安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSEはNon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。


 

2004年9月6日月曜日
 今日はラジオの収録日(六本木の某スタジオにて)。夕方に仕事が終わって、私とよすおさんはよすおさんの運転する車に乗って伊豆のFAB ROCKS REC. HOUSEへ向かうのでありました。途中、目黒のラーメン屋さん、『かづ屋』に寄って夕食をとりましたが、これが非常に美味かったんです。よすおさんに言わせると、「店の中にセロリの臭いがしてラーメンの味が分からなかった」との事でしたが、私にはそんな臭いはしませんでした。よすおさんは大のセロリ嫌いで、「店で出してる“セロリ漬け”(有ったっけなぁ?)が強力に臭った」と言うのです。しかし、私はそんな事は全然気にならず大満足、ラーメン屋さんを出て車に乗り込んでも暫くは「美味かったぁ…」と連発してました。ホントに美味かったです。
 車は途中、藤沢の私の自宅に寄り、その後、海沿いの道を通って伊豆へ向かいました。途中、2人の晩酌用のビールを数本買って寄るのFAB ROCKS REC. HOUSEに付いたのでした。
 「明日は青ちゃん夕方に来るから、それまでに歌でも録っておこうよ」と言いながらも、酒を飲み続け、最後に飲んだオーストラリア土産(貰った)の白ワインが効いてしまった私はよすおさんより一足早く寝室ヘ向かうのでありました。しかし、私が寝ようとすると台所から「うわぁー!」と言うよすおさんの声が…!!何が起きたかと思い、台所ヘ行くと、よすおさんは腕の上にムカデが落ちてきたらしく、火鋏でムカデを捕まえていました。噛まれはしなかったものの、ちょっと腫れてしまってました。私も以前同じことが有りましたが、今年に限ってはムカデは2回目で、5年ほど前にムカデが大繁殖(?)してた事を思い出しました。

2004年9月7日火曜日
 昨日飲んだ白ワインが効いたのか、今日は朝からかなりの気怠さを感じます。今日は「夕日を見に行こうよ」(勿論、仮タイトルです)の歌を録るつもりでしたが……。
 なんとなくダラダラしたまま、よすおさんとギターで歌なんか歌ったり、ケーナを吹いたり、「健康に良いから」とウォーキングをしたり、そんな事してるウチに夕方になってしまいました。今日は夕方から青ちゃんが来るので、待ち合わせ場所の伊東の『福々亭』の前まで車で行きましたが、3分程早く着いた青ちゃんから私の携帯に電話が入りました。「やられたぁ〜」と青ちゃん、「どうしたの?もしかして臨時休業?」と私が聞き返すと、「そ・う・……」と哀しげな声が帰ってきました。きっと台風が迫ってきてるので、臨時休業してしまったのでしょう。『福々亭』は水曜日と木曜日も休みなので、これで3連休。木曜日の夜には帰るつもりですので、今回は『福々亭』のラーメンは無しって事になります。私とよすおさんも残念に思ってますが、最近「『福々亭』が一番かな」と言ってる青ちゃんのショックは相当のものの様です。しょうがないのでラーメンは諦め、「夜はみんなで何か料理を作ってつまもう」と言う事になりました。私はよすおさんの車から青ちゃんの車の助手席に乗り換え、近くのスーパーに夕食の買出しに行きました。
 FAB ROCKS REC. HOUSEに戻って来て、炭火を使って色々とつまみを作り、ビールに焼酎で盛り上がり、そろそろ寝ようと言う頃、青ちゃんが「んで、今日はどこまで録ったの?」と聞くので、私は笑ってその場をうやむやにしました。おやすみなさぁ〜い。

