしてた事が有ります。回答の中で、「リッケンバッカーはリズム・ギターにサイコー」と言うのが有りましたが、その時植え付けられた知識や印象と言うのは強烈で、今でも私の偏見の一つとなってしまってるのです。
 話しのついでに、こんな質問と回答も有りました。Q:「私は今エレキ・ギターを練習してますが、才能が無いみたいなので、今度ベースに転向しようと思います。そこで、今持ってるギターをなんとかベース・ギターに改造したいのですが、方法を教えて下さい」。A:「悪いことは言いません。止めときなさい……」。見てみたかった気がしないでもないんですが……。

 私がギターを初めて手にしたのは、確か小学校6年生の頃だったと思います。従兄弟が押入にしまいっぱなしになってたガット・ギターをくれたのです。その頃の私の腕前は、単にたどたどしく旋律を弾く程度だったのですが、中学生になると、普通にコードを弾いて一緒に歌などを歌う様にもなりました(兄貴のフォーク・ギターで)。当時の「お決まりコース(?)」としては、「フォーク・ギターの後はエレキ・ギターへ」と、王道が待ってるはずだったのですが、私の場合、エレキを買えるお小遣いは無く、ドラムへと路線変更を余儀なくされてしまったのでした(ドラムを持ってないドラマー、当時は沢山いました。しかし、ギターを持ってないギタリストは一人としていませんでした)。しかし、その後家には、兄貴がエレキへ転向したお陰で、エレキ・ギターは常に有りました。ただし、それはフォーク・ギター同様、兄貴がいない時にこっそり弾くと言う事しか出来ませんでしたが…。
 私が自分のエレキ・ギターを初めて持ったのは、22〜3歳の頃だったと思います。それはフェルナンデスの白いストラトでしたが、結局それを持ってステージに立った事は一度も有りませんでした。知らないうちに、そのギターは誰かのところへ行ってしまい、紛失してしまいました。その後、かなり経ってから2本目に買ったエレキ・ギターがエピフォンのソレントでした(下で紹介してます)。それから更に数年経ち、「エレキ・ギターへの愛」もより一層深まり、いつの間にかエレキ・ギターが増えてしまってました。面白いもんで、ギターと言うのは例え同じメーカー、同じ機種でもそれぞれ音のキャラクターが違うので、そんな事を言ってるうちにどんどん増えてしまうのでしょう。「音のキャラクターが一つ一つ違う」と言うのは、ギターだけではなく、木を使ってるドラムやベース、はたまたマイクロフォンの様な機械類までそうだからたまったもんじゃありません。
 これらのギターは全て、レコーディングに使われているのですが、たまにご無沙汰なギターが出ると、「最近、全然使ってないから使おうっと!」と言う感じで出番が回って来る事も有り、自分でも「チョイスの仕方が少し不純かな」とも思うのですが、案外それでもレコーディングは上手く行くみたいです。

 


ギブソン レス・ポール・SG・スタンダード 1960年製

 私の持ってるエレキ・ギターの中でも最も古いギターです。
 この頃のSGは、まだ「レス・ポール」と言う名前が付いていて、レス・ポール氏本人がこれを見て、形が気に入らなかったのか、このモデルに自分の名前を付ける事を許可しなかった事から、「SG」と言う名前が付いてしまったと聞きます。どうやら「SG」と言うのは単なる品番ではない様だけれど、でもいったい何の略なのか……、レス・ポールのイニシャルではない事は確かだけど…。
 これを入手した時の状態は、部品取りをかなりされてしまっていて、オリジナル・ピック・アップのパフはおろか、ペグやブリッジ、テール・ピースに至まで、オリジナル部品の無い楽器でした。しかし、ネックとボディーの状態は良く、結構しっかりしてました。現在、ペグだけは交換しましたが、ピック・アップはその時から付いてる、ディマジオだか、ダンカンのだかのをそのまま付けてあります。オリジナルの状態ではないものの、それでも音は素晴らしく、「やはり、ギターの生命線は、ボディーとネック」とあらためて感じました。


