第1章 大阪へ

 

 

ここは私“チビあっきー”がレポートする。

出発の朝、我が神子“涙”は、待ち合わせの場所、“東京駅新幹線南のりかえ口”に

向かった。到底あの時間から切符が買えるわけがないので、切符を買う時間を考えて

少し早めに待ち合わせをしたのである。しかし、なぜか電車の乗り継ぎがスムーズで、

私たちは約束時間の20分も前に着いてしまった…

 

私も密かに神子“ミズキ”との再会を心待ちにしていた。

神子ミズキは『第1回プレミアムツアー』で知り合った神子である。その時は神子

涙も神子ミズキもお互い一人参加同士でもう一人の一人参加神子ばれんしあみかんと

ずっと三人で行動を共にしていた。だから、第1回で神子ミズキに会っていた私も

久々の再会をずっと楽しみにしていたのである。

 

神子ミズキが来て、二人は切符売り場に向かった。だが、夜JTB担当者から電話が

かかって来た時点では、指定席が357席も空いていた8時30分発の新幹線がもの

の見事に満席になっていた。しかも、10時40分ごろ出発の分まで全く空席がない

という。それでは、あまりにも遅すぎるので、仕方なく神子たちは自由席で行くこと

にした。

切符売り場で並んでいた時間が長かったので、自由席に並ぶことも考慮に入れ、結局、

予定より一本遅い、皮肉にも何事もなければ指定席で乗るはずだった、7時33分

東京発“ひかり203号”に乗ることとなった。神子たちは早めに並んだせいもあっ

てか、運良く禁煙席に座ることができた。まずは一安心したようだ。私も安堵した。

 

神子ミズキは私との再会も大いに喜び、頭をなでてくれた。とても心地よい。

だが、初めて会う“つぐっち”にも同じことをしていた…ちょっと複雑な気分だ。

 

我が神子は遅れに遅れた準備のため、1時間20分ほどしか寝てないはずだが、久々

の再会と何とか予定通り参加できることになった喜びに二人はテンション高く、新幹

線の中では一睡もせずに、ずっとおしゃべりをしながら大阪へと向かった。

 

神子、本当に大丈夫か? 昨日のこともあるし、少しは身体を休めた方がいいのでは

ないか?

…だが、私の声は神子には届かなかったようだ…本当に大丈夫なのだろうか…

 

予定通り10時40分ごろに新大阪駅に着いた。ここからは電車を乗り継いでフェス

タ会場へと向かう。まずJR内の普通の電車に乗り換えて大阪駅へと向かった。そこ

から今度は御堂筋線という地下鉄に乗り換える。大阪の駅の方向案内は見慣れていな

いせいか難しいらしい。微妙に東京のそれとは違っていると神子たちが言っていた。

それでも何とか目的の電車を見つけた。

そこで、神子たちは重たい旅行鞄をロッカーに入れるかどうか迷っていた。だが、も

しかしたら帰りはこの駅を通らずに行くかもしれない。それに万が一横浜での時のよ

うに終了時間が1時間以上も延びたりしたら、ロッカーのある場所はシャッターが閉

まって入れないかもしれない。荷物が出せなくなってはたいへんだ。

そこで、大阪に不慣れな神子たちは考えた結果、仕方なく荷物を持って会場へ向こう

ことにした。

梅田駅から地下鉄に乗り、大阪厚生年金会館の最寄駅本町へと向かった。

 

そこからは歩いてフェスタ会場に向かう。思い荷物が手に食い込み、かなり辛そうだ。

私が変わってやりたいが、かえって邪魔になるかもしれぬので、黙って神子のバッグ

にぶら下がっていた。我ら二人がいると少しは慰めになるらしい。ふたりの神子は絶

えず我らを気遣ってくれた。それならば我らも分を果たそうと精一杯微笑んで二人に

応えた…

 

そうこうしているうちに二人の神子は、フェスタ会場である大阪厚生年金会館にやっ

とのことでたどり着いた。

 

