10ccの1974年リリースのセカンド・アルバム、『シート・ミュージック』です。
この頃の10ccのメンバーは、いわゆる「最も10ccな4人組」と言われてる、エリック・スチュワート(ヴォーカル、ギター)、グラハム・グールドマン(ヴォーカル、ベース)、ケヴィン・ゴドレイ(ヴォーカル、ドラムス)、ローレンス・ロル・クレーム(ヴォーカル、ギター)の4人です。
このバンドの興味深いところは、「4人組」と言うよりは「2人組チームが2組」と言った方が良いところ。スチュワートとグールドマンのコンビはポップなメロディー感覚を、ゴドレイとクレームのいわゆる“ゴドレイ&クレーム”は、シニカルなポップ・センスを持ちあわせ、この2組の組み合わせと駆け引きが10ccサウンドとなって独特の個性を創りだしています。
エリック・スチュワートは元マインドベンダーズ(フィル・コリンズも彼等のナンバー、「恋はごきげん」をカヴァーしてヒットさせた)のメンバーで、10cc解散後は一時期ポール・マッカートニーの相棒役としても活動してました。
グラハム・グールドマンは10cc以前は、ホリーズの「バス・ストップ」、ヤードバーズの「ハート切なく」、「フォー・ユア・ラヴ」、ハーマンズ・ハーミッツの「リッスン・ピープル」などの曲を提供する、超売れっ子作曲家でした。10cc解散後は、アメリカ西海岸のギタリスト、マルチ・プレーヤーのアンドリュー・ゴールドとWAXと言うデュオを成功させるなどの活躍をしました。
一方のケヴィン・ゴドレイとロル・クレームは、主に1980年代に“ゴドレイ&クレーム”のコンビ名でミュージック・ビデオのクリエイターとして優秀な作品を次々と製作し、その頃最も注目を集めたビデオ・ディレクターとなりました(主なクライアントはポリス、ゴー・ウエスト、デュラン・デュラン、フランキー・ゴース・トゥー・ハリウッド等々)。そして、2人で開発した“ギズモ”と言うギターのアタッチメントは、10ccのアルバムでも随所に使われて、そちらの方面でも有名になりました。
10ccはこの2人組x2=4人組で、1975年に『オリジナル・サウンド・トラック』(ギズモをフューチャーした代表曲、「アイム・ノット・イン・ラヴ」を収録)、1976年に『びっくり電話』をリリースしますが、その直後“ゴドレイ&クレーム”は「ギズモ開発に専念』を理由にバンドを脱退してしまいました。バンドはスチュワートとブールドマンの元マインドベンダース・コンビ(実はグールドマンも一時期マインドベンダースに在籍してました)に引き継がれ、元パイロットのスチュワート・トッシュ(ドラムス)や元コックニー・レベルのダンカン・マッケイ(キーボード)などのメンバーを集めて活動を続けましたが、1979年にエリック・スチュワートが交通事故に遭うなどの災難のせいもあってか、1983年にリリースされたアルバム、『都市探検』を最後に解散してしまいました。
10ccはその後スチュワートとグールドマンを中心に再結成されましたが、私としてはどうせならこの頃の4人組での再結成を望んでやみません。