安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、
FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSENon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。

2003年1月6日月曜日
 あけましておめでとうございます。昨年は9月以降レコーディングを中断してしまいました。今年は新たな気持ちでレコーディングを再開して行くつもりです。また、今年も相棒のベーシスト(兼コ・プロデューサー)、よすおさんとふたりで頑張るつもりです。友人のエンジニア達にも協力を願うところではありますが、今年はなるべく“自分でエンジニアリングをする”と言う基本に戻りたいと思っております。
 念願のアルバムも5月か6月頃にリリースしようと言う青写真も徐々に出来上がって来ました(まだ本決定ではありませんが……)。今、録り終った曲、録ってる最中の曲、これから録る曲を含め、およそ3アルバム分はストックが有ります。どの曲を最初のアルバムに入れるかをそろそろ意識し、照準を合わせたいと思っております。
 音楽面では、このレコーディング休止中にフォルクローレと言う南米の音楽の影響をかなり受けました。その受けたものも“安田しん二サウンド”に取り入れるつもりであります。
 フォルクローレとは、主に南アメリカ大陸の国、ボリビア、ペルー、アルゼンチン、チリ、エクアドル、パラグアイ等々に広がってるアンデス地方の民族音楽でもあり、その地域のポップスでもある音楽です。サイモンとガーファンクルがその昔ヒットさせた「コンドルは飛んでゆく」はフォルクローレのスタンダード・ナンバーです。使う楽器では、主な物として、竹や葦などで出来た縦笛のケーナ、パン・フルートの様なサンポーニャ、ウクレレくらいの大きさの5コース10弦ギターのチャランゴ、フロア・タムくらいの大きさの太鼓のボンボ、それにガット・ギターと言うのが一般的です。ガット・ギターは主にベースなどのフレーズも弾く事が多く、現地のガット・ギターは低音がとても力強く出る物が多いです。
 私はここ数ヶ月、これらの楽器の中では主にチャランゴやケーナの練習をして参りました。チャランゴは普通はガット弦の物が一般的なのですが、鉄弦の張ってある鉄弦チャランゴや、チャランゴの一回り大きいサイズのロンロコ、小さいサイズのワライチョ等々、色々なバリエーチョンがあります。
 ケーナは普通はG管の物が一般的ですが、D管のケナーチョやF管のケーナなども有ります。私は最近、このケーナを自作もする様になったので、その他にB♭管、C管、A管、G#管等々、色々なバリエーションのケーナを作りました。フォルクローレと言うジャンルではG管とD管、それにF管が有ればほとんど用は足りるのですが、ポップスの中に取り入れるのでしたら、色々な管のケーナを使い分けると言うのも有りです。それからなんと言っても、“自分で作った楽器でレコーディングする”と言うのは、私個人にとってなんとも感慨深いものがあります。
 レコーディングに関しては、自分のアルバムや仕事以外に、これらのフォルクローレの楽器のレコーディングもしたりして、タッキーや青ちゃんなど友人のエンジニア達と“お勉強会”なども開ければ面白いかなと思っています。

2003年1月15日水曜日
 さて、2003年のレコーディング第1弾は、新曲「(題名はまだない)」を録ります。この曲はわりかしシンプルな曲なんですが、もう既に歌詞も書き上がってますし、本当はもっと早くレコーディングしてなくてはいけないはずの曲なんです。昨年書いてから何もしないでほっとかれ、なんだかちょっと可愛そうなナンバーなんですよぉ。実はこの曲は、書く前からちょっと意識して、地味で大人しげな感じの曲を書こうと思って書いたのです(が、地味と言っても、決してメロディーが悪いとか弱いとかって訳では無いですので御安心を)。と言うわけで、アレンジとかもこの時点ではさりげない感じにしようと思ってたのですが…………。
 レコーディングは明日からって事で、今日は先ずは譜面を書いたりして、気軽にやるつもりで〜す。
