長い睫毛、すっと通った鼻筋、形の整った唇、透き通るような・・そしてきめ細かい肌。
彼を形容する言葉を探すなら、やはり一番最初に思いつくのは『美しい』だろう。
冷たい感じもするような美しさ・・・・・・・・・
美しいといえば、同じく八葉であった友雅も美しいといえるかもしれない。
でも、彼の『美しさ』は華やかなもの。自身のその性格にもよく合い、華やかな雰囲気が前面に押し出されている。
そして、頼久ならば・・・・鋭い美しさ。
切れ長の目。真剣な面持ちの時の鋭い眼つき。彼の美しさには鋭さがある。
あかねは戸の隙間から差し込む朝日を微かに浴びながら、隣で眠る泰明を見つめた。
冷たい美しさ・・・・・・・・
彼にぴったりの言葉だと思う。
整いすぎているともいえる、彼の姿は時折冷たい雰囲気故の怖ささえも感じてしまうかもしれない。
それに加わり、感情をあまり表には出さないせいもあるだろう。そんな彼の雰囲気が、その美しさを更に際立たせているような気もする。
鬼との戦いも終わり、ずっと思い続けていた泰明と、その気持ちを通じ合わせ、今では泰明の北の方として、幸せな毎日を送っている。
最初こそ、無表情で苦手意識の強かった泰明だったのだが、その無表情さも、今では愛しいと思う箇所のひとつ。これが”あばたもエクボ”というやつだろうか・・・・あかねは軽く苦笑を漏らす。
しかし、最初は本当に無表情だった泰明も、今ではその感情を表に出すことが多くなっていた。
あかねをその腕に抱きしめてくれる時。
あかねに優しく口付けを贈る時。
あかねの微笑みに嬉しそうに応える時。
これが”幸せ”というものだろうか・・・・・
あかねはそう思いながら、そっと泰明の頬に触れた。
数ヶ月前までここにあった彼の封印。それは最後にして最大の封印だと彼は言っていた。顔半分を斜めに白く塗り、初めて見た時には、実際その姿に驚いてしまったことも事実。
彼が『愛しい』というその感情を持ち、その封印は解かれた。
封印のされていない素の彼の顔を見て・・・・それが普通なのかもしれないのだけれど、見慣れてないせいか、違和感を覚えてしまっていた。
ふと・・・・そんな頃を思い出す・・・・・・・・・・・・
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「何だ。」
「いや・・・別に。」
じっと顔を見つめるあかねに、泰明は怪訝そうにあかねを振り向いた。
そんな泰明に、あかねは慌てて視線を逸らすものの、泰明がまた正面へと向き直ると、再びそっとその横顔を見つめてしまう。
「だから、何だ。何か言いたいことがあるのか。」
「いや・・・えっと・・・・」
顔ごと背けて視線を逸らすものの、さすがのあかねの怪しげな態度に泰明がイラついてしまっていることがあかねにもわかっていた。
あかねは観念したかのように、大きく深呼吸をして、再び泰明の方を振り返る。
「えっと・・・顔・・・・」
「顔?」
はっきりとしないあかねの態度に、泰明は更にイラつく。
「ほら、封印・・・消えちゃったでしょう?今まであるのが当たり前だったから、なんだか不思議な感じがしちゃって・・・」
何をくだらないことを・・・と苦笑する泰明だったのだが、そんなあかねの言葉に、少し考え込む。そして
「神子は、封印のある私の方が好きなのか?」
「え?いや、そういうことじゃないんですけど・・・・」
慌てて答えるものの、そんなあかねの否定の言葉など、すでに泰明の耳には入ってはいなかった。
「わかった。」
あれは、確か鬼との戦いの最中、あかねの最後の物忌みの日。
時刻はすでに日も傾きかけてきた頃だったと思う。泰明は最後にそう言い残すと、そのまま『物忌みの日は終わった』と、部屋を出て行った。
もしかして怒らせたのでは・・・・と焦るあかねだったのだが、翌日の泰明の姿を見てその心配は驚きへと変化した。
「えっと・・・・」
朝一番であかねのもとを訪れた泰明の顔を見て、あかねは言葉が出ない。
「神子は、こちらの方が好きなのだろう?」
