安田しん二の楽器

 私、安田しん二が使用してる管楽器(笛類)を紹介致しま〜す。

管楽器(笛類)

 笛と言うのは、どこの国でもそれぞれのスタイルと伝統があり、古くから大衆に愛されて来ました。
 日本にも尺八や篠笛など、伝統的な笛は存在してましたが、実際私達にとって、笛がとても身近な楽器だと感じているのは、実は小学生の頃に学校の授業でそれを吹いていたからかもしれません。今になって思えば、あの頃笛を吹いてたお陰で、本来管楽器プレイヤーではない私が、この歳になってもケーナやティン・ホイッスルなどに、気軽に手が出せたのではないかと思うほどで、感謝する事頻りです。
 中でも私にとって、特に中南米の民族楽器、ケーナは自作する様にまでなり、とても思い入れが有ります。今ではレコーディングなどでも頻繁に使っており、趣味と実益を兼ねた存在で有る事は否めません。
 ここでは、それらの笛を紹介致します。


アケタ オカリーナ T−1C ピッコロ

 写真左の水色のオカリナですが、そのサイズのせいか、オカリナ特有の“ポ〜”と言う音ではなく、“ピ〜”と言った、小鳥のさえずりの様な音がします。
 私は、オカリナと言う楽器は笛類の中でも個性が強い方なので、レコーディングなどでその使いどころを選ぶのは難しいと思ってます(音域も狭いし、強弱のニュアンスをつけるのが結構難しいのです……)。しかし、一旦ハマリ所を見つけたら、その効果は絶大で、そのどこか懐かしい牧歌的な響きは見事です。
 [写真はよすおさんが撮影]


アケタ オカリーナ S−5C ソネット

 写真右の黄色いオカリナ…。一度だけデモ・テープで使った事が有りましたが、その後はまだ出番が有りません。吹きますと中々オカリナらしい良い音がしてるのですが……。
 実は私は子供の頃、オカリナを持っていた事がありました。私はそれをとても大事にしてたのですが、それは何かの拍子に壊れてしまったのでした。その所為なのかどうかは分かりませんが、私にはどうもオカリナの音はもの哀しげに聴こえてしょうがありません。
 とても個性的でカラーの強い音色を持つオカリナですが、もしもソロとかで使ったら、その曲のカラーを一発で“オカリナ色”に染めてしまいそうです。
 [写真はよすおさんが撮影]


スザト キルデア・ペニー・ホイッスル(C、D、E♭管)

 ティン・ホイッスルは1ペニーで買えると言うその価格の安さから、ペニー・ホイッスルとも呼ばれる、アイルランドの民族楽器です。普通はブリキで出来た物が一般的なのだそうですが、このキルデア・ペニー・ホイッスルは合成樹脂で出来てます。同じ指使いで吹く息の強さを変える事によってオクターヴを出しますが、緩く吹くとリコーダーっぽく聞こえてしまいます。
 このキルデア・ペニー・ホイッスルは、吹き口(マウス・ピース)を付け替える事によって、3つのキーに対応していて、ある意味とても便利です。
 [写真はよすおさんが撮影]


ウォルトンズ ギネス・1500D・ホイッスル(D管)

 これはCDショップで教則CDとセットで売られてたものを「これって、どんなもんなんだ?」と言う興味から、思わず衝動買いしてしまったものです。つまり、私の初めてのホイッスルって事になります。このギネスのホイッスルは、割とポピュラーな物の様で、教則CD無しでも売られてますが、それだと確か1000円位だったはずです。材質はアルミの様な物で出来てますが、内側が汚れ易いのか、吹いてると途中で音が出なくなる事があります。しかも、私が持ってる他のホイッスルと比べると、ピッチが高めですので、何らかの方法で調整する必要が有りそうです。しかし、キルデア・ペニー・ホイッスルと比べると、良い意味でもチープな感じがします。
 [写真はよすおさんが撮影]


クラーク スイートン・ザ・リアル・ティン・ホイッスル(C管)

 安いと言う事なら、このクラークのティン・ホイッスルも1000〜1100円位と安価です。しかも、ギネスに比べてもピッチが良く、キルデア・ペニー・ホイッスルよりも良い意味でチープ、とてもティン・ホイッスルらしい音がする気がします。形に関しては、先の方へ行くほど管が細くなっていて、持った感じで違和感が有るかなとも思ったのですが、意外とそうでも無い様でした。


