大同人時代
 
永野護氏デビュー前秘話 その
 
 
永野護氏がデビューする前に所属していた同人活動についてまとめていきます。

  

〜Intorodaction〜
永野護氏が大学在学中に同人活動をしていたことは有名であり、活動の一環としてシャアのコスプレをしていた勇姿(?)は様々な書籍に写真として掲載されている。

ちなみに、永野護氏が所属していたのは「アルカディアン京都」という名前のサークルで、井上伸一郎氏の著作「マモルマニア」によると当時では比較的バランスのとれたファン活動をしていたサークルであり、前述のコスチュームプレイの他にも同人誌、パロディなど様々な活動をしていたとのことである。
特に同人誌に関して、永野氏のデビュー作「フールフォーザシティ」の原型となった作品が掲載されているという情報が「マモルマニア」に掲載されている。
 
しかしながら、活動していた時期が1970年代末から1980年代初頭と、今から20年以上前である為に極めて情報が少ない状況である。
コスプレについては、当時のアニメ雑誌に写真が多数掲載されている為に大部分が判明して来ているが、同人誌活動についてはほとんど謎に包まれた状態である。
 
そのような状況がサイト開設後も長らく続いていたが、最近、この同人誌を多数所有する御方と運良く知り合うことが出来た事と、ヤフーオークションで数冊アルカディアンの同人誌を入手する事が出来た。
その中で得た情報を(未だ判明していない事も多数有るが)まとめてみようと思う。

 
〜アルカディアン京都とは〜
1978年2月に結成されたアニメサークルで、結成したのは京都在住の島大介氏(ペンネーム)。
 
その後、アウト1978年7月号の読者ページにアルカディアン結成と会員募集が掲載されている。その募集要項には女性のイラストが描かれているが、残念ながら永野氏が描いたものでなく、会長の島氏が描いたイラストであると思われる。
なお、サークルの説明として松本零士氏についてだけでなく他の作品についても取り上げていくということであった。(2005.09.19更新)
 
その後、結成から5ヶ月後の1978年7月に同人誌「アルカディアンvol.1」が発行されている。以後1978年10月にvol.2、1979年1月にvol.3、1979年4月にvol.4と発行されている。
残念ながら、以後どのくらいの期間・号数が発行されているかは判明していないが、アニメック21号(1981.12発行)の同人誌紹介コーナーに「アルカディアンvol.13」が掲載され、連絡先に永野護氏の名前が書かれていることから、この時期も永野氏が参加していることは判明した。
 
同人誌の観点から見るとこの時期まで永野氏が参加している事が確定したが、ジ・アニメ1982年7月号に5月に行われたディスコ・イデオンのスタジオ収録に参加していた永野氏の写真(アルカディアンの永野くんと書かれていた)が掲載されていることや、1982年9/18に開催されたうる星やつらの映画製作発表会に、レイのコスプレをしている永野氏の写真があることから、この時期も永野氏がアルカディアンに参加していたことがわかる。
1982年に拓殖大学を中退し、1983年の春には永野氏が日本サンライズに入社していることから、大学入学(1978.04)から中退(1982.?)までの4年間みっちりとアルカディアン京都で同人活動をしていたことがわかる。
 
メンバーにはそれぞれナンバーが振られていて、会長の島氏がbP、永野氏はbQ1であった。また永野氏の友人としてマモルマニアなどに名前が登場する富樫真氏も所属していた様でbVという番号が振られている。
ちなみに、21番と言えばミラージュではヨーン・バインチェルである。ここら辺にはこだわりとかあるが故なのかな?
 
サークル名の由来は、松本零士氏の作品「我が青春のアルカディア」のアルカディアという語句に、「〜の人」という意味を持たせるために末尾に「−n」を付けて、アルカディアンという名称にしたということである。
 