2004年9月8日水曜日
 青ちゃんが「今日は歌録るぞ!」と息巻いてます。しかしその前に……、今回は青ちゃんが最近手に入れたビンソン・エコーレックを持って来てくれたので、先ずはそいつを試してみようと思います。ビンソンのエコーレックはディレイなのですが(勿論、デジタルではない)、アナログのBBDと言う遅延素子方式(所謂アナログ・ディレイ)でも、テープ・ディレイでもなく、ビンソン特有のドラム方式と言うものなのです。ドラム方式ですと、特有のワウフラッターが出て、これが独特の味になると聞いたことが有りますが、果たしてどうでしょうか?
 ビンソン、先ずは青ちゃんが仮歌に掛けてます。う〜ん、面白い!続いて私のリクエストは先日録ったウーリッツァー・エレクトリック・ピアノに掛けてと言うものだったのですが、何パターンか出してみてくれましたが、これが凄い!!!もうそれだけで他にはない独特の世界観が出来上がってしまいました。よくピンク・フロイドとかが使ってると聞きましたが、正しくです。勿論歌などにも良く、ショート・ディレイを掛けますと、聴き覚えの有る懐かしいリヴァーブ感が出ます。感動してしまいました。
 今回はこのビンソンを使ったウーリッツァー・エレクトリック・ピアノの世界を中心にアレンジ&サウンドを組み立てて行こうと言う気になってしまいました。ウーリッツァー・エレクトリック・ピアノのトラックとは別に、ビンソンのディレイ音を別トラックに録って置きました。
 今回の最初のプレイは、マーチン000−28をよすおさんに弾いて貰うところから。これは前回の録り直しで、前回はピッチがよくなかったのですが、ウーリッツァー・エレクトリック・ピアノを入れた事により、ギターのピッチを上手くそれに合わせて録る事にしました。それとは別に、前回、私がサビとBメロのところに(よすおさんの)ギブソンJ−160Eでストロークを入れて置いてあるので、トラックの余ってところ(イントロ、Aメロ部分、間奏、エンディング)をギブソンJ−160Eとマーチン000−28でよすおさんに埋めて貰う事にしました。実はこの時、よすおさんが間違えて私の方のギブソンJ−160E(ギブソンJ−160Eは私とよすおさんとで1本ずつ持ってます)をギター倉庫から持って来てしまいましたが、私は面倒なので「それで良いよ」と言ってそのままレコーディングしてしまいました。ですから、このトラックのアコースティック・ギターは、私の弾くよすおさんのギブソンJ−160Eとよすおさんの弾く私のギブソンJ−160E(ややこしい!!)、それにマーチン000−28と言う3本のアコースティック・ギターが混在する事になってしまいました。
 さて、ドラムス(何年も前に録った。4トラック使用)、前回録ったウーリッツァー・エレクトリック・ピアノにアコースティック・ギターを2トラック、ビンソン・エコーレックを掛けたウーリッツァー・エレクトリック・ピアノのトラック、全部で8トラック埋まった事になりました。その他のトラックは仮トラックやNGトラックなのですが、何故かベースが2トラック、ギターの仮トラックとNGトラックで4トラック、仮歌1トラック、ウーリッツァー・エレクトリック・ピアノのNGトラックと、かなりのトラックが有りましたので、それを一旦整理する為にも、仮歌と仮のベースを残して全部イレースしました。当然それと同時にトラック・シートの方も消しゴムでイレースです(トラック・シートとは、どのトラックに何が入ってるか記しとくシートで、基本的には何度でも消せる様にと鉛筆で書きます)。
 続いては仮でケーナを録ります。何故仮かと言うと、まだメインのヴォーカルが入ってないからなのです。メインのヴォーカルが入ってないと、ケーナのピッチをヴォーカルに合わせられないと言うのが理由なのですが、ケーナを録音する時は、ヘッド・フォンをする時も片耳を外し(私の場合)、音程をよく確認しながら演奏しなくてはならないのです。実は以前まではA=440hzに合ってなかったと思ってたケーナ、唇の当て方や形、つまりは息の入る角度でピッチが大幅に変わる事を知ったのでした。それにより、A=440hzにも合わせる事が可能になり、と言う事はその音程を自分で操作しなくてはならないのであります。
 今回のケーナのパートはこの曲でもかなり重要なパートになります。この曲は2番のAが歌ではなくケーナで演奏するからなのです。多分、歌を入れた後で、他の個所にもケーナを入れると思います。今回は、その2番のAにのみ仮ケーナを入れる事にします。
 さて仮のケーナにまたもやビンソンのエコーレックを掛けてみましたが、青ちゃんが作ったこれが素晴らしいの一言でした。そんなことは知らずに青ちゃんは、「どう?山のなかのエコーみたいでしょ?」と言って笑ながら弄ってましたが、その「山の中」が素晴らしいのであります。私は、「ケーナと言う楽器は私の中ではアンデスの山の頂上で吹くイメージが有る」と言う事を青ちゃんにあらためて説明し、「だから、今のこのセッティングを忘れないように」と真顔で言うのでありました。青ちゃんは遊びのつもりで掛けてたので、まさか遊びで創った音がバッチリ一発ビンゴしてしまった事に本人自身が驚いてしまい、「わ、わかりました…」と思わず敬語で答えてました。
 それにしてもビンソンのエコーレック、こんなに素晴らしいとは私もよすおさんも青ちゃんも思いませんでしたので、夜の飲み&食事の時もこの話題で持ち切りでした。暫くすると、青ちゃんは「さて、明日は歌を録るぞ!」と息巻き始めました。今日はよすおさんと青ちゃんがバーボンを飲んでるので(私はバーボンは飲まない)、結構深酒状態です。エコーレックの興奮と、明日は歌を録ると言う意気込みとで盛り上がり、夜は更けて行くのでありました。

