FACES 『ROD STEWART / FACES LIVE COAST TO COAST OVERTURE AND BEGINNERS』 

1. IT'S ALL OVER NOW
2. CUT ACROSS SHORTY
3. TOO BAD / EVERY PICTURE TELLS A STORY
4. ANGEL
5. STAY WITH ME
6. I WISH IT WOULD RAIN
7. I'D RATHER GO BLIND
8. BORSTAL BOY / AMAZING GRACE
9. JEALOUS GUY

 フェイセスはロッド・スチュアート(ヴォーカル)、ロン・ウッド(ギター)、イアン・マクレガン(ピアノ、オルガン)、ロニー・レーン(ベース)、ケニー・ジョーンズ(ドラムス)と言う5人編成で、1970年にアルバム、『ファースト・ステップ』でデビューしました。
 元々は、前身のスモール・フェイセスから、1969年にギター&ヴォーカルのスティーブ・マリオットが抜け(元ハードのピーター・フランプトン等とハンブル・パイを結成)、残りの3人に第1期ジェフ・ベック・グループからロッド・スチュアートとロン・ウッド(ベック・グループの時はベースを担当)が合流して、その後グループ名を“フェイセス”したのがこのバンドの馴れ初めです。
 1971年に『ロング・プレイヤー』、『馬の耳に念仏を』、1973年に『ウー・ラ・ラ』をリリースし、その後ベースのロニー・レーンが抜け、代わってフリーから日本人ベーシストの山内テツが加入し、日本のファンをアッと言わせました。そして1975年、絶頂期に発表されたのがこのライヴ・アルバムです。その後、フェイセスはテツの凱旋コンサートと言う事で、テツを全面的に押しだして日本公演も行いましたが、1975年12月18日、ロッドのレコード会社との契約問題などもあって解散を発表し、翌19日にはロン・ウッドがローリング・ストーンズにミック・テイラーの後釜として加入しました。実は、ローリング・ストーンズはブライアン・ジョーンズが抜けた後、ミック・テイラーではなく、ロン・ウッドを後釜にと考えていたらしいのです。ミック・ジャガーはそれをロニー・レーンに話したところ、ロニーはロン・ウッドにフェイセスでプレイしてもらいたかったので、ロン・ウッドに内緒で話をもみ消してしまったと言う事です。
 1975年テツが凱旋帰国した際、ある音楽誌のインタビューに答えてたのですが、テツが“グルーヴ”についての話を始めたのですが、評論家達はその“グルーブ”の意味が解ってなかったみたいでした。今では当たり前の、だれでも知ってる言葉ですが、当時の日本人のほとんどは、評論家達でさえもグルーヴを理解してなかったのですね。
 山内テツがフェイセス解散後、日本に戻って来て山内テツ&グッド・タイムス・ロール・バンドなるものを作ったのですが、その時、私の小学校時代の先輩である島田吉隆さんが若干17歳にしてオーディションに受かり、ドラマーを務めました。島田さんは、当時ドラムを演ってる私達の憧れのセンパイで、アマチュア当時は大変テクニカルなドラマーだったのですが、テツ・バンドではシンプルなドラミングに徹していました。島田さんが当時話してくれた事ですが、テツに「グルーヴと間を大切にする様に」と言われた様でした。

 さてこのアルバムですが、テツがこだわってる様にフェイセスはノリとグルーヴのロック・バンドだと言うのがこのライヴで感じられます。先ずはボビー・ウーマックの「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」からスタートしますが、イアン・マクレガンのピアノとロン・ウッドのギターの絡み、テツとケニー・ジョーンズのハネたグルーヴ、そしてロッドのヴォーカル、のっけからやってくれてます。
 3曲ほど飛ばしたところで、4曲目はジミヘンの「エンジェル」です。ジミヘンのオリジナルもいいですが、フェイセスのもなんともいい味があります。フェイセスはカヴァーを自分達なりに演らせると、どれも凄くいい雰囲気です。ここでもイアン・マクレガンのオルガンが良い感じです。やはり、オルガンは“デジタル・シンセのオルガンのプリセット”なんかではダメです。昨今、プロとして飯を食ってるキーボーディストの中でハモンド・オルガンも弾いた事が無い軟弱者がいる様ですが、私としてはそんなの信じられませんよぉ。
 5曲目の「ステイ・ウィズ・ミー」も盛り上がり後のブレイクがカッコいいです。ブレイク個所では、ギター→ピアノ→ドラムス→ベースと順番にスポットを当ててそれぞれが熱演しますが、今どきこんな事演ってくれるバンドなんて無いですよね。
 7曲目は私の一番のお気に入り、「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」。ここでのロッドのソウルフルな歌も魅力的ですが、なんと言ってもロン・ウッドの雰囲気たっぷりのギターです。泣かせますよ、これは。それからイアン・マクレガン、相変わらずオルガンがオイシイです。
 最後はジョン・レノンの名曲、「ジェラス・ガイ」です。私は、普通、ビートルズやそのメンバー達の曲をカヴァーするってのは大変リスキーな事だと思うのですが、こちらはすっかりフェイセスのモノにしてる感じがします。勿論、オリジナルも当然良いですが。


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