そう言って軽く微笑む泰明の顔には、依然と同じように顔半分に封印が印されていた。
別に、封印されている泰明の顔が好きだったわけではない。いや、だからといって嫌なわけでもないのだが・・・・しかし、どうやら泰明は、封印されている自分の顔の方があかねに好かれていると思ったようだった。
「あのですね、どっちが好きっていうことじゃ・・・」
「私は神子の望むべき私で在りたい。」
真っ直ぐにあかねを見つめ、そう答える泰明を、あかねは少し驚いたように見つめ・・・・そして、微笑んだ。
言葉の裏や深いところを考えることなどなく、何でも真っ直ぐに捕らえる、そんな彼が一番彼らしいと思う。そんな彼だからこそ、自分はきっと惹かれていったのだから・・・・・・・・
そして何より、『望むべき私で在りたい』という泰明の言葉があかねにとっては嬉しかった。
嬉しそうに微笑むあかねに、泰明は『ほっ』と胸を撫で下ろす。
「封印は解けたんですよね。じゃあ、その白いの・・・どうやって描いたんですか?」
「屋敷の女房からおしろいを借りた。」
不思議そうに尋ねるあかねに平然と答える泰明。
おしろいでここまで白くなってる・・・・ということは、かなり塗りたくっているんだろうと思う。必死に鏡の前でおしろいを塗る泰明を想像してしまい、あかねはつい噴出してしまう。
体を前屈みに折り笑い続けるあかねを見つめながら、泰明は不思議そうにあかねの笑っているその意味に関して考え込んでいた・・・・・・・・・・
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泰明の頬に触れ、ついあの頃のことを思い出し微笑むあかねの手を、泰明はそっと握る。
「起きてたんですか?」
驚いたようにそう言うあかねに、泰明はゆっくりと瞼を開くと、あかねに視線を向けた。
そして・・・・・優しく微笑む・・・・・・・・・・
無表情だったけど・・・・いつもは感情を表に出すことなんて早々なかったけど、時折見せるこの微笑みに惹かれていったような気がする。
冷たい美しさを放っていた彼が・・・・微笑むと嘘のようにその冷たさが失われていく。
つい、この微笑みを独り占めしてしまいたいような気にさえなり、誰にも見せたくはないとさえ感じてしまう。
誰にも・・・・・・・・・
「おはよう、あか・・・」
あかねの方へと体を向け、微笑みながらそう言う泰明の首もとに、あかねは腕を伸ばした。
ぎゅっと抱きしめ・・・・・力いっぱい抱きしめ・・・・・・・・・
独り占めしてしまいたくて・・・・・・・・・・・
そんなあかねを、驚いたように見ながらも、泰明は嬉しそうに微笑むと、そっとあかねの背中に腕を回した・・・・・・
季節は冬から春へと移り変わろうとしている頃・・・・・・・・・
庭に植えられた梅の木には、蕾が姿を現す。
もうすぐ・・・・・二人が出逢って1年・・・・・・・・・・・・・・ |
■□ 終 □■
ひっちゃん様
Angel Heart:http://hiro.st/angel/
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≪ひっちゃん様コメント≫
10万HIT、ありがとうの気持ちを込めて・・・
第2作目は泰明さんですvv
しかしまあ・・・なんだか久し振りにハッピーエンドな泰明さんを
書いたような気がしてしまうのですが・・・(苦笑)
泰明さんの封印ですね、ゲーム中では一旦イベントの後になくなって
翌日には、『やっぱりつけとく』とか言って、また顔白くしてますよね〜。
だいたいあの白い封印ってのは、何なんでしょう??
顔を洗っても落ちないようなのかな〜・・・などと
わけのわからないことを考えてしまった私です(^^ゞ
とりあえず、封印が解けた後は、おしろいで一生懸命塗ってた・・・
ということにしてしまいました(苦笑)
う〜ん・・・それでいいんだろうか・・・(汗)
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