+ 平行する未来 +
未来もまた進行形の時を重ねている
(音楽は「DIORAMA」より「大きな古時計」(アメリカ民謡)をお借りしました。)
深い深い
空の果て
静かに揺れる
月ノ花
愛しい王子は
旅に出て
水が枯れた泡の海
刺の代わりに
白い花弁
ぷくぷくぷく
風に飛ぶ
夏雪葛のベールを被り
カサブランカのブーケを抱え
静かに歩く
夏草のヴァージンロード
今は誰もいない
2人きりの秘密の花園に
赤く燈る留紅草
大地の星に促され
この世で1番遠い君に
届かない誓いの言葉
昼の陽は中天
地表の熱は沸騰し
空気は白く発光する
夏を透かす窓硝子
鉄の檻に閉じこもった
僕の肩には冷たい手
優しく身体を包み込む
凍れる微笑に捕りつかれる
夏草の川原
水に浮かべた笹舟は
危うげな流れに揺れ
どこまでも
ここからは見えない
海へ
風を切って
風に乗って
風を渡って
季節を空を
渡る鳥
来ない未来の夢をみた
止まった恋の思い出と
私が憶えた哀しい気持ち
貴方の声が聞こえない
私の視界は真っ暗闇
零れた涙に身を委ね
心が飛ぶ時見た答え
たぶん人は
大好きな誰かの
思い出を反芻しながら
長い長い旅をする
緑の天蓋から
降ってくる光
地上を照らす
夏の闇
そよぐ風は南から
眠る葉櫻は
何を夢見る
赤い光が空の上
月の光にかき消され
微かに瞬くその大地
夢と現の幻が
遠い過去の面影を
遥か未来に映し出す
シャチは夏の海の上
見知らぬ誰かを振り切って
引き去る波に身を任す
ゆらゆら飛び出る大海原
もう陸の手は届かない
ビニルのしゃちは遠く遠く
夢にみた
懐かしい景色へ
切ないほどの愛しい祈り