ALLESI 『LONG TIME FRIENDS』

1. JAGGED EDGE
2. YOU GOT THE WAY
3. AS FAR AS I'M CONCERNED
4. RISE UP
5. I'M GONNA TELL HER TONIGHT
6. PUT AWAY YOUR LOVE
7. WHAT A WAY TO GO
8. STILL IN LOVE
9. HOW LONG, HOW MUCH
10. FOREVER
11. LONG TIMES FRIENDS

 AORブームの真只中の1982年、クリストファー・クロスのプロデュースで、クインシー・ジョーンズのクエストからリリースされたアレッシーの通算5枚目のアルバムです。実はこれが彼らのクエストへの移籍第1弾………ですがこれっきりアルバムはリリースされてません。私は凄く良いアルバムだと思います………ですが、売れなかったんでしょうね。日本では、一時期或る輸入レコード屋さんで売り上げナンバー1になった事もあると聞いてましたが……。

 アレッシーは、1953年7月13日生まれのボビー・アレッシー(兄です)とビリー・アレッシー(ボビーが兄なんだから、こちらは当然弟)による美形双子のデュオです。

 このアルバムから2枚目のシングル・カット、「愛はいたずら」と言う際どい邦題が付いた曲から始まりますが、これが良い!アレッシーの声というのはとてもライトで、聴いていて心地いいですね。曲もクリストファー・クロスのプロデュースと言う事もあるのか、共通点が多いです。レニー・カストロの叩きだすパーカッションが独特の雰囲気を醸し出してくれてます。それから、ジェリー・ヘイのブラス・アレンジもいいですね。
 2曲目の「ユー・ガット・ザ・ウエイ」はとてもアレッシーらしいナンバーです。ギター・ソロはクリストファー・クロスです。
 3曲目、「恋人たちのララバイ」………、岩崎宏美!?……あれは「マドンナ達のララバイ」かぁ。どっちにせよ、もうちょっとなんとかなんないのでしょうかね、邦題。曲はバラードで、元リズム・ヘリテイジのマイケル・オマーティアンのストリングス・アレンジ、元マクサスのロビー・ブキャナンのピアノも活きていい感じです。私はロビー・ブキャナンがキーボードを弾く姿をビデオで観た事がありますが、プレイ同様、派手でカッコイイんですよ、これが。
 4曲目、「ライズ・アップ」はクリストファー・クロスのギターのメロが効いていて、とても“クリストファー・クロス”っぽいです。
 5曲目の「今夜をつたえて」もバラード調です。この辺りの曲はアレッシーの声と凄くマッチしてまして良いです(勿論他も良い!)。それから、トム・スコットがリリコンでいい感じのソロをとってます。
 6曲目はアナログ盤ではB面1曲目、このアルバムからのファースト・シングル、「そよ風にくちづけ」です。邦題はどこかくすぐったいタイトルが付いてますが、やはりファースト・シングルだけあって良い曲です。
 アレッシーのこのアルバムを聴いて、当時の“ザ・西海岸!”ってイメージが湧きますが、クレジットを見ると、テキサスのスタジオで録音したと記述されてます。オーヴァー・ダビングとミックスがロスアンゼルスとも書かれてるので、リズム・トラックをテキサスでやったのでしょうね。そう言えば、このアルバムのリズム隊、ほとんどがドラムスがトミー・タイラー、ベースがロスコー・ベックと言うユニットです。トミー・タイラーはクリストファー・クロスのとこのバンドのドラマーだと思います(ソナーの小さなキックを使ってた人?)。因みに、当時のロスアンゼルス周辺のスタジオ・ドラマーと言うと、ジェフ・ポーカロを筆頭にマイク・ベアード、カルロス・ベガ、リック・シュロッサー、ジョン・ロビンソン、ヴィニー・カリュータ、ジョン・キーンと言ったところでしょうか?そして、ベースのロスコー・ベックはフェンダー社から彼のモデルのベースも出てるテキサスのミュージシャンで、ロベン・フォードやエリック・ジョンソンのアルバム(トミー・タイラーも一緒)でもプレイしてます。
 7曲目の「愛のゆくえ」では当時クエスト・レーベルから売り出し中のパティ・オースチンと競演しております。ここでパティは自分の持ち味を充分活かした歌を披露してくれてます。アレッシーとの絡みもトゥー・マッチにならず、とても良いセンスです。クリストファー・クロスのプロデュース能力の高さがみられますね。これがもし、同じパティでもパティ・ラベルだったら………、う〜ん、恐ろしいかも……。
 8曲目、「スティル・イン・ラブ」、この曲だけがドラムスがポーカロになってます。当時忙しいポーカロがわざわざ1曲の為にテキサスまで行ったのでしょうか?最初、トミー・タイラーとロスコー・ベックでリズムを録り、ダビングを全て終えてから最後にドラムだけ差し替えるって事はよくありますが……。
 9曲目、「ハウ・ロング、ハウ・マッチ」はラリー・カールトンの味のあるギター・プレイが聴けます。私はカールトンもこの頃までのカールトンが好きですね。特にスタジオ系のギタリストは1980年代中期以降、セット・アップが複雑になって行った傾向があります。つまり、ラック・エフェクトやギターのコンポーネント化が進み(スペックを追いすぎて、逆にかえって画一化してしまった)、それらのイクイップメント類にギタリストとしての個性を吸い取られて行った様に私には思えるのですが……。
 10曲目の「想いはとこしえに」はクリストファー・クロスのヴォーカルもフューチャーされてますが、こうやってアレッシーと聴き比べると、“同じタイプ”と思ってたものの、かなり違う声ですね。あたりまえかぁ………?
 ラストの「ロング・タイム・フレンズ」はアルバムのタイトルと同名の曲ですが、不思議な事に「そよ風にくちずけ」って邦題ではありません。ま、良いかぁ、そんな事はどうでも……。
 この曲でもストリングスを聴く事が出来ますが、最近は本物のストリングスを聴く事は少なくなってきましたね。それは世の中の不況とも関連があるのですが、つまりレコード業界も不況で制作予算が下がってるせいで、よほどの事が無い限り、お金の掛るオーケストラや弦アンサンブルは使う事が出来ず、手ごろな打ち込みで済ませてるケースが多いのです(打ち込みのも、最初は物珍しくて新鮮でしたが……)。AORはその良き時代と悪しき時代の両方をくぐり抜けてきたジャンルかもしれませんね。


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