スタッフが松本零士氏のファンであることよりこの名称となった訳であるが、サークル活動が松本零士氏に関してのみではなく毎号色々な作品について取り上げている。
また結構行動力のあったサークルのようで、色々な声優や監督などのインタビュー、イベントのレポートなどが掲載されている。
現在の所、判明しているのは 
01号・・・特集:松本零士氏について イベントリポート:劇場版ヤマトII製作発表・TVアニメの世界展 インタビュー:声優井上真樹夫氏
02号・・・特集:手塚治虫氏について イベントリポート:劇場版ガッチャマン・さらば宇宙戦艦ヤマト・第3回アニメ大会 インタビュー:小原乃梨子さん
03号・・・特集:和田慎二氏について?
04号・・・イベントリポート:新春BIGアニメフェスティバル インタビュー:永井一郎氏
05号・・・特集:アニメ作品について?
07号・・・特集:日本サンライズについて インタビュー:富野由悠季氏・安彦良和氏
08号・・・特集:新人マンガ家について・魔夜峰央氏について 
09号・・・特集:竹内恵子さんについて?
13号・・・特集:りぼんについて?
同人誌には他にも定番コーナーとして、「会員登場」という各会員の自己紹介コーナーや、会員の手紙や意見を紹介する「フリートーキング」、業界人を紹介する「アニメーション人物辞典」、アニメーションの諸々を解説する「雑学辞典」、会員が描いたキャラやメカを紹介する「インディケーション」などがある。
また会員が描いたオリジナル小説や、オリジナルマンガなども掲載されている。その中には永野氏が描いたマンガも3点ほど確認されている。
 
号によっては100ページを越える分厚いものであったり、50ページもないペラペラなものであったりバラバラである。
 
まだ見たことがない号が多すぎて、ココまでしか解っていません。
願わくば、いつか全貌が開かされる日が来ることを・・・・・
 
〜アルカディアン京都と永野護氏〜
以下次回更新予定・・・。
 
〜永野護氏の知られざる処女作「UFO」〜
永野護氏の処女作と言えばよく知られている「フールフォーザシティ」であるが、1985年にニュータイプに掲載されたこの作品は永野氏のデビュー作として広く知られている。
                   
永野マニアの中では、この作品には元になった同名の作品があり、永野氏がサンライズに就職する前に、同人誌に寄稿されたものであることはよく知られていることである。
井上伸一郎氏著「マモルマニア(P83)」には、「フールフォーザシティのストーリーは、彼が20歳のころ、同人誌用に描いた十数ページの短編コミックが基になっている」という記述がある。また、この同人誌版FFCについては別項にまとめているのでそちらを参照頂きたい。
 
しかしながら、この「フールフォーザシティ」は確かに「デビュー作」であるが、永野氏が初めて描いた漫画作品と言うわけではない
前述した同人誌版「フールフォーザシティ」は永野氏が20歳の頃、時期で言えば1981年末頃に描かれた作品であるが、それよりも以前に描かれた永野氏のコミック作品が存在する。
                   
その作品は同人誌版「フールフォーザシティ」が掲載されたのと同様にアルカディアンという同人誌の、第2号(1978.10発行)に掲載された「UFO」という作品である。
ちなみにこの作品はサンダーバードで有名なITC社が1970-1971年に製作・放映したテレビ作品「謎の円盤UFO」というSFドラマ作品を基に描かれたものである。
永野氏がこの作品を描いたのは大学1年の頃(18歳)。なお、この5ヵ月後に発行された同誌の第4号にも、この「謎の円盤UFO」を基にした永野氏のコミックが掲載されている

      
・永野護氏作「UFO(アルカディアン第2号掲載)」あらすじ

宇宙の闇を照らすように発光しながら飛ぶ未確認飛行物体(通称UFO)。
それを受けて月面に設営されたSHADO(対異星人防衛組織最高司令部:Supreme Headquarters Alien Defence Organization)の月面基地「ムーンベース」に鳴り響く警報
「UFO接近!!UFO接近!!」。
急遽発進準備を取り始める戦闘モービルユニット1」。
発進を促す「戦闘モービルユニット1発進させてください」のコールにかぶせるようにオペレーターの悲鳴が響き渡る。
「だめです!!太陽方向からフルスピードで地球に向かっています。もう追いつくのは不可能です!!」
 
 
UFOの地球進入を防ぐことが出来なかったという事態に対し、ムーンベースの女性オペレーターは地球の司令部本部へ回線を繋ぐ。
地球の司令部本部でこの通信を受けたのはポール・フォスター大佐。イギリスの民間航空会社でテストパイロット出身の彼は、SHADOを指揮するストレイカー司令官にスカウトされた若きホープであり、優れた洞察力を持ち、常にUFO迎撃作戦の陣頭指揮を取る。 

