神子桜3


泰明はひとりで桜を見上げていた。
あかねと何度も来た場所。まだ若い桜。あかねはこの桜が好きだった。今年も見事に花をつけたというのに…

「父上」
遠くから近づいて来る者があった。
「こんなところにいらしたのですね。探しましたよ。」

「………」
「いいお葬式でしたね。花がいっぱいで。」
「ああ。あかねは花が大好きだったからな。よく散策の途中で待たされたものだ。
すぐに花を摘みに走ってしまうあかねを…。」
「…きっと母上も喜んでいますよ。」
「そうだな。」

「……。泰光。」
「はい。」

「少しひとりにしてくれないか。」
「わかりました。では、私は先に行っています。」

「すまぬ。」


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