ギブソン ES335TDC 1967年製

 「セミ・アコの代名詞」と言っても過言ではないES335は、リー・リトナーやラリー・カールトンが使ってた事で、一時期フュージョンを演ってる人達の間ではとてもポピュラーでした。実は、私のES335のイメージは「フュージョン」と言うよりは、ウイングスのヘンリー・マッカロウ、アルヴィン・リー、ジャスティン・ヘイワードと言った、ロック・ギタリスト達が使ってた事により、「ロック」の印象の方が強いのです(あとはブルース系かなぁ)。特に1970年代初頭は、これを使ってたロック・ギタリストは意外と多かったと思います(あのリッチー・ブラックモアも使ってましたし……)。しかし、セミ・アコと言う構造上、ステージなどで大音量になるとハウリングをおこし易く、段々とロック・ギタリストからは敬遠される様になって行きました。
 音は、とてもウォームで太いです。テール・ピースはリトナーやカールトンがそうしてた様に、ストップ・テール・ピースの物が人気が有りますが、しかし私はこのブランコ式のやつの方が好きなので、あえて改造とかはしていません。


ギブソン ES330TDC 1967年製

 エピフォンのカジノがビートルズが使ってた事で、今でも人気がとても高いのに対し、ほとんど同じ仕様のギブソンES330の方は、あまりポピュラーではない様です。
 同じギブソンのES335とは品番や形も似てますが、その違いはピック・アップだけではなく、実はボディーの作りもまるで違います。ES335はボディーの中にセンター・ブロックが有るのに対し、こちらは有りません。写真でも分かります様に、ネックの差し込みの深さも違います。ボディーもそうですが、ピック・アップもハンバッカーではなくシングル・コイルと言う事も有り、音色もES335とはかなり印象が異なります。


リッケンバッカー 360−12 1966年製

 1966年製のリッケンの12弦ギターですが、なんと、これは超ミント・コンディションで、一見、新品に見えてしまう程キレイです。こうなるとかえって使い辛いのですが……、でも、楽器は使ってなんぼです。しっかり使ってます。
 ビートルズのジョージが日本公演の時に使ってたのは1965年製の同じ色の同モデルです。一説によれば、リッケンの当時の社長のF.C.ホール氏が、1965年にロサンゼルスで彼らに360−12をプレゼントしたとされてます。たしかにポールの4001Sはこの時(1965年)に手渡されましたが、実はジョージの360−12は、どこかのラジオ局が彼にプレゼントしたらしいとの事です。ちなみに、ジョージが以前使ってた360−12WBとジョンの325ジェット・グロウの方は、1963年に『エド・サリヴァン・ショウ』に出演する為、ニューヨークに初めて彼らがやって来た時にプレゼントされた物です。
 私はリッケンの12弦ギターを2本持ってますが、ハイ・ゲイン・ピック・アップの付いてる330の音はパワーも有り太いので、それを強調する為にフラット・ワウンド弦を張ってあます。それとは対照的に、トースター・トップ・ピック・アップの付いてるこちらの360の方は、カラっとした乾いたサウンド(ン〜、タマラン!!)ですので、それを活かす為にラウンド弦を張ってあります。


リッケンバッカー 330−12

 1991年頃のモデルで、私の嫁さんがプレゼントしてくれたものです。
 実は、一度テール・ピースが割れてしまったので、クローム・パーツの物に取り換えてあります。日本のリッケンの代理店はRの文字の入ったテール・ピースを並行輸入物には売ってくれませんので、これを手に入れるのには凄く苦労しました。
 さて、音の方はと言いますと、流石にオールド物ではないのでカラっとしたサウンドではないものの、ピック・アップにハイ・ゲイン・タイプが付いてる為、とても力強く図太い音がします。ですから、アルペジオとかよりもオブリガートなどのリードものに向いてると思ってます。毎度、抽象的な物の言い方ですが、私の持ってるヴィンテージの360−12の方は“キラキラ(又はカラカラ)”した感じで、こちらの330−12は“ギンギン”した感じ、と言っておきましょう。


リッケンバッカー 360 1965年製

 とてもオールドのリッケンらしい、カラッとした音がする360です。音の伸びはあまりないのですが、それがかえってオールド・リッケンらしい魅力になってるのかと思います。クランチな音やクリーンな音でカッティングしますと、フェンダーのストラトキャスターとはまた違った種類のブライトで乾いたトーンがします。
 見た目の点では、ヘッドが現行品よりも細目なところがおしゃれです。