女性オペレーター:「UFO、地球に向けて進行中。本部の返答待ちます。フォスター司令官」
フォスター:「わかった。ただちにスカイ1を向かわせる」
 
その通信の様子を女性オペレーターのそばで見ていたウェンツエル中佐がからかうような声でつぶやき、女性オペレーターは困ったようなたしなめるような表情で中佐を諭す。 
ウェンツエル:「やれやれ、インターセプターが出りゃ一発ですむのに」
女性オペレーター:「ふーん。じゃこのムーンベースをふっとばしたいの?ウェンツエル中佐」
(インターセプター・・・ムーンベースに三機しか配備されていないUFOの一撃離脱による撃破を目的とした単座式宇宙迎撃機。核ミサイルを1本装備しており、地球に侵入しようとするUFOを撃破するムーンベースの切り札的メカ)
 
 
地球に侵入したUFOを迎撃する航空機スカイ1。そしてそのスカイ1を運搬するのは特殊潜水艦「スカイダイバー」である。このスカイダイバーは世界の7つの海に配備され、1号機から7号機まで存在する。
その2号機「スカイダイバー2」の女性のクルーが、船長であるマイケル・ヴェル・エルコン少佐へUFOがスカイダイバー2号機の迎撃範囲内にUFOが進入したことを伝える。 
女性クルー:「キャプレン、UFOが、制空権内に入ります」
エルコン:「OK。すぐランチオンしろ。スカイ1の調子は?」・・・計器類を確認し「ベストです」。
 
スカイ1の準備が整った旨の連絡を受けたスカイダイバー2のクルーであるアランが、スカイ1の発進許可を出す。。 
アラン:「ファストアーマープレートアウトウェイ。スカイ1発射!!」
 
スカイダイバー2の船体後部のからせり出された発射口から発射され、海面から弾丸の様に飛び出していく飛行機。
大気圏を突破して地球に進入したUFOを迎撃する、それがスカイ1である。

高速でUFOを追うスカイ1。スカイダイバー2から通信が入り、パイロットであるエルコンは短く返答する。 

スカイダイバー2:「UFOはサハラ上空。あと10秒で射程に入ります」
エルコン:「了解」
 
程なく、エルコンはレーダーにUFOを捉え、ダイバー2と交信しながら撃墜するために照準を合わせる。 
エルコン:「レーダー、UFOをとらえた。DHUD(デジタルヘッドアップディスプレイ)パワーオン。距離216km」
エルコン:「自動追尾(Step-2)に入った」
エルコン:「目標修正(Step-3)・・・・・」
 
着実にUFOを追い詰めていくエルコン。しかし異常に気付き、SHADO本部に状況を尋ねる。 
エルコン:「ん・・・・・おかしい。(照準に)時間がかかりすぎている。本部何かあるのか?」
本部女性オペレーター:「本部よりスカイ1へ。前方30Kmに磁気をおびた砂嵐です。E-SIDにUFOを追わせます。」
SIDとはSHADO所有の人工衛星であり、UFOの感知や大気圏内の航空機の位置把握機能などを持つ。
 
不測の事態に苛立つエルコン。前方に磁気嵐を確認し、意を決したように叫ぶ。 
エルコン:「それでか。くそッ。あ・・・あれか、あの中に逃げ込んだな。しかたがない。E-SIDにまかせる。・・・つっこむ!!」
 
磁気嵐の中は何も見えない。司令部からの通信で誘導されながらUFOを追うがやはり不安を隠せない。 
本部女性オペレーター:「UFOとスカイ1との距離約112.7Km注意してください」
エルコン:「わかった。しかしひでーなー。UFOも見えん。インテークのフィルターもつまりそうだ。くそっ」
 
そんな中、前方にチカッと光るものを発見する。おそらくUFOであろう。こんな状況ではUFOも困惑しているだろうとエルコンは予想する
何故か断続的にUFOは光を点滅させ続ける。訝るエルコン。 
エルコン:「うん・・・・あれか?」
エルコン:「やつもこれにはまいっているな。」
エルコン:「何を光らしてんだ?」
 
その直後、スカイ1は急激にスピードが落ちていく。起きるのを恐れていた磁気嵐による機体の不調である。
最悪の事態を考え、エルコンはスカイダイバー2へ緊急事態であることを伝える。 
エルコン:「うわっ。こ、こりゃダメだ・・・。ジェットエンジンが息をついてきた・・・・。着陸する。あとを頼む。」
スカイダイバー2:「ダイバー2よりキャプテンへ。わかりました。UFOもその付近に着陸したもようです・・・。およそ10Kmとはなれていません。」
スカイダイバー2:「少し機体を休ませてください。今現在位置を確認してます。」
 
