神子桜4


去っていく泰光の後ろ姿を見送ると、泰明は再び桜に視線を戻した。ひとり桜を見上げたまま泰明はつぶやいた。
「あかね。なぜ、私は壊れずにまだここにいるのだ。おまえがいないのに、なぜ…私の生などおまえがいなければ何も意味がないものを…あかね、もう一度おまえの声聞きたい。おまえに触れたい。あかね…」

泰明は桜にそっと手を添えた。泰明の目には徐々に涙があふれてきた。
「あかね…」
あとからあとから涙がこぼれ落ちて来る。
「この涙もおまえが教えてくれたものだったな。あかね…会いたい。」


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