第8章 夢のプレミアムナイト 夕食&握手会編

 

 

神子の気も大分落ち着いて来たが、ここも我ら二人で案内する。

 

 

夕食会場へ

 

ライブが終わると会場を出て、夕食会場の『二条の間』に移動するよう誘導された。

我が神子は本当は大切な台本を置きに一旦部屋まで戻りたかったようだが、誘導係は

それを許さない雰囲気だったので、仕方なく流れに乗って、夕食会場へと向かった。

途中、コスプレをした一人の神子が我が神子に声を掛けた。確か前のツアーでご一緒

したことのある神子だったと思う。

「さっき、台本ゲットしてたよね。いいな。おめでとう!」

「はい♪ ありがとうございます!」

「コスプレとかって好き? 後で私たちの部屋に遊びに来ない?」

と言って、部屋番号を教えてくれた。

「ミズキ〜、部屋番号覚えてて!」

今の興奮しきった我が神子ではとても自分で覚えていられそうもなかったので、ご友

人神子にそう頼んでいた。

「じゃあ、後でおうかがいしますね〜」

「それじゃあ、来てね〜」

と言いあってその神子とはそこで別れた。

 

出口でツアー参加者への特典である三木頼忠・保志泉水二人の声優の直筆サイン入り

の“ミニクリアファイル”を受け取る。

前に参加したプレミアムツアー1の時は確か片側に二人のサインがあったと思ったが、

今回は『遙か1』のイラストの面に保志泉水のサインが、『遙か2』のイラストの面

に三木頼忠のサインがそれぞれしてあった。もしかして、これを書いてて先ほど始ま

りが遅れたのか?

ただ、前回はちゃんと袋に入っていたのだが、今回は剥き出しのまま。汚さないか

ちょっと心配である。我が神子は仕方なく先ほどもらった台本の袋にていねいに入れ

ていた。

 

夕食会場の入り口の横のテーブルに人だかりがしているので、見てみると、先ほど随

心院で撮ったバスの号車ごとの写真を販売していた。今回はこの時間でしか買えない

ということなので、我が神子とご友人神子も急いで買う。

開けて見ると、集合写真の左側に“PS2版『遙か2』”の絵が入った特別仕様のも

のであった。それはそれでよいのだが…

前回我が神子が参加したプレミアムツアー1では、高橋イノリと宮田詩紋の声優の二

人も一緒に入って写真を撮ったので、我が神子は少々物足りなく感じていたようだ。

我が神子はこちらの写真の方も同じように台本の袋に入れた。

 

 

 

夕食会

 

夕食会場に入ると

「一度退室すると二度と入れませんから!」

と何やら厳戒態勢のようなアナウンスがあった。

い…いったい何があると言うのだ! このものものしさはいったい…

この理由は後ほど分かることになる。

 

前に参加したプレミアムツアー1は立食式だったので、今回もそうだとばかり勝手に

思い込んでいた我が神子はここでなら今までお会いできなかった神子たちとお話がで

きる…と思っていて、メールとかでも思いっきりそう連絡していたのだが、部屋に

入ってみると、丸テーブルが並んでいる着席式であった。前回(プレミアムツアー2)

は、着席式だったと聞いていたが、その時はプレミアムナイトのライブを兼ねていた

とのことだからそのような形式にしたとばかり我が神子は思っていたのである。

だから、あてがはずれてとてもがっかりしていた。

 

席は先ほどのライブで引いたくじで前もって決まっていた。我が神子とご友人神子は

出入口のすぐそばのテーブル。しかも戸口際のいわゆる末席。多分、ライブで一番前

の席だった者は今度は後ろのテーブルになるように計られているのだろう。

でも、我が神子はへいちゃら。

「別にライブがあるわけじゃないし、出る時出やすいし、かえっていい♪」

と言っていた。だが、この席がさらに小さな幸運を招くことになるのだ。それはまた

後ほど。

 

 

 