着陸したスカイ1のコクピットの中でエルコンは不安を隠せない・・。
が、そのうち緊張による疲れから彼は睡魔に襲われる。嵐は深くなる一方である。そして同様に不時着したUFO。
眠りに付くエルコン。果たしていつ嵐は晴れるのか・・・。そして同様に不時着したUFOは・・・。 
エルコン:「くそっ、(着地した機体が)かたむいてら。ランチングロケットのバッテリーが上がってないことを祈ろう・・・。」
エルコン:「まいったナー。少々ねむるか。(スカイダイバー2に対して何か動きがあったら)おこしてくれヨ。」
 
 
突如としてまぶしい光に包まれ、目を覚ますエルコン。コクピットで眠りについたはずなのに目の前に広がる砂漠に戸惑いを隠せない。 
エルコン:「ン・・・まぶしい。何だ・・・?う・・・。ここは?」
 
その刹那、彼を襲う銃弾。かろうじて避けながら銃を取り出すエルコン。目の前には、彼に剣を突き刺そうとする影。 
エルコン:「!!。何事だよ!!」
謎の影:「死ねっ!!こいつ」
 
辛うじて剣を避け、さらに剣を突き刺そうとする女性になぜこのようなことをするのか問うエルコン。
それに対し怒りに満ちた表情で彼をなじる謎の女性。UFOのパイロットか?混乱するエルコン。 
エルコン:「(剣を避けながら)何をするっ!!」
女性:「何言ってるの。お前を殺すのさ!!」
女性:「お前たちは私の両親・兄妹そして恋人までも。同じ人間同志なのになぜ殺したのさっ。」
エルコン:「ま、まてよ・・・。私には何のことやら・・。」
女性:「だまれッ。するとお前は何のために自分たちが殺してるのかわからなかったの?」
 
剣を咽喉元に突きつけられるエルコン。謎の女性はさらに彼をなじる。 
エルコン:「シャドーのことかっ?」
女性:「自分は何の理由で戦ってるかはっきりとしたことも知らないくせに・・・・。」
女性:「殺したんだね!!。いつもそうだ。話し合いもせず、まずこう攻撃してきて・・・。私たちが何をしたの?」
 
剣を捨て、銃を構える女性。止めを刺すつもりであろう。 
女性:「すべての始まりはお前たちから先にやってきたことだ。」
女性:「死ね」
 
突如として女性は異形の姿に変わる。やはりエイリアンだったのだ。 
異星人:「私たちと同じ苦しみなどお前たちには一生わからない!!」
エルコン:(宇宙人?)
 
 
悪夢にうなされるエルコン。頭の中に響く女性(シレーア)の声に目を覚ます。 
シレーア:「ヴェルコン少佐、ヴェルコン少佐、どうしたの。」
エルコン:「シレーア・・・!」
 
目を覚ますと、異常を感じて彼を呼ぶスカイダイバー2からの通信にエルコンはあわてる。 
スカイダイバー2:「ヴェル、エルコン少佐。UFOが飛び立ちました。」
スカイダイバー2:「マイケル・ヴェル・エルコン少佐!!。マイク!!マイク!!どうしたのよ。」
エルコン:「う・・・・、夢か?」
スカイダイバー2:「え・・・なに?すぐ飛んで。風もなくなったわ」
 
あわてて飛び立つスカイ1。スカイダイバー2の女性オペレーターは彼にUFOを撃墜するよう伝える。
何故か返事をしないエルコン。訝る女性オペレーター。 
スカイダイバー2:「少佐。照準してください。それ以上は町に出てしまいます。」
エルコン:「・・・・・。」
スカイダイバー2:「少佐!!少佐!!返答は?」
 
あわててUFOを追尾し、照準をつけるエルコン。そのさなか頭の中に響く、夢の中に出てきた女性の声。
動揺し、照準がセットされたのに発射スイッチを押せないエルコン。先ほどの女性とのやり取りが彼を迷わせているのである。 
エルコン:「わ、わかった。パワーオン。追撃開始。」
エルコン:「ステップ2・・・。ン?」
女性:(お前たちから先にやったことだ)
女性:(同じ人間同志なのに・・・・)
エルコン:「ス、スリー。修正に入る・・・。」
女性:(始まりはおまえたち!!)
エルコン:「デジタルストップ・・・。く、くそだまれっ。」
女性:(人殺し!!)
エルコン:「う・・・、撃てない!!」
 
