THE MOODY BLUES 『EVERY GOOD BOY DESERVES FAVOUR』

1. PROCESSION
2. THE STORY IN YOUR EYES
3. OUR GUESSING GAME
4. EMILY'S SONG
5. AFTER YOU CAME
6. ONE MORE TIME TO LIVE
7. NICE TO BE HERE
8. YOU CAN NEVER GO HOME
9. MY SONG

 「ムーディー・ブルース」と言われて、私が最初に思い付くキー・ワードは“メロトロン”です。彼等はメロトロンを最もよく使ったバンドとしても有名です。そして代表曲と言うと、やはり1967年にリリースされた「サテンの夜」でしょうか。更に「好きなアルバムは?」と聞かれると、真っ先に私が挙げるのがこの『童夢』です(勿論、『セブンス・ソジャーン』、『デイ・オブ・フューチャー・パスト』もですが……)。

 ムーディー・ブルースは、イギリスはバーミンガムの出身、デビューは1964年と言うから、世の中は丁度ビートルズ旋風に舞ってる時でした。メンバーは、リーダー格のデニー・レーン(G&Vo)、レイ・トーマス(Fl、Per&Vo)、マイク・ピンダー(Key)、クリント・ワーウィック(B)、グラハム・エッジ(Ds)の5人でした。彼等のシングル第2弾、「ゴー・ナウ」が全英1位のヒットとなり、ムーディー・ブルースは1965年のビートルズのアメリカ・ツアーにも同行しました。その年彼等は、アルバム、『ザ・マグニフィシェント・ムーディーズ』を発表しますが、その直後、デニー・レーンとクリント・ワーウィックが脱退してしまいます(デニー・レーンはその数年後、ポール・マッカートニーとウイングスで、結成から解散まで活動を共にします)。

 デニー・レーン達が脱退し、バンドがどん底の状態に陥り、そこから抜け出したのが、デッカ・レコード参加のデラムからの彼等の第1弾アルバム、『デイ・オブ・フューチャー・パスト』をリリースしてでした。デニー達の後釜に、ジャスティン・ヘイワード(G&Vo)とジョン・ロッジ(B&Vo)と言う、後のバンドの中核を担うメンバーを加えたムーディー・ブルースは、当時デラムが新たに開発したDeramic Super Soundと言うレコーディング・システムのプロモートの為、ドボルザークの『新世界より』をロンドン・フィルとの競演でレコーディングする企画に抜擢されました。しかし彼等は『新世界より』を演ると言うつもりは無く、指揮者のピーター・ナイトに自分達のオリジナル・コンセプトを熱心に語って説得し、遂に『デイ・オブ・フューチャー・パスト』をリリースしてしまったのです。このアルバムは当時としてはとても斬新で、オーケストラとの競演のコンセプト・アルバムと言う事では、ディープ・パープルの『ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ』(1970年)よりも、プロコル・ハルムの『コンサート・ウィズ・ザ・エドモントン・シンフォニー・オーケストラ』(1972年)よりも、リック・ウエイクマンの『地底探検』(1974年)よりもずっと前の事だったのです。そして、オーケストラと同時にメロトロンも駆使して、後にロックの名盤と語られてるアルバムとなりました。

 『デイ・オブ・フューチャー・パスト』からのシングル・カット、「サテンの夜」がヒットし、大物バンドの仲間入りをしたムーディー・ブルースは、その後、『失われたコードを求めて(青空に祈りを)』、『夢幻』、『子どもたちの子どもたちの子どもたちへ』、『クエッション・オブ・バランス 』、そしてこの『童夢』、『セブンス・ソジャーン(神秘な世界)』 、諸々と次々に素晴らしいアルバムを発表して行きました。中でも私が絶頂期だったと思ってるのが、この『童夢』(1971年)辺りの頃です。

 1曲目の「プロセッション」、なんだか怖いです。雨と雷の音、“Desolation, Creation, Communication.........”と歌う男達の歌。そして、アフリカっぽいとでも言いましょうか、何やら太鼓の音(シンセ?)、そして、又しても男達のコーラス、シタールやタブラの音が出て来たかと思うと、直ぐにチェンバロ、パイプ・オルガン、ギターがアラブ系(?)のメロをホンの一節演ったところで、2曲目の「ストーリー・イン・ユア・アイズ」に雪崩れ込みます。ムーディー・ブルースのエイト・ビートもそうですが、マイク・ピンダーのメロトロン、たまりません!そして、もろにギブソンのセミアコと解るジャスティン・ヘイワードの甘いギターの音、フェード・アウトと同時にレイ・トーマスの歌う、「ゲシング・ゲーム」。或る意味、レイ・トーマスの曲こそ“ザ・ムーディー・ブルース”っぽいと私は感じます。やはりこの曲もフェード・アウトでジョン・ロッジの曲、「エミリーの歌」に。この曲も名曲です。ジョン・ロッジの娘、エミリーの誕生を記念して贈られた曲と言われるだけあって、とても優しい歌声に癒されます。それを助長するアコースティックな雰囲気も良いですし、チェロの音(メロトロンではない様な?)、グロッケンを柔らかくしたみたいな音は鍵盤楽器のチェレスタかな?そして、グラハム・エッジの曲、「アフター・ユー・ケイム」でアナログ盤ではA面を締めます。
 アナログ盤ではB面の一曲目にあたる、「生命をもう一度」はジョン・ロッジの曲です。「エミリーの歌」同様にアコースティックな雰囲気で穏やかに始まるこの曲、実は「プロセッション」が複線になっていたのでした。段々盛り上げ、“Desolation, Creation, Communication.........”と歌って行きます。
 「ナイス・トゥービー・ヒアー」は、レイ・トーマスの曲ですが、どこか可愛らしい曲で、絵本の様な歌詞もとても彼ららしいです。
 ジャスティン・ヘイワードもこのアルバムの流れを促進する素晴らしい歌「家へ帰れない」を歌い上げます。ン〜、いいぞぉおおお!そして、最後はマイク・ピンダーのこのアルバム唯一の楽曲、「マイ・ソング」。6分を越える長い曲ですが、メロは良いです。ちょっと悲しげなメロが他とは違いますが、アルバムの幅が広がる様です。

 最後にムーディー・ブルースのメロトロンは、私が持ってるあの白い箱のとは違います。“マーク2”と言うモデルで、鍵盤が左右の2組ある奴です。それから、「サテンの夜」の時に使われたメロトロン、聞いた話によりますと、その後キング・クリムゾンに売られ、そして、次はジェネシスの元へ行ったと言う事だそうです(次は是非ウチへ来い!!!!………)。


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