2004年9月9月木曜日
 「今日は歌を録るぞ!!」青ちゃんが息巻いてますが、実はまだ歌詞が全部出来てないのです。恐る恐るそれを告白し、なんだかんだしてましたら、夕方になってしまいました。歌詞が出来ないと言っても、録音しながら考えてしまうのも有りなので、私は「歌詞ノート」を出して来て、歌詞を書き直したり、追加したりしながら歌い始めました。今回は仮歌と言う事にして、歌詞がバッチリ良いものに完成させてしまうつもりです。歌詞ノートにはこの曲に関しての歌詞だけで実に10ページほど書かれてますが、これを先ずまとめ、一番から歌い始めました。歌っていると感情もかなり入るので、家で机に向かって詞を書いてる時よりも、部分的ではありますが、その歌のメロディーにより合ったモノがひらめきます。メロディーへの歌詞のはまりもより良くなった気がします。
 2番までは割とあっさりと出来上がってしまいました。……と言うより、ここまではほとんど出来上がってたので、メロディーを崩して歌い上げるところとかを書き足したり、書き直したりと言う事で済みました。
 さて、とりあえずここまでをよすおさんと青ちゃんに聴いてもらいます。メロディーと歌詞の内容が違和感を感じさせないか、歌詞がすうっと聴きに入って来るか、などなどいろいろなところがチェック出来ます。よすおさんが言うには「いつもより音が硬い」と言うので、よくよく調べてみると、マイク・プリにフィルターを掛けたままになってました。私はフィルターを外し、もう一度歌い直しました。ここでまたあらためて3人で客観的な耳でチェックです。歌の音色は青ちゃんもよすおさんも「良いね、それそれ」となり、あとは歌詞の方です。これが思っていたよりもずっと良い感じがするので、青ちゃんとよすおさんに「どう?」と確認しますと、彼等も同じ答えでした。さて、残りは3コーラス目のサビと大サビですが、ここに関してはまだ全然書けてません。暫く休憩のつもりで、3人で寝室でゴロゴロしてどうでもよい話しをしてました。30分ほどすると、私の頭のなかにドドドォ〜っと何か浮かんできたので、そのまま私はコントロール・ルームに戻り、残りを録り始めました。途中、ちょっと考えたり、歌詞を書き換えて歌い直したりし、とうとう最後まで完成しました。再び青ちゃんとよすおさんを呼び、3人で聴いてみる事にしました。言葉のはまり方も良いし、内容も違和感なく、メロディーからすうっと耳に入って来ます。とても良い感じです。曲名も「星をつかもう」に決まりました。レイボウの曲で「虹をつかもう」と言うのが有りましたが、ま、良いでしょう。
 さて、次回はいよいよ歌録り本番です。その前にこの歌詞をもう一度家でチェックし、更に良い表現が有れば書き出して来るつもりです。