 
レーザーを放ちUFOを撃墜するスカイ1。
シートに体を埋め、目を閉じるエルコン。まるで夢の中に出てきた女性に答えるようにつぶやく。 
エルコン:「ふぅ・・・今度ばかりはつかれた。精神面をついてきやがった・・・。」
エルコン:「宇宙人・・・君たちはシャドーの科学力から、地球人の性能を分析したようだが・・・。しかし地球人の心というのは頭とちがってまだそれほど進歩してないんだ・・・。まだ未完成なんだよ。」
エルコン:「なにしろ、自分の意思とは関係なく私の手自体はレーザーのボタンをおしたんだから・・・。」
 
 
飛び去るスカイ1。そしてエピローグ。 
「宇宙人の言った事についてエルコン少佐は、これから先自分の存在について、きっと悩まされることがあるだろう。シャドー隊員たちがはっきりとした確念を宇宙人に対してもっていない現在、それは起こり得ることだ・・・。
 
しかし地球人は過去何度こういった戦わされている個人個人がわけのわからない戦争をしてきたことか?
戦争とは全く意味のないバカみたいなことだ。そのバカみたいなことに命や時間をかける者はもっとバカだ。
 
はたしてUFOとシャドーの戦いはバカな戦争なのか?それとも意義のある戦いなのか?それは今はわからない。
しかしわかったところで残るものは悲しみだけだろう・・・・・・・・・。」
 
1997年11月7日  Mamoru Nagano 4.sep.78  For Mr.Gerry Anderson
 
     
 
 
 
 
・永野護氏作「UFO(アルカディアン第4号掲載)」あらすじ

6人のIDカードを見ながら思わず愚痴るフォスター大佐。
彼を悩ますそれらの問題児たち、ムーンベース指揮官兼インターセプターパイロット「ファンク・U・ログナー」、スカイダイバー所属「マイケル・ヴェル・エルコン」、C-O「シレーア・モルガン」、ムーンベース女性オペレーターである「ジェーン・ラッセル」と「クレマー・トールキン」、インターセプターパイロット「ウェンツェル」。
頭を悩ます彼の部屋に入ってきたのはバーリンデン教授。その6人の中でも特に気がかりな人物について、大佐に問いかける。 

フォスター:「ファンク・U・ログナー、マイケル・ヴェル・エルコン、シレーア・モルガン、ジェーン・ラッセル、クレマー・トールキン。ふぅ・・・ウェンツェル。何でまたこんな連中ばかり・・・。」
バーリンデン:「ニギヤカでいいじゃないか。シャドー(カゲ)の名に反してさ。」
フォスター:「バーリンデン教授!?」
バーリンデン:「だが、エルコン中佐はどうだね?彼最近少々おかしいけれど。」
 
そんな最中に、シャドー司令部から緊急の連絡が入る。
UFOがムーンベースの迎撃を突破し、地球に侵入したのだ。進入した地域は大西洋。
その連絡を受けたバーリンデン教授はやや不安げな表情を浮かべる。最近調子を落としているエルコンの担当区域だからだ。 
司令部オペレーター:「UFO、ムーンベースをぬけあと70分で大気圏内、座標Ac-5R大西洋に向かってます。」
バーリンデン:「大西洋。又、エルコンの所か?」
 
UFO接近の連絡を受け、飛び立つ「スカイ-1」。パイロットであるエルコンは母艦である特殊潜水艦「スカイダイバー」に目標に到達したことを伝える。
が、その後撃墜を伝える連絡が来ないことに不安を覚えるスカイダイバーのクルー。撃墜を失敗したことをすぐに悟り、地上でUFOを追跡・抹殺を任務とする地上処理班に、迎撃失敗したことを連絡する。
一方地上では、地上に降下したUFOを探索・攻撃する装軌車輛「グランドモービル」のクルー達が車輛の上で連絡を受ける。
その報告を受け、悩むフォスター。 
エルコン:「了解。」
エルコン:「スカイ?1目標に到達。撃墜します。」
エルコン:「・・・・・」
スカイダイバークルー:「どうしました。キャプテン。」
スカイダイバークルー:「ダイバーからモービルへ。こちら失敗、あとをまかせます。本部からの指示をまって下さい。」
モービル搭乗員:「わかった。まかせてくれ。」
 
