+ シンクロする現在 +
懐古してみても、過去と現在は別の糸
(音楽は「DIORAMA」より「メヌエット ト短調」(バッハ)をお借りしました。)
水を叩く足
波を起こす腕
真っ直ぐに進む
泳ぐ君
君を見て初めて
人の器が美しいと思った
電車の振動が
ガタン カタン ガタン
汗ではりつくシャツ
首を締めるネクタイ
寝不足の頭は酸欠状態
ガタン パタン ガタン
不意に目の前に落ちた
虫取り網
慌てて拾う子供が1人
停車する電車
降りていく子供
窓の外に
遠くなっていく虫取り網を
僕は黙って見送った
突然の夕立ちに
2人して慌てて駆け込んだ
知らない店先
カサを買うお金もなくて
ずぶ濡れのまま
雨上がりを待った
幸福な時間
藍色の空に咲く
大きな花
きらきら降る
光る粉
見惚れる私の隣に
見えなくて泣く
小さな女の子
大きな肩に抱き上げられ
歓声をあげた
あの場所は
もう私には必要ない
傾きかけた太陽が
西の窓から
擦れた六畳一間
木製の卓袱台
色あせたカーテン
今はいない誰かの跡を
長く強く焼き付ける