2004年9月13日月曜日
 一昨日、私は不覚にもどうやら寝冷えしたらしく、扁桃腺が赤く腫れてたのですが、必死の“イソジン攻撃”の甲斐あって、今日はちょっと頭が痛いくらいで、あとはなんとかなりそうです。しかし今日、FAB ROCKS REC. HOUSEヘ行く伊東までの電車の中での冷房があまりにも低く、私が「これは寒いぞぉ」と思ってたら、後ろに座ってた老人が「暑い!!!冷房、もっと低くしてくれ!!!!」と言って、車掌さんに注文。揚げ句、私はまるで南極にでも来てしまったかの様な寒さを体験しちまいました(ちょっと大袈裟かな?)。そんでもって扁桃腺の辺りがまた痛みだしたのでした。「なんのこれしきの事で負けてなるものか」と、私は夕方までにはなんとか体調を戻し、FAB ROCKS REC. HOUSEに着いて直ぐに「星をつかもう」の歌入れを開始したのでした。
 咽の方は嘘の様になんともなくなり、およそ2時間弱でウォーミング・アップ〜歌入れ〜チェックまでを終える事が出来ました。チェックはよすおさんと2人で行うのですが、「ここの歌い方をこうしよう」とかって感じで、結局は最初に録った歌の3分の1くらいは録り直してしまうのでありました。詞の方も、数ヶ所直し、「どう?よすおさん。こっちの詞の方が良いでしょ?」とかって言いながら歌い直して行きました。
 チェックが終わったところで今日はおしまい。明日また再度チェックします。と言うのは、より客観的な耳で聴きたいと言う事からですが、意外な事に、この“再度チェック”でもかなり歌い直しポイントが挙がって来る事が有るのです。

2004年9月14日火曜日
 今日は先ず、昨日録った歌の“再度チェック”からしました。13時には青ちゃんと伊東の『福々亭』で待ち合わせするので、それまでには全部終えておかなくてはなりません。実は、歌と言うのは午前中に演るのは咽の調子が上がらず結構辛いもんなのですが、最近の私はすっかり“朝型人間”になってる所為か、案外午前中でも大丈夫になって来ました。やはり、「早起きは三文の徳」とはよく言ったもんです(ちょっと、オヤジ臭いかぁ)。

 青ちゃんとの待ち合わせの後、当然の事ながら『福々亭』でラーメンを食べ、夕食の買出し等をしてからFAB ROCKS REC. HOUSEに戻って来ましたが、なんと現在の時間は、もう夕方の16時を回ってしまってます。
 戻って来て、早速青ちゃんに録った歌を聴いてもらい、感想を聞きます。2ヶ所程青ちゃんなりに「こうした方が良いのでは?」と言うところが有ったので、そこを歌い直してみました。「う〜ん、僕は前の方が良いけどなぁ〜」とかって言いながら、何度か歌い方を変えて録って行った結果、私と青ちゃんが揃って「ん、これ良いじゃん」と言うのが出たので、それでいく事にしました。結局、単語2個だけだったのですが、これによってまた良い感じになった気がします。

 さて、御後はコーラス、それからリード・ヴォーカル用のダブル&字ハモです。コーラスは私が独りで重ねるのですが、チェックはよすおさんと一緒に行います。MTRのロケーターは私が操作し、その横にマイクを立て、ヘッド・フォンをして歌うのですが、よすおさんがその横にいてチェックとパッチの繋ぎ換えをしてくれます。チェックの仕方は、よすおさんが私の生歌を聴き、更に今度は2人で(私はヘッド・フォンを外し)スピーカーからプレイ・バックを聴きます。青ちゃんもちょっと離れたところで聴いてる様ですが、私の所からは姿は見えません。たまに「どうかな?」と聞くと物陰から姿を現します。なんだか、なんかの動物の様です。

 今日の所はこれでおしまい。最後はみんなで喰って飲んでをし、ブライアン・メイやスティーリー・ダンの教則ビデオやメイキング・ビデオなどを観ながら盛り上がりました。

2004年9月15日水曜日
 朝起きると、急に昨日のコーラスにダブルを入れたくなり、今日はそれを演る事にしました。
 コーラスのダブルだけで終われば良かったものの、更にコーラス・パートを追加したくなり、そんな事をしてるウチに段々時間が経って行きます(ケーナの仮録りとかしてたのもいけなかったかも…)。
 コーラスはトラックを沢山使うので、最後にピンポンしてトラックをまとめます。よすおさんにも聴いてもらい、バランスが良くなったところでステレオ・ピンポン(つまり2トラックにまとめました)。そして、元のトラックは潔くイレースです。結局、字ハモ&ダブルの2トラックも残し、全部でコーラスが4トラック使用してます。
 字ハモのトラックも更に足して、「もう、こんなところで良いよね」と言う事で、今日は終り。青ちゃんとよすおさんは「夜の買出しに行ってくるよ。先にシャワーでも浴びてて」と言って出掛けて行きました。その間、私はプレイ・バックを聴き、後片づけでもしようと思ってましたが、またまた、コーラスを入れたい個所が出て来たので、それを演ってしまいました。それにしても、ここんところ歌ばっかりでちょっと疲れました……。考えてみたら、明日一日で残りのダビングを演らなくてはなりません。それもちょっとしんどそうですが、今日のところは明日の事は考えずにリフレッシュしようと思います。