 今回は何故かスタジオにチャランゴとロンロコ(チャランゴの一回り大きいヤツ)を持って来ましたので、チャランゴを抱えながら譜面を書きます(いつもはキーボード、ピアノ、又はギターで)。この新曲はちょっと1970年代後半辺りのAOR調ですので、本当は『 ( 「チャランゴを抱えながら」と言うのはミス・マッチなんですが、ま、良いんじゃないでしょうか(楽器が小さいから、そう言う面では楽です)。元々AORとフォルクローレって、まるで対照的な音楽で、この2つをの音楽をミックスするって言うのはミス・マッチなんですが、まぁそれも私らしくて良いかもしれませんね。……と言うわけで、この曲の後半部分をフォルクローレ・タッチで表現する事に決めました(そんな理由で曲の方向性が変わって行くのかぁ!)。そうなると、やはりその個所で使う楽器も徹底してフォルクローレの楽器にこだわりたいですよね。「よし!家に一度帰って、フォルクローレ関係の楽器をもっと持って来よう!」………な〜んて、始めはさりげないアレンジにするつもりだったのに……。そんなわけで、明日は一度家に帰るつもりです。よってレコーディングは明後日から。もう酔っぱらってるし(……って、どんどん予定が遅れて行くんですよねぇ)。

2003年1月17日金曜日
 フォルクローレの楽器をを家から沢山持って来ました。ボンボという大太鼓や、ワライチョと言うチャランゴの小さいヤツ、ミニ・ガット・ギター、マンドリーナ、ケーナも数十本(うちほとんどが自作の物)。それからウクレレ、テナー・ウクレレ、バリトン・ウクレレなんてモンまで持って来てしまいました(使うかどうかはまるで分かりませんが……)。
 先ず最初にテープに録るのは、DX−7でA(ラ)の音とローランドのドラム・マシンでクリックです。これは当然ガイドとチューニング用で、実際に音を出す事はありませんよ、念の為。
 これから、フェンダー・ローズ(エレピ)を私が弾いて録りますが、その前に、先程録ったAトーンでチューニング・チェックです。相棒のよすおさんと一緒に音程を聴きながら合わせ(ローズはそう簡単にはチューニング出来ないので、テープ・レコーダーの方のピッチを変えます)、そしていよいよ本番。クリックを聴きながらフェンダー・ローズを弾きます。一度録ったものをスタジオのモニターで聴きましたところ、どうも音の質感がイマイチだったので、コードの積み方を変えてもう一度録ってみました。「うん、今度はOK!」。音の質感などを考える時、ただコンソールやエフェクターをいじると言うのだけではなく、プレーの仕方を変えてみると言うのも一つの方法ですね。
 フェンダー・ローズは、曲の最初から展開部分の前まで入ります。始めは展開後も(つまり曲の最後まで)入れておこうかと思いましたが、せっかくフォルクローレの楽器を沢山持って来たし、ここは思い切って展開後はフォルクローレの楽器のみで演る事にこだわる事にしました。つまり、曲の前半部分が普通にロックやポップスで使う楽器で、展開後は完全にフォルクローレの楽器だけでの演奏と言う事になります。
 フェンダー・ローズも無事に録り終え、次にリード・ヴォーカルを録ります。普通一般的には、リード・ヴォーカルってオケが全部出来てから録る事が多い様ですが、私はせっかち(?)なのか、ヴォーカルが先です。嫌な事は先に演っちゃうって事?。いやいや、そんな理由ではありませんよ。先にヴォーカルを録っておけば、後からそのヴォーカルを聴きながら楽器を演奏する事が出来るので、ノリも良い感じで表現出来ますしね。
 曲のキーはそれほど高くはないのですが、やはり声が安定するまで40分くらいは掛りますね。私の場合、歌録りの最初のうちは声がガラガラになってて、更に歌って行くと段々このガラガラが取れて声が出て来ます。
 今日のノルマはここまで。結局、ヴォーカルはダブルの部分の録りも済ませてしまいました。トラックはいっぱい有ったので、沢山録っておきました(トラックはクリック、Aトーン、フェンダー・ローズで、まだ3トラックしか埋まってないので、あと21トラックも余ってます)。明日の朝、セレクトをするつもりです。さ、今日もよすおさんと2人で飲み会だ!みのもんたさんの『クイズ$ミリオネア』なんかも観ちゃおう!