 
数日後、シャドー本部に出頭するエルコン。
呼んだ理由を尋ねるフォスター。バーリンデン教授は最近のエルコンの不調の原因について厳しく詰問する。
その問いに対してエルコンは明確な回答をすることが出来ない。
その様子を黙ってみていたフォスターは、気分転換の為にムーンベースに行く事を命じる。気分転換になればということであろう。 
エルコン:「マイケル・ヴェル・エルコン、シャドー・スカイダイバーα艦長、出頭しました。」
フォスター:「何でここへ来たのかわかっているな。」
エルコン:「はい、指令。」
バーリンデン:「一体どうしたんだ?この一ヶ月というもの3機も未撃墜に終わっている。」
バーリンデン:「今回のスカイ?1は8代目に当たる新型だ・・・。性能も・・・。毎回地上班の処理では困る。」
エルコン:「・・・・・・・・・。」
バーリンデン:「相手が君だけに困っているんだ。ログナーとならんでシャドーコマンダーの最高峰の君だけにね。何か言い分は?」
エルコン:「ただ・・・自分の行っていることに・・・何か・・・つっかかっているんです。」
フォスター:「言い訳にはならないな。解任だぞ!このままじゃ・・・。別荘へ行ってみるか?」
フォスター:「一度じっくり考えてみるんだな。あそこはそういう所でもある。」
 
 
シャドーの通称"別荘"「ムーンベース」。地球に侵入しようとするUFOを迎撃する月面に設置された基地であり、宇宙迎撃機インターセプターの出撃基地でもある。
華麗なコスモルックに身を包むうら若き女性オペレーター達が多く働いている。
その、ムーンベースの通路に設置された窓から宇宙を眺めるエルコン。背後で扉の開く音に、振り向くと見知った顔に思わず「彼」の名を呟く。 
エルコン:「ファル・・・。」
 
向かい合って席に座り、煙草を吸うエルコンとログナー。
以前の出撃で遭遇したUFOからのメッセージについて明かし、果たしてこのまま何もわからぬままUFOを、エイリアンを撃墜し続けてよいか悩むエルコン。
同じような経験がないか問うエルコンに対して、ログナーは自身の経験談を話す。
しかし依然として悩み続けるエルコンに対してログナーは嘲るような口調でそのままで良いのか問う。。 
ログナー:「そうか・・・お前のことはかなり前から聞いていたよ。そんなことがあったのか。」
エルコン:「お前や部下たちはそんなこと思ったことあったかい?」
ログナー:「あったさ。少々違うけど悪魔(=インターセプター)で初めて出撃した時。」
エルコン:「あの悪魔。ふふ・・・・確かに言えるね。」
エルコン:「だけどね。UFOの背中についた時思うんだよ・・・・。私はシャドーの名において世界の人たちにかくして勝手にうち落としている。」
エルコン:「そして何もわかっちゃいない相手に対してはたして私はボタンをおすだけの権利があるのか とね・・・。」
ログナー:「女々しくなったな、エルコン中佐。」
エルコン:「何と言われたってかまいやしないさ・・・。」
ログナー:「それでいいと思っているのか?」
 
その最中、UFO接近を告げる警報と隊員に警戒態勢に付くよう命じるアナウンスが基地内に響き渡る。
煙草を曇らせたまま一向に席を立とうとしないログナーに対して、行かなくて良いのか問うエルコン。
それに対しインターセプターが出撃しない限り自分の出番はないと答えるログナー。そしてゆっくりと席を立ちながら、エルコンにもう少しここで体を休めるように薦める。
エルコンはうつむきながらそんな気分にはなれないと自嘲気味に呟く。 
警報:Win.Win.Win.Win.Win.Win.
放送:「UFO接近。隊員はD体制に入ってください。」
エルコン:「ファル?君、行かなくていいのか?」
ログナー:「はは・・・オレが出る時はあいつといっしょさ。もっとも、もう8ヶ月もごぶさたしてるがね。」
ログナー:「(席を立ちながら)でも体がナマるからモービルで時々指揮をとるよ・・・。」
ログナー:「ま、もうちっとここにてみろ。休養が必要なんだ。」
エルコン:「さて・・・そんな気になるかねぇ・・・。」
 
 
半月後、シャドー司令部ではフォスター大佐がエルコンの状況についてバーリンデン教授に問うが、変わりないことを聞き、窓の外を見つめる。
彼らだけではなく、司令部に勤務する女性スタッフたちも彼を心配する。 
フォスター:「あれから半月・・・。エルコンはどうだ?」
バーリンデン:「だめですな。ブラブラしてるだけみたいで・・・。」
バーリンデン:「彼は有能なだけに・・・時間がかかりそうだよ。」
女性スタッフ:「ログナー大佐にまかせる他ないなァ・・・」
 