2004年9月16日木曜日
 なんとか今日中に「星をつかもう」のダビングを終えるつもりです。ここ数日歌ばっかり演ってたのを後悔……、でも、ま、しょうがない。気合い入れて行きましょう。

 今日の作業はエンジニアリングを全て青ちゃんに任せ、私は演奏とアレンジ&プロデュースに専念したいと思います。

 先ずはベースから録ります。以前、仮ベースを録った事が有るので、フレーズ的には問題なくスムースに行くはずですが、しかしその前に、やっぱり少しだけフレーズを変更しようかと思います。音の方は、私のリクエストで「ベース・アンプとラインで2トラック使って欲しい」と青ちゃんに言いました。と言うのは、アンプで低音を、ラインでピック音を録ろうと言うものなのですが、今回は、フェンダーのベース・アンプのピック音ではないピック音を出したいと思ってるので、ベースに2トラック使う事にしたのです。最初、ベースからの出力をディメーターのチューブDIでパラって、サンクラの卓とベース・アンプに行きましたが、青ちゃんが「ン〜、これは良くないなぁ〜。ラインらしくないぞ」と言って、DIをカントリー・マンに変更。確かにラインの音がピシっと抜けて来ました。
 青ちゃんが卓の前に座り、私がその少し後ろでMTRのロケーターを操作し、よすおさんは卓の横辺りでプレイしました。ワン・コーラス目から始め、ベースのノリを後半に行くにしたがって盛り上げ様かと思ってます。1テイク目は、盛り上がり地点が早過ぎたので、今度は私が合図を出しました。よすおさんはその合図にしたがってノリを盛り上げて行きます。「ここからは歌を聴いて!」とか、「ここはスネア!」とかって言って合図を出すのですが、青ちゃんも卓のフェーダーを操作し、よすおさんが演奏し易い様にして行ってくれてます。これぞ三位一体です。2、3テイク目でOKが出て、ベースは終り。

 ベースの後は、よすおさんに更にフェンダー・ベースVIを弾いて貰いました。「ベース」と言っても、既にベースは入ってますので、フェンダー・ベースVIを使って別のフレーズを入れるのです。このフェンダー・ベースVIにファズを繋ぎ、小さなギター・アンプを通して録ります。ギター・アンプはFAB ROCKS REC. HOUSEの階段のところに置きました。かなりライヴな音に録れました。

 続いてはタンバリンを入れました。2〜3テイクで終わりましたが、タンバリンが入ってる個所が凄く長いので、手が痛くなってしまいました。

 と、ここで御昼ご飯の時間となりました。青ちゃんがスパゲティーを茹でようと、鍋に水を入れて火を付けたのですが、天気も悪くかったので、全員意見一致で気晴らしに外へ食事に行く事にしました。
 御昼の時間を大幅に過ぎていてお腹がペコペコと言う事もあり、私とよすおさんがいつも「いらっしゃい」と呼んでるステーキ屋さん、『カウボーイズ』へ行きました。私はここに来るといつもご飯を御代わりしてしまうのです。私はお腹一杯で動けない……。でも、毎度の事ながら、凄い満足感が有ります。これでレコーディングにも力が入るはずです。……ですが、お腹が苦しいので、「ちょっと、海の見える所で一休みしよう!」ってな事となってしまいました。

