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〜忘れられた童話〜

 

真っ黒い羽を持った

漆黒の悪魔が

真っ白い羽を持った

片翼の天使と

青い空を

どこか遠くへ遠くへ

 

 

彼らはどこへいったの?

少年は老人に尋ねました。

「遠い所だよ」

老人は答えました。

「決して辿り着くことのない、どこか遠くの知らない国」

「それで、その続きは?」

女は傍らの男に問い掛ける。

女の手元では鍋から食欲をそそる良い匂いがした。

「さて、どんなんだったかな」

男は興味なさそうに呟くとテーブルの林檎を一口かじった。

林檎はまだ固くてすっぱかった。

子供のころに祖父が向いてくれた林檎は皆こんな味だった。

そして、林檎を食べる間

祖父は決って同じ昔話を聞かせた。

それが「dokokatookunoshiranaikuni」

結末覚えていない。

2人の有翼人が向かった先に何があったのか。

そんなことは、どうでもよかった。

知りたかったのはその国の在り処だ。

地図に記されることのない楽園を彼は捜し求めていた。

あれからどのくらいの時が過ぎただろう。

探せど探せど、その国はみつからない。

 

「誰もが忘れてしまっているけれど、こんな童話があったのです。」という話。

昔話や言い伝えって伝聞だから長い歴史の間に忘れられたり変化したりするじゃないですか。

そんな感じです。「漆黒の悪魔」と「片翼の天使」以外は実はどうでもよかったりする。(笑)

 

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