第10章 プレミアムツアー2日目 前編

 

打って変わって平和な朝食

 

この日も前日と同じように集合時間は9時。(ちなみにBコースの方は9時10分)

でも、前日の苦〜い思い出があるので、我が神子とご友人神子はこの日は余裕を持っ

て、7時ではなく、6時30分に目覚ましを掛けた。

そして、とっても少ない睡眠時間にもかかわらず、元気に起床して、朝食へ。

第1回プレミアムツアーの時は参加者全員が、大広間でバイキング形式の朝食を取っ

たのだが、今回は、この日も我が神子たちは前日と同じように食券による洋食レスト

ランと和食レストランの選択方式。

前日の長蛇の列に懲りていた二人の神子はこの日は最初から和食レストランに向かう。

これが正解だった。入り口を入るとすぐに二人は落ち着いたテーブルに通された。し

かもご飯とお粥が選べるという。迷ったあげく、ご飯の方を頼む。すると、一人一人

にちゃんとお盆に乗ったおかずのたくさん詰まった塗りの箱とお茶碗、お味噌汁が運

ばれて来た。そして、ご飯の入ったお櫃も。お漬物も京漬が何種類かテーブル備え付

けの入れ物に入っており、取り放題。

そして、雅な音楽が流れる中、一輪挿しの花が飾られたテーブルで、二人の神子は

ゆったりと朝食をいただき、

「昨日もこっちにすればよかったね〜」

などと言っていた。

食事を終えると、二人は部屋に戻り、荷造りをした。この日は念のためにと早起きを

していたので、かなり時間に余裕がある。ゆっくりと支度して、出発の少し前にフロ

ントに鍵を返して、チェックアウトした。

 

 

 

いよいよ出発!

 

我が神子とご友人神子はバスの入り口で座席表を確認する。昨日は前の方の席であっ

たが、今日は、左列の後ろから2番目の席。

今日のバスガイドは、何でも毎回“遙かツアー”の担当をしているとのことで、昨日

の一日目もAコースの3号車に乗っていたらしい。そして、運転手の方も以前に“遙

かツアー”を担当しており、今回また担当できることになって、たいそう喜んでいた

ということだ。その証拠に普通ならバスガイドが運転手を紹介するだけなのだが、こ

の運転手は自分でマイクを握り自己紹介してくれた。

そして乗り込む時は、一人一人の神子様たちに「おはようございます!」と声をかけ

てくれていたのだ。

何かいい感じだなとこの時はまだ思っていた。

 

だが、走り出してバスガイドが、いろいろ皆に聞いてもこの2号車の神子様方は何を

聞いても無反応。バスガイドや運転手の挨拶の時の拍手はみんなしていたのだが、バ

スガイドの質問に答える神子たちは誰もいなかった…いや、実際には我が神子とご友

人神子は必死に「は〜い!」とか言っていたのだが、後ろの席過ぎて前までは届かな

かったようだ。あまりの反応のなさにバスガイドは少し困っていた。

「昨日みたいに前の方の席だったら、私たちが答えてあげるのに…」

ご友人神子がしきりに残念がっていた。

そして、あまりにも何を言っても反応がないので、それ以後バスガイドの話は前日に

担当した3号車のことばかり。

「昨日3号車の方にお聞きしたのですが…」

「3号車の方がこう言ってましたよ。」

よけいに同乗した神子様方はしらけて行く…

ああ、あれほど出だしはいい雰囲気だったのに全くもって惜しいことだ。

 

バスガイドによると今回のツアーで声優たちとの写真撮影がなくなったのは、前回

(第2回)のプレミアムツアーで写真を撮る時に大騒ぎになってしまったからだそう

だ。我が神子も友人の送ってくれたツアーレポートを見て、前回の様子は知っていた

が、あのやり方ではパニックになるのは必至。もう少しやり方があるのではないだろ

うか。その証拠に一回目のツアーの時は整然としていて何の問題も起こらなかったで

はないか。それを一度失敗したからといって、一気に中止にしてしまうというのは

とっても残念だと我が神子が言っていた。

 

 

 

神楽岡

 

 

ここでは、私、チビあっきーが案内する。

 