着いてみると会場前の公園には人、人、人! しかも我ら『遙か』の登場人物や『ア

ンジェ』の登場人物のコスプレをしている者がわんさか。中でも今日、担当声優が登

場するためか、やたらイノリのコスが目立つ。まぶしい陽の射す昼日中の公園でのこ

の集団の一種異様な雰囲気にはそのお仲間であるはずの我が神子たちも少しばかり驚

いていた。

どうやらロビーが狭いので、会場の係員が公園へ行くよう促しているらしい。

会場外で、特にパブリックスペースではコスプレ禁止と主催者は謳っているではない

か!? だ…だがここは一般の人もたくさん通るし、近所の子どもたちも遊ぶ公園…

ここはパブリックスペースではないのか?? しかもそこに留まることを係員が奨励

している…

その矛盾にしばし頭を悩ます。やはり人間の考えることはわからない…

 

グッズ購入者の入場列があり、我が神子とご友人神子はその列に並び、中へ入る。

我が神子はパンフレットと限定の缶バッジを買う。ご友人神子の方も同じものを買わ

れたが、限定発売の昨年の「ネオロマンス・フェスタ in 大阪」のビデオがすでに売

り切れていると聞いて、とてもがっかりしていた。アニメイトコーナーにも行ってみ

たが、アンジェの新作は売っていたが、我が神子はすでに持っているものしか売って

ないので、がっかりしていた。そして、そこで我が神子は石田氏ご出演の「ネオロマ

ンス・フェスタ」の初版ビデオを見つけ、ご友人神子に買うようにそそのかす…(バシッ!)

…いいや、絶対いいからと勧めた。そして、ご友人神子は薦められるままそれを買う。

「もし、ホテルにビデオの設備があったら行ってから見ようね〜」

と言ってふたりで盛り上がっていた…

買い物が終わるとまた一旦外に出される。どうやらここに留まることはできないよう

だ。だから、公園には溢れ返るように神子たちがいたのだな。

 

我が神子は携帯のアドレスを教えてくれていた神子“今日香”に会場に着いた旨の

メールを送った。神子今日香は我らの兄弟である“チビつぐっち2号”を婿にもらっ

てくださったお方。神子今日香に会えば、“チビつぐっち2号”通称「継ちゃん」に

再会できるはず。我らもとっても楽しみだ。

 

しばらくして神子今日香からメールの返事が来た。目印は時計の前の屋根付きベンチ

のところにいる白いカーディガンを来ている女性…そこはつい寸刻前まで我が神子が

いたところではないか!! そばにいて気配を感じ取れぬとはまだまだ我が神子も修

行が足りぬ。

(あっきー、無理だって。いくら何でもそれは…)

 

「白いカーディガンの人…」

我が神子とご友人神子は端から探して行ったが、何とその時、その屋根付きベンチの

ところには偶然にも白いセーターの神子だらけ!! しかも白い上着を着ている神子

たちがぞろぞろ。

「いったい誰が今日香さんなんだ?」

我が神子がパニックになる寸前に継ちゃんをネックストラップにつけて下げている

神子今日香を発見!

「今日香さんですか?」

「涙さんですか?」

お互い声を掛け合う。お互いを確認しあい、ふたりとも大いに喜ぶ。

神子今日香は明るく頼もしいお母さんって感じのお方。神子が私を紹介すると

「わぁ〜、欲しい〜」

と言ってくれた。前にキリ番とかいうもので我が神子がリクエストを受け付けた時に、

私ではなく“つぐっち”を神子今日香は選んだ。私はつぐっちの方が選ばれたことに

少々落ち込んでいたが、私も嫌われていたわけではなかったのだな。たまたまだ。

た・ま・た・ま。なあ、つぐっち。

『いや、私の方がより可愛かったからだ!』

『そんなことはない。私の方が可愛い!』

…おおっと今はこんな言い争いをしている時ではない。しっかりレポートしなければ。

 

 

我が神子とご友人神子は神子今日香としばし歓談した。

継ちゃんは首から晴明神社のお守りを下げていた。それがとてもラブリー!

神子今日香は本当に継ちゃんをとてもとても可愛がってくれているようだ。我々も我

が神子もとても安心し、そして感謝した。我らチビやっすーと継ちゃんも久々の再会

を互いに喜びあった。

そして我が神子はこの日のために作っていった“手作り名刺”と“限定ポストカード”

を渡す。中には神子今日香がキリ番2000を踏んだ時に描いたリクエスト画の

“泰明とお人形”の本当の限定1点物も含まれていた。神子今日香からは我が神子に

animateEXPO2002限定の『遙か』のポートレートが2枚も贈られた。いいのか、神子。

そんな海老で鯛を釣るようなことをして?

