夜桜と月と

 

すっかり闇に包まれた紫姫の屋敷・・・・昼は元八葉達とともに桜を見た喧噪はもはやなく。
「なんか昼間の騒がしさが嘘みたいだなぁ・・・。」
陽香は御簾から差し込む月の光に、昼間の楽しさを思い出してた。
「でもこれからがメインだもんね。」
陽香は今かとあう人物が来るのを待っていた、そして間もなく・・・・・・・・・。
「陽香殿・・・お迎えに参りました。」
御簾の外から抑えめに声をかけてきたのは、源氏の武士であり陽香の思い人である
源頼忠であった。
その声に御簾を上げる陽香「頼忠さん、待ってました。」
「お待たせいたしました、陽香殿。さ、遅くならないうちに出かけましょうか?」
頼忠が陽香にそっと手を差し出す・・・・にこっと微笑みながら手を乗せる陽香。
「はい、出かけましょう。」
頼忠と陽香は夜の京へと出かけて行った。




頼忠と陽香が向かったのは、桜で有名な案朱であった。
「うわぁ・・・・綺麗な桜」
月に照らし出された桜に目を輝かせる陽香。そんな陽香を温かい目で見つめる頼忠。
「確か百年前の神子殿も、案朱の桜を愛でたそうですよ。」
「そうなんですか?」
驚いたように頼忠を見上げる陽香に、頼忠は話を続けた。
「はい、泉水様のところに残されていた書き付けに書かれていたそうですよ。京を救った
前の神子殿は・・・愛しい人とここの桜を愛でたと・・・・。」
「その愛しい人って言うのは・・・八葉の人?」
頼忠とともに桜を見つめる陽香・・・・・そこに見えるのは百年前の神子と八葉なのだろうか?




「寒くはありませんか?陽香殿」そっと肩を抱く頼忠。
「大丈夫です・・・頼忠さんが肩を抱いてくれてるから(///)」
頼忠に身体を寄せる陽香。
そんな初々しい恋人達を優しく照らす夜空の月・・・・・・・・・・・。
「月に照らし出された桜を頼忠さんと見ることが出来て・・・嬉しい。前の神子もこうして
桜を見ていたのかな?」
「私もです・・・陽香殿とこうして・・・・・。ええ、おそらくは。思い人と共に見上げていたと
思います・・・今の私達のように。」
二人の声が前の神子に届いたのだろうか・・・・桜の花がふわりふわりと降りてくる。



『幸せにね・・・・・』
そう言っているように頼忠と陽香には思えた。
「陽香殿・・・幸せにいたします、必ず。」
「うん・・・頼忠さん。」



月と桜が見つめる中、二人の影は一つに重なり合っていった・・・・・・。



 

asato様『Balloon flower

http://www.fuki.sakura.ne.jp/~sei-lan/index.htm

[涙の一言]

asato様のサイトで5000ヒット記念フリー創作としてUPして

あったものをいただいてまいりました。

夜桜を見に案朱を訪れた頼忠と陽香は先代の神子に思いをはせ、その神子の

姿に自分たちの姿を重ねる…それぞれの恋人たちの幸せな思いが案朱の桜

に重なって…とっても素敵なお話ですよね。しみじみ。

asato様、ステキな創作をありがとうございました。

 

 

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