 

料理は机の中央の回転台に並べられていて、そこから自分の分を取り分けるという、

いわゆる中華料理のコースの時のような方式。そして、例のごとく飲み物はカウン

ターで買って来ることになっていた。1ドリンクぐらいサービスしてほしいと思う

のだが…

我が神子が荷物が心配で買いに行こうかどうしようか迷っていると、ご友人神子が

「私が買って来てあげるよ。涙は貴重品(もち台本のこと!)があるので、ここに

 いた方がいいよ。」

と言って、我が神子の分も買って来てくれた。

台本にも袋にも名前も何も書かれていないので、もし、なくなったら…と二人とも

それを心配していたのだ。

 

料理は肉料理、魚料理、野菜、デザート(確かタピオカ)といろいろあったが、大

人数の料理をいっぺんに作るためか冷めたものが多かったように記憶する。味の方

はまあまあだったようだ。

我が神子が座ったテーブルは大人しい神子が多かったのか、みんな無言で黙々と食

べている。だから、とても他の神子たちに話し掛けられる雰囲気ではなかった。

我が神子とご友人神子はまだかなりテンションが高かったので、二人でおしゃべり

をしては、「本当によかったね〜」を繰り返していた。

同じテーブルの神子たちは台本獲得以前の我が神子の惨状などは全く知らないので、

そんな二人を白い目で見ていた…ような気がする。

そして、食事の途中で、JTBの人が我が神子のところにやって来て、明日の帰り

の切符を渡した。我が神子はそれを無くさないようにすぐにしまった。

出発前日のゴタゴタなど知る由もない同席していた神子たちは何を渡されたのか

知らないので、「この人、何か特別扱いされているのかしら?」とでも言いたげに、

訝しげな目で我が神子を見ていた。我が神子はさすがにその視線には少々困惑して

いたようだ。大丈夫だ、神子。我々がついている。おまえのことは我々が守る。

 

この食事の最中も誰も自分のテーブルを離れて立ち歩く者などいなかった。本当は

我が神子はご友人神子たちを探しに行きたかったのだが、何だかテーブルを離れて

はいけないようなムードだったし、台本を置いてテーブルを離れることはできな

かったので、食事が終わっても静かに自分の席に座っていた。

 

「ねえねえ、みかんさんどこにいるんだろうね。」

そう言って、我が神子とご友人神子は周りを見回して、神子ばれんしあみかんを探

した。神子ばれんしあみかんはこのプレミアムナイトで“泰明”のコスプレをする

と聞いていた。だから、ヤスアキストの二人はその姿をぜひとも拝みたいと思って

いたのである。

泰明のコスをしている者は他にも何人かいた。

「どの“泰明”がみかんさんなんだろうね?」

そう言って探していたら、ご友人神子が神子ばれんしあみかんらしき人物を見つけ

た。

「ねえ、あれじゃない? みかんさん、笑う時の口の開け方に特徴あるから!」

「どれどれ」

と神子が見てみると確かにそれは神子ばれんしあみかんだった。

だが、席が大分離れていたので、座ったままここで合図してもちょっとわからない

だろう。

「後で会いに行こうね♪」

と二人の神子は言った。

 

 

 

三木頼忠と保志泉水との握手会♪

 

食事が終わって扉の外に出ようとした他の神子たちが扉のところに立っていた係員

に止められていた。

「え〜っ、どうして? 出ちゃいけないの〜?」

神子たちがそう思っていたら、しばらくして、扉が開かれ、そこには先ほどライブ

を終えた二人の声優の姿が…。神子たちは扉にきわめて近い席にいたので、扉の外

で待っていた姿まではっきりと見ることができたのである。

「何かちょっと得した気分♪」

二人の神子はそう言っていた。

 

保志泉水は先ほどと同じ服装だが、三木頼忠の方は今度は白いおしゃれなスーツに

下は黒シャツというお姿。そして、サングラスもしておらず、髪は後ろで小さく束

ねていた。

 

