CITTA FRONTALE 『EL TOR』

1. ALBA DI UNA CITTA
2. SOLO UNITI...
3. EL TOR
4. DURO LAVORO
5. MUTAZIONE (STRUMENTALE)
6. LA CASA DEL MERCANTE "SUN"
7. MILIONI DI PERSONE
8. EQUILIBRIO DIVINO?

 イタリアのプログレシヴ・ロック・バンド、チッタ・フロンターレの唯一のアルバム、『雷神』です。

 チッタ・フロンターレはイタリアのプログレシヴ・ロック・バンドの重鎮、オザンナから分裂して出来たバンドです。
 オザンナは1970年にナポリで、エリオ・ダンナ(木管楽器)、ダニーロ・ルスティーチ(ギター)、レッロ・ブランディ(ベース)、リーロ・ヴァイレッティ(ヴォーカル、12弦ギター、メロトロン、シンセ)、マッシーモ・グァリーノ(ドラムス)の5人組で結成されました。しかし、最初はオザンナではなく、チッタ・フロンターレと名乗っていたそうです。1971年に『ルオーモ』でデビューし、1972年にイタリア映画、『ミラノ・カブリロ・9』の音楽を担当した事から徐々に注目を集め始めました。その後、自分たちの方向をしっかり見定めた彼等は奮起して、1973年にはイタリア・プログレシヴ・ロック史上の傑作とも言われる彼等の代表作、『パレポリ』をリリースしました(『パレポリ』を大傑作と言ってるユーロ・ファンは多いですが、実は賛否が分かれます。ディープなプログレ・ファン以外にはお薦め致しませんが、凄いアルバムではあります)。勢いに乗った彼等は、P.F.M.やレ・オルメの様にイギリスへ目を向き、1974年に英語歌詞も使い、『人生の風景』をリリースしました。ここで、バンドは分裂してしまい、イギリス指向の強いエリオとダニーロはイギリスに渡ってウノを結成、その後そのバンドがノヴァへと発展しました。そして、リーノとマッシーモがイタリアに残って、エンツォ・アビタビーレ(木管楽器)、ジャンニ・グラッチーノ(ギター)、パラオ・ラフォーネ(キーボード)、リーノ・ズルゾーロ(ベース)の6人でチッタ・フロンターレを結成し、制作されたのがこの『雷神』です。

 このチッタ・フロンターレの『雷神』ですが、オザンナの『パレポリ』辺りからすると想像も出来ないような、明るさと爽快さがあります。ソング・ライティングは全て元オザンナ組の2人、ヴァイレッティ=グァリーノのコンビで書かれております。
 のっけの1曲目「市民名簿」、アコースティックな雰囲気で徐々に幕を開けていく感じで始まります。そしてベースのリフから勢い良く曲が展開します。この辺りもドロドロ感は全く無く、イタリアの地中海周辺の民族的な明るさが醸し出されてます。
 2曲目の「一つのユニット」、アコースティックな曲ですが、名曲です。これはプログレシヴ・ロック・ファン以外にも自信を持ってお薦め出来るナンバーです。最初はアコースティック・ギター、フェンダー・ローズ、コンガらしきパーカッションと歌で始まります。バンド全体が入ってくる時は、エンツォ・アビタビーレのソプラノ・サックスがフューチャーされます。そんでもって、メロトロンなんかも入っちゃってるんですか、もうたまりません。
 3曲目はタイトル・ソングの「雷神」です。こちらはタイトル・ソングだけあって大作になってますが、バカみたいな長さは感じさせられません。とても聴き応えもありますが、聴きやすいナンバーに仕上がってます。
 4曲目の「困難な仕事」がインストで、5曲目の「転換」はしっかり歌モノです。これがとてもポップなナンバーです。エンツォのフルートがケーナの様な良い響きをしてます。ソプラノ・サックスもとても御機嫌です。1980年代のバンドでヘアカット100と言うバンドがありましたが、木管楽器の雰囲気は共通点がありますね。
 6曲目の「商人“サン”の家」は日本のフォーク・バラードの様な(もっと適切な表現方法ってないかなぁ……、私のボキャの無さが情けないです)リズム感がするナンバーで、これ辺りはちっともプログレシヴ・ロックではありません。
 7曲目の「多くの人々」は曲が何度も展開をみせますが、あくまでもインスト中心ではなく、歌が中心になって展開してます。どの曲もそうですが、この辺りがチッタ・フロンターレが聴きやすいプログレシヴ・ロックに仕立ててるのだと思います。
 ラスト・ナンバーの「神々に身をゆだねて」は、1曲目の「市民名簿」の一部を含んだ、2曲目の「一つのユニット」のリプライズ的な作品です。

 このチッタ・フロンターレの『雷神』は、私の知ってるイタリアン・プログレシヴ・ロックの中でもかなりのお気に入りの作品です。このアルバムをプログレシヴ・ロックっぽくない(オザンナっぽくない?)と指摘せれてるユーロ・ロック・ファンは多いですが、音楽家の私には参考に出来る部分が多く、プログレシヴ・ロック・ファン以外にもお薦め出来る質の高い作品だと思います。


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