二日目最初の訪問地は神楽岡。すなわち吉田神社。鳥居と柵の雰囲気はゲーム通りだ

と我が神子たちはとても喜んでいた。

 

 

そして、さっそくスタンプ置き場に向かう。

ここでのスタンプは天真。昨日までの列が嘘のように今日の列はとても短かった。

多くの神子たちはどうやら昨日ホテルで押したスタンプで満足してしまったようだ。

我が神子とご友人神子は『京 旅の手帳』には現地で押す主義だということで、喜ん

で押しに行った。

すると昨日もスタンプ押し場でちょっとお話をした別のバスの神子が我が神子に

「昨日○色の服着てたよね。台本当たったんだよね?」

と聞いた。

「うん、そうだよ。GETしたの〜」

と我が神子が答えると

「よかったね〜、おめでとう!」

とその神子は言ってくれた。我が神子も微笑みながら

「ありがとう!」

と答えていた。

久々の他の神子様との交流に我が神子とご友人神子はふわっと暖かい気分に…

 

スタンプを押した後、藤棚を探してみたが、見つからない。藤は前に私が好きな花だ

と告げた花だ。ゲームの絵とは違うところにあるとは聞いていたが、いったいどこに

あるのだろう。まあ、見つけたとしても今の季節に咲いているはずはないのだが…

我が神子たちはとうとう最後まで見つけることができず、少々がっかりしていた。

 

その後、二人の神子は“斎場所大元宮”の方まで足を伸ばした。神子ばれんしあみか

んの団体も同じところに来ていて鳥居のところで写真を撮っていた。

我が神子とご友人神子も写真を何枚か撮り、それからバスへと戻った。

 

今日の私(あっきー)は昨日と打って変わってごく普通に戻っていた。たまに後ろを

向くこともあるが、バッグが揺れると自然にまた前向きになり、キーホルダーマス

コットとして自然な動きをしていたそうだ。

だが、その様子を見るにつけ、いかに昨日の動きが異様なものであったかをつくづく

思い知らされたと我が神子は言っていた。

そうだぞ、神子。人の忠告はちゃんと聞くものだ。そうしたら、昨日の災難を避けら

れたかも知れぬのだぞ。

「うん。よくわかったよ、あっきー。これから気をつける。昨日はせっかく忠告して

 くれたのに、ちっともわかってあげられなくてゴメンネ。」

と言って、私の頭をやさしく撫でてくれた。神子ミズキも。

――わかってくれればいいのだ、神子。

私もやさしく微笑み返した。

 

 

 

仁和寺−1 永泉さんのお部屋を発見?

 

ここは、この寺をよく知る、私、チビつぐっちが案内する。

 

次に向かったところは、仁和寺。永泉ゆかりの寺だ。我が神子が今回このツアーに参

加した目的の半分は、このお寺だということだ。以前に偶然朝の番組『○〜ムイン』

で仁和寺の特集を21分間もの長きにわたりやっていたのを目にして、絶対に一度は

行きたいと思っていたそうだ。そして、ここは何と言っても我が神子の初めての連載

小説、私の誕生秘話『ガラスの器』の6章〜9章のメイン舞台となったところ…

だから、思いも並々ではない。

 

入り口を入り、大玄関から建物に上がった。そこでは、お守りとかが販売されていて、

お守りフェチ(?)の我が神子は紫外線が当たると色が変化するという桜の模様のつ

いた“紫変化花守”と玄武ということでかわいい亀のお守りをもとめていた。そして、

菊花の香に似合う香立てを一つ、そして母上へと“ぼけ封じ”のお守りも。

「『ガラスの器』でお年寄りの永泉さん、書いたもんね〜 だから、ぼけ封じ!」

などとわけのわからぬことも言っていた。

 

渡殿を通って、白書院、黒書院を見て回る。お部屋や南庭を見ながら、渡殿を静かに

歩く…もう気分は永泉さん! そして、泰継さん!