二人が扉から入って来ると、会場中の神子たちから黄色い声が上がる。そして神子

たちの大拍手の中を二人は静かに歩いて行った。

我が神子とご友人神子は二人が扉から入ってくるところから、いや扉から入る前か

ら、すぐ横を通って前の方へ行くところまでずっと二人のお姿を拝むことができた。

「ここって特等席じゃん!! まだいいこと続いてるよ〜!」

とご友人神子が言い、二人の神子はまた興奮の絶頂に…。

 

ホワイトデーが近いので、二人からみんなにキャンデーのプレゼントがあるとのこ

とで、二人の後ろにはキャンデーの入った大きな籠を持ったお付きの人たちが控え

ていた。

三木頼忠は扉から入って向かって左側の前方のテーブルから、そして、保志泉水は

右側の前方のテーブルからそれぞれキャンデーを手渡しては、一人一人と握手して

行く。次に回って来るテーブルの神子たちと次の次に回って来るテーブルの神子た

ちが係員の指示で、立って一列に並び、順番が来るのを待っていた。

我が神子は左寄りのテーブルだったので、三木頼忠からキャンデーを受け取るはず

である。我が神子の席は中央寄りだったので、なかなか順番は回って来ない。でも、

待ってる間も楽しいと我が神子とご友人神子は言っていた。

 

そんな時、先ほど見つけた神子ばれんしあみかんが準備のため立って、ちょうどこ

ちらを向いていたので、我が神子とご友人神子は手を振ってみた。すると神子ばれ

んしあみかんも神子たちのことがわかったらしく、手を振り返してくれた。そして、

我が神子がGETした台本の袋を片手で高く上げて、もう片方の手で“これこれ”

と合図すると、神子ばれんしあみかんもうなずいてくれた。神子ばれんしあみかん

も我が神子が台本をGETしたことがわかっていたらしい。

 

我が神子たちの順番が近づき、二人は指示にしたがって、立って列に並び、三木頼

忠が来るのを待つ。

ちょうど前のテーブルの時、三木頼忠がキャンデーを取ろうとして、一袋落として

しまった。普通ならそ知らぬふりをして、しばらくしてまた籠に戻すという人も意

外に多いのではないかと思うが、三木頼忠は何と係員にそのキャンデーの袋を渡し

て、避けておくように指示したのである。それを見て、我が神子は

「三木さんて気遣いのあるいい人〜!」

とちょっと感動していた。

 

いよいよ我が神子の番になった。三木頼忠は笑顔で我が神子にキャンデーの袋を渡

して、握手してくれた。我が神子は三木頼忠に

「ネオパラ毎週楽しみに聞いてます!」

と言った。すると三木頼忠は

「ありがとう!」

とこれまた極上の笑みで返してくれた。そして我が神子のテンションはまた最高潮

に!

自分たちのテーブルの人たちがすべて終わると、また着席し、二人の神子は

「ホントよかったね〜 お話できちゃったし〜!」

とはしゃいでいた。

 

   

これがいただいたキャンディー&クッキーだよ!

 

 

三木頼忠が左半分、保志泉水が右半分のテーブルを回ってキャンデーを配り終える

と、今度は二人が入れ替わって、それぞれキャンデーを渡していない神子たちと握

手をして行く。

今度は中央からだったので、我が神子たちの順番は早く回って来た。

再び我が神子たちは係員の指示にしたがって、立って列に並び、今度は保志泉水を

待つ。

 

そしていよいよ我が神子の番になった。保志泉水が握手すると、我が神子は

「サイトの方で永泉さんの小説書いてます!」

と言った。すると保志泉水は

「永泉、活躍してる?」

と聞き返してくださったので、我が神子は

「はい。前向きな永泉書いてます♪」

と言った。それに対して保志泉水は

「それって永泉じゃないじゃん!」

とちゃんとつっこんでくださった。

(だ〜って嘘じゃないも〜ん。『ガラスの器』の永泉は前向きだも〜ん。

 ね、皆さん、そうだよね?)