(だって、せっかくくれるって言うんだもん。それにやっぱり欲しいし〜)

 

神子今日香と別れ、我が神子とご友人神子はお昼を食べるために近くの定食屋へ向か

う。その定食屋の名前は…何と“お食事処 石田”! もう、賢い神子たちには分かっ

たであろう。私の声を担当している有名声優と同じ名である。神子たちは先ほどその

へんをぶらぶら歩き、食事も取れるおしゃれな喫茶店などを探していた。そして、付

近の案内地図の看板の中にその店の名を発見したのである。それを見た神子たちは、

満場一致で(?)即そこへ行くことを決めたのであった。おいおい、おしゃれな喫茶

店に行く予定ではなかったのか、神子よ〜

 

 

定食屋へ入るのなど、何年ぶりだろうか? 遠〜い昔、行ったような覚えもあるが、

忘れるぐらい昔のことだ…と我が神子は言っていた。

その店は案外きれいで、しかも安い!!

「当たりだね。」

と言いながら二人は“某お食事処 石田”(→某の意味ないって!)で、お昼ご飯を

たいらげた。

 

お昼ご飯を終えて、大阪厚生年金会館の入り口近くに行くとそろそろ開場の時間。

並んで再入場口から会場へ入った。

我が神子とご友人神子はもう買い物は済ませてあるので、そのまま3階の原画展へ。

PS2ジャケット用イラストのB2サイズの原画に感動していた。神子はあのちょっ

と愁いをおびた泰継画とやらがえらくお気に入りのようだ。いつも集合画の時には私

もつぐっちもバランスの関係か小さく描かれていることが多いのに、この絵は珍しく

比較的大きく描かれていることも神子が気に入っている一因らしい。

 

ここで我が神子とご友人神子はいったん分かれる。座席が1階と3階に分かれている

から。

我が神子はその後、座席にとりあえず荷物を置くと、座席番号を教えてくれていた

神子まじんと会うために1階へと向かう。むろん、我らもお供した。

聞いていた座席には赤い服の神子が座っていた。

「まじんさんですか? 初めまして、涙と申します。」

と挨拶をした。神子まじんもにこやかに挨拶を返してくれた。我が神子と神子まじん

は相互リンクも張っている絆の深〜いお方。今回絶対お会いしたいと思っていたとの

ことだったので、神子はたいそう喜んでいた。あれだけの人数の中から探し出すのは

不可能に近いので、座席を聞いておいてよかった…と神子は言っていた。

神子まじんは元気で明るく気さくそうなお方。思い描いていた通りの素敵な神子であ

る。座っている時にはわからなかったが、確かに立ち上がると背が高く、スラッとし

ている。我が神子は「コスプレが似合いそう…」なんて思わず思ってしまったらしい。

我が神子と神子まじんはお互いの作品のことなど楽しそう語っていた。そして、我が

神子は“手作り名刺”と“限定ポストカード”を、そして神子まじんは手作りシール

をお互いに交換していた。

 

神子まじんと分かれて自分の席に戻ろうとしていた我が神子の足が思わず止まる。

なぜか…それは、ちょうどその時、横浜でも聞いた覚えのある泰明と天真の会場での

諸注意のアナウンスが流れ始めたからだ。我が神子は私のことを心の底から愛してく

れているので、例え姿が見えず、声だけでも十分堪能しているようだ。アナウンスが

終わるまで、1階の最後列の後ろで聞き続け、アナウンスが終わってから3階の自分

の席へと向かった。

私と天真のアナウンスは横浜では昼、夜各1回ずつしか流れなかったが、大阪では何

度も繰り返し流れていた。「少しありがたみが薄れちゃう。」と我が神子が言ってい

た。その証拠に横浜ではアナウンスが流れると会場中が水をうったようにシーンと

なったのに対して、大阪では何回も流れるので慣れっこになってしまい、神子や女王

候補たちはアナウンスが流れている間もペチャクチャと話を続けていたのだった…

 

 

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