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未来もまた進行形の時を重ねている

(音楽は「DIORAMA」より「大きな古時計」(アメリカ民謡)をお借りしました。)

 

「月ノ花」

深い深い

空の果て

静かに揺れる

月ノ花

愛しい王子は

旅に出て

水が枯れた泡の海

刺の代わりに

白い花弁

ぷくぷくぷく

風に飛ぶ

「月」 7.26

 

「夏婚式」

夏雪葛のベールを被り

カサブランカのブーケを抱え

静かに歩く

夏草のヴァージンロード

今は誰もいない

2人きりの秘密の花園に

赤く燈る留紅草

大地の星に促され

この世で1番遠い君に

届かない誓いの言葉

「夏の草花」 7.30

 

「冷たい手」

昼の陽は中天

地表の熱は沸騰し

空気は白く発光する

夏を透かす窓硝子

鉄の檻に閉じこもった

僕の肩には冷たい手

優しく身体を包み込む

凍れる微笑に捕りつかれる

「クーラー」 8.1

 

「行き先」

夏草の川原

水に浮かべた笹舟は

危うげな流れに揺れ

どこまでも

ここからは見えない

海へ

「川」 8.7

 

「燕」

風を切って

風に乗って

風を渡って

季節を空を

渡る鳥

「燕」 8.12

 

「旅人」

来ない未来の夢をみた

止まった恋の思い出と

私が憶えた哀しい気持ち

貴方の声が聞こえない

私の視界は真っ暗闇

零れた涙に身を委ね

心が飛ぶ時見た答え

たぶん人は

大好きな誰かの

思い出を反芻しながら

長い長い旅をする

「夏の夢」 8.20

 

「櫻」

緑の天蓋から

降ってくる光

地上を照らす

夏の闇

そよぐ風は南から

眠る葉櫻は

何を夢見る

「葉桜」 8.23

 

「天球電子郵便」

赤い光が空の上

月の光にかき消され

微かに瞬くその大地

夢と現の幻が

遠い過去の面影を

遥か未来に映し出す

「火星」 8.24

 

 「しゃち」

シャチは夏の海の上

見知らぬ誰かを振り切って

引き去る波に身を任す

ゆらゆら飛び出る大海原

もう陸の手は届かない

ビニルのしゃちは遠く遠く

夢にみた

懐かしい景色へ

切ないほどの愛しい祈り

「浮き輪」 8.28

 

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