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小さな金魚は世界を夢みた

(音楽は「VAGRANCY」より「いつまでも」をお借りしました。)

 

「夜化粧」

夜の見世物小屋

棚に並んだ

巾着硝子

赤い帯紐

ゆらゆら揺らして

きらきら光る

sakanaの群像

7.20

 

「水生生物」

透き通る硝子を滑る

水の中の君

それを見つめる

陸の上の僕

ここは暑くて狂いそうだよ

漂う朱に囁いて

君には君の居場所

僕には僕の居場所

7.21

 

「置き土産」

チリンと音1つ

硝子のぶつかる音

貴方に貰った風鈴

窓の縁で揺れて

描かれた金魚の絵が

涙で今は見えない

7.22

 

「水槽世界」

淡雪の降る

球形の海

白い砂と緑の藻

ぷくぷくぷくと

泡模様

呼吸するには

酸素は遠く

7.23

 

「川下り」

魚眼レンズに映る三毛猫

ちゃぶ台の上で喚くラジオ

ある朝、全ての世界は消えて

私は冷たい流れを下る

落とされた水は不透明

泡立つ濁流の中を

水を追いかけヒレを動かし

千切れんばかりの痛みを抱いて

世界は果てからその先へ

7.24

 

「サカナソラトブ」

水色の空に

赤い風船、飛んでいく

届かない位に高い空

赤いサカナが泳いでる

7.25

 

「すっからかん」

和紙に空いた穴

向こう側を通り過ぎていく

赤い金魚の群れ

何度やっても

君は上手くすくえない

紙はすぐに破けて

僕の財布はすっからかん

べそかく君に

こっそりおまけしてくれた

露天のヒゲ親父

人のいい彼の儲けも

たぶん今夜はすっからかん

7.26

 

「進化論 -kingyo-」

柔らかに揺れる

赤い小さな身体

何処から来て

何処へ行くのか

遺伝子の行方は

現世(いまよ)に定まらず

その美しい姿さえも

未来(さき)に描くこともできず

何の為に生まれたの?

夜毎、密やかに問いかける

7.27

 

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