阿 蘇 の 歴 史

歴史以前 原始時代 石器時代 縄文時代 弥生時代 古墳時代 古代 中世

@ 歴史以前の阿蘇
「アソ」という言葉はアイヌ語の「火を噴くところ」「火の山」に由来するとも言われている。このほか梵語、ギリシャ語に由来するとも言われている。
 「阿蘇」という名前、文字は1200年前から国内はもちろん中国にも知られていた。旧来阿蘇は、今の外輪山を麓にした巨大な一つの山で、噴火活動で中が空洞になり落ち込んでカルデラとなり今のような形になったと考えられてきた。
太古の阿蘇は今から約800万年前大噴火が起こり、それまで海であった阿蘇の地域は陸地になった。噴火は約200万年続き、その後九州は島になり500万年ほど噴火は途絶えていた。その時にできた山で現在も残るのは大観峰である。今から約60万年前、再び大噴火が起こり50万年ほどの間に4回の大火砕流を起こし、流した溶岩は九州の大半を埋め尽くした。
 このときの阿蘇はいくつもの火山の集まりで、ぞれぞれが次々に噴火を繰り返した。この活動で空洞になった阿蘇は落ち込みカルデラは拡大し、根子岳を残して大きな湖となった。
約2万年ほど前に再び大噴火が起こり、湖の中から高岳、中岳、往生岳、杵島岳が現れ活動した。それが現在の中央火口丘である。カルデラ内は1万年以上は湖であったが、地震による断層や浸食によって流れだし現在のような盆地となったといわれている。
  
A 原始時代の阿蘇
阿蘇谷の原始時代の状態は、阿蘇神社の祭神である健磐龍命が阿蘇谷に満ちてい
た湖水を蹴破り耕地を作ったという伝承が広く流布していたため、かってのカルデラは人の住めない荒地であったろうという印象が強く人々の頭に残っていた。考古学が広く知られる以前は古代の遺物が出土したり、伝えられていてもただ珍奇なものとして取り扱われることが多かった。  

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B 石器時代の阿蘇
阿蘇町の石器時代の文化は大観峰の永倉峠付近で細石刃が採集されている。
西小園下り山からはサヌカイトで作った石槍が採集されている。大観峰石器文化は約2.5万年前と言われている。
  
C 縄文時代の阿蘇
阿蘇の縄文時代は現在まで、阿蘇町では48カ所の縄文土器の出土地が知られて
いる。石鏃、石斧などが単独に出土した地点は8カ所もあり合計すると56カ所に及ぶ縄文期の遺跡が分布している。遺跡の分布状態を見ると外輪山の山麓部に最も多い。分布が集中するのは@狩尾地区A湯山から西湯浦、西小園に至る「なべづる線」一帯B山田小倉地区に分けられる。中央火口丘の山麓部には一カ所しか確認されていない。
遺跡の立地を見ると標高500メートルの山麓地区と標高550以上の高所地区に分けられる。前者が生活の拠点であるとすれば、後者は狩猟等で一時的に居住する「キャンプ場」的性格をもつ遺跡であるようだ。
  

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D 弥生時代の阿蘇
阿蘇町には51カ所の弥生時代の遺跡出土地が知られている。
この時期の遺跡分布は北側の外輪山麓部に集中することがなくなり五岳の山麓部、宮山、永草、黒川等にも見られるようになる。
  
E 古墳時代の阿蘇
古墳時代の阿蘇町には古墳は存在しないとされていた。
しかし近年の調査によりいくつかの古墳群が発見された。古墳時代になると、カルデラ内の開発も急速に進み、ムラもほぼ現在の集落の立地と同じ場所に営まれたと思われる。
 
F 古代の阿蘇
大和朝廷は地方の豪族を国造や県主に任じたが、古代の阿蘇においても大化改新
のとき国と郡を設置し郡には郡司を置いた。阿蘇郡の郡司には阿蘇君が着任したものと見られる。土地改革制度の条里制は一の宮町に見られるが、黒川にも小字36が存しかっては阿蘇町の一部にも条里制が存した可能性が指摘されている。
1400年〜1550年頃までに阿蘇谷の中には各地に中世城と呼ばれる城跡がみられる。  

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G 中世の阿蘇
中世の阿蘇では「下野の狩」が有名である。
古来より阿蘇大宮司家の遊猟の地とされ、阿蘇鷹山、下野の三の馬端で毎年2月に大宮司、神宮権大宮司等の宮人が猪鹿を射取り神前に供えるのを通例としていた。「下野の狩」は1193年源頼朝が富士の狩りの時に参考にしたとされている。
1581年まで続けられたが阿蘇家の社領が没して中止され、明治初年一時再興されたことがある。
 また中世の阿蘇においては阿蘇山頂の中岳、火口の東側の平坦地に88の寺庵があった。西巌殿寺を中心とする現地の坊跡が古坊中である。現在は牧草地になっている。724年と1144年の二説がある。現在は天台宗比叡山延暦寺の末寺である。衆徒20坊行者坊17坊51庵の合計88の寺庵が甍を競い、西国の宗都の感があった。1587年島津の兵乱のため社家、寺僧共々に四散したが、1599年加藤清正が復興し保護した。その後細川氏も寺領を保護したが、明治になって寺領の保護が無くなり、山上は荒廃した。