2003年1月18日土曜日
 今日は先ずは昨日録ったヴォーカルのセレクトからスタートです。セレクトってけっこう面倒臭いんですよね。でも何故かこの面倒な“作業”を、昨日『クイズ$ミリオネア』に出てた男がやってくれると言うので任しましたら………あれ?なんか変だぞ!なんでそんな男がここに居るんだぁ!?………あっ!これ夢だぁ!!!
 ……と言うわけで起きると朝8時です。“寝ぼ助”よすおさんは当然まだ寝てます。自分だけ起きて、ヴォーカルのセレクトを始める事にしました。早速ヴォーカル・トラックを聴いてみますと、どれもそんなに悪くないので、結局昨日が17日だったので、“17トラック”を中心に2、3個所別のトラックのを差し替えただけで終ってしまいました(随分いい加減だなぁ〜……)。しかし、昨日張り切ってヴォーカル・トラックに11トラックも使ってしまったので、それを全部聴くだけでも時間を要してしまい、けっこう大変でしたよ。だったら、始めっから3トラックくらいだけ録ったって良かったのに、あ〜、なんて無駄な事をしたのだろうと後悔しつつも、今更しょうがないと諦めて作業を続けました。セレクトし終えたヴァージョンを別のトラックにピンポンし、これで完成。作業が終わってから、寝てるよすおさんを起こし、お腹も減ったので『福々亭』にラーメンを食べに行く事にしました。
 ラーメンを食べ終え、スタジオに戻って来ると、先ずはこの曲の後半部分に(前半にはエレピを入れてありますが、後半にはまだクリックとАトーンしか入ってません)何かコード楽器を入れようかと思いました。最初に入れるのはロンロコに決めました。それから順々にチャランゴ、ワライチョと録るつもりです。ロンロコ−チャランゴ−ワライチョは同じ楽器なのですが、その大きさで名前が変わって来ます。ロンロコはチャランゴより一回り大きく、逆にワライチョはチャランゴより一回り小さく出来てます。
 ロンロコはチャランゴの5度下にチューニングしてるので、最初チャランゴで練習してたので、どうしても頭がこんがらがってしまいます。ロンロコと言うのはチャランゴと違って、割りと新しい民族楽器なんです。ボリビアの人気グループ、カルカス(KJARKAS)と言うバンドの人が考案した楽器だそうで、私の印象では、音色はチャランゴをそのまま音域だけ下に下げた様な音色なのですが、その割りにはチャランゴよりはガット・ギターに音色が近い感じがします。勿論ガット・ギターよりもエスニックな感じがしますが………。
 ロンロコの次はチャランゴを録ります。チャランゴのレコーディングではちょっと張り切りすぎて、爪が割れてしまい、弦も切れてしまいました。しかし、弦が切れてもそのままレコーディングしてしまいました。後でワライチョも入れるので、多分問題ないはずです。しかし、爪が無いので音色的には高音が抜けず、ちょっと地味です。その分ワライチョは派手にプレーするつもりです。フォルクローレではチャランゴ系を3本も入れる事ってあまり無いのではないかと思いましたが、音圧を前半部分に負けない様に、ここはあえて3本入れる事にしました(「本当は、持ってきたモノを全部使いたかったんだろ?」って言われそうですね)。
 3本の竿モノ(チャランゴ、ギター、ベースとかネックの着いた弦楽器の事)を入れると、やはりクリックではノリが良くないので、ボンボを録ります。ボンボは太いスティックで叩くフロア・タムくらいの大きさの大太鼓ですが、ドラム・セットで言うと、バス・ドラムの様な役目です。スティックも通常は、右手に持つ方がマレット・タイプでヘッド(皮)を叩き、左手は普通の棒状で、太鼓のリム(縁)を叩きます。
 一瞬簡単な様で実は演るのに苦労したのがこのボンボ。叩いてるうちに段々打面の位置がずれて来てしまい、とても苦労しました。
 ボンボの次に入るのはやはりパーカッション類で、チャフチャスを録る事にしました。チャフチャスって言うのは、山羊の爪を沢山集めて、それを振って“ガシャラガシャラ”鳴らすシェーカーの類いです。山羊の爪と言いますが、別に生きてる山羊の爪を抜いて取って来るわけではありませんよ。何でも山羊って、勝手に爪が脱けて生え変るんだそうです。だから脱けたやつを拾い集め楽器にしてしまうのだそうな。買ったばかりの頃はちょっと乳臭く、最近はその臭いがしなくなってきましたので、ちょっと寂しいです(なぁ〜んてね)。