 
一方、ムーンベースでは以前変わらぬエルコンに対して、栗色の髪が印象的な女性が彼に戦う気持ちが戻ってこないか尋ねる。
無邪気でありながらどこか好戦的な表情の彼女に対して、苦笑しながら答えるエルコン。
そこへログナーが現れ、彼にモービルでパトロールに同行しないか誘う。 
女性:「そろそろうずいてこない?エルコン少佐(中佐の間違い?)。」
エルコン:「君たちのような女性がたくさんいすぎるよ、ここは。」
ログナー:「エルコン!!」
ログナー:「どうだシュミレータ相手じゃなく、パトロールにでも出るか?」
 
ログナーとエルコンがモビールで出たことを聞き、訝るウェンツェル中佐。
当然である、現在UFOが接近中であるためだ。
女性オペレーターに対して、警報が出ていない理由を問うと、彼女はこれはログナー司令の命令であることを告げる。
親友?である彼らだから大丈夫よと笑いながら答える女性オペレーター達に呆れた表情のウェンツェル。
だが、本心は彼女達も心配なのだ・・・。いくらシャドーが誇るダブルエースでも、モービルでは武装が心もとないのである・・・。 
ウェンツェル:「え〜!!出てったァ。なぜケーホー出さなかったんだよ!!」
女性オペレーター:「命令なのヨ。今度UFOが着たら、警報出すなって言われたの。」
女性オペレーター:「(ログナー)大佐の命令よ、ウェンツェル中佐。あなたたちはた・い・き。」
女性オペレーター:「たまには親友同士いいじゃん。ハハッ。」
ウェンツェル:「アホ。」
女性オペレーター:(くす)
女性オペレーター:「大丈夫と思うわ・・・。シャドーのエースたちだもん・・・・。」
 
エルコンは無理やりパトロールに引っ張り出したことに対してどういうつもりか問う。
それに対し、今からUFO撃墜に向かうことを告げるログナーに対して食ってかかるエルコン。
それをなかば無視してコンソールとモニターを見つめるログナーの鬼気迫る表情にエルコンはたじろぐ。
UFOまでの距離が接近していることを告げる報告に固唾を呑むウェンツェル。 
エルコン:「ひっぱり出してどうするんだ?」
ログナー:「お前をこのまま国へ帰らせたくないもんでね・・・。」
エルコン:「何?」
ログナー:「ほら来たぜ。」
ログナー:「UFOさ・・・。話してなかったっけ?オレたち2人で迎撃に出るっての?」
エルコン:「ログナー、お前・・・。」
ログナー:「だまってろ・・・。」
エルコン:「おい!!」
エルコン:「Rog・・・」
女性オペレーター:「UFOとの距離870Km・・・。あと5秒で射程。」
 
しかしログナーは照準に手間取り、UFOの先制攻撃を受ける。
UFOのレーザーが命中し、半壊したモービルの状況に息を呑むウェンツェル。
額から血を流しながら被害状況を確認するログナー。彼のその目は怒りに燃え、戦闘から離脱する意思がないことを物語っている。
そんなログナーを止めようとするエルコン。
そんな彼に怖いのか尋ねるログナー。明確な返事を避けるエルコンに対し、自身が戦い続ける理由をたった一言呟く。その目は決意に満ちている。
そんなログナーに何も言い返すことが出来ないエルコン。
そしてモビールからレーザーは放たれ、UFOを撃墜する。 
ログナー:「く、くそ!微調整に時間がかかる・・・。」
(UFOレーザー発射):SHEYA!
エルコン:「!!」
女性オペレーター:「モービル110、UFOのレーザーが命中!!大破!!」
ウェンツェル:「いかん。」
ログナー:「くそったれ!!あせりやがって・・・・・・・。左パネル、エンジンと右メインロケットかー、やられたのは。」
ログナー:「完全なふっとばし方をおしえてやるよ。」
エルコン:「やめろ。お前はベースの指揮官だろう。ここで死ぬことはない!!。」
ログナー:「こわいか。」
エルコン:「アホウ。」
ログナー:「マイク、オレはシャドーの隊員なんだよ。」
 
