第6章 プレミアムナイト直前 運命が変わる瞬間

 

 

この章と次の章は途中で我が神子が理性をなくすやも知れぬので、我ら二人で案内する。

 

“プレミアムナイト”は2階の『扇の間』で行われる。我が神子とご友人神子は10階

からエレベーターに乗って、会場へと向かった。2階に着くと、すでに多くの神子が扉

の前で待っていた。

 

スタンプを押せるのはプレミアムナイトと食事開始までの間と食事終了後との話であっ

たが、すでにスタンプを押して来たという神子が何人かいた。ご友人神子が彼女らにた

ずねたところ、どうやら今の時間でも押してもいいらしい。受付テーブルを通り越して

先に進むのはいささか勇気がいったが、早くスタンプを押したいので、我が神子とご友

人神子はスタンプ設置場所へと向かった。

 

第1回の時と同じように今回訪ねる箇所のスタンプが机の上に置いてあった。指定時間

の前のためかまだかなり空いている。前日宿泊とセットになっていた晴明神社、すなわ

ち泰明と泰継の分はないのでは…とも思っていたのだが、ちゃんとその分も用意されて

いた。

「ラッキー♪」とばかりに神子たちはスタンプを押し始めた。『京 旅の手帳』のほか

にも持って来た“はがき”にも何枚か押していた。そして…

我が神子はこの時考えた。

「二重になって変になっちゃうかもしれないけど、これに重ねてもう一度泰明さんの

 スタンプを押してみよう!」

と。その手元には今朝晴明神社で失敗した『京 旅の手帳』の泰明スタンプのページが

握りしめられていた。

 

我が神子は「えいっ!」と思い切って、泰明スタンプを重ねて押した…

 

思えばその時からである。それまで最悪だった神子の気が一気に好転したのは…

 

「思ったより綺麗に押せたね。」

確かに少しはブレているもののそこにはちゃんと私、あっきーの顔が鮮明に写ってい

た。

 

神子たちがスタンプを押している間にプレミアムナイトの開場が始まっていた。

スタンプをすべて押し終えると我らの神子とそのご友人神子も受付に向かう。

席順のくじは代表者が一人引くことになっていた。

「ねえ、ミズキ。あなたが引いて!」

我が神子が言った。

「ええっ!? でも、私、くじ運悪いよ〜」

「でも、今日の私よりはましだよ。今日の私はこれまでにないというぐらい最低最悪

 の運だから…」

さすがにそれまでの我が神子の惨状を目の当たりにして来たご友人神子はくじを引く

ことを引き受けてくれた。

受付に行くと、右が二人参加用、左が三人以上で参加用のくじ引き所になっていて、

くじをJTBの方が持って立っていた。すでに大多数の神子が引きに来たと見え、残

り枚数はわずかとなっていた。

 

神子ミズキは二人用のところへ行き、一枚のくじを手に取った。

忘れもしない、それには『室町7.8.』と書いてあった。

 

その札を持ち、二人の神子は座席表を見た。その日最低最悪の目に合って来た二人の

神子は当然下の方から座席を探して行った。だが、なかなか見つからない。

だんだん上の方に目をやって行った我が神子が急に叫んだ。

「ほら、一番前の席だよ!!」

「うそ!?」

二人は自分たちの持っている札と座席表をもう一度見比べて見た。何度見ても確かに

一番前の席である。

「やったねー!! 一番前だよ! ミズキ〜ナイス!!」

二人は今までの運の悪さのこともあり、必要以上に大喜びした。二人の常軌を逸した

はしゃぎようの理由はきっと周りの神子たちにはわからなかったことだろう。

二人の神子は会場に入り、カードの番号と椅子の番号を見比べて指定の席に座った。

座席は右寄りの方ではあったが、確かに最前列。

「本当によかったね〜 きっと泰明のスタンプ、押し直したからだよ〜」

「ねえ、この札、私がもらってもいい? 今日一日運が悪かったから厄祓いのお守り

 にする!」

と我が神子がご友人神子に言った。

「うん、いいよ。」

もちろん、ご友人神子に異存があるわけはなかった。

 

二人は座席に座っても大興奮していて、すごくテンションが高いまま。

お友達神子を探しに行く機会を逃してしまうぐらい…

すぐそばにお会いしたい神子がいたのだぞ、神子!

もう少し落ち着きがあれば、お話ができたものを…

 

右隣りに永泉のお人形を抱っこしている神子がいて、

「かわいいね〜♪」

なんて言って微笑んだりして、もう神子たちは上機嫌だった。

 

開演を待っている間に、また、今度はOLYMPUSのカメラケースの落し物があったと

かで、JTBの人がそれを持って会場で聞いて回っていた。それに何やら座席が足り

ないとか何とかも言っていたような…我が神子たちの前を通る時、JTBの人がすご

い目で我が神子を見た。まるで「また、こいつじゃないだろうか?」とでも言いたそ

うに…

 

「でも、今度は私じゃないも〜ん!」

 

我が神子はもう完全に開き直っていた。そんな視線もへいちゃら! だって一番前の

席でお二人を見れるんだもん♪ 我が神子はそう思っていたようだ。

 

しかし、この時は我が神子はまださらなる喜びが待っていることを全く知らなかった…

 

 

[ちょっといいわけのあとがき]

あはは、また、こ〜んなところで次に続く〜となってしまいました。

こうして、また引っ張るんだなぁ、これが。

プレミアムナイトについて書いていたら異常に長くなってしまいまして、

次はいつ上げられるかわからないので、とりあえずここで一区切り。

後は、三度目の京の散策から帰ってからのUPとなります。

楽しみに待っててくださるみなさん、温かい目で気長〜に待っててくださいね。

        

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