MR. BIG 『SWEET SILENCE』

1. TIME BASE
2. WONDERFUL CREATION
3. GOLDEN LIGHTS
4. UNCLE JOHN B
5. I AIN'T BIN A MAN
6. SWEET SILENCE
7. ZAMBIA
8. ENJOY IT
9. VIOLET MAY
10. FOR THE FUN TO FIND
11. APPEARED A SHINING THRONE
12. THRONE SECOND AMENDMENT

 ミスター・ビッグと言えば、ビリー・シーン、ポール・ギルバート等のアメリカの4人組ハード・ロック・バンドを連想する人が、現在ではほとんどでしょう。しかし、私の中ではミスター・ビッグとはこのイギリスのハード・ロック・バンドの事です。まあ、このミスター・ビッグが一言でハード・ロック・バンドだと言ってしまうと、とても不満が残りますが……。

 ミスター・ビッグは1973年と1974年に1枚ずつのシングルを作りましたが、リリースされず、その後1975年までエピックから3枚のシングルをリリースします。そして、EMIと契約後1975年、本アルバム、『甘美のハード・ロッカー』で華々しくデビューします。日本の各音楽誌でも好評価を受けてたにもかかわらず、最大のマーケットであるアメリカでは評価が低かったらしいです。しかし、このアルバム、私は名盤だと思います。

 ミスター・ビッグのデビュー当時のメンバーは、中心人物のディッケン(ギター&ヴォーカル)、ピート・クローサー(ベース)、ヴィンス・チャルク(ドラムス)、ジョン・バーニップ(ドラムス)で、ツイン・ドラムの4人編成と言う何処にもない様なユニークな編成でした(ドラムが2人いると言うのは、成り行きだった様です)。

 その後、ヴォーカルとリズム・ギターのエディー・カーターを加え、ロスアンゼルス録音の『フォトグラフィック・スマイル』を1976年にリリース、1978年にはイアン・ハンターのプロデュースで“SEPPUKU”(切腹?)を制作しましたが、リリースされず、バンドは自然消滅してしまいました(3枚目のアルバムは、その後CD化でリリースされました)。

 さて、このアルバム、『甘美のハード・ロッカー』ですが、プロデュースはジョン・パンターと言う人物。ロキシー・ミュージックのエンジアリングやブライアン・フェリーのアルバム・プロデュース、そして、あのジャパンのプロデュースをした人です。
 1曲目の「異次元の感触」は、題名の通り、当時としては聴いたことの無いハード・ロックと言う感じでした。……いや、クイーンの初期の作品に通じるものがあったかもしれません。
 2曲目、「ワンダフル・クリエイション」はツイン・ドラムスならではのコンビネーションが印象的です。曲もとてもポップです。それにしても、ディッケンのヴォーカルはオリジナルティーがあります。今まで何処でも聴いた事の無い声をしています(似てる人が見当たらないです)。
 3曲目はゆったりとしたナンバーです。とても癒されるメロとサウンドです。バックのストリングスはソリーナでしょうか?ソロはフレンチ・ホルンに似た音、実はトロンボーンで録られています。グッと来ます。
 4曲目はウッド・ベースを使ったアレンジで、雰囲気をだしてる「アンクル・ジョン・B」と言うナンバーです。ディッケンのギター・ソロがカントリーっぽくて印象的です。昨今のハード・ロッカー達は、この様にハード・ロック以外の音楽の素養が無い人が多いので、ハード・ロックはどんどん音楽的レンジが狭まり、つまらないモノになって行きましたが、この頃のアーティストは様々なスタイルの音楽に精通していたのだと思います。昨今の若いハード・ロッカー、化粧なんかに勢を出さずにしっかり音楽を聴きましょう!
 5曲目はアコースティックなナンバー、「恋に焦がれて」です。美しいナンバーです。
 このアルバムで最も印象的なナンバーは7曲目の「麗しのザンビア」です。中華風ロックとでもいいましょうか、私も影響受けました。でも、ザンビアってタンザニア、モザンビーク、ジンバブエ、アンゴラとかの隣の国でしょ?それは、アジアではなくてアフリカじゃないですかぁ!!中国とアフリカが一緒になっちゃうなんて、ちょっと乱暴過ぎやしませんか?ま、当時の西洋人のアジアに対する知識なんて、そんなモンなんでしょうね………。
 中華風の後の8曲目の「香しき人生」、今度はちょっとスペインっぽいんです。多分彼等の場合、スペインに対しても、中国に対してもたいした知識なんてないんでしょうが、自分の音楽にエッセンスを取り入れるのであれば、それでも良いと私は思いますよ。ある民族的な部分にバッコリとハマルのも良しですし、美味しい部分だけ頂いちゃうってえのも私は良いと思います。ま、何かの料理にちょっとカレー・パウダーを入れるみたいな感じですか?ちょっと強引な説明ですが、そんなモンです。私、その料理の伝統的な味も好きですし、そこから外れてしまい、けっこう雑多になって一つの料理になるっても好きです。ミスター・ビッグはまさにそんなバンドだったと思います。


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