バッドフィンガーがビートルズのレコード会社、アップルから1971年にリリースしたアルバム、『ストレート・アップ』です。プロデュースは、トッド・ラングレンが1〜4、8、10〜12曲目までの大半の曲を担当し、5〜7、9曲目の4曲をジョージ・ハリスンが担当しました。
バッドフィンガーと言うと、私の印象は、ジョージ・ハリスンが提唱して行われた『バングラディッシュのコンサート』と言うコンサート映画で、バッドフィンガーのメンバーが、「ヒア・カム・ザ・サン」でアコースティック・ギターを華々しく演奏してる姿です。
しかしその後、マネージャーに裏切られたショックでピート・ハムは自殺してしまいました。その後、トム・エバンスも同じ道をたどり、オリジナル・バッドフィンガーは悲劇のバンドとして語り継がれる様になってしまいました。
バッドフィンガーの前身はアイビーズと言うバンドで、アイビーズは1964年に結成され、1968年にやはりアップル・レコードから「メイビー・トゥモロウ」でデビューしました。当時のメンバーは、ピート・ハム(ギター)、ロン・グリフィス(ギター)、トム・エバンス(ベース)、マイク・ギビンズ(ドラムス)の4人で、ヴォーカルは全員がとれるバンドでした。その後、1969年にロン・グリフィスに代わってジョーイ・モーランドが加入し、バンド名をバッドフィンガーと改名し、翌1970年、ポール・マッカートニーの作曲した、「カモン・ゲット・イット」を収録してる『マジック・クリスチャン・ミュージック』をリリースしました。
バッドフィンガーとしてのセカンド・アルバムの『ノー・ダイス』からは、「嵐の恋」やニルソンやマライア・キャリーの大ヒットでお馴染の「ウイズアウト・ユー」(オリジナルのバッドフィンガーは、アルバムとシングルのB面でのリリースでした)をヒットさせています。
その後、サード・アルバムとしてリリースされたのが本アルバムです。
私のお薦めは、アップ・ライト・ピアノ(?)にコンプレッサーをギンギンに掛けた録音の、1曲目の「テイク・イット・オール」、やはりドラムスのコンプ・サウンドが気持ち良い、シングル・カットされた「ベイビー・ブルー」、ジョージのプロデュースでオリジナル・ヴァージョンを更にいい感じに出来た、6曲目の「ネイム・オブ・ゲーム」、そして、「デイ・アフター・デイ」辺りでしょうか。
アップルでリリースされた3枚のアルバムはどれも好きですが、レコーディングにおいてのサウンドでは、この『ストレート・アップ』が私にとって参考になる作品です。憧れのビートルズのアップルでの仕事と言う事でそうとう意識したのか、トッド・ラングレンの力の入れ様が、音を聴いていてもとてもよく分かります。因みに、マスタリングは『アビー・ロード・スタジオ』で、マイク・ジャレットとピーター・ミューが担当してます。