リンダ・ロンシュタットのバック・バンドのギタリストでマルチ・プレイヤー、1980年代は元10c.c.のグラハム・グールドマンとのデュオ、WAXも成功させた西海岸のミュージシャン(現在は東海岸に在住だそうです)、アンドリュー・ゴールドが1978年にリリースした3枚目のソロ・アルバム、『幸福を売る男』です。
彼はミュージシャンとしてもとても顔が広く、西海岸あたりでも顔が利くようですが、面白いのは、スティーヴン・ビショップの結婚パーティーで、“CROSBY,
BISHOP, COLLINS and GOLD”なるウェディング・バンド(勿論、その夜限りでしょうね)なんてのも演ったりしてました。CROSBYはデヴィッド・クロスビー、BISHOPは新郎のスティーヴン・ビショップ、そしてCOLLINSはフィル・コリンズと言う、金を払ってでも是非観せて頂きたいバンドでした。
1曲目の「愛しているのに」は、マーク・ゴールデンバーグとマーク・セイフィンと言う人の作曲のナンバーです。メンバーは、リック・マロッタのドラムス、リトル・フィートのケニー・エドワーズがベース、ギターにリンダ・ロシュタットのバンドのワディー・ワクテル、コーラスがアンドリュー・ゴールドとこのアルバムの共同プロデューサーのブロック・ウォッシュ(彼は元々シンガーでもある)、そして、もう1本のギターとその他の楽器は、アンドリュー本人が演奏しております。
2曲目はバラードの「オー・ユーレイニア」です。メンバーはアンドリューの多重録音の他、ドラムスがラス・カンケル、ベースがリーランド・スクラーと言う豪華なリズム隊です。ありきたりのバラードではなく、とても個性を感じてしまいます。最後のコーラスの輪唱は見事なアイディア(全てアンドリューの声です)、曲の雰囲気を盛り上げております。参考になります。
3曲目、「きみの面影」はアコースティック・ギターのイントロから始まります。このあたりはとても西海岸な感じです。途中、シンセの様な音が出てきますが、これはギターをEbowと言うモノを使って出した音かもしれません。
4曲目は「彼女に首ったけ」はアナログ・ポリ・シンセを可愛らしく使い、とても愛らしいナンバーに仕上がってる曲です。当時サンプラーもデジタル・リズム・マシーンもない頃としては、とても画期的なリズム・トラックを創り上げました。どうやら、アンドリュー・ゴールドとブロック・ウォッシュがスタジオの壁を叩いたり、クラップを何十回もオーヴァー・ダビングして創ったトラックを、テープでループさせて創り上げたモノの様です。コード進行、メロディー・ラインにもアンドリュー・ゴールドらしさが出てる曲です。
5曲目の「きみがすべて」も心に染み入るバラードです。ピアノ、パーカッションとギターは本人がプレイ、ベースはケニー・エドワーズ、ドラムスはまだ若かりし頃の故ジェフ・ポーカロです。
6曲目は「気の合う二人」と言うタイトルのナンバーです。
7曲目の「恋は何処に」はインドの鍵盤楽器、ハーモニウムを使って演奏したナンバーです。足踏みオルガンやアコーディオンと音は似てますが、このハーモニウムも何かノスタルジックなモノを感じてしまいます(音の立ち上がり方はアコーディオンや足踏みオルガンとは異なってる気がしますが……)。
8曲目の「ジュネヴィエーヌ」は、ボサノバっぽいリズム・パターンを取り入れたナンバーです。驚く事に、パーカッション以外の楽器は全てアンドリュー・ゴールドの演奏によるモノだそうです。
9曲目「アイム・オン・マイ・ウェイ」もアルバム1曲目の「愛しているのに」同様、アンドリューの書いた曲ではありません。ちょっとブルージーなミディアム・シャッフル・ナンバーですが、古臭さは感じない仕上げになってます。コーラスとかは、ダブリングとかで演ってる様です。
10曲目の「恋の終わり」は、ポーカロやケニー・エドワーズ等のスタジオ・ミュージシャンを使わず、自己のバンドのメンバー、ボー・シーガルとブラッド・パーマーをリズム隊に起用しております。