そして、渡り廊下を渡って、宸殿へ。

 

ここは私が永泉の部屋へ行くときにいつも通っていたところだ。 byつぐっち

 

右近の橘、左近の桜(この時はまだ枯れ枝だったけど…)の前を通り、今度は北庭へ。

そして、そこで我が神子が発見したものは…何と小さな滝の流れる庭! それを見て

我が神子はもう大興奮! しかもその庭に面した部屋には“昔、身分の高い人の居室

だった”との説明書きが…

「わぁ〜〜〜、ここが…こここそが永泉さんの部屋よ〜 間違いないわ〜〜〜!!!」

興奮のあまりそう叫んでいた。

 

 

「そうです。この私にもただ一度だけ、そのように思った方がおりました。

 不思議でしょう? こんな私でも一度は還俗しようと思ったことがある

 のですよ。」

そう言うと、永泉は庭に目を向けた。

そこにはしつらえた小さな滝がかすかな音を立てて流れていた。

 

――あの滝の流れを甦らせてくれたあの方に…

 

永泉は懐かしむような、やさしく穏やかな、それでいてどこかとても淋し

げな瞳でその小さな滝を眺めていた。その横顔を見て泰継は思った。

 

――これが“愛しい”ということか…

  やはり私にはわからぬ。

 

しばしの間、静かな空間に小さな坪庭の滝の音だけが響いていた…

 

                神凪 涙 作『ガラスの器』第8話より

 

 

まさかこの庭にこんなぴったりの滝が実在していたとは全く予想だにしていなかった

我が神子はもうパニック寸前の喜び方! 繰り返しご友人神子にその喜びを伝える。

そして、喜び勇んで写真を取りまくっていた。

しばしその光景を堪能すると、名残惜しくはあるが、順路に沿って、その庭園を後に

した…

 

《途中ですが、後日談をちょこっと》

我が神子が現像に出して、出来てきた写真をいそいそと見てみると、何と

写したはずのこの滝がまったく写っていないではないか! いや、写って

はいるのだが、かなり奥まっていたその部分がほとんど黒一色になってい

て、うっすらと滝らしきものが白いもやのように見えるような見えないよ

うなそんな感じ…。その時ばかりは神子はドヨ〜ンと落ち込んでいた。

そしてツアーに参加したご友人神子たちに仁和寺の滝の写真があるかどう

か聞きまくっていた。幸い、今回同行した神子ミズキのデジタルカメラに

ちゃんと写っていたとのことで、頼んでその画像をすぐに送ってもらった。

それが、下の写真である。

それにしても…何とか滝の写真が手に入ってよかったな、神子。

 

あの時、永泉はこの滝を通して何を見ていたのだろうか…byつぐっち

 

 

 

仁和寺−2 双ヶ丘のことを告げた謎の老女

 

ここではまた、私、チビあっきーが案内する。

 

庭と建物内を見て回った我が神子とご友人神子は今度は外に出て、広い境内を散策す

る。二人の神子は二王門をカメラに収めようと、勅使門より中門に向かい、ちょうど

いい場所を模索していた。そして、ちょうど門が収まるいい場所を見つけた我が神子

とご友人神子がカメラを構えた時、どこからともなく一人の老女が神子たちのところ

に近づいて来た。

そして、その老女は言った。

「ここからじゃ、入らないよ。」

「えっ? でも、全部ちゃんと入るけど…」

ご友人神子がそう言うと、老女は

「ここからじゃ、双ヶ丘が入らない!」

と言った。その意外な言葉に二人の神子は

「双ヶ丘〜?」

とびっくりして聞き返した。すると、老女は中門の方を指差して

「あそこからなら双ヶ丘の一の丘の全景が入るから、あそこへ行って撮りなさい。」

それだけ告げるとお礼を言う間もなく、再びどこへともなく去って行った…

 

我が神子とご友人神子はお互いに顔を見合わせて言った。

「今の…どう思う?」

「何で私たちだけに教えてくれるの? 神子様は他にもいるのに??」

確かに二王門の後ろには小高い丘らしきものが見えてはいる。

「本当にあれが双ヶ丘なのかな?」

我が神子とご友人神子は半信半疑であったが、取りあえずその位置でも一応門の写真

を撮った。

 

