ストーカーな
泰明さん1


今日は姿の見えない頼久さんを追って、墨染めに来ていた。やっと見つけた頼久さんは、ここが頼久さんのお兄さんが亡くなった場所であること、そして、そのお兄さんが亡くなった時の様子と最期の言葉を私に話してくれた。それを思い出すことができたのは私のおかげだって頼久さんは言った。初めて見る満面の笑顔…
その笑顔を見た時、思わず私の胸は高鳴った。
「頼久さん…」
「神子殿…」

その時だった。そんな私の目の前に一匹の蛇がニューッと顔を出した。
「ウギャ〜ッ!!」
私は思わず、妙な悲鳴をあげてしまった。
するとその蛇から聞き覚えのある声が発せられたのだ。
「神子、気が乱れている。大事無いか?」
「えっ!? や…やすあきさん!?」
私は思わずすっとんきょうな声で叫んでしまった。
「ど…どうしてここに!?」
「神子の気が著しく乱れたので気を飛ばして来てみたのだ。問題ないか、神子?」
「はぁ〜、問題ないですけど…」
「そうか、それはよかった。それでは、失礼する。」
そう言葉を残すと蛇は地面を這ってどこかへ行ってしまった。

その様子を呆然と見ていた頼久はコホンと一つ咳払いをすると
「……戻りましょうか、神子殿」
と一言。
「……そうですね。」
さっきまでの甘〜い雰囲気はどこへやら…
いっぺんにどこかに吹き飛んでしまった。


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