クラーク スイートン・ザ・リアル・ティン・ホイッスル(D管)

 エメラルド・グリーンがとてもキレイなホイッスルです。良い音がします。


スザト キルデア・レーザー・イングレイヴド・ホイッスル(Low−G管)

 Low−G管と言う事で、ケーナとほぼ同じ音域をカヴァー出来ます。音の印象は、キーが違うからか、C管やD管のホイッスルとは結構違う感じがします。オクターヴ上を出す時にはかなり息を強く吹き込んでやる必要が有ります。
 ティン・ホイッスル全般に言えますが、特にLowキーのホイッスルは深いリヴァーブ音にも相性が良く、リヴァーブを加える事により、音色にも深味が加わります。
 [写真はよすおさんが撮影]


スザト キルデア・レーザー・イングレイヴド・ホイッスル(Low−D管)

 ティン・ホイッスルと呼ぶにはちょっとデカイでしょうか?キーもLow−Dと言う事で、かなり手の大きな人でないと穴を押さえるのは困難かもしれません。Low−G管同様、合成樹脂で出来てますが、音色は中々味が有ります。ティン・ホイッスルと言うと、とても早いパッセージの曲を吹く事が多いですが、こちらは大きなフレーズを優雅な感じに吹いてもサマになります。
 [写真はよすおさんが撮影]


クリス・ティ・クーム インディアン・フルート(Gm管)

 私がインディアン・フルートを知ったのは、ニコラス・ケイジ主演の映画、『ウインドトーカーズ』の中で、ナバホ族の兵士が吹いてたのを観たのが最初です。音色は、ケーナやティン・ホイッスルとも別物で、“ポピポピポ〜”と言う、素朴で且つ聴き手の想像力をかき立てる様な、暖かい音色をしています。
 このインディアン・フルートのキーはGmなので、このまま適当に吹くとそれらしいフレーズになりますが、普通の音階を吹く為の運指はちょっとだけ複雑です。しかし、音を出す事自体は、吹き口をくわえて息を吹き込むだけで音が出せますので、とても簡単です。音域の方は狭く、広い音域を吹く事には不向きですが、そのかわり、Gm管の他にも色々なキーのインディアン・フルートが有ります。   [写真はよすおさんが撮影]


モーレンハウエル プリマ・ソプラノ・リコーダー(バロック式、C管)

 ソプラノ・リコーダー、所謂、小学生の時に学校の授業で使ってた「縦笛」と言うやつです。
 モーレンハウエルのプリマ・ソプラノ・リコーダーは、マウスピースが合成樹脂の様な物で出来ていて、胴体の方は木(梨の木?)で出来てます。私のはマウスピースがブルーのやつですが、バリエーションとしては他の色も有ります(因に我が家には、この他にベージュ、レッドと、アルト・リコーダーが有ります)。
 リコーダーの運指には、バロック式とジャーマン式が有り、このモーレンハウエルのプリマ・リコーダーにもバリエーションとして両方用意されてる様です。ジャーマン式は、私達が小学生の時に使って物がそうで、そちらの方が運指は簡単です。因に、私は運指の簡単でない方のバロック式を使ってます。と言うのは、リコーダーはソプラノ以外のほとんどがバロック式で、バロック式の方が主流だからなのです。「バロック式の方が難しい」とは言っても、ファの音の運指が違うだけなので、運指に慣れるのにもそれほど苦労はしないのではないでしょうか。
 [写真はよすおさんが撮影]


アルテス・カストロ ピファノ(G管)

 モラディージョで出来たケーナの横笛版(?)、ピファノです。指使いはケーナと同じで、3オクターヴまで出せます。音色は、分かりやすく言うと「フルートとケーナの中間的な音」と言う感じです。
 実はこの「アルテス・カストロ」と言う名前は、このピファノに貼られてたシールにそう書いてあったのでここに載せてますが、もしかしたらお店(販売者)の名前かもしれません。
 [写真はよすおさんが撮影]