 食事から戻り、腹もこなれて来たので、早速ケーナを入れます。ケーナはルーチョ・カブールのケーナを使いました。実は先日、ローランド・エンシーナスのケーナを買ったばかりなのですが、私の場合、やはり使い慣れたルーチョのモノがファースト・チョイスになります。
 最初、息継ぎの負担を軽くするため、何回かに分けてプレイし、それを繋げたのですが、青ちゃん曰く「サンプラーっぽく聴こえるよ」と言うので、そんな演り方は止めて、頭から一気に吹いてしまう事にしました。なるほど、不思議な事に、こっちの方が全然良いです。繋いだ方は、「上手く吹こう」と言う意識が、かえって“変な完璧さ”を出してしまっていて、ニュアンスにも乏しく、こちらの「気合い入れて吹くぞぉ」と言う方が完璧さは無いものの、それがかえって人間っぽくてニュアンスが豊かです。やはり、ズルをしようと思ってもロクな事はありませんね。反省、反省。

 この曲にもやはりメロトロンを入れます。音はストリングスとコーラスで、2ヶ所にメロトロン・パッドの壁を創りました。

 そろそろ、青ちゃんが「お腹空いた……」となり、遅い夕食になりました。私は夕食を作って貰ってる間に、次に入れるメロトロン・ストリングスの裏メロのフレーズを譜面にしました。

 間奏の部分にハンド・ベルで裏メロを入れました。これは私とよすおさんでパートを決めて同時にプレイしました。私がベル3つ、よすおさんがベル2つで、最初はそれぞれの位置にマイクを立て、ステレオになる様にしましたが、それ以外にももう一度プレイし、そっちの方はモノ、つまりマイク1本で録りました。ただ、使用したハンド・ベルが安物だったので、音にばらつきが有り、良い音を出すまでに結構苦労しましたが、「それもまあ味かな」と言う事で…。

 食事前に書いたメロトロン・ストリングスの裏メロを録ったのですが、どうも印象が暗くなってしまい、結局却下となりました。ま、こんな事はしょっちゅうです。気にしない、気にしない……って、ホントに気にしてないところが、ちょっとヤバイっすか?

 その後は、ヤマハのストリングス・アンサンブルでパッドを入れたのですが、こちらも「なんだか良くない」と言う事で、却下。「それがダメならこれ」と言う事で、フェンダー・ローズにミュートロンというフェイザーを掛け、Bメロの所にダビングしました。これは地味ながら、アレンジとして欲しかったフレーズだったので、上手くはまりました。

2004年9月19日日曜日 at イデア・サウンド・スタジオ
 今日は場所を伊豆のFAB ROCKS REC. HOUSEから都内の『イデア・サウンド・スタジオ』に移し、「星をつかもう」に子供のコーラス隊を録ります。
 今日は私と青ちゃん、アシスタントの萩谷君と言う3人のスタッフと、歌ってくれるのは小学生の3姉妹。子供達の歌録りは私が一緒にブースに入り、青ちゃんにエンジニアリングを御願いしました。マイクロフォンはノイマンM49が1本立ってます。今回特別にモニター用にとスピーカーが置いて有りましたが、私は「一度ヘッド・フォンでトライさせて欲しい」と御願いし、ヘッド・フォンが私の分と子供達全員分用意されました。私が子供達一人ひとりにヘッド・フォンを掛けてやりましたが、この時、片耳は少しだけずらして掛け、自分の生の声が聞こえる様にしました。こうする事で、ピッチをちゃんと取れる様にする為です。両耳にヘッド・フォンをしてしまうと、特にコーラスの場合などですと、自分が何を歌ってる分からなくなってしまうので、必ず片耳はヘッド・フォンからずらすのです。
 パートはオクターヴのみです。先ずはオクターヴ下からです。実はこの時まで、私はこのパートだけで良いと思ってました。何故なら、オクターヴ上は出ないと思っていたからです。青ちゃんに「ねえ、次はオクターヴ上で歌ってみてよ」とトーク・バックで言われ、演ってみるとすんなり出たのでした。結局はこちらの方(オクターヴ上)が、私がイメージしてたモノに近かったのですが、せっかくだから下のオクターヴも足して、より良くなりました。何回かダビングして行くうちに段々調子が出て来ましたが、その反面そろそろ集中力も切れかかって来たので、ここで一度休憩。休憩になると私と青ちゃんのコンビはそれが長い……。子供達に「さっさと演っちゃおう」と即され、彼女達はすたすたとブースの中に入って行ってしまいました。すっかり面目を失った私と青ちゃん、気合いを入れてレコーディングを再開です。2テイクを歌ったところで青ちゃんから「OK」を貰い、プレイ・バックを聴きにコントロール・ルームヘ行きました。とても良い感じです。それにしても、メロディーはかなり難しいはずなのに、よくやってくれました。

