「あ・・・・雪・・・泰明さん、雪だよ。」
窓の外をみていたあかねがうれしそうに振りかえる。
その声に誘われるように泰明も窓辺のあかねのそばに近づいた。
「冷えると思ったら、雪か・・・。神子寒くないか?」
「うん。」
あかねは泰明の腰にぎゅっと腕をまきつけた。
「泰明さんにこうしていれば・・・・寒くないよ。」
「そうか・・・」
あかねを見下ろすやさしい瞳。
ふと窓の外をみつめる。
「京も・・・・雪がもう降っているのだろうな。」
「泰明さん・・・」
「生まれて二度しか京の冬は知らぬが・・・。」
あかねを微笑ながら見て、また窓の外に視線をもどす。
「泰明さん・・・・(京が懐かしいの?)」
「だが、神子はこちらにかえってきて正解だな。」
「どうして?」
泰明はぎゅっとあかねを抱き寄せる。
「こんなに寒がりでは京の厳しい冬はとてもこせまい。暖房器具など、火鉢しかないのだから。」
「帰りたい・・なんて思ってない?」
そうきくときょとんとした顔で泰明はあかねを見つめた。
「どうして?」
「だって・・・」
「気を使わせてしまったか?少し、お師匠のことを考えていた。」
どうして・・おられるかと。
愛するものと異世界に旅立つことを祝してくれたたったひとりの家族。
泰明をこの世に生み出し、己のすべてを伝え、慈しんでくれた。
そう・・・今になってわかる。
晴明が泰明に世の父親に負けぬ愛を注いでいたこと・・・
(お師匠・・・)
「泰明さん」
ぎゅっと泰明のセーターをつかむあかね。
「さみしい?」
「いいや。神子がいるところが私のいるところ・・・神子を守るためにこの身はあるのだ。」
たとえ、北極だろうと・・・あの宇宙の果てだろうと・・・・
「もう、八葉じゃないって〜」
「だからだ。・・・・おまえを守るのは私の役目ではなく、私の願いなのだ。」
「や、泰明さん(////)」
まっかになったあかねを仰向きにするとふっとその目元を弛ませる。
「愛している。あかね。おまえがいれば、淋しくない。」
あかねを抱き締めて雪を見つめる。
(お師匠・・・・あなたにこの上ない感謝を・・・そして息災であられんことを・・)
おわり
柊様
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