安田しん二自作 ケーナ(G管)2004年製

 大分産の雌竹を使って創ったケーナです。ボリビア産のバンブーに比べると幾分肉薄で、ちょっと軽めの音と言いましょうか、日本的な音(?)がします。
 歌口はルーチョ・カブールのケーナを手本にしてあります。表の皮は剥がしてありまして、仕上げには椿油を塗ってあります。何故椿油を使ったかと言いますと、「家に有ったから…」なんですが、竹の櫛を手入れするのには椿油を使いますよね。椿油がこの様な楽器には良いのか悪いのかは分かりませんが、べとつく事も無く、今のところ竹にには馴染んでいます。竹が割れない様、テグスはちょっと太めに2ヶ所巻いてあります。
 [写真はよすおさんが撮影]


安田しん二自作 ケーナ(G管)2004年製

 モラディージョと言う木を使って自作したケーナです。今迄にも何十本もケーナを作りましたが、これ迄は私が摂ってきた藤沢産の雌竹や大分産の雌竹を使ってましたので、この材質で作ったのはこれで2本目です。歌口はルーチョ・カブールのケーナのを手本にしてます。指穴も比較的大きめですが、私は指が細くはないので問題なく吹く事が出来ます。
 この材質だからか、低音ははとてもしまりの有る、落ち着いた音がしています。高音はしっかり吹かないと鳴らないかもしれませんが、その分とても力強い響きがします。
 実はモラディージョのケーナ材は全部で3本有ったのですが、1本はアハユの歌口を手本にして作りました。もう1本は、もう少し作る腕が上がったら作ろうと思ってとってあります。
 [写真はよすおさんが撮影]


ロランド・エンシナス ケーナ(G管)

 ムシカ・デ・マエストロスのリーダー、ロランド・エンシナスの創ったケーナです。エンシナスは御存知の通り、ボリビアのフォルクローレ界ではまぎれもない指折りのケーナ奏者ですが、このケーナの作りはとても粗いです。「粗い」と言うのは、指穴がまだ完全に仕上げられてない感じで、ピッチも少しばらつきが有ります。もしかしたら、良い意味でとらえると「ピッチは自分の吹き方で微調整してちょ」と言う事なのかもしれません。ただ、その音色は素晴らしく、物凄く暖かい音がします。歌口も独特で、「ドリルか何かで丸く穴を開けた所を最小限に削った」と言う感じになってます。それに対し、歌口の内側はかなり奥深くまで削ってあります。不思議な事に、吹いてみるとかなり音は出し易く、特に低い音では豊かに表現力を発揮出来そうな感じがします。
 [写真はよすおさんが撮影]


アマル ケーナ(G管)

 ボリビアの人気グループ、アマルが創ったケーナです。私のはちょいと細目ですが、材質は肉厚です。歌口はとても小さく、音の出し易さは、私の持ってるケーナの中ではピカ一かもしれません。音色は低い音は暖かく、高音は軽やかで、小鳥がさえずる様なその響きはとても特徴が有ります。このケーナは内側を火で炙った様な後が有り、その所為かとても香ばしい良い臭いがします。
 [写真はよすおさんが撮影]


レイナルド・ベガ ハチャ・ケーナ(G管)

 ハチャ・ケーナとは普通のケーナの1オクターヴ下の音域を出す特殊なケーナです。私は手が大きい方なので、指穴に指が届きますが、手の小さい人にはちょっと大変そうです。
 この様な特殊な楽器ですので、使用頻度は低いのですが、音を巧くマイクで拾えれば、レコーディングなどでは面白い効果が得られます。フォルクローレの世界では、これの他にモセーニョと言う大きな笛も有りますが、そちらの方がハチャ・ケーナよりも良く知られている様です。
 [写真はよすおさんが撮影]


トゥパイ トヨス

 全長135cmもある大きなサンポーニャです。2列になってますが、セパレートされますので、誰かと音程を分けあって吹けます。ただ、息の量は相当必要になり、吹いてるうちに目の前がクラクラとする時が有ります。
 トヨスの材質は、葦のものも有りますが、このトゥパイのはバンブーです。私の印象ですが、葦の物の方が高い所の倍音が多く感じられ、音が広がる感じがします。一方、バンブーの方も音の太さと低音の抜けは良く、それぞれ好みは分かれるところでしょう。


アチャ(ホワン・アチャ・カンポス) ケーナ(G管)

