決戦の朝−頼久2


だが、龍神の神子あかねが選んだのは自分ではなかった。彼女が選んだのは美貌の陰陽師。自分にも彼女が彼に惹かれていたのは薄々わかってはいた。散策への同行の回数もほかの八葉よりも多いように感じられたし、それに何よりも彼女のこぼれるような笑顔はいつも彼に向けられていたから。

でも、もしかしたらと思いたかった。
いつか神子が墨染に自分を探しに来てくれたことがあった。とても嬉しかった。あの時は、神子ももしかしたら自分と同じように思ってくれているのではないか、そう考え、期待したりもした。

だが、神子が選んだのは自分ではなかった。


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