グレッチ テネシアン 1964年製

 グレッチのテネシアンというモデルは、当時カントリー・ジェントルマンの普及型として作られたもので、ジョージ・ハリスンもビートルズのアルバム、『フォー・セール』や『ヘルプ』などでもメイン・ギターとして使ってました。
 私の印象ですが、このテネシアンはカントリー・ジェントルマンよりも音がブライトな感じがします。私のリッケンの360と比べてみても、とても力強い音で、ビグスビーのトレモロ・アームもとても御機嫌です。


フェンダー ストラトキャスター 1975年製

 巷では「でかヘッド」と呼ばれてる、1975年製のフェンダー・ストラトキャスターです。
 購入当時はリンディーのピック・アップが付いていたのですが、その後、私がフェンダー・ヴィンテージ・USAとかって言うのに取り換えました。
 この黒のストラトを見ると、先ずイメージするのが、リッチー・ブラックモア大先生でしょうか。本音を言いますと、私は白のストラトが好きなのでありますが(ウーリッヒ・ロート大先生がスコーピオンズ時代に使ってました)、この際色にはこだわらず……です。
 音は、正しくでかヘッドの音です。大抵のギターには太い弦を張る私ですが、このでかヘッドにだけは、0.10と言う細目の弦を張ってます。


バーンズ マーキー

 ブライアン・メイのレッド・スペシャルに、バーンズのピック・アップが搭載されてる事はよく知られていますが、それ以前の1960年代には、バイソンやハンク・マービン・モデルなどのシングル・コイル系のギターが、マージー・ビートやサーフ・ミュージックのミュージシャンやファンから支持を受けました。
 しかし、1970年代になるとその人気はフェンダーやギブソンには遠く及ばなくなり、ほとんど見掛ける事が無くなりました。「70年代にバーンズのギターを使ってた人」と言って、私が今パッと思い浮かぶ事が出来るのは、ウィッシュボーン・アッシュのテッド・ターナーくらいでしょうか。
 ピック・アップ・セレクターは最近のストラトと同じの五段階で、つまみは1ヴォリューム、2トーンなのですが、トーンつまみの1つがプル・アップ・スイッチになっていて、これを引く事によって、フロント・ピック・アップが常時オンになり、あらゆるピック・アップの組み合わせが出来る様になります。
 ボディーはアルダーなのでしょう、かなり軽いです。音色も「ストラトに近い」と言えば、バーンズのハンク・マービン・モデルよりは、ストラトに近い印象ですが、でも確かにバーンズ特有の“シャリ〜ン”とした音がしていて、高音の倍音は明らかにストラトとは異なります。


エピフォン ソレント

 これは1989年か1990年頃に、今はなき藤沢の『BOW』で新品で買ったものです。
 元々は「ジッタリン・ジン・モデル」と言うやつなのですが、テール・ピースをビグスビーのビブラート・アームに付け替えてあります。その昔、或るスタジオにそのご本人がいらっしゃり、このギターを見て、「僕も同じの持ってます」って言われた事が有ります。ちょっと照れくさかったです。
 さて、このギターですが、実は私が一番多く使ってるギターは、これかもしれません。かなりお気に入りのギターであります。
 弦はダダリオのフラット・ワウンド、0.12のセットを張ってありますが、この組み合わせは、私に言わせると絶品です。弦が太くボリュームも有る為、ボディーもよく鳴ってくれます。
 私の持ってるギターの中では、クリーンやクランチな音ではグレッチ・テネシアンとキャラクターが近いですが、こちらの方が(弦の太さも関係しますが)太い音です。グレッチの方はこちらに比べると鋭い音と言う印象です。また、構造上では一番似てるギブソン330とでは、これまた違い、上手く言えませんが、こちらの方が「目が詰まった音」と言う感じでしょうか。個人的な印象ですが、キャラ自体もかなり違う様に感じます(ラウンド弦を張ったら、少しは似るかなぁ?)。


テスコ スペクトラム5

 昭和30年代から40年代に掛けて名をはせた国産メーカー、テスコのスペクトラム5のリ・イシューです。これも1992〜3年頃に藤沢の『BOW』で、新品で買ったものです。
 ヘッドが長い分、ギターとしては体長が長く、ベース用のケースに入れて保管してます。
 弦は、フラット・ワウンドの0.12のセットを張ってあります。今度から、もうちょっと細い弦にしようと思ってます。『奇跡の影』では「いつまでも君を」のソロをこれで弾きました。
 テスコと言えば「ビザール・ギター」。見た目もビザールなら、当然音の方も昭和40年頃のGSを思い起こさせる“エレキな音”で、サーフ・ミュージックにもぴったりなテケテケなサウンドです。とは言っても、モズライトの様に中音にピークのある音ではありません。音の鋭さは、私の持ってるギターの中では、ストラトよりもテネシアンに近いのですが、なんと言ってもその最大の違いは、中低音から下の音は全く無く、高音のみの“ペケンペケン”な音で、それは唯一無二の音です。これが独特で良いんですが…。