 今日は仮ミックスを青ちゃんに創って貰うつもりです。青ちゃんが演る場合でも、勿論デジタルは一切無し!
 私がミックスを演るのとはまた違って、青ちゃんが演るミックスを聴くのも新鮮でとても楽しいです。
 今回もまたビンソンを登場させましたが、こいつはホントに良いです。例えば歌とかに掛けても、音が前に張り付いてるのに、奥行きだけがプラスされる感じなんです。メロトロンとかに掛けても、メロトロン独特の質感を変えずにエコー感を足せるし、ケーナにもバッチリでした。モノなのに何故かステレオの様に広がって行く感じがするとでも言いましょうか、たとえ掛けすぎてもグチャグチャにならないと言う優れ物です。しいて言うなら、「あ〜、ビンソン病になったぞぉ!」と、何にでも掛けたくなってしまうと言う事でしょうか。ま、これは「嬉しい悲鳴」になるんでしょうね。あ〜、私もビンソン欲しい!このビンソン、貰っちゃったらきっと青ちゃん泣くだろうなぁ………冗談ですよ、冗談。
 仮ミックスを済ませ、「やっぱり、後はサビにエレキを入れて、……その後はハモンドだね」と言う事になりました。と、その前にトラックが無くなって来たので、ピンポンをしなくてはなりません。これはこれで神経を使います。後日、またここでSSLの卓を使ってピンポンをし、ギターを入れ、最後はハモンドですが、ハモンドはゲストに御願いする事になりました。そのゲストが誰か、……それはまたその時の御楽しみって事で…(私と青ちゃんが共通で知ってる人です。既にブッキング済み)。

2004年9月24日金曜日 at イデア・サウンド・スタジオ
 今日は夕方からボリビアのフォルクローレ・グループ、ムシカ・デ・マエストロスのコンサートが有り、それをよすおさんやタッキー達と観に行く事になってます。……と、その前に、青ちゃんのスタジオ、『イデア・サウンド・スタジオ』で、「星をつかもう」のスレーブ・テープを創らなくてはなりません。
 「スレーブ」と言うのは、プロ・ツゥールス全盛の昨今ではあまり必要がなくなってしまったかもしれませんが、我々の様にいまだにアナログ・レコーディングを演ってる者達には、たまぁ〜に必要になってしまう、拡張トラック分の別テープの事です。私達のMTRは御存知の通り、24トラックですが、これにシンクロナイザーでもう1台のMTRをシンクロさせて、そこにコピーを創ってしまおうと言う物なのです。しかしそれは、ただ単にコピーを創るのではなく、幾つかのトラックをまとめながら移し替え、それによって、「トラックに空きを作ってしまうおう」と言う物なのです。元のテープはもうほとんどトラックが埋まってしまいました。今後のダビングの予定で行きますと、「オルガン(レスリー)を一応ステレオで録り、エレキ・ギターももしかして2トラック、更にチューブラ・ベルももしかして入れるかも…」と言う事で、後4〜5トラックは空きトラックを作らなくてはなりません。
 さて、何をまとめてトラックに空きを作るか……。先ずドラムは2トラックにまとめましょう。この時、一応音を創り込んで移します。と言うのは、もしかしたらこのスレーブのテープだけで(勿論結果が良かったらと言う場合ですが)、ミックス・ダウンをする事も想定しておきたいからです。えてして、こう言う時に良い音が出来、「やっぱり、スレーブでまとめた○○が良かったよね」、なんて事も無くは無いからです。それから、一応ケーナの音量の上げ下げもしてしまいました。青ちゃんに「あっ、ミックスの時楽しようとしてるでしょう!!」とツッコマレましたが、「ふふ〜んだ!」と言いながら、簡単に演っておきました。それから、お子ちゃまコーラス!これが結構トラックを使ってましたので、なんとこれをモノで移しました。「それで違和感や物足りなさを感じなければ、別にステレオでなくてもいいかぁ…」と言う考えです。かえってモノの方が良かったりして…。ま、それはどちらかか、後々感じて来る事でしょう。
 大まかなことは、全て青ちゃんに任しました。で、私はまた後ろのソファーに寝転がり、「青ちゃん、そこの音はもっと、○○にね」、なぁ〜んて感じに他人事の様に言いながらだらけております。青ちゃんは「おい、ぜんぜん仕事してねえぞぉ!知らねえからな!」と私に言いますが、「大丈夫、変だと思ったらそん時は口出すから…」と言って答えます。実は、これは……、青ちゃんの音を聴き、「たまには人が、トラックをまとめるのも新鮮だなぁ」と感じてたからで、私としてはさぼってるつもりはないのであります。例えば、ベースは2トラックに録ってあって、これを1つのトラックにまとめるのですが、この時、方向性は同じ方向を向ける様に、私は青ちゃんに細かく注文を出しますが、アプローチの仕方が私が直接演るのと、青ちゃんが私から注文されて演るのとでは違います。と言うのは、そのベースの音をどうしたいかは細かく言うのですが、どの様に演るかは青ちゃんが考えるからなのです。これは中々面白いですよ。