 アチャのケーナです。アチャはケーナ製作と言うよりも、チャランゴのメーカーとしての方が有名です。
 これはインターネット通販で購入したのですが、実はこれが私の初めて買ったケーナです。最初、この楽器を買ってから数日は、音が“ぽ〜……”ともいわなかったのに、それを私の娘が吹いたら、モノの3秒で音が出たのには腹が立ちました。
 実は、ケーナは私にとって初めての木管楽器でもあり(ま、リコーダーは小学校の時に誰でも吹いてましたが……)、まるっきりの初心者だったのですが、練習して少しでも上達するとやけに嬉しかったりしました。そんな感覚って久しぶりだったので、自分の音楽の原点に帰った気がしました。
 この楽器のお陰でフォルクローレの世界にドップリと行ってしまうのでした。


カサ・デ・ラ・パパ ケーナ(G管)

 竹製のケーナに比べると、ストレートでクセの無い音がする、木製マデラ材牛骨歌口のケーナです。
 ケーナというのは大まかに、管が細めで比較的に音が出しやすいアルゼンチン式のモノと、そうでない管が太めのボリビア式の物とが有るのだそうです。やはり音は出し難いのですが、管が太い方が太い音がするのだそうです。このケーナもボリビア式です。因みにボリビア式とアルゼンチン式では運指も違います。
 材質は竹や葦が一般的なのだそうですが、この様に木製の物もよく見掛けます。木のケーナは、人によって皮膚との相性があるのだそうで、物によっては唇が痒くなってしまう場合があるそうです。しかし、この様に牛骨の歌口を付けて、それらの問題をカヴァーするんですって。吹き終ったら、唇がオバQの様になってたりしたらビックリしちゃいますもんね。


ルーチョ・カブール ケーナ(G管)

 ボリビアを代表するケーナ奏者、ルーチョ・カブール氏作のケーナで、現在の私のメイン・ケーナです。
 これは、松田町にある『アンデスの家・ボリビア』の福岡さんのところで、何十本も有る中から選んだモノです。見た目がとても武骨な感じがするこのケーナは、音の方も実に男らしい見た目通りの音がします(しかし、細かいところの作りはとても丁寧!)。
 松田町にある『アンデスの家・ボリビア』には、実に数百本のケーナが置いてあります。自分で納得が行くまで選ばせて頂きましたが、この作業が実に楽しいんです。ギター、特にエレキなんかですと、この作業はとても労力を要しますが、ケーナの様な楽器ですと、シールドを繋ぐ手間や、調弦をする手間がなく、取っ換え引っ換え出来ます。勿論、数百本全てを吹いたりなんかはしませんが……。作者別に吹き比べても面白いです。


マルセロ・ペーニャ ケーナ(G管)

 ルス・デル・アンデのケーナ奏者、マルセロ・ペーニャ氏作のケーナです。
 松田町にある『アンデスの家・ボリビア』に、現地のボリビアから届いたばかりの物が100本近くあった中で、選ぶ時に最初に手にしたのがこれでした。
 音の方は、とても素直で透明感の有る伸びやかなトーンです。ピッチもとても安定していて、とても洗練された楽器だと思います。
 この楽器の作者、マルセロ・ペーニャと言う人の性格は分かりませんが、「楽器を見るかぎり、とても几帳面で真面目な人なんじゃないかなぁ」と思いましたが、ホントのところは勿論知りません。私の勝手な想像です……。私自身がかなりいい加減な人間なので、けっこう当てにならないと思いますが……つい感じたもんで(^^ゞ。


マルセロ・ペーニャ ケーナ(G管)

 これもルス・デル・アンデのケーナ奏者、マルセロ・ペーニャ氏作のケーナです。
 やっぱりこれも私が『アンデスの家・ボリビア』に訪問した際、現地ボリビアから100本近く届いたばかりの物の中から選んだ物で、その中でも、最も細い竹を使って作られてた物で、他のケーナの材質に比べても、色がとても白いです。
 もう1本のマルセロ・ペーニャのケーナと同様ピッチも良く、とても明るいトーンが特徴です。


アドリアン・ビリャヌエバ ケーナ(G管)