グレコ RGー750B

 これは私の友達から貰ったものです。人はここだけを聞くと、「君はなんていい友達を持っているんだ!」と思うでしょう。……が、と・と・とんでもない!!そいつは私のフェンダーのギター(勿論ジャパンではなく、メイド・イン・U.S.A.!!)を借りたまま勝手に誰かに売ってしまったのです!!その代わりにこいつを貰ったってわけです。
 こいつはグレコのカタログには1977年辺りから載っていたので、多分、1970年代後半製だと思いますが、詳しい事は分かりません。
 貰った時点で、既にアジャス・カヴァーには「Greco Guitar」の文字は無く、しっかり「Rickenbackar」と入ってました(多分、自分で書いたのかも。でもかなりしっかりと書かれてます)。それから、テール・ピースは他の友達がアームを付けるからと、いらなくなった本物のリッケンバッカー製を貰って付けてます。ですから、テール・ピースはちゃんと“R”型になってるのです。要するに“メーカー・コピー物”から“怪しいにせもの”へとランク・アップされた、“出世魚”ならぬ、“出世ギター”とでも申しましょうか?でも、いくらどうみてもテール・ピース以外は本物には見えないのです。どうしてでしょうか?
 音の方はリッケンの音とはほど遠く、不思議な音……と言うか、何ともとらえどころのない音をしています。


グレコ EGー380S

 1974年製、グレコのレス・ポールのコピー(のつもり)・モデル、EG−380Sです。
 私が中高生だった頃、仲間が持っていたギターのほとんどは、グレコのレス・ポール・モデルのコピー(EG)やストラトキャスターのコピー(SE)で このEG−380は、当時グレコのレス・ポールの中でも一番安く、定価で38000円、つまり25%か30%割り引き(開店当時のイ○ベ楽器は30%オフでした!)で買うと、「一万円札3枚で充分おつりが来た」と言う物でありました。とは言うものの、当時の私達にとってはそれも大金で、「お年玉やお小遣いを貯めたりして、やっとこ買った」と言う人がほとんどだった様です(当時は、エレキに対する世間のイメージが未だ悪く、親に買って貰えた人はかなり恵まれったのであります)。
 さて、何故今更この初心者向けと思われるギターかと言いますと、単に「懐かしいから…」と言うだけではなく、このギターの音が価格不相応に良いからなのです。実は私の耳に焼き付いてる「レス・ポールの音」と言うのは、CDなどで聴かれる本家ギブソンの音よりも、若き頃実際に聴いてきたこのグレコのEGの音だったりするのであります。
 しかし、このギター、「レス・ポールのコピー」とは言うものの、よく見ると「なんちゃって」な部分が相当有ります。先ずは、ネックが細く、しかもデタッチャブル・ネックだと言う事。それから、ボディーがセミ・ホロウで、木材の種類もまるで本家ギブソンとは違う物だと言う事です(これはホワイト・シカモア)。他にも、弦間が多少狭かったりと、本家レス・ポールとは違う箇所だらけなのです。ですがしかし、そうする事で、本家ギブソンとはまた一味もふた味も違った「美味しい音」がするのであります。特に良いギター・アンプでオーヴァー・ドライヴさせると、「グレコ、ここに有り!!!」と言う様な一種独特な存在感を発揮します。これは、「セット・ネック、ソリッド・ボディーだった」と言う事も一理有って、ギブソン・レス・ポールには無い、独特な音となってるみたいです。ピック・アップはマクソンUー500と言う、当時のグレコのレス・ポール用のピック・アップでは最もパワーの無いやつが付いてるのですが、これもこの独特な音を創りあげるのに重要な要素となってる様です。実はUー500は、「シングル・コイルなんじゃないか?」と言う可能性も有ります……って、まだ調べてないのですが、シングル・コイルともハンバッキングとも聞こえる微妙な音で、その辺がまた魅力です。或る意味、私の持ってるギブソンES−330(シングル・コイル・ピック・アップのセミアコ)とも音色の共通点が有ります。
 製造されてから30年以上たってた今でも、ほとんどオリジナル状態のこのサンパチですが、元から付いてたクルーソン・タイプのペグだけは、精度が良いとは言えず、ゴトー製のクルーソン・タイプに交換しました。


