神子桜6


泰明がなかなか戻って来ないのを心配して、再び泰光は先ほどの桜の下にやって来た。
泰光が来てみると、泰明は桜にもたれかかり、眠っていた。いや、眠っているように見えた。その顔に微笑みをたたえながら。

泰光はその顔を見て、ホッとひと安心した。きっと母上の夢でも見ているのだろう。
そして、声をかけた。
「父上、眠っているのですか? 皆さんがお待ちですよ。」
しかし、泰明から返事は返って来なかった。


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