 
自問自答するエルコン。しかし答えが出ることはない・・・。 
エルコン:(ログナーは私に何かを言いたかった・・・。だが違っている。)
エルコン:(あんなもんじゃない!!)
エルコン:(違ってる。何かがちがうんだ。)
 
 
シャドー司令部。以前変わりないエルコンを呼び出すフォスター司令とバーリンデン教授。
出頭したエルコンに、しばらくスカイダイバー及びスカイー1の勤務から外す考えを伝えるフォスター。
意を決したようにもう一度だけスカイダイバーで出撃する許可を求めるエルコン。今回も失敗するようであればシャドーを降りる意思であることも・・・。 
フォスター:「(エルコンは)地球に帰ってきて地上勤務してるのか?まだ・・・。」
バーリンデン:「エルコンを呼べ。」
フォスター:「君をメインからはずしてみようかと思う。」
エルコン:「もう一度ダイバーに乗せて下さい。」
エルコン:「エルコン司令官。このままではふっきれません。」
エルコン:「それでもふっきれなければシャドーをぬけます。」
 
深海を航行するスカイダイバー。
SIDがUFOがムーンベースの防衛線を抜け、エルコンの担当区域に向かっていることを伝える。
一報を受け、出撃するエルコンを見守るクルー達(アラン、エルナ、黒髪おかっぱ女性)。 
SID:「UFO防衛ライン突破・・・。大西洋に向かっている。スピードソル2.1。」
エルコン:「行ってくる!」
アラン&エルナ:「行ってらっしゃいキャプテン。」
 
UFOを射程に捉えるスカイー1。しかし彼は撃てない。やはり迷いに打ち勝てなかったのだ。
接近するUFO。エレナの悲鳴。 
エルコン:「UFOをとらえた。距離230Km。」
エルコン:「やめたあ、くそ!」
エレナ:「キャプテンなぜ!!なぜ又?」
エルコン:「るせェ見えもしないのにうてっかァ。」
エレナ:「キャプテンぶつかる!!」
 
しかし至近距離からのUFOのレーザーに対して機体を縦に反転させて避けるエルコン。
余りの神業に半ば呆れるエレナ。 
エレナ:「レーザーをよけちゃったみたい・・・。たしかにスゴイひと。」
 
意を決したように再度機体をUFOに接近させるエルコン。
この様子を見守るムーンベースの隊員達。そしてスカイダイバーのクルー達。そして何か叫ぶエルコン。 
(この3コマの噴出しは空欄である。永野氏曰く「余りにもテーマがでかすぎて結末が主観的になって面白うもクソもないし、ボクにはまだそんな実力がないので空白は会員さん(読者)が独断と偏見でセリフを入れてください」とのこと。)
 
レーザーを至近距離で放つスカイー1。
どうなったか聞くアラン。エレナは茶化した口調でこの至近距離ではどうなったのか全くわからない事を伝える。
爆発したひとつの機体。食い入るようにモニターを見つめるフォスターとバーリンデン。
黙ってキャノピーの外を眺めるエルコン。
戻ってきたスカイー1を見て安堵するフォスターに後ろから声をかける人物。シャドーの最高司令官であるストライカーである。
何はともあれ戻ってきたスカイ?1。
宇宙を眺めるログナーと遠くから彼を見つめる女性。彼は一体何を想うのか・・・・。 
アレン:「どうなった!?」
エレナ:「接近しすぎちゃってどっちがこけたかわかんないのよねェ。」
エルコン:「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ストレイカー:「フォスター。」
フォスター:「ストレイカー・・・。」
フォスター:「何はともあれもどってきたな・・・。スカイ?1はかなりこわれそうだが。」
 
(C)ITC From.Gerry.Anderson's TV SEREASE of "UFO"
ATV House companyITC
Written by MAMORU-NAGANO For Gerry Anderson
Mamoru Nagano 79 March,20 1979

 
 
・永野版UFOに登場するメカに関する考察
永野氏の漫画に登場したメカ、「スカイ1」や「スカイダイバー」などはほとんどITC版UFOのメカの原型を留めていない、ほぼオリジナルに近いデザインである。
それらメカについて考察する。
(いつか更新)
 
 
・永野版UFOに登場する人物に関する考察
この2作品には様々な人物が登場する。ITC版で実際に存在するフォスター中佐やストレイカー司令官。一方で、あきらかにITC版には登場しないログナーやバインツェル。
それらの人物について考察する
(たぶんそのうち更新)