ここを出る時、私は永泉の気が消えるを感じたのだ… byつぐっち

もちろん『ガラスの器』の中での話だよ。 by涙

そして、後ろに見える丘らしきもの。この位置からはまだよくわからぬ。byあっきー

 

そして、その後、老女に指示された中門へと向かった。

 

これが中門だ。私が立っているところから二王門に向けて写真を撮るといい。

byあっきー

 

中門の階段を昇り、振り返ってみると、確かに二王門の後ろに一つの丘が浮かび上

がっていた。

「きっとあれ本当だよ! あれが双ヶ丘だよ!」

そう言って、我が神子とご友人神子は老女に告げられた通り中門のところから二王門

と双ヶ丘の写真を撮る。

 

私が立っているところが神子との思い出の地、双ヶ丘の一の丘だ!byあっきー

 

写真を撮っていたら、二人連れの神子たちが我が神子とご友人神子に声を掛けた。

「何撮ってるんですかぁ?」

我が神子とご友人神子は双ヶ丘の方を指差し、

「あれ、あの門の後ろにあるのが双ヶ丘なんだって。しかも一の丘! さっきお婆さ

 んが教えてくれたんだ!」

「えっ、うそ!」

その声を掛けた神子も偶然ヤスアキストの神子だったので、“双ヶ丘”という言葉に

即反応した。そして、慌ててカメラを構える。が…

「あれだよね。」

とその神子が示したのは他の山。そこで我が神子とご友人神子、そして彼女の連れの

神子までもが慌てて、

「違う、違う。あれ、あの手前の丘! あれがそうだよ。」

と言った。

「えっ、どれ?」

となかなか見つけられなかったらしいが、ようやく

「ああ、あれね。」

と見つけて、その神子も双ヶ丘を写真に収めることができた。そして、

「ありがとう、教えてくれて!」

と礼を言った。我が神子はまたその神子にも名刺とポストカードを渡してから、別れ

た。

 

「あれっ? あっきーまた後ろを向いてる。」

久々に我が神子が私を見て言った。

「あっきー、後ろ向かないでよ〜っ」

そう言って、また私を前に向けた。

 

だが、本当になぜあの老女が数ある神子たちの中で我が神子たちだけに“双ヶ丘”の

一の丘のことを告げたかは、未だ謎のままである。

あるいは、あの老女の孫が『遙か』ファンで、私(あっきー)を見て、泰明ファンで

あることを見抜き、教えてくれたのかも知れぬ。

あの時、そんなことを考え、私は恥ずかしさのあまり、後ろを向いたのだ、神子…

 

その後も我が神子とご友人神子はしばし境内を散策した。

しばらく散策すると“幸せおみくじ”というおみくじが目に入り、我が神子とご友人

神子はそのおみくじを引いてみた。

我が神子が引いたのは何と“大吉!”。昨日の災いが嘘のようだ。よかったな、神子。

そしてそのおみくじは“福みくじ”となっていて、縁起物のお守りが入っているとい

う。我が神子のおみくじの中に入っていたのは、“かえる”のお守り。意味は旅行、

外出先から無事かえるということで、交通安全と旅行安全のお守りだそうだ。

何と似合いのものを引いたのだ、神子は…

「あはは、涙の昨日の惨状を見て、安全に旅行できるようにと永泉さんが気を遣って

 くれたんだよ。」

とご友人神子が言った。

「そうだね。きっと永泉さんの心遣いだね。」

と我が神子も言い、そっとそのお守りをバッグに入れた。

そして、本当に心ゆくまでゆっくりと散策した後、バスへと戻った…

 

我が神子の不思議な出来事はここまで。この後はごく普通の楽しい旅へと戻る。

だが、本当に今思い返してみても、あの老女はいったい何だったのだろうか…

今でも謎が残る…

 

[ちょっとあとがき]

バスに戻って、地図を調べたら確かに配置から言っても形状から言っても

紛れもなくあれは“双ヶ丘”でした。

理由はわかりませんが、あの時のおばあさんに感謝!

これから仁和寺を訪れる予定の泰明さんファン、そして友雅さんファンの

神子様方はぜひ中門から双ヶ丘をバックにした二王門を撮ることをお勧め

しま〜す。

 

 戻る   第11章へ