 後半部分はとりあえずこの辺まで演りましたら、一度前半部分の録音に戻りたいと思います。なんと言っても、ここまで演っておきながら、まだドラムを録ってないのです。
 今回も私のメイン・セットのラディック3点セットを使っての録音です。いつものとおり、セットをセッティングして、マイクを立て、チューニングを大まかにして一度録ってみます。その後よすおさんに叩いて貰い、自分で録音機材の方の調整をします。それからまた自分で叩き、よすおさんに「マイクの入力つまみをもうちょっと○○してみて〜」とかって言いながら、何回か録ります。その都度自分でまた録ったプレイを聴きながら録音機器の微調整をし、いよいよ本番です。ドラムの場合、私はパンチ・イン・アウトをしないので、間違えたりしたら又最初から演り直しです。テイク3か4辺りでだいたい気に入ったプレイが出来たので、これでOK。今回の音はなかなかデッドな音で、スネアの音の切れも申し分なく良い感じです。
 時計を見るともう直ぐ夜の7時です。今日の録音の〆はケーナです。ケーナはまずはピッチが一本一本違い、それも物によってはオケのピッチ(A=440Hz)よりかなり低いです(本来、吹き方でピッチを調整します)。結構ピッチを合わせるのも大変な楽器ですが、ケーナを入れる予定のこの曲の後半部分のは、バックはチャランゴやロンロコと言ったフォルクローレ系の楽器ですので、あまり神経質になってピッチを合わせる必要もなさそうです。このピッチの緩慢さがかえって雰囲気を醸し出してくれるのです。
 今回使うケーナは、ルーチョ・カブールと言うボリビア人のケーナ奏者が作った太めのケーナです。ルーチョはボリビアのチャランゴ・マエストロ、エルネスト・カブールの弟で、彼自身もボリビア屈指のケーナ奏者として人気があります。
 さて今回は、「ケーナがこの曲の後半部分の主旋律を担当する」と言うことで、トップをユニゾンで2本、ボトムを1本の合計3本のケーナを録音するつもりです。
 何しろ、9月頃からケーナを吹き始めてまだ4ヶ月くらいしか経ってない為、自信は有りません。しかし、録り始めると、結構ノッて演る事が出来、満足です。録ってる最中、音がどうしてもかすれてしまってたのですが、「もしかして!」と思い、洗面所へ行ってヒゲを剃ってくると、いつもの感じの音になりました。つまり、ケーナやサンポーニャを吹くのに、あまりヒゲは良くないって事でしょうか?それともただの思い過ごし?
 だいたいの感じが見えて来ましたが、思ってたよりもノリが良いです。曲も“1曲”と言うよりは、2曲を1曲にしたいわゆる“ツー・イン・ワン・メドレー”の様なイメージです。明日はいよいよベースやギターなども録音する予定です。明日が楽しみです。

2003年1月19日日曜日
 今日も昨日の曲の続きです。そしていよいよ、よすおさんの出番です。
 先ずは曲の後半部分にガット・ギターを入れてもらおうかと思います。これはコードを弾くプレイではなく、ベース・ギターを弾く様に、低音弦での“裏メロ”的な感じの旋律を中心にプレイします。フォルクローレでは、ガット・ギターでベース・ラインを弾く事が多々有ります。これもそんな感じで演ろうかと思います。通常、私のレコーディングでは“プレイヤーお任せ”と言うのはほとんど無く、今回もよすおさんがと私とで楽器(今回は2人ともガット・ギター)を1台ずつ持ってセッションし、ラインを決めて行きました。その場合、私がコードを弾き、口でラインを歌い、それを後からよすおさんが弾きつつ楽譜に書き込んで行きます。しかし、「ここの小節だけはちょっと盛り上がる感じで弾きまくってみて」とかと言って、その部分だけよすおさんに勝手に弾いて貰う事とかも有ります。やはりその場合も私が一応チェックし、それで良ければ、ほとんどの場合、それも楽譜に書き込んで貰います。