+ 夏華の咲く庭に +
花をテーマにした詩
(音楽は「ノクターン」より「アリエッタ」(グリーグ)をお借りしました。)
水を滑る華は顔
水中から伸ばされた茎は手
遥かな水の底で
何かが啼く声がする
甘い香りもなく
ただ竿にもたれかかって朝露にのみ咲く
それでも、
その一時の為に
朝顔は地上にある
庭の奥で
昼顔の花を摘み取った
もうすぐ、雨が降る
薄灰のコンクリートに囲まれた箱の中
冷たい床にひざまづき
極彩色の花をかき抱いて
祈るように歌いつづける
水上の花が開く
ひょろりと伸びた茎に
ぽってりとした薄紅の塊
アンバランスな花は
霞吹く風に踊らされ
花影が水に泳ぐ
夏の木陰に涼む
視界に広がる舞華
降る花弁は
桜よりも鮮やかな紅梅色
その華、百日紅
どこまでも果てのない
黄色い海に溺れ
少年の僕は
大人の僕と
遠い将来の夢について
小さな誓いを立てた
芳香を漂わせ
仄白く光る
華一輪