グレコ EGー480B

 グレコの名器(?)、EG−480Bです。製造年度は、上のEG−380Sとほぼ同時期の1974年頃ではないかと思います。と言うのは、これも上のEGー380S同様、ロゴの「r」の字が筆記体になってるスクリプト・ロゴ・ヴァージョンだからです。因みに、この頃までのグレコにはシリアルが有りません。
 仕様ですが、上のEG−380Sのボディがホワイト・シカモア材で、見た目がレス・ポール・スタンダードのコピーなのに対し、こちらはボディがカバ材で、見た目で言うとレス・ポール・カスタムのコピーです(本家ギブソンの方は、カバでもホワイト・シカモアでもありません)。因みに、カバ材はとても固い木で、ギターなどよりも建築材としてフローリングなどに使われる事が多いみたいです。実はサンパチ(EG−380)のカスタム・モデルのコピーのEG−380BもEG−480B同様、ボディはカバ材です。
 この時代のサンパチとヨンパチの総体的な違いは、私が分かってる範囲ですが、サンパチのネックがローズ・ウッド指板なのに対し、ヨンパチはなんとエボニー指板です。これは後にエボニー指板からローズ・ウッド指板にマイナー・チェンジされますので、この頃までに製造されたものだけの様です。ピック・アップは、サンパチがUー500(もしかしてシングル・コイル?)で、ヨンパチはそれより幾分パワーの有るハンバッキング・マイクのUー1000です。但し、ヨンパチのピック・アップはリアだけがオープン・タイプの物が付いています。ペグは、サンパチがクルーソン・タイプのプラスチック製のつまみなのに対し、ヨンパチはそうではありませんが、私のは入手した時点で、ヤマハ製のゴールドのグローバー・タイプに変更されてました。しかし、これはとても精度が良かったので、暫くはこのまま使用しようと思います。
 後は、ヨンパチの特徴でもあまり目立たない部分ですが、アジャスト・カヴァーに「Custom」と筆記体で入ってる事があります。これはヨンパチのスタンダード・モデルにも同じく「Custom」と入っていて、当時、「これを工場だか問屋さんに送ると、替わりに自分のイニシャル入りのアジャスト・カヴァーが貰えた」と言った物です。
 実はこれが作られた頃、私の同級生のS君が、お母さまとお姉ちゃまに連れられて、松本に在る富士弦楽器の工場を訪れ、特注のフライングVを作って貰った事が有るのです(たしかメイプル・ボディーだった)。その時の工場の人達はとても親切で、お土産にボディー材をくれたり、他にもいろんな事を教えてくれたのだそうです。更にその友達からは、「工場の人達は、ギターの制作にとても情熱を持ってた」と言う事も聞きました。当時の日本の楽器メーカーは、「本場アメリカのギターに追いつけ追い越せ」という勢いが有ったのではないでしょうか?そんな事からも、独自の技術の駆使と試行錯誤の繰り返し、そして高い志と熱い情熱により、この様な名器が生まれたのだと思います。
 肝心の音色ですが、ちょっと歪ませた時の甘いサスティーンは、EGー480の独特な特徴なのでしょうか?EGー380Sよりは少しだけ太いそのサウンドは、同じレス・ポールでもキャラクターが違います。