 元ルミリャフタのケーナ奏者、アドリアン・ビリャヌエバ氏作のケーナです。
 このケーナは、音の太さでは私の持ってるケーナの中でも群を抜いております。同時に、特に低音部がとても甘いトーンをしてるのがこのケーナの魅力です。ただ、ピッチが幾分低いので、吹き方でピッチを上げてやらなくはなりません。


フェルナンド・グティエレス ケーナ(G管)

 カラマルカのサポートメンバー、フェルナンド・グティエレス氏作のケーナです。アドリアンのケーナ同様、野太いトーンが特徴です。歌口の形状はルーチョ・カブールのケーナにとても良く似てますが、吹いてみると随分違います。


アハユ(ホルヘ・ロドリゲス) ケーナ(G管)2000年製

 アハユス、グルーポ・コカのケーナ 奏者、アハユ氏作のG管ケーナです。
 作りはとても丁寧で、バンブーなのですが、仕上げに何かを塗ってあります。音の方は、私が持ってるアハユのF管ケーナ同様締まりのある音ですが、それでいて暖かく深みがあるのが特徴です。


タキ ケーナ(G管)

 ペルーのケーナです。これはペルー人の友達が、ペルーへ里帰りした際、私の為に買ってきてくれた木製ケーナです。
 このケーナの特徴は、竹の様に下の節は無く筒抜けになってるところと、吹き口がV字にカットしてある事です。長さも若干ですが普通のG管ケーナより長いのです。やはり下の節が無いからなのでしょうか?ただ、意外な事に、吹き易いと言う点から私はこのケーナを気に入っていて、よく持ち歩いてます。


福岡稔 ケーナ(B♭管)

 こちらは、日本でのボリビア音楽の第一人者と言われてる、『アンデスの家・ボリビア』の福岡氏が自分の娘さんの為に作ったケーナです。これは彼が私の娘の為にわざわざくれたモノです。ですから、とても大切にしてます。普通のケーナよりかは一回りか二回り小さく出来ていて、子どもの手で持っても充分穴を押さえる事が出来る様に作られています。音も日本製なのに本場ボリビアの音がします。


アハユ(ホルヘ・ロドリゲス) ケーナ(F管)

 アハユス、グルーポ・コカのケーナ 奏者、アハユ氏作のF管ケーナです。
 普通のG管より1音低いF管だからか、とても落ち着いた感じの暖かい音がします。
 普通のケーナはG管なんですが、それは全ての穴を塞いで吹いたときに出る音がGだと言う事です。つまり、キーもファの音に#が付くGに最も適していますし、このF管のケーナは、シの音が♭になるFのキーが吹き易いはずです。
 因みにG管とかF管とかの呼び方ですが、ボリビアではG管と言わず、一番上と裏の穴を塞いだ時に出る音で、つまりMi(=E)と呼ぶのだそうです。ですから、このF管は、一番上と裏の穴を塞いだ時に出る音がDですので、Reと呼ぶのだそうです。G管をそのままSoと呼ばない辺り、かなりややっこしいですね。因みにケナーチョはD管でSiと呼ぶのですが、このF管とは混乱しますね。色々と呼び方が有る様ですが、私はその辺は形式にこだわらず、自分の理解し易い様に呼べば良いと思ってます(ダメかなぁ、やっぱり……)。


フェルナンド・ヒメネス ケナーチョ(D管)

 ボリビアでナンバー・ワンと呼び声の高いサンポーニャ奏者、フェルナンド・ヒメネス氏作のケナーチョです。勿論、ヒメネス氏もケーナを吹きます。フォルクローレを演る人達は、プロもアマチュアも往々にしてマルチ・プレイヤーが多い様です。
 サンポーニャやケーナの吹き手を、アンデス地方ではビエントスと呼ぶのだそうです。多分スペイン語なんだろうとは思いますが、ビエントスとは“風の奏者”を意味します。そう言えば英語でも、サックスやフルートなどを総称で、“Woodwind”(木管楽器)と呼びますね。「私は風の奏者です……」、な〜んて言えたらカッコイイと思いませんか?
 ケナーチョはいわゆる低音用のケーナの事で、普通のケーナよりは一回り大きいです。管のキーはDで、G管のノーマルなケーナよりも低くて音の方も太いのですが、吹き易さと言う点では、G管ケーナよりかは音が出し難いです。


福岡稔 マルタ・クロマティカ(サンポーニャ)