今回は、出来るだけフォルクローレに有りがちなフレーズにしたかったので、その辺を結構意識しました。実際フォルクローレっぽくなったかは分かりませんが、結構良くなったと思います。音の方は、フォルクローレではガット・ギターの下にベースが入らない事の方が多く(勿論最近のモノでは、ベース・ギターが入るモノも有ります)、ガット・ギターをベース替わりにするので、それをとても低音の効いた音に録りますが、今回の私達は普通に録りました。実はこれは録り方よりも、使ってる楽器による所が多いのです。今回、私達が使ったガット・ギターはヤマハ製で、それもサイズが普通の物より小さいものでしたが、フォルクローレなどで現地のミュージシャンが使うボリビア製のガット・ギターは、見た目は普通のガット・ギターでも、低音の出方が私達の知ってるクラシック・ギターとはまるで違うのです。因みにクラシック・ギターの中で「バス・ギター」と言うのが有りますが、それとはどうやら違うみたいですね(私はバス・ギターをさわった事が無いのでなんとも言えませんが……)。今回は更にベースも入れる予定ですので、かえってヤマハ製のガット・ギターでちょうど良かったのですが、いつかはボリビア製のガット・ギターが欲しいですね。
 この後、マトラカと言うフォルクローレの楽器を録りましたが、このマトラカって私にはどうみてもオモチャにしか見えないんです(値段も1000円くらいでしたし)。ですが、フォルクローレでは結構これを使うんですよね。構造としては、把手を持ってグルグル回すと“ぎりりりりりり〜〜〜”って凄い音がします。もちろん一気に回さずに、ちょっとだけ捻ると“ギリ・・ギリ・・”って感じでパーカッションとしても使えます。そうそう、デカさま(プリオさまだっけ、)の映画、『ギャング・オブ・ザ・ニューヨーク』でホンだけの一瞬出て来ますが見つけた方いますか?たしか子供が持って走ってました………ま、そんな事はどうでも良いとして、このマトラカと言う楽器、これが使ってみると結構効果的で、私はすっかり気に入ってしまいました。
 そう言えば、まだ曲の前半部分にはフェンダー・ローズ、ドラムス、歌、それしか入ってませんでした。そろそろエレキ・ギターを入れようかと思いますが、今回はちょっと“スタジオ・ミュージシャン”っぽいギターにしたかったんです。“スタジオ・ミュージシャン”っぽいギターが欲しいと言うのは、私にしては珍しいと言うか、多分初めてではないでしょうか?“スタジオ・ミュージシャン”っぽいギターと言っても、1980年代を席巻したスティーヴ・ルカサー、ポール・ジャクソン・ジュニアとかって言う人達のイメージではなく、もうちょっとだけ昔の人のタイプです。で、私かよすおさんのどちらかがそれを弾かなくちゃいけないんだけど、“スタジオ・ミュージシャン”っぽいギターなんて私には到底無理、よすおさんが演ってもやっぱり中途半端にしかならないので、ここは本物のスタジオ・ミュージシャンを連れて来るしかないな、って事になりました。でもしかし…………、実際問題として現時点で伊豆に来てくれるスタジオ・ミュージシャンなんているわけない。RMAJの名簿をみた所でも、結局時間の無駄(“RMAJ”って言うのは“レコーディング・ミュージシャン・アソシエイト・オブ・ジャパン”の略で、日本のスタジオ・ミュージシャンの組合みたいなもの、昔は“スタジオ・ミュージシャンズ・クラブ”って名前でした。実は私はここの会員で、ヴォーカリスト、つまりコーラスのお兄さんって事で登録されてます)。結局“気持ちだけスタジオ・ミュージシャン”って事で私が弾く事になりました。だいたい私の“ヘタ・ウマ・ギター”と“スタジオ・ミュージシャンの正確無比なギター”ではまるで対局、水と油、月とスッポン、トンビと鷹、ザリガニと伊勢エビ、うん○とカレーライスってくらい違うのですが、ここは「俺はニッポンのラリー・カールトンかリー・リトナー、ラリー・リトナーだぁ!」と自分に言い聞かせてプレイする事に……。この開き直りが良かったのか悪かったのか、まるで「頭の部分が人間で胴体と足が馬」みたいな、へんちくりんなスタジオ・ミュージシャンになっちまいました。だいたい、“ヘタ・ウマなスタジオ・ミュージシャン”なんていちゃいけませんよね。私のはこれなんですよ、参っちゃいました。変身しそこなったタヌキの心境です。でも、別に“スタジオ・ミュージシャンの〜”と言っても、正確さが欲しかったわけではないので、一応満足ですが……(自己満足?)。