グレコ EG−650S

 ロゴが一見“GNECO”に見えるところから、マニアの間では「グネコ・ロゴ」と言われてる、その頃のEGー650Sです。グネコ・ロゴが使われていたのは、上記したヨンパチ・サンパチのスクリプト・ロゴ(グレコのファンの間では「輪っかロゴ」と言われてる様です)よりも、一世代前の事らしいです。因みにこれは、1973年か1974年の製造みたいですが、シリアルが無いので確かな事は分かりません。
 ネックはディタッチャブル・ネックではなく、ちゃんとセット・ネックになっていて、上のEGよりも少しだけギブソンに近づいたかと思いましたが、それでもやっぱりそこはグレコ。よく見ると、「ボディーはスタンダード、ネックはカスタム、そしてヘッドはデラックス」と言う、ちょっとむちゃくちゃなギターです。いくら何でもこれを「デラ・カス・タード」とは言わないだろうけど……。これは、「成毛モデル」と言われてた、これの上位機種にあたるEG−800に似ていて、私は最初、これをEGー800と思って(中古で)買ってしまいました。しかし、私のはボディーがホロウ・ボディーで、(私の知ってる)EGー800よりもかなり軽い事からも、「多分EGー650だろう」と判断しました(まあ、音が良ければ、私の場合どちらでも良いのだけど……)。
 ボディー・トップはメイプル・ツー・ピースでトラ目がバッチリ入ってます(EGー800は単板削り出し)。ボディーの裏側はコンターが入っていて、その分、同じセミ・ホロウの上記のヨンパチ・サンパチよりも軽い気がします。ネックもヨンパチ・サンパチの様なナロウ・ネックではなく、幾分太目です。ピック・アップはオリジナル仕様はUー1000x2個なのですが、これのはUー1000はフロントのみで、リアにはディマジオ・スーパー・ディストーションが付いてます。このディマジオ・スーパー・ディストーション、その名の通り歪み易く、そのサウンドは中音がグンと伸び、とても70年代な音がしてます。フロントは太いながらも高音の倍音にグレコ独特のものが有り、とても美味しい音です。


グレコ EG−650N

 このEG−650Nは、上のEGー650Sと同じグネコ・ロゴ時代に製造され、しかも同価格だった、レス・ポールのなんちゃってコピー・モデルです。ですが、同じEGー650同士でも、仕様はまるで違っていて、こちらのEG−650Nは、グレコのEGシリーズの中でも、かなり風変わりなモデルだったと言えます。
 まず、EGー650Sとのスペック上の違いを申しますと、ネックがメイプルではなくマホガニーで、ボディーがトップ、バックともにマホガニーだと言う事。更に特徴的なのは、ネック指板がメイプルと言う、レス・ポールとしては見た事も聞いた事も無い様なむちゃくちゃな仕様な事です。ヘッドのインレイも、何やら怪しげな模様が施してあります。「むちゃくちゃ度」では、EGー650Sにひけは取りません。因みに、セミ・ホロウ・ボディー、セット・ネック、バック・コンター入りと言う事はEGー650Sと同じです。ペグに関しては、私のはゴトー製の物に変更してしまいました。
 音色は、マホガニー・ボディー独特のトーンなのですが、メイプル指板特有のアタックも有り、「スペックのまんまの音」と言ってもオーヴァーではないと思います。ピック・アップはUー1000が2つ付いてますが、グレコ独特の高音の倍音は、メイプル指板のネックによるアタックで目立ちません。と言う様に、レス・ポールとしては、ちょっと聞き覚えの無い音なのですが、しかし、これはこれで良い音で、グレコEGの中ではかなり異質なキャラクターだと思います。


グレコ EG−900

 1976年に発売が始まったグレコのEGー900は、発売当初、ピック・アップにハイ・パワー・ピック・アップののUー3000やUー4000が搭載されてましたが、翌1977年には仕様変更し、「ディマジオPAF」を搭載した初の国産ギターとして生まれ変わり、大変話題となりました。現在では、サード・パーティーのピック・アップを搭載する事は珍しい事ではありませんが、当時としてはこの試みは画期的でした(因みにグレコのピック・アップはマクソン製なのですが、これはグレコ専用で、「グレコのピック・アップ」として扱われていました)。
 このEGー900は、シリアル番号を見ると1977年の5月製造と言う事が分かります。この年代のEGー900はネック指板がエボニーのはずなのですが、不思議な事に私のはローズ・ウッドの様です。EGー900のネック指板には、1976年の発売当初はローズ・ウッドが使われてた様ですが、直ぐにエボニーに変更されました。この辺が不思議で、「ホントにEGー900?」と言う査証疑惑を生みそうですが、ま、音さえ良ければ細かい仕様は気にしない私ですので、特にどうと言う事は有りません。
 ボディーはセミ・ホロウではなく、ちゃんとソリッドになってます。ですから、重量は、私の持ってるEGの中でも一番重いです。ネックはセット・ネックで、ネック幅が少し広く感じられます。かなり、ギブソンを意識してるとは思いますが、ヘッドの角度とかを見ると、「やっぱりちょっと違う…」と言う印象も捨て切れません。しかし、音の方は、力強い中高音が有り、他のEGに比べ、かなりギブソンに近づいた印象です。


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