保志泉水ともお話が出来て我が神子もご友人神子も顔がほころんだまま。

 

あっ、そうだ! ここで涙からのひと言アドバイス!

皆さま方もこれから『遙か』のキャストの皆さんと握手する機会があるかもしれま

せんよね。その時、何も言わないと普通に握手して行ってしまうのですが、握手し

ている時に話し掛けるとお話している間ず〜っと手を握っていてくれるのです!

これはプレミアムツアー1の高橋イノリと宮田詩紋の時もそうでした。

一度お試しあれ!

 

笑顔でずっと神子たちと握手して行く三木頼忠を見て、ご友人神子が言った。

「三木さん、すごいね。」

「何が?」

と我が神子が聞き返すと、ご友人神子は

「ず〜っと笑顔のままだよ。それもちゃんとした笑顔。」

と言った。我が神子は頷いて、

「うん、そうだね。営業スマイルだとしても、さすがプロっていう感じだよね。

 見習わなくっちゃ!」

そう言った。

 

すべての神子たちと握手をし終えると三木頼忠と保志泉水の二人は前の方に行って、

マイクで挨拶をした。さすがにこの時は我が神子の席からはお二人の姿はよく見え

なかったということだ。

《保志泉水のお言葉》

「結構なんかすごいことになってましたね。雰囲気もまた一緒で。ちょっと酔っ

 払った気分ですかね。まだ、飲んでないけど…。明日もツアーあるんだよね?

 皆さんも十分楽しんでください。」

《三木頼忠のお言葉》

「どう言えばよろしいんでしょう? 本当に参加していただいてありがとうござい

 ます。今日は十分に楽しめましたか? 本日参加して(『遙か』は)本当に愛さ

 れているんだなと思いました。『遙かチーム』の中で、皆さんはTOPファン!

 今日は直にみんなに会えて嬉しかったです。明日も楽しんでください。」

 

挨拶が終わると二人はまた中央の通路を通って手を振りながら扉の方に。

また会場の神子たちからこれが最後と二人の名を呼ぶ黄色い声が飛び交う。そして

手をちぎれんばかりに振る神子たち、そして思いっきり拍手をする神子たち。

また、我が神子たちのすぐそばを通り抜けると二人は会場の方を向いて一礼した。

そして、扉の外に。

その二人の様子と扉から出て歩いて行くお二人の姿を“特等席”で見ることができ

た我が神子たちはまた夢の世界へ。

とってもとっても喜んで、龍神に感謝を捧げていた。

 

ライブ会場から直接、部屋へ戻らせないで、夕食会場へと誘導したのはカメラや録

音機を取りに行かせないためだったのだな。そして、席を立たせないのも部屋を出

てはいけないのも声優の二人が来た時に混乱をきたさないため…。それならそうと

言ってくれればいいものを…。だが、あらかじめそれを言うと、その禁を犯して不

正行為をしようとする輩が出るかもしれないので、いたしかたないのだな、きっと。

 

しかし、今回のプレミアムナイトで唯一残念だったのは、声優の二人との団体写真

撮影がなかったこと。握手会の時、一瞬期待したのだが、そこでもやらなかった。

そして、プレミアムナイトはおろか今回のツアーでは別の場面でも全くそういう場

なかったので、我が神子たちはそのことだけはとってもがっかりしていた。

 

だが、プレミアムナイト全体はライブも握手会も十分、いや、十二分でも、十五分

でも(そんな言葉はないが…)大満足で、お釣りがくるぐらい素晴らしいもので

あったと我が神子もご友人神子も言っていた。

 

中には握手をして、感激のあまり泣き出す神子もいた。

参加したそれぞれの神子たちの胸に温かな思い出を残して、夢のプレミアムナイト

は静かに幕を閉じた…

       

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