 ボリビアのフォルクローレでは必需品、サンポーニャの中でも最も標準的な大きさのマルタです。サンポーニャと言うのは、筒の長さが長くなればなるほど、音を出すのが困難になります。本来はGのキー(音階のファが#になります)に合わせて2列で作られた物がポピュラーですが、これはピアノの黒鍵(ファは#ではなくナチュラルです)に当たる3列目を足して、全てのキーでの演奏に対応させた、“クロマティカ”と言う物です。
 サンポーニャは大きさも色々あって、このマルタ、小さいチュリ、少し大きめのサンカ、そしてちょっとした子どもの身長くらいはある、トヨと言うのもあります(135cmくらい。もっともっと長いのもあります)。このマルタはキメ材ですが、ソンゴ材のサンポーニャもポピュラーです。
 私のマルタ、サンカ、チュリは『アンデスの家・ボリビア』の福岡氏が丁寧にピッチを調整してくれてます。


杉山貴志 マルタ・クロマティカ(サンポーニャ)

 ソンゴ材の3列マルタ・クロマティカです。普通の2列のサンポーニャはGのキー対応で、ファの音がシャープになっていていて、ファの音とその他のシャープ&フラットの音は有りません。しかし、この“クロマティカ”は、全部の音階が出せる様に、ファとその他のシャープ&フラットが3列目として追加されてるのです。更に、3列目はセパレートになっていて、必要無い時は外しても使えます。
 私のこれは、マルタですが最低音がシと言う分、音域がちょっとだけ普通のマルタよりかは高く、小ぶりに出来ています。


マルク マルタ(サンポーニャ)

 ペルー製サンポーニャです。多分、キメ材だと思います。
 このサンポーニャはボリビア製のとは見た感じの印象も違っていて、ナント管の太さが音程によって違えています。そのせいか低い音は太く、高い音は鋭くと、とてもレンジの広い音質を持っています。既にレコーディングなどでも使いましたが、ピッチを合わせる時、米粒を管に入れて音程を上げます。その時、楽器を縦にしたままにしとかないといけないので、結構大変です。


ママニー サンカ(サンポーニャ)

 マルタの一つ上のの大きさを持つサンガです。マルタに比べて管が長い分、音を出すのが困難です。
 普段、ハーモニカや鍵盤などですと、左側が低音域になってますが、このサンポーニャと言う楽器はそれが逆です。初めは戸惑うのですが、それに関しては、慣れてしまえば何て事はありません。
 サンポーニャは一列のモノから、私のモノの様に2列のモノ、それから3列のモノまで様々ありますが、実は、2つのサンポーニャを同時に使って吹いて、倍音を多く出す奏法や、何人かで音程を分け合って一つのメロディー吹く奏法もあります。これはハンド・ベルの様に音低によって数人でパートを分けます。例えば、太郎さんはドとミとソ、次郎さんがレとファとラ、さぶちゃんがシと………と言う具合に。例えばその時、左右に分かれて吹くと、音がランダムにパンされます。そして、もう一つの利点は、音を繋げる事が出来る様になる事です。サンポーニャは一人で吹きますと、どうしても始めの音と次の音の隙間が開いてしまいますが、多人数で吹く事により、音のリレーになり、その音をぎりぎりまで伸ばすと、次の音との繋がりが、まるでストリングスの様に滑らかに繋がるわけです。この奏法を「ドブレ」と呼ぶ事が多いのですがそれは誤りで、本当は「コンテスタード」と呼ぶのが正式らしいです。
 ケーナもそうですが、サンポーニャもかなり奥の深い楽器です。


福岡稔 チュリ(サンポーニャ)

 マルタよりかなり小さいチュリです。小さい分、マルタに比べて音を出すのは楽です。
 


タルカ

 やはりボリビア、フォルクローレ関係のアウトクトナの楽器ですが、リコーダー型の楽器で、音だけは容易に出ます。音もちょっとだけリコーダーに似てます。見た目も、何だかとてもインカっぽい怪しさがあります。このタルカには更に大きいサイズのがあり、同じ指使いで5度下の音が出せるのだそうです。何本かで合奏すると、とても怪しい不思議な世界が奏でられます。


ホームに戻る もとへ 楽器・機材のトップへ