1974年、日本に凄いバンドの凄いアルバムが紹介されました。それがこのクイーンのセカンド・アルバムです。デビュー・アルバムは日本国内では、このセカンドの後にリリースされたので、デビュー当時はそれほど注目を集めてなかったんだろうと思います。
私が初めてこのアルバムを聴いたときの印象は「未だかつて聴いた事が無い不思議な音楽」でした。偉大なバンドと言うのは、往々にしてジャンル分けが難しいです。このクイーンも当初は、どこにジャンルを分けていいか分からないバンドでした。最初はグラム・ロック辺りに、その後ハード・ロックにと、中学生当時の私はプログレ・ハードだと思ってました。しかし、今になって考えると、何処にも当てはまる様で当てはまらない、「クイーンはクイーンだ!」と言うのが一番ピッタリ来る気がします。それはビートルズも然り、最初はマージー・ビート、ビート・ポップス的なロックン・ロール・バンドと言われてましたが、その当時から、ソウルフルなナンバーを演奏したり、ジャンルにはとらわれていなかったと思います。
ビートルズ同様、クイーンもスタジオで発揮する音楽性はかなり高く、多重録音を駆使した独創的な音創りが身上です。しかも、シンセサイザーやキーボード類を使わずして(ピアノは使ってましたけど)、不思議なサウンドを創り出して来たのです。一つは分厚いコーラス。そしてブライアン・メイのギターです。ブライアン・メイは200年以上も前の暖炉の木を使って、父親とギターを手作りしました。そのギターはレッド・スペシャルと言うんだそうですが、当時は“魔法のギター”だと思われてました。その“魔法のギター”の可能性を120%引き出す為に、あらゆる方法をとって、サウンド創りをして来ました。その一つが・ギター・オーケストレーションで、普通は和音を弾くときはコードを押さえて“ガツ〜ン”と一発で弾きますが、あえて単音を多重録音で重ねて和音を創る独特のサウンドです。時にはヴァイオリン奏法(ピッキングするときにヴォリュームをしぼり、ピッキングしてからヴォリュームを上げて、ヴァイオリンを弓で弾いた様なサウンドにする)で重ねたり、実に様々方法を使い分け、ギターの可能性を引き出しながらサウンドの色を付けていったのです。
このクイーンのセカンド・アルバムは、前半(А面)は主にブライアン・メイの曲を集めた“ホワイト・サイド”、後半(B面)は、フレディー・マーキュリーの楽曲を集めた“ブラック・サイド”と言う具合に、バンドに2人の優秀なソング・ライターが存在するすると言う事を充分にアピールしています。また、多くの若い世代の人達が持ってるクイーンのイメージが、「ウィー・アー・ザ・チャンピオン」以降のモノだとすると、それ以前の“美しく、完成されたクイーン”の姿が見えて来ます。1970年代のロック界に金字塔を打ち立てたこのアルバム、もし聴いた事が無い人がいたら絶対にお薦めします……、いや、聴かなきゃ人生の何パーセントか損をしますよ。