 さて、いよいよ来週はFAB ROCKS REC. HOUSEに戻り、ギターとハモンド・オルガンのダビングです。

2004年9月30日木曜日
 よすおさんは一昨日からFAB ROCKS REC. HOUSEに来ていて、私も昨日到着。よすおさんが昨日のうちにMTRの調整をしてくれて、今日は「星をつかもう」にエレキ・ギターを入れます。
 使う楽器は、ギターにエピフォンのソレント、アンプはフェンダー・チャンプ、それにヴォックスのトーン・ベンダーとエレクトロ・ハーモニクスのビック・マフ(共にファズ・ボックス)。エレキ・ギターが入るのはサビの部分だけですが、途中、フレーズにボトル・ネックを使ったものを入れるので、そこだけファズ・ボックスを2台繋げました。
 サビは全部で3回出て来ます。勿論、その3回とも歌詞も違いますし、なによりも演奏とアレンジのテンションが後に行くほど高くなる様にしております。ですから、毎度の事ながらギターのフレーズなども3回とも微妙に変えてプレイしました。仮にこれが打ち込みやハード・ディスク・レコーディングなどでしたら、1コーラス目を演って、あとはコピー&ペーストで済むのですが……。
 ギターの録音が終わって、プレイ・バックしてますと、タイミングもぴったりに青ちゃんとキーボーディストがFAB ROCKS REC. HOUSEに到着しました。

 今回はハモンド・オルガンをゲストの小島良喜さんが弾いてくれるのです(嬉しや、嬉しや)。小島さんは日本屈指のキーボード・プレイヤーで、現在は井上陽水やB'sのヴォーカルの稲葉さんのところでプレイしてます。私が小島さんと初めて会ったのは、彼がKUWATA BANDのメンバーだった頃で、逆に言えば、小島さんは私のセミ・プロ時代、つまり駆け出しの頃を知ってる数少ないミュージシャンであります(その節はお世話になりました)。

 使用するハモンドは、FAB ROCKS REC. HOUSEに有るポータBとレスリー147の組み合わせでプレイして貰いましたが、なんと途中で鍵盤が吹っ飛ぶと言うアクシデントが!小島さん「おれ、ちゃうよぉ〜」、ハイハイ分かっております。前回私が使った時に既にそうでした……。と言う分けで、アロンアルファで修理を……。ところがそのアロンアルファ、固まってしまってて使えませんでした。しかたないので、よすおさんに街まで行って買ってきて貰い、その間しばし休憩。
 よすおさんが戻り、修理しようとしましたが、なんとハモンドの鍵盤の素材、アロンアルファではくっつかないのですと……。しかたないので瞬間接着剤は諦めて、ナントカと言う強力接着剤で接着する事になりました。これが乾くまでまた暫く休憩……。
 小島さんが、「そろそろ乾いたんとちゃう?」と言うので、それではとプレイして貰いました。小島さん流石!!美味い!巧い!上手過ぎです!全部で3テイク・プレイして貰い、そのうちの2テイクをテープに残しましたが、一度もミス・トーンせずにプレイ終了です。2テイクは両方とも趣を変えてプレイしてくれました。

 この曲もほぼ完成に近づきましたが、やはりこうなるとチューブラ・ベルを入れたいです。ですが、チューブラ・ベルは流石に持ってません。誰かくれませんか?……って厚かましすぎますね。


ホームへ戻る レコーディング日記目次へ 前ページへ 次ページへ