 今回の使用ギターは“気持ちだけスタジオ・ミュージシャン”って事もあり、ギブソンES335をライン・レコーディング、つまりアンプを使わずに行いました。エフェクターなんかも、コンパクト・エフェクターのコンプとかも使っちゃおうって事で、倉庫から出して来ましたよ(実に十年振りくらいの登場でした)。それからミュートロンと言うフェイザーです(こちらはよく使います)。やはりここはフランジャーとかコーラスとかではなく、ミュートロンが良い雰囲気です。そう言えば私、ボスのコーラスで“CE−1”ってのも持ってましたっけ。たしか元々私の大先輩の濱田金吾さんの持ち物で、ローランドのサンプラーと交換したんだったっけな?話はそれますが、私はコンパクト・エフェクターではファズだけにはちょっとこだわってまして、何種類か使い分けてます。ファズはいわゆる“ディストーション”や“オーヴァー・ドライブ”って言うのとは似て非なるもので、特にヴィンテージ物はその製造メーカーやヴァージョンによってそれぞれの強烈な個性が有ります。この辺の事はいつかまた詳しく書きたいと思います。
 この後、私のギター・ソロをファズを使って録りました。今回はエレクトロ・ハーモニクス社の「ビッグ・マフ」と言うファズを使いました。
 最後はよすおさんがリッケンバッカー4001ベースを弾いて、バッチリ1回目のテイクでOK!!結局、曲の前半後半通して出て来るのは、今のところこのベースだけです。後半はやはりベースを抜くと、低音の音圧が後半にガクッと落ちてしまうので入れたのですが、ノリもまたアップする格好となり、効果倍増です。よすおさん、流石(最近、よすおさんのレコーディングはとっても早い!かなり腕を上げてます)。

2003年1月20日月曜日
 一昨日録ったケーナにコンプを掛けて、他のトラックに移そうと思います。ケーナはコンプを掛けずに録りましたので、ちょっとだけ耳にきつい様なところがあったのですが、これでもうOKです。
 ここで一度ラフ・ミックスを創ってみる事にします。私はこれを家に持って帰り、何度か聴いて、「この音は小さい!」とか、「ここはこのままのバランスが良い」とかって風に、客観的な耳で聴いた時の印象を記憶しておきます。それから、このラフ・ミックスを聴いて、自然と更なるアイデアが浮かぶ時なんかも有ります。例えばアレンジ面でも多々あります。私も、無理して何かを足してやろうなんて事は思いませんが、ラフ・ミックスなどを聴いた時に、突発的に浮かんで来るキメや裏メロ、オブリなどは、やはりとても自然で美味しいです。
 さて、そろそろこの曲のタイトルを決めようと思ってるのですが、“2イン1”と言う事で、「君がいるから〜くよくよしないぞ」と言うのにしときました。
 今回はとりあえず、この曲にに関してはここまでですが、「君がいるから」の部分にコーラスを入れたり、今後もう少し何かしらエッセンスも盛り込みたいと思ってます。今回はサンポーニャやケナーチョ(D管のケーナで、低音用ケーナ。因みに普通のケーナはG管)などのフォルクローレの楽器はまだ使ってないので、無理でなければこれらの楽器を盛り込んでみても面白いかもしれませんね。でもまぁ、いい加減で気分屋の私の事ですので、その時になってみないと、自分でもどの様にするかは判りませんけど………。!!!!そ・そうだ!この曲の前半「君がいるから」の部分は“海”的なイメージがあるので、フォルクローレ系の“山”的イメージの楽器を使うのではなく、「ウクレレなど、イメージ的に海っぽいものを使ってみる」って言うのはどうかなぁ………(ちょっと強引かなぁ?)。


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