BAD COMPANY 『BAD COMPANY』

1. CAN'T GET ENOUGH
2. ROCK STEADY
3. READY FOR LOVE
4. DON'T LET ME DOWN
5. BAD COMPANY
6. THE WAY I CHOOSE
7. MOVIN' ON
8. SEAGULL

 以前にブランド・フェイスとかもありましたが、これぞ“元祖スーパー・グループ”、バッド・カンパニーの1974年のデビュー・アルバムです。そして、デビュー・アルバムにして正しく彼等の最高傑作であり、1970年代のロック史に燦然と輝く大名盤であります。イヨッ、大統領〜(^^)/パチパチパチ〜。。。。
 その“ス〜パ〜”なメンバーは、ヴォーカルのポール・ロジャース、ドラムスのサイモン・カーク(以上元フリー)、ギターのミック・ラルフス(元モット・ザ・フープル)、ベースのボズ・バレル(元キング・クリムゾン)と言う4人です。
 レコーディングはバンドのセルフ・プロデュースのもと、1973年、ハンプシャーにある『ヘッドリー・グランジ』と言う古い屋敷にロニー・レーンのモービル・スタジオを持ち込んで行われました(grangeは英訳すると、豪農の邸宅です)。エンジニアはロン・ネヴィソン、後にハートやサヴァイバーなどのヒット・アルバムをプロデュースした人です。当時は、ローリング・ストーンズのモービル・スタジオや、このロニー・レーンのモービル・スタジオなどを持ち込んでのレコーディングと言うのは、ロック・バンドのレコーディングにはよく見掛けられました。そう言えばレッド・ツェッペリンも『ヘッドリー・グランジ』だったなぁ、と思ったのですが、実はレッド・ツェッペリンが押さえておいたこの『ヘッドリー・グランジ』に彼等が入るのが2週間遅れてしまい、バッド・カンパニーがレッド・ツェッペリンのレコード会社だという事もあって、その空いた2週間の隙にバッド・カンパニーがそこへ入りこのアルバムをレコーディングしたんだとか。インタビューによりますと、玄関にドラム・キットをセッティングし、ミック・ラルフスのギター・アンプはリビングで、「バッド・カンパニー」の歌は、原っぱにマイクを置きそこで録ったそうです。ミックスはオリンピック・スタジオ他。ゲスト・ミュージシャンは、「ドント・レット・ミー・ダウン」のコーラスを演ったスー&サニーと言う方達と、当時売れっ子のスタジオ・ミュージシャンだったサックス奏者で、元サーカス、キング・クリムゾンのメル・コリンズ(後にキャメルのメンバーとして来日してるよ)。って事は、メル・コリンズがハンプシャーまでわざわざ演奏しに行くとは考えられないので、オーヴァー・ダヴの一部はロンドンで演ったのかな?クレジットはないけど……。
 そして、このシックで印象的なカヴァー・デザインはなんとデザイン集団ヒプノシス。ピンク・フロイドやUFOなどのデザインとはまた一味違ったヒプノシスの一面を見る事が出来ます。

 さて私なりに曲の解説をしてみましょう。
 まず、1曲目は彼等の初のシングル・カット(B面はアルバム未収録の「リトル・ミス・フォーチュン」で、同じ時期に他の未発表曲の1曲と一緒にレコーディングされました。この2曲は『アンソロジー』に収録されてます)で代表曲、「キャント・ゲット・イナッフ」です。「ワン、ツー、、ワンツースリーどたん!!」と始まるこの曲は、その最初のカウントの時にスティックでリム(ドラムの胴かも)を叩いてます。余談ですが、この音をよく“リム・ショット”と呼ぶ人がいますが、“リム・ショット”と言うのはまた別の音の事で、これはホントは“サイド・スティック”って呼びます。
 ミック・ラルフスはモット・ザ・フープル時代、ポール・ロジャースと一緒にツアーを廻った事があるんだそうです。ポールはその頃、フリーではなくザ・ピース(井上順ではないよ)と言う彼のソロ・プロジェクト的なバンドでツアーしてたのですが、その時にミック・ラルフスと意気投合し、ミックからこの曲を聴かせて貰ったんだそうです。ポールはミックに「その曲なら歌えるよ」と言ったのですが、ミックはそれがとても自信になったと後で語ってます。
 レコーディングでは、この曲のセカンド・ギターをポールが担当してます。ギターのハモもなかなかクールです。ボズのフレットレス・ベースも実に生き生きとしたプレイをしています。
 2曲目も彼等を代表する名曲、ポール・ロジャースの書いた曲で、「ロック・ステディー」です。中学生だった私はこれを最初「ロック・スタディー」だと勘違いしてて、「ロックの勉強かぁ……良いなぁ〜(ため息)」なんて悠長に考えてました(ど〜でもいいですね、そんな事)。
 この曲のギターのサスティーンはたまりませんね。ソロもとても良いです。レコーディング当時はギブソンのレスポールJr.とかを使ってたかもしれません。因みに、日本に来た時は、フェンダー・テレキャスター(エスクワイアーかブロード・キャスターかも。シルエットは一緒ですから……)とギブソン・オリジナル・フライングVを使ってました。それから、ミック・ラルフスってもっともっと評価されてもいいギタリストだと思うんですがねぇ。
 3曲目の「レディー・フォー・ラヴ」はミック・ラルフスの曲ですが、元々モット・ザ・フープルでも演ってた曲です。その頃はミックがリード・ヴォーカルもとってましたが、それはアレンジも含めてバッド・カンパニーのヴァージョンとはかなり印象が違います。ピアノとオルガンはミック・ラルフス。
 4曲目、「ドント・レット・ミー・ダウン」はビートルズのとは同名異曲で、8分の6拍子のソウルフルなナンバーです。ここで女性コーラスとメル・コリンズのサックスが入ります。あまり目立ちはしませんが、サイモン・カークはこう言う8分の6拍子の曲のドラミングが実に素晴らしいです。ピアノはポール・ロジャース。
 5曲目、アナログ盤ですとB面の1曲目は彼等のバンド名と同タイトルの「バッド・カンパニー」です。元々はこの曲の方が、バンド名を決めるよりも早くタイトルが決ってたそうです。ポールのピアノで始まりますが、日本公演ライヴですとこのピアノがウーリッツァーのエレピでした。ミック・ラルフスのギター・ソロもとてもカッコイイです。
 そして6曲目、私が実は最も好きなナンバー、隠れた名曲、「ザ・ウエイ・アイ・チューズ」です。これも8分の6拍子の曲です。メル・コリンズのサックスによる多重録音ブラス・セクションも印象的ですが、やはりミック・ラルフスのギターとポールの歌は素晴らしいです。そして、8分の6拍子の曲を叩くととてもいい味を出してくれるサイモン・カークも相変わらずいいノリです。
 7曲目はシングル・カットされたミック・ラルフスの書いた、「ムービン・オン」です。ポールのハイ・トーンとミック・ラルフスのワウ・ワウを使ったギター・ソロ、そしてボズ・バレルのベースはある意味、このバンドの個性の部分であります。ボズはバッド・カンパニーに最後にオーディションで入ったのですが、バンドは色々なベーシストとセッションして、最後の16人目にやって来たのが彼だったのだそうです。ボズ・バレルはバンドの中でも一番アカデミックなプレイをしますが、実は彼はキング・クリムゾンへはヴォーカルと言う事で入り、ベースがいなかったのでロバート・フリップに猛特訓されてベースを練習し、ベース&ヴォーカルとなったんだそうです。
 8曲目の「シーガル」はポール・ロジャースが全ての楽器をプレイしてるとクレジットされてます。日本公演ライヴでも彼がアコースティック・ギター1本で弾き語りしてました。レコードの方は歌の他にアコースティック・ギター2本(ひょっとして3本かも)、ベース、タンバリンが入ってます。

 商業的にも大成功したこのバッド・カンパニーのファースト・アルバム、『バッド・カンパニー』ですが、私個人的にはこのアルバムからは多大な影響を受けました。私はボズのベースが大好きですし、ポール・ロジャースは最も影響を受けたヴォーカリストのうちのひとりです。ドラマーとしてはサイモン・カークは最初にコピーしたプレイヤーですし、ギターを弾くときは「ミック・ラルフスみたいに……」と思って弾く事がよくあります。
 因みに彼等の方は、ポールはオーティス・レディング、ミックはスティーヴ・クロッパー、サイモンはアル・グリーンと、オーティスをフューチャーしたMG’sがフェイバリットだと語ってます。フリー時代はかなりブルース色が強かったのですが、バッド・カンパニーはこれらのソウル・